前回までのあらすじ
「謎の美少年」現る(シャルルのこと、断じて星君ではない)。
↓
ラウラ「わがドイツの外交力は世界一ィィィーーー!!!」
↓
箒「もう、全部姉さんのせいでいいんじゃないかな?」
千冬姉に頼まれたこともあり、HRが終わった直後にシャルルの席に向かった。
「君が織斑くん? 初めまして、僕は……」
「いいからとにかく移動が先だ」
俺はシャルルの手を掴み、一目散に駆け出す。
教室では女子が着替えるのだ。そこに男がいれば、間違いなく犯罪である。
シャルルにそんなことやあんなことを説明しつつ、男子ズ(俺たち)を捕獲せんとする女子の群れから逃げるようにして、本日俺たちが使用する第二アリーナ更衣室までやってきた。
やばい、時間がない。
会話もそこそこに着替えに専念する。シャルルが何やら顔を赤くしていたが、体調でも悪いのだろうか? 聞いても「大丈夫」としか言わなかったが、まぁ、たった二人の男子だもんな! いざとなれば、俺が負ぶって保健室まで連れてってやればいいのだ。
そんなこんなで着替えを終え、授業が行われるグラウンドへ向かう。その道中に、いろいろなことを話した。
曰く、彼は大手のIS開発企業の社長子息なんだそうだ。あまり実家とはうまくいっていないのか、話す時の表情は暗かったが、彼は姉の話になると打って変わって饒舌になった。
ファーニール・デュノア。
デュノア社の正規テストパイロット兼、IS装備開発の技術者でもあり、『烈火の腕(インフェルノ・アーム)』及びその運用法(ホールドアーツ)の開発者。
彼女は飛び級によって数年早く義務教育課程修了させ、同時に大学に飛び入学、飛び級でさっさと首席卒業、という異色の経歴を持つ。(『この人物がすごい! 生けるIS偉人100選』より抜粋)
わかりやすく言えば、シャルルと同い年にも拘らず、大卒の社会人なのである。
これだけ聞けば、ただ頭がいいことを見せびらかしたいだけの高ビーお嬢様っぽいが、シャルルの話、といってももはや武勇伝に近いそれを聞く限り、彼女は豪放磊落で面倒見が良く、大企業の社長令嬢とは思えないほどに砕けた人だという印象を覚えた。
乗機は、彼女自らカスタマイズした専用機『ラファールリヴァイブ・カスタムⅠ』、ISのゲームではいわゆる「投げキャラ」(ISのゲームは2D格闘ではなく3Dハイスピードアクションなので、立ち回りがベリーハードでしばしばネタキャラの扱いを受ける)なのだが、欧州連合(EU)諸国屈指の実力の持ち主で、「二つ名」まで付いているそうな。
「でも、モンド・グロッソには出場履歴はないんだろ?」
「それがね、「オレは企業の所属だから、国家代表がどうこうって大会にゃ出られねーんだ」なんて変な意地張って予選にも参加しないんだよ」
オリンピックにプロのプレイヤーは参加できないのと同じだろうか?
だが、ISの開発は、国と企業ががっちりとスクラムを組んで、なおかつ癒着して行われている分野であるため、企業のテストパイロットが国家代表として出場することも少なくはない。
現に、シャルルがそうだ。
それを指摘したら、シャルルは少しばつが悪そうにした。
「鋭いね。でも僕の場合、書類上いったんテストパイロットを辞めてから国家代表候補に選出されたことになってるから、厳密には違反じゃないんだよ」
「汚いな大人、さすが大人汚い」
「それについては激しく同意するよ……」
シャルルがなんか煤けてしまった! いかん、これは地雷だったようだ……猛省。
もはやズンドコ(死語)まで落ちた彼のテンションを回復するべく奮闘している間に、本日の授業を行うアリーナについた。
始業時間ぎりぎりだったようで、いろいろと鈴とセシリアに小言を言われる。
――気を使ってくれたんだね。ありがとう。
といって別れ際に微笑んだシャルルが天使のように見えてくる…………止めろ俺! 俺はホモじゃないノンケなんだっ!!
……シャルルは男シャルルは男シャルルは男……よし、大丈夫だ。
・
・
・
HRのあと、千冬、真耶、ゼロの教師陣は急いでアリーナへ向かった。
「では、ゼロは私と先にアリーナに行って、今日つかうISを出しておきます。山田先生もくれぐれも遅れないようお願いします」
「はい!」
今日の授業でISを纏わない千冬や、ISスーツを着る必要のないゼロと違い、真耶は操縦実演のためにISスーツに着替える必要があり、途中で別れた。
アリーナへ行き、駐機状態にされていたISを専用のワゴンで運び出す。
ゼロも千冬も、程度は違えど常人と比べて怪力の持ち主なので、ISを纏わずにスムーズに作業を行うことができるようだ。
「……」
「……」
ゼロがワゴンに乗せ、千冬がアリーナまで押して行く……両者とも、あまり無駄口を叩かない性分である、ということも作業効率に拍車をかけたのだった。
「遅くなりましたー!……って、もう作業終わってますね」
故に、真耶がISを装着してやってくるころには、運び出しはすべて終わっていた。
「山田先生は、時間までウォーミングアップをしておいて下さい」
ISを運ぶという作業は結構な運動量にも拘らず息ひとつ乱していない千冬がそう指示を出した。
あとはISの調整だけであり、千冬一人でも十分事足りる。
「じゃあ、ゼロさんを借りていきますね」
「構いませんが……あまり本気になり過ぎないようにお願いします」
ウォーミングアップ代わりにゼロと戦うと言った真耶の目に、現役時代の鋭さを見た千冬が、渋々ながらも許可を出した。こうなった真耶は、なかなか頑固であるということを経験していたからであった。
「いいですよね? ゼロさん」
「……ああ」
チフユがいいというのなら、と言わんばかりに快諾し、ゼロは真紅のアーマーを纏い空へ上がった。
ゼロと真耶は千冬の邪魔にならないように十分距離を取り、向かい合う。
※
「ルールは、火器の使用禁止、相手を一秒間、一方的にロックできた方の勝ちです」
弾薬だって、タダではないんです。それに、使った分の弾薬がほぼ無条件に国から支給される代表候補生とは違って、IS学園で使った弾薬はIS学園、つまり日本国の国庫から支払われることになるので、血税を、ただの好奇心のために使うわけにはいかないのです。
あとは、もうすぐで生徒が来てしまうため、流れ弾など安全面の配慮もあります。
私の熱意が伝わったのか、ゼロさんは少し驚いた様子で了承してくれました。
何故、バトルジャンキーでもない私がこんな真似をしているのかといえば、ひとえにこの人への興味であると言える。
ゼロさんが採用試験の時に見せた、弾幕をすり抜ける奇妙な機動、あれの正体を見極めたかった。
弾幕をすり抜けるのもさることながら、あのあと私の乗機だったラファールの戦闘ログを解析したところ、あの瞬間だけ、ISの索敵からもロストしていたことが分かった。
人間が反応し辛い角度や速度で移動することによって、一瞬相手から消えたように見せる移動法は確かに存在する。『ブリュンヒルデ』や『紅蓮の豪腕』といった、近接武装を主軸に戦う操縦者の移動法がそれだ。
だが、ゼロさんの移動法はそれに当てはまらなかった。
ワンオフアビリティかとも思ったが、試験に使っていたIS〈玉鋼〉は訓練用の自己進化プログラムがロックされた機体で、そんなことはありえなかった。
となると、残りは装備か操縦技術かに限られてくる。
一瞬とはいえ、すべての攻撃と索敵を潜り抜ける装備や技術、そんなものが存在してしまえば、ISで良くも悪くも一変した世界がまた、変遷することになるだろう。
だから、見極めなければならない。
「ただ戦うのも退屈ですから、何か賭けますか。私が勝ったら……」
――シャドウダッシュの秘密、教えてくださいね。
「!?」
私はゼロさんの返事も待たずに戦闘を開始した。
・・・
・・・
甘かった。と言わざるを得なかった。
私の考えでは、ゼロさんの実直そうな性格を利用して、賭け事を押し付け本気にさせ、目的のシャドウダッシュを使わせることであった。見たところ、ゼロさんは空中戦を不得手としている(といっても、あくまで地上戦と比べてだが)ようで、あわよくば勝てると思っていた。
呼び出した五十一口径アサルトライフルの架空の射線が虚しく空を切る。そもそも、採用試験の時とはゼロさんの乗機が違い、それに伴い機動もかなり異なっていた。
空中の見えない足場を蹴って放物線を描くような動きをしたかと思えば、直線機動で素早く回避、という感じで一向に照準器にかすりもしない。私も一応負けてはいないので、ゼロさんからロックはされていないのだが、ゼロさんの得意分野は近接攻撃、射撃はあくまでサブウェポンでしかない。
織斑先生のいるところににほとんどの生徒が集合しているのを見て、タイムリミットが近づいていると感じた私は決めにかかろうと瞬時加速(イグニッション・ブースト)でゼロさんをすり抜けるように交錯し即座に反転、照準に捉えようとした。
しかしすでにそこにゼロさんはおらず、突如、ハイパーセンサーの警告音が被ロックを知らせる。
「ッ! 上!?」
ゼロさんは私の動きを読み、交錯した瞬間に上昇、太陽を背に私めがけて落下してきた。
一瞬、太陽光に目がくらんでゼロさんが見えなくなり、ハイパーセンサーから送られてくる視覚情報を頼りに銃口を向ける。お互いにロックされている状態では、タイムカウントは進まない。
ISの遮光機能が働き、見えるようになったかと思いきや、逆に暗すぎて見えなかった。
ゼロさんが間近まで迫り、太陽を覆い隠したからだ。
「……オレの事は、あまり詮索しないで欲しい……マヤやチフユに、危害を加えるつもりはない」
クロスレンジまで接近したゼロさんは私の持っていたライフルの銃口部分を掴んで、自分から逸らし、反対の手で持ったバスターショットを突き付けた。
ハイパーセンサーの隅に表示されていた『1000/msec(ミリセカンド)』という数字が見る間に減っていく。
「諦め……ません!」
私はゼロさんから距離を取ろうと、六時方向に瞬時加速した。
「!?」
「って、きゃあああああーー!! どいてくださいぃーーっ!!」
――ズドォオォオォォォォン。
いったい何をまかり間違ったのか、止まり切れずに生徒たちが集まっていた場所に墜落してしまった。
そのままゴロゴロと地表を回転して、止まる。
どうやら落下の際に生徒と抱き合うようにして巻き込んでしまったようで、胸と内太ももに違和感を感じる。
「……あのう、織斑くん?」
目を開けると――学園唯一の男子生徒だった!
織斑くんは、いったい何が起こったのかよくわかっていない、という表情で私の胸を鷲掴みにしていた。
「そ、そのですね。困ります……こんな場所で……いえ、場所だけではなくてですね……私と織斑くんは教師と生徒なわけでして……」
織斑くんはゆっくりと状況を理解し、逆に体を硬直させてしまった。
どうしたものかと考えつつ、さっきの試合の行方を確認する。
画面の表示は「0/msec」となっており、私が負けたことを示していた。
……勝たなきゃいけない戦いだったのになぁ。
私は一瞬、織斑くんのことを忘れて深くため息をついた。
「……ハッ!?」
固まっていた織斑くんが突如、出来合いのアスキーアートのような顔と声を出して私から飛び退き、直後、さっきまで織斑くんがいた空間を青色光が薙いだ。
発信元は、ブルーティアーズをまとい、額に青筋を浮かべたオルコットさん。
この間に、私はすべてを理解する。
そして、青春だなぁ、と思った。
織斑くんが退いてくれたので上体を起こし、追撃せんと投げられた鳳さんの双天牙月を撃ち落とす。
青春するのもいいですが、今は授業中ですよ?
※
俺は、山田先生の助けもあり、クラスメートと幼馴染の暴力から救われた。かに思えた。
――ガシッ!
「なぁ……織斑。放課後アリーナで模擬戦をしような……?」
肩を掴まれて後ろを向くと、山田がアルカイックスマイルでこちらを見t……ハルさん目が笑ってないよ!! むしろ「ゴゴゴゴゴゴ」って効果音とか暗黒オーラが出てそうだよ!!
そうだしまった。この人はシス(姉)コンだった。
「お、おう……」
い、行くとは言ってないし……呼びかけに対して返事をしただけだし(苦し紛れ)
「え? 一夏自主訓練するの? 私も混ぜなさいよ」
「わたくしも、自主訓練はやぶさかではなくてよ?」
セシリアと鈴に聞かれた……これは詰んだ。逃げられない。
俺は、女子三人にボコボコにされる未来を予測し、空を仰いで深くため息をついた。
「さて、小娘ども、いつまで油を売っている?」
魔王(マイグレートビッグシスター)の一喝で、授業に引き戻される。
確か、セシリアと鈴の模擬戦の相手が山田先生とかいう話だったな。
「今のうちに……そうだな。ちょうどいい。デュノア、山田先生が搭乗しているISの解説をしてみろ」
「あっ、はい」
・
・
・
模擬戦の結果を端的に説明するとこうだ。
鈴&セシ「元グリーンベレーの俺に勝てるもんか」
山T「試してみるか? 俺だって元コマンドーだ」
鈴&セシ「テメェなんか怖かぁねぇ!!、野郎ぉぉぉぶっ殺してやらぁぁぁ!!」
以下略
部隊名を「現代表候補生」「元代表候補生」に変えれば、大体こんな感じだった。
負けた原因のなすりあいを始めた鈴とセシリアの二人を千冬姉が黙らせ、授業は続いた。
山田Tとのラッキースケベに固まっていた時の一夏の心境
一夏(あぁ^^~ノンケになる~)
作「……やっぱりホモじゃないか」
じわ「ねつ造よくない(論破)」
ある日
セカン党の友人「一夏はホモ、はっきり分かんだね」
作「おっ、そうだな(便乗)」
セカン党の友人Y「だってそうだろ。シャルルが男だったときはあんなに構ってたのに、女バレした途端急にそっけなくなってやがる」
ISよりもISの作者が好きな友人I「そういえば、主人公がホモかEDのラノベってないな。面白そうなのに」
作「そうだな(共感)」
じわ「この会話に共感できた奴、お前は次に「そうだよ」という」
作「そうだよ(便乗)……ハッ!!」
(次回予告さんは度重なる嘘次回予告に、仕事のやりがいを感じられなくなったとのことでスト中です。あしからず)
では、じわまで気長にお待ちください