∞→0・ストラトス   作:なむさんばがらす

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良く考えたら、自分ISはアニメしか見たことありませんでした。

※サブタイ入れ忘れたので入れました。


舌戦

無表情のまま電話機を見つめるゼロを見、束は言う。

 

「それにしても平和……ねぇ? 世界が平和であったことなんて果たしてあるのかな?」

 

「少なくとも、レジスタンスの仲間は平和のために戦っていた。自分達が無実の罪で虐殺されない。そんな世界を目指して」

 

「その言い草だと、君は平和を望んでいなかったように聞こえるけど?」

 

「そういうわけではないが、オレはどちらかというとレジスタンスの仲間のために戦っていたに過ぎん、オレは戦うことしかできなかったからな」

 

―――私たちにとって、あなたはもうゼロ(救世主)なの

 

組織の存亡をかけてゼロの封印を解きに向かった彼女の声がゼロの脳裏にフラッシュバックする。

 

それは、記憶をなくし、自らの存在意義もあやふやだった彼を救った。

 

ゼロが彼女らにとっての救世主であったように、彼女もまた、ゼロにとっての救世主となりえた。

 

「ふぅん。だから『平和を知れ』なのかな」

 

戦う以外にも、生きる道がある。ということを伝えたかったのだろうか、と束は勘繰った。

 

「オレには……わからない。一体何を思ってクロワールがオレなんかを助けたのか」

 

自分なぞ、助けたところで何かの役に立つとは思えない。ましてや、ヘイワな世界なのだとしたら、戦うことしか出来ない自分の存在価値など無いに等しい。

 

と、ゼロが心底不思議そうな表情をし、束はそれを鼻で笑った。

 

「自分を庇って死んでくれた相手に対して、「何故助けた?」なんて考えるんじゃあないよ。レプリロイド(人間と同じように考え、行動するロボット)が聞いて呆れる」

 

……大切だから

 

……自分の命よりも、君の命のほうが大切だと想われた(・・・・)から

 

理由なんて、それしか考えられない。

 

それで十分だ。

 

「……」

 

それを、このレプリロイドは『解せぬ』という。

 

あまりにも彼女が報われなさ過ぎる。

戦うことしか出来ない? ならば、壊れるまで戦わせてやろう。それこそ馬車馬のように、

ちょうど、戦力が欲しかったところだ。

 

束の心情を一言で表すなら「鈍感主人公もげろ」だった。

 

「じゃあ取引をしよう。束さんは、君にどうしたら『平和』を教えられるのか考えるから、君はその間に束さんの指示の元に平和維持活動(PKO)をして欲しいんだ。どう?対等でしょ」

 

「……取引か」

 

ゼロは、束が先ほど、『世界が平和であったことなど無い』といっておきながら平和『維持』活動といってのけたたあたりにいぶかしげな表情をしたが、束は別の意味に取ったのか、おどけたように付け加える。

 

「それとも『正義の味方の英雄様、どうかか弱い私の力になってくださいまし~』って一方的に依存される方が好みなのかな?」

 

「………………オレは、セイギの味方でもなければ、自分をエイユウと名乗った覚えもない」

 

癇に障ったのか、ゼロは束を睨んだ後、すぐに目を逸らし、

……対等な関係であるに越したことは無い。と付け加えた。

 

そのとき彼の脳裏に浮かんでいたのは、歪んだ理想郷(ネオ・アルカディア)のことだった。

 

エックスというエイユウに頼りすぎた人間は、いつしか考えることをやめてしまった。

 

……考える必要が無かったから、

 

……エイユウ様が考えて、決めてくださるから

 

……自分達は従うだけでいい。

 

そういった考えなしの信頼がエックスを追い詰め、次代のコピーエックスまでも歪ませた。

 

ゼロの考えをよそに、束は喜んだ。

 

 

「取引成立だね♪ 私と君は対等だ♪」

 

「ああ」

 

「じゃあ、さっそく君のスペックを見せてもらおうか? あ、もちろんカタログスペックはもう知ってるよ。見たいのは、君の戦闘技能、自分の体をどこまで使いこなしてるかってこと」

 

そういって束は無人島地下に作られただだっ広い試験場へとゼロを案内し、自らは観察用の強化ガラスの張ってある部屋に引きこもった。

 

「3Dシミュレータなんて用意してないから実機でいくね?」

 

つまり、当たり所が悪いと死ぬ、ということだ。

 

まあいい、実戦には慣れている。とゼロが答えると、目の前に異形が現れた。

 

「束さんの開発した無人IS『ゴーレムⅠ型』だよ。機動力は大したことないけど、ビームとラリアットが強いから気を付けてね。じゃあ、試合開始!!」

 

 

―――同時に、紅い影が疾駆した。

 

 

 

・観察室

 

試験場のいろいろな箇所に設置されたカメラが、ゼロとゴーレム達の死闘を映し出す。

 

「この動き……予想以上に高性能だ。モーションデータ取ったらISに転用できるかも」

 

 

 

『タバネ、あまりゼロをいじめないでやってくれ、彼は本当に戦うことしか知らないんだから―――』

 

エックスは着信音も鳴らさずに、電話から直接束に話しかけた。

ゼロにはあまり聞かれたくない話をするためである。

 

 人間の性格や行動原理というものは、遺伝的な要素もあるが、大部分はその人の育った環境に起因する。

その点はレプリロイドも例外ではない。

 

エックスはゼロの隠された生い立ちを話し始めた。

 

誕生の理由は、子供のけんかのような対抗心から。

ドクターライトの作った「Ⅹ」という世界最高のロボット、「悩む」ことを可能とし、人間のように考え、行動するロボット。

自ら考えることによって、禁止されているはずの人間への攻撃まで可能に出来るという、良くも悪くも「未知の可能性」に満ちていた。

 

そんな彼に対抗すべくドクターワイリー最後の作として作られたのが「ゼロ」だ。

性能は、「Ⅹ」を破壊しうる戦闘能力と凶暴性を持ち、そこに人間味は存在しなかった。

 

しかし、「Ⅹ」は完成直後に、開発者であるライト本人の手によってお蔵入りとなる。

(実際は未来に「Ⅹ」を託すために来るべき時まで封印した。というのが正しい)

ワイリーもそれがわかったのか、Ⅹの目覚めまで「ゼロ」を封印した。

 

そして時は流れ、「Ⅹ」はとある研究者の手によって発見され、目覚めることになる。

「Ⅹ」に使われていた技術を基にしたレプリロイドは世界中に広まった。

 

そして「ゼロ」も目覚めた。

当時の警察機構によって鎮圧された彼は、そのときの損傷で性格が反転、今のゼロの元の人格が誕生する。

 

ゼロ自体相当優秀なレプリロイドであったので、当時の警察機構は、凶暴ではなくなった彼を喜んで迎え入れた。

 

その警察機構には目覚めた「Ⅹ」が下っ端として所属していた。

 

 

「なんで技術の大元のエックス君が下っ端やってるの?」

 

『その辺は僕にもわからない。目覚めたときのことはあんまり覚えていなかったからね。僕を目覚めさせてくれた博士のみぞ知るという感じかな』

 

 

ゼロはエックスと共に、さまざまな戦いを経験する。

 

レプリロイドの凶暴化事件、ゼロは尊敬していた上司と同僚を失った。

……

レプリロイドの反乱、ゼロは愛する人と、その兄である戦友を失った。地上には人が住めなくなった。

……

レプリロイドの幻覚による錯乱事件、ゼロは、今までの事件の大元にすべて自分の出自がカかわっていることを知る

 

戦いは長く続き……

そして、彼は眠りに就く。

己に巣食う凶暴化ウィルスを取り除くために。

 

 

「寝てる間に、バイルとかいうのにボディを盗られた。と」

 

『そういうことになるね』

 

「それで?ウィルスは除去できたのかな?」

 

『彼の悲しい記憶と一緒にね』

 

そう、ゼロはシエルたちに起こされたときには、ほとんどの記憶に障害が発生していた。

具体的には、自分の正体、前述の愛した人とその兄、同僚、上司、などの記憶がなくなっていた。

エックスは「戦争を戦い抜いた相棒」という認識で、何と戦ったのか、誰と戦ったのかは詳しく覚えていなかった。

 

それらは、断片的に思い出されることはあっても、終ぞ完全に戻ることはなかった。

 

―――うぅ、思いだせん

 

エックスがここまで弱気な彼の声を聞いたのはあれが初めてだった。

 

「そこから、ゼロ君はレジスタンスのシエルとかいう指揮官の言われるがままに破壊活動を繰り返して、あまつさえ当時の最高指導者(コピーエックス)まで暗殺したってわけだ」

 

束は皮肉交じりに言い、こう思う。

 

やっぱりゼロはそこらの機械と同じように使い潰されただけではないか。

今、ゼロを失ったシエルは何を思っているのだろうか?

便利な道具がなくなって困っている?

それとも、捨てる手間が省けた、と万歳三唱でもしているのだろうか?

 

『君は、どうしてもシエルを悪者にしたいようだね。でも、コピーにも悪いところはあった。ネオアルカディアに引きこもった人たちにもね』

 

「……」

 

エックスが苦笑混じりに言う。束はこの嫌悪感に心当たりがあった。

 

同属嫌悪だ。

 

 

レジスタンスは己の命を守るため、

対する束は己の発明を認めてもらうため、

 

……武力に訴えた。

 

動機も規模も、圧倒的に束の方がしょぼい。

 

そこにも束はいらだった。

 

『だから、ゼロは本当に戦うことしか知らない。彼が熟知しているのは、どうやって剣を振るい、どうやって銃を撃ち、どうやって攻撃をかいくぐって敵を倒すかだけだ』

 

エックスが苦笑をやめ、真剣な声で言った。

 

悲しみを捨て、悩むことすらも拒絶したゼロ。

それを聞けば、束は「機械に戻っただけじゃん」と思うだろう。

だがエックスは、うじうじ悩み続けた自分などよりも、「悩まない」と決断できたゼロの方がはるかに人間らしいと思っていた。

エックスも、シエルやクロワールと同じく、ゼロに平和を知ってほしいと願う一人なのだ。

 

「……わかったよ。ゼロ君を便利な道具扱いするのはやめる。でも、修理代と、当面の生活費分は働いてもらうよ。こっちも慈善事業じゃないからね」

 

エックスの懇願に妥協案を提示するにいたった束

 

『ははは、それぐらいなら大丈夫か。ゼロも、このまま体をなまらせるつもりもないみたいだし……』

 

―――バゴン!!

 

黒い巨体が、強化ガラスに外側から叩きつけられ、ガラスにひびが入った。

 

束自慢のゴーレムⅠ型の成れの果てである。

それを見た束はピュウと口笛を吹くと、ゼロに呼びかけた。

 

「さすが、伝説のエイユウは伊達じゃないね。第二ラウンドと行こうか」

 

―――戦乙女と英雄、一体全体どっちが強いのかな?

 

束は、面白いおもちゃを見つけた子供のように笑い、手元にあったパネルを操作した。




次回は戦闘シーンです。
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