∞→0・ストラトス   作:なむさんばがらす

29 / 34
じわ「普通、四か月も投稿間隔の空いたSSを、私は読まない」

作「……すまぬ……すまぬ……」

じわ「免許合宿とか夏イベとか、積みゲー(AC3、WSG2、提督の決断Ⅳ)消化とか、実験報告書〆切は理由にならんぞ?」

作「……すまぬ……すまぬ……そして、じわまで気長に待ってくださった皆様、ありがとう」



前回までのあらすじ
IS学園に教育実習生として潜入したゼロは、独国での縁ラウラ・ボーデヴィッヒや、かつての敵ハルピュイアとの遭遇といったハプニングがありつつも、持ち前の天然を発揮しつつ、学園になじもうとしていた。そして、ゼロはとうとう――彼女と再会する。


一夏とゼロ/絶対零度の恋

真耶が、鈴とセシリアをのした後、代表候補生ごとに班分けをし、班毎に数機のISを使っての実習となった。

パッと見、ラウラ、一夏を除いた専用機持ち達はまともに指導できていた。

 

「ゼロ、済まないが織斑の様子を見てやってくれないか。私が行くと、依怙贔屓と取る生徒もいるだろうから」

 

「……あぁ。わかった」

 

ゼロが了承すると、千冬はラウラの班へ向かった。

 

 

ISのコクピットは、直立状態では人が乗れない高さにある。故に、搭乗者が降り、駐機状態にする際は必ずしゃがませなければならない。

 

……のだが。

 

「あっ、箒! 立ったままISから降りるなよ!」

 

また俺が、女子を抱えて飛ばないといけないじゃないか。

 

そんな俺の悲痛な叫びも、箒はそっぽを向いて封殺した。解せぬ。

 

/

 

「……どうした?」

 

そんな一夏のところにゼロが現れた。

さっきの『薄着の女子を持ってコクピットの高さまで運べ』という山田先生の、思春期男子への配慮など微塵もないアドバイスとは違った解決策を提示してくれることを一夏はゼロに願った。

 

「それが、ISを立たせたまま降りちゃったみたいで……」

 

ゼロは、少し考える。

指導要領には、先ほど真耶が言ったようなアドバイスが記されていたのだが、時間も押しているため、居残り生が出てしまうかもしれなかった。

 

「……ふむ。ISをしゃがませればいい……か」

 

「え? 一体どうやっ……」

 

一夏が言い切る前に、ゼロが地を蹴った。

ゼロはそのまま空中で体を半回転し、直立状態のISのコクピットに搭乗した。

かしゅー、とコクピットのサスペンションから空気が抜け切らない内に、ゼロはISをしゃがませて降機した。

 

「……これでいいか?」

 

「えっ……あっ、はい。ありがとうございます」

 

「……このまま全員が実習できないと、放課後に居残りになる。急げ」

 

それだけ言って、ゼロは一夏達のところから離れていった。

 

/

 

あれは一体なんだったのだろう。

 

あの後、『このままだと居残り』という言葉を聞いて本気になった女子たちのおかげで何とか授業時間内に全員の実習が終わった。

 

あの時は、ただすごいなぁ、としか思わなかったが、よくよく考えるとゼロ先生がいかに常識はずれな動きをしていたかがわかってきた。

 

飛び乗るって何だよ!? ISはヨッシーか何かじゃないんだぞ?

 

ゼロ先生の略歴を調べても、特に当たり障りのない物(キューバとか南米系の工学部卒)だったし、公式の大会への出場経験がない彼女は、搭乗時間等のISに関するデータの一切がない。

セシリアや鈴に聞いても何も知らないみたいだった。

 

彼女ほどの身体能力と、教師になれるレベルのIS操縦技術があれば、絶対にどこかの国が粉をかけているはずなのだ。

 

今でこそ「篠ノ之」姓のおかげでうかつに手を出す勢力はいないが、その姓も最近になって改姓したものだという。

 

経緯と実力がちぐはぐ過ぎるのだ。まるで、経歴があとから都合よくでっち上げられたかのように……

 

ま、でもあの千冬姉があれだけ信頼しているのであれば、多少経歴がブラックでも俺は気にしないんだけどね。

 

そんなことを考えながら、俺は皆と昼ご飯を食べ、午後を過ごした。

 

 

 

…………同日

 

もう、春も過ぎ、初夏の日差しが屋外演習場を焦がす。

 

 

必要以上に砂埃が飛ばないように水が捲かれていたが、この日差しではそう遠くないうちに無駄になりそうであった。

暑くてあまり人気のない屋外の演習場には、数組の生徒たちがISに搭乗しての自習を行っていたが、みな一様に汗濡れていた。

 

……ある二人を除いては。

 

「さぁ先生。お手柔らかにお願い致します」

 

「……あぁ、よろしく頼む」

 

対峙する真紅と群青、ゼロとレヴィアであった。

 

レヴィアは狂笑に歪みそうになる顔を必死に抑えていた。

 

――なぜなら、そんな笑い方をしたら一発で正体がばれるのだ。というのも、初対面で全く気付かれなかったからである。

 

…………

 

彼は名簿を見、そしてこちらを見た。

 

「最初の演習相手は……レヴィア・オルコット……さん、で間違いはないか?」

 

「ゼロ! 会いたかったわ!!」

 

こちらの世界に来てから幾星霜、待ち望んでいた相手にやっと会えた私は、人目もはばからずに彼に抱きついてしまった。

 

半ばタックルじみた抱擁にも全く動じないバランス感覚と、腰に回した手から人間にはないある種の『硬さ』が感じられて、本物の『彼』なのだということを実感する。

 

「……」

 

真偽の確認が済んだところで、顔を上げ、彼の表情を見る。

 

きっと驚いているだろう。

死んだと思っていたレプリロイドが人間になっていたのだから。

 

「……名前で呼ぶのは構わないが、初対面の相手にいささか友好的過ぎではないか?」

 

だが、彼の表情は困惑が占めていた。

 

……

 

向こうの世界では、お互いに命のやり取りをした間柄であったとしても、ゼロがレヴィアタンに気付かないのは、無理からぬことであった。

 

表情や、身に纏う雰囲気が違い過ぎるのだ。

かつて、ゼロと刃を交えていたときの彼女は、絶対強者に挑む勇者の様な勇猛さと、刹那の命の輝きに魅入られてしまった狂戦士の様な危うさを秘めた笑みを絶やさず、彼に強烈な印象を与えた。

 

だが今のレヴィアは、四天王(ゼロの宿敵)ではなく一人の人間としてこの世界におり、あのころとはまた違った心境でゼロ打倒を目指している。それが彼女の表情、雰囲気を変えてしまっていた。

 

「ごめんなさい。初対面の方にいささか無礼が過ぎました……以後気を付けます」

 

てへぺろ、を上品さで五倍希釈したような表情とセリフで、レヴィアはとっさに誤魔化した。

ゼロが自分に気付かなかった訳にすぐに思い至った彼女はすぐにでも正体を明かすことはできた。が、そうはしなかった。

 

――その方が面白そうだったからだ。

 

彼女は無自覚に笑う。

 

「……?」

 

その笑みに妙な既視感を覚えたゼロであったが、他人の空似だろうと自己解決し、本来の目的である模擬戦演習に臨む。

 

…………

そして、冒頭に戻る。

 

「はぁっ!!」

 

開始早々、『瞬時加速(イグニッションブースト)』で突撃し、エネルギー刃を持った槍で突く。

 

「やっ!! やっ!! やぁっ!!」

 

初撃が躱されるのは読んでいたため、そのまま連続で突き、突き、薙ぎの連撃を放つ。

 

ゼロはゼットセイバーとリコイルロッドでその連撃を難なく受け流し、エネルギー兵器同士が干渉しあう特殊な雑音を奏でる。

ゼロの、あちらの世界とまったく変わらない身のこなしを見て、レヴィアの歓喜はさらに高まる。

 

だが得物のリーチの差もあり、ゼロは反撃に移ることができない。

このままでもいい演習にはなるのだが、臨機応変な戦いを身に着けるには不向きであり、ゼロは「なるべく様々な戦い方を経験させてあげてくださいね」と真耶に注意をを受けていた。

 

「……ふむ」

 

故に、ゼロはバスターショットのチャージ攻撃でレヴィアをけん制し、距離を取って仕切り直した。

そして、ゼットセイバーとリコイルロッドを消し、武器を変更する。

 

「武器を合わせてくれるのかしら? 舐められたものね!」

 

穂先の光る槍-トリプルロッドを持ったゼロを見て、レヴィアは苛立った。

彼女はゼロのもっとも得意とする武器がゼットセイバーであること。また、サブウエポンであるバスターと合わせた二つの武装は、いつの戦いでもゼロが使っていたことを覚えていた。

 

槍のデザインと穂先を包む緑光が、彼の武器であることを表していることは明白なのだが、槍を使っているところなどあまり見たことがない。

きっと、先ほどの光るトンファーのような武装と同じく、あちらの世界でもごく短い期間しか使用されなかった武装だろうと辺りをつけた。

 

「……行くぞ」

 

今度はゼロがレヴィアに肉薄し、光槍を振るった。

速いだけの突き、この学園の平均的な二年生ならばなんなく対処できるであろうレベルであり、レヴィアにとっては舐められているようにしか感じられなかった。

 

「……つまらないわ」

 

「……!?」

 

故に、レヴィアは自身の槍の穂先を彼のものとかち合わせ、外側から内側にらせんを描くように回転させて、ゼロの突きを逸らしながらカウンター気味に反撃した。

 

ゼロは反射的に、突き出された穂先を体を捻って回避し、その勢いで回転、槍の石突部分で打突した。

 

レヴィアは後ろに跳躍し、回避……できなかった。

 

ゼロの光槍が伸び、石突が彼女の腹を打った。

スキンバリアによって緩和されはしたものの、鈍痛が彼女の鳩尾辺りに残る。

 

「へぇ、その槍伸びるのね」

 

痛みを抑えて起き上がったレヴィアが、ガシンガシンと音を立てて折り畳み傘のように三段階に折り畳まって行くゼロの槍を見ながら呟いた。

そして、ゼロに見られないようにうつむき加減に狂笑(わら)う。

 

――『近似零度(ニア・アブソリュート・ゼロ)』、起動。

 

空気中の水分が凝結、凝固し、レヴィアのIS『蒼海の海神(リヴァイアサン)』にドレスのような意匠を纏わせる。

 

「……!」

 

ゼロは何か得体のしれないスキルを発動したレヴィアを警戒し、油断なくトリプルロッドを構えた。

 

レヴィアの背後から、赤く光る球のような非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)が二基展開され、彼女のISの能力によって氷の造形を纏っていく。

 

――さぁ、行きなさい。

 

赤い球体は二匹の龍と化し、氷同士が擦れ合う怪音を鳴き声にしてゼロに襲い掛かった。

 

「……この技は……?」

 

見たことがある。とゼロは既視感を覚えた。

迫る龍の顎撃を躱し、すれ違いざまにロッドから持ち替えたセイバーで三段斬りを叩きこむと、龍を形作っていた氷が砕け、ゼロの足元に散らばった。核となっていた球は、そのまま量子化して消えてしまった。

 

「見覚えがあるでしょ?」

 

――でも、ここからは違う。

 

レヴィアは、氷の龍の後ろから、槍を構えて突っ込んで来ていた。

 

「……!?」

 

意表を突かれたが、何の変哲もない突撃に、ゼロが対応できぬはずがない。

ゼロは、氷の龍の時と同じように避けようとして……。

 

「無駄よ。私の氷があなたを捕えているもの」

 

膝から下が、散らばった氷と地面にしみ込んだ水が凍り付いて動かなくなっていることに気付いた。

眼前には、もはや隠しきれなくなった狂笑を満たす彼女がいた。

その瞬間、ゼロは、彼女の正体を理解した。

 

 

 

 

 

「…………済まない。レヴィアタン」

 

同時に、膝を始点に上体を水平になるまで倒し、腹部を狙っていたレヴィアの突撃を回避した。

 

二人の視線が交錯する。

 

ゼロはすれ違いざま、レヴィアの槍を掴む(・・)。逆の手には、チャージ済みのリコイルロッド。

 

「……まだ、お前に壊される訳にはいかない」

 

――ォオン!!

 

光刃が空を裂きレヴィアを貫かんとする。たちまち絶対防御が発動し人体にかかるダメージを殺し、そうしきれなかった運動エネルギーに従って飛ばされた。

 

「かはっ……」

 

レヴィアは地面を数回バウンドし、蹲るように着地した。

腹部に受けた衝撃によって肺の空気が追い出され、一時的な酸欠状態になる。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

朦朧とする彼女の意識の中で、一つだけはっきりしていることがあった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

――楽しい。

 

「はぁ……」

 

――楽しい楽しい。

 

「は……はは」

 

――楽しい楽しい楽しい!!!!!!

 

「あははははっ!!! 楽しいわ、ゼロ! やっぱり貴方はこうでなくちゃ!」

 

エネルギーは残りわずか。愛槍もゼロナックルによって奪われてしまった。

しかし、立ち上がった彼女の表情は狂喜が占めて――この瞬間、彼女は自分が人間であることを忘れた。

 

――スキンバリア、絶対防御、強制終了。全アラート停止。

 

――――『近似零度(ニア・アブソリュート・ゼロ)』、超過駆動(オーバードライブ)。

 

彼女の両腕を氷が覆い、二振りの騎槍に変化するや否や、ゼロに向かって吶喊した。

 

「……!?」

 

一切の隙のない怒涛の連撃に、ゼロはたじろぐ。

生身を避けて武器破壊を狙おうにも、コンマ一秒もしないうちに元通りになってしまうため、防戦一方となった。

対するレヴィアは、人の身でありながら、レプリロイドの時と同等以上の速さと気迫で持ってゼロを追い詰めていた。

 

だが、彼女とてもはや人の身、先ほどまで酸欠状態だったところにこの運動量、徐々に動きが鈍くなってゆく。

 

「……!」

 

優勢を取り戻したゼロが、『リヴァイアサン』の腕部装甲を切り、マニュピレータの機能を停止させた。そして露わになった両腕を見て、ゼロは驚愕する。

 

「……お前、その腕……」

 

防御に使うはずのエネルギーをすべて氷槍の維持に使っており、冷気で指先が赤黒く変色してしまっていた。

 

「あははっ! 貴方を倒せるなら、腕の一本や二本、どうってことないわ!」

 

「……『人間』が、自分の体を粗末に扱うな」

 

勝負はついた。とばかりに武装を量子化するゼロに、レヴィアは先ほどの狂喜とは打って変わって猛烈な怒りがこみ上げた。

 

「そうやって、貴方はまた……私をっ!!」

 

レヴィアは怒りにまかせて氷槍を作成、すでに感覚のなくなって久しい腕に氷漬けにして固定、ゼロに突きかかった。

 

「……『人間』を守るレプリロイドだった奴が、自分(人間)を蔑ろにしてどうする!!」

 

突きかかられたゼロはノーガード。氷槍は胸部アーマーに当たり、貫けずに砕け散った。

ISのパワーアシストなしでは、急造の氷槍はもはや、氷の塊でしかなかった。

 

ゼロはレヴィアに肉薄、鳩尾を軽く殴って昏倒させ、崩れ落ちる彼女の体を抱きかかえる。

そして、未だ交戦の意思からか、弱くもがく彼女に耳打ちした。

 

 

 

「……あの時から、お前がオレを恨んでいるのはわかっていた」

 

――レヴィアタンの武人としてのプライドを、くだらない感傷で踏みにじったのは俺だ。

 

「だから……もし、あの世界でオレが必要でなくなったときは……お前に壊されるのも悪くないと思っていた」

 

――だが、もうお前はあの頃のお前ではない。『俺を倒す』などというつまらない理由で命を懸ける必要もない。

 

「……少し、熱くなり過ぎだ。レヴィアタン」

 

 

 

ゼロが話を終え、レヴィアの意識は初夏の日差しに熱せられたゼロの無機質な温もりを感じながら薄れていった。




少し、うれしすぎて目的を忘れるレヴィアたんくぁわいい。(独断と偏見、作者はヤンデレが好き、はっきりわかんだね)

そして、あっちの世界での彼女の歪んだ愛情は伝わっていなかった模様。

……なんか、文体が崩れて冗長になっている感が否めないなぁ……要反省。
もしかしたら改稿するかもしれませぬ。

次回「ラウラが斬る(斬るとは言ってない)」

では、じわまで気長にお待ちください
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。