∞→0・ストラトス   作:なむさんばがらす

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なんかランキングに乗ってて大いにびびった私が反射的に書いてしまったじわです。


紅蓮に燃える

伏線編~アフターファーブニル~

 

病室の中には、数多くの人間が右往左往していた。

 

その中心には、まだ年端も行かぬ少女。

彼女の赤みがかった茶髪は汗濡れ、乱れていた。

 

彼女は、病に犯されていた。

始めは何てことない風邪だったのだが、いつの間にか肺炎を起こすほど深刻化していた。

 

少女が咳き込み、何度目かの血の混じった痰を吐く。

 

 

病室の外では、医者から、今夜が山だと言われていた少女の母親が、祈るように病室を見る。

娘の一大事だというのに、父親は来ていなかった。連絡がつかないのである。

 

これは後に判明することなのだが、父親は、愛人とその不貞の子供のところに行っていたようだった。

父親は、紳士らしく、一人の女性と会っている最中に別の女性からの連絡を確認することはしなかった。

……浮気が仏国紳士の嗜みかと問われれば、はなはだ疑問ではあるが。

 

 

話は病室へと戻る。

 

少女はがんばった。

だが、無常にも彼女の心臓の拍動は弱まり、停止した。

 

数日後

 

結局、医師達の努力により少女の心臓は再び動き出し、なんとか一命を取り留めることが出来た。

 

だが、少女は肺炎による長期間の酸欠状態の後遺症か、記憶を失ってしまったようだった。

 

少女はベッドから起き上がるなり自分の手をまじまじと見つめ、顔を触り、ひとしきり驚いたあと「俺は一体どうしちまったんだ?」とつぶやいたからである。

 

 

そして時は過ぎ、ファーニールと名付けられていたその少女も愛人の子も、いい年頃の娘となったころ。

 

その愛人が流行り病で亡くなったということで、いく当てのなかったその娘が父親を頼ってファーニールの住む家(の別邸)に引き取られたのだが、

 

――この! 泥棒猫の娘が!!

 

開口一番、ファー二ールの母親はそういって彼女の頬を張ろうとした。

 

「おいおいお袋、叩く相手が違うだろ」

 

だが、その手は、寸でのところで第三者によって止められていた。

この昼ドラのような愛憎劇に待ったをかけたのは、ファーニールその人だった。

いくら注意しても直らなかった男言葉は、記憶障害の一種として、医師もさじを投げていた。

 

「離しなさい! あの女さえいなければ、あなただって……」

 

「……俺のことでお袋がどう思ってんのかはしらねーが、お袋が殴っていいのは、その浮気相手本人か、今もその辺で女漁ってる親父だけだ。こいつが殴られる謂れはねぇ」

 

正論だったが、それだけに溜飲の下がらない母親を見かねて、ファーニールは少女に話しかけた。

 

「お袋が迷惑かけたようでわりーな、俺はファーニール。たしか……シャルロットとか言ったか? なにか用があるのかはわからねーが、今日はもう別邸に戻った方がいいぞ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

「見たところ同い年ぐらいだろ? 同い年に敬語使われるとなんかムズムズするからやめようぜ?」

 

「うん、わかった」

 

シャルロットはニコリと笑い、本邸を後にした。

 

・・

数月後

 

シャルロットは、毎週彼女の住む別邸に遊びに来る腹違いの姉をとても楽しみにしていた。

 

デュノア社の公式テストパイロットをしている姉は、いつも週末をこの別邸で過ごしている。

そのときは大抵、姉の仕事の愚痴や、新装備の調子など、ガールズトークとは程遠いが、他愛ないおしゃべりをするだけだったが、普段家で一人のシャルロットにとってはうれしかった。

 

だが、今日はいつもと違っていた。

 

「シャルロット、命令だ。男装して日本へ行け」

 

来たのは姉ではなく、父。

父とその部下達は、有無を言わせずシャルロットを拘束、デュノア社の極秘施設で男としての立ち居振る舞いを叩き込んだ。

 

これに、ファーニールは激怒しないわけがなかった。

 

「よぉ、親父。こりゃ一体どういうつもりだ? 一応、言い訳は聞いといてやる」

 

めちゃくちゃに荒らされたデュノア社社長室の中で、一枚の書類を手に、ファーニールは父親に詰め寄った。

 

「お前こそどういうつもりだ? ファーニール。一介のテストパイロットごときが社長室に無理矢理侵入し、あまつさえこんなにめちゃくちゃにしおって……育ててやった恩を忘れたのか?」

 

「あぁ、恩なんか感じてねーな、俺を育ててくれたのはお袋だけだ。親父は金を出してくれたかも知れねーが、そんなもん、俺が開発した全距離対応型兵装の特許料でどうとでもなるはずだぜ……もう一度聞く、この書類は、どういうつもりだ?」

 

ファーニールとして生まれ変わったファーブニルは、シャルロットに暴力こそ振るおうとしたものの、自分の母親のことは嫌いではなかった。

妬みやひがみといった人間としての感情にあふれている彼女は、ネオ・アルカディアに住んでいたどの人間よりも、はるかに生き生きとファーブニルの目に写ったからである。

 

ネオ・アルカディアの人間は、何不自由ない生活のなかで、惰性、怠惰が染み付いてしまい、濁ったうつろな目をして、刹那的な快楽に興じるのみであった。

 

「IS学園に男として入学させたのだ。オリムライチカの情報を盗み取るためにな」

 

だからこそファーブニルは、ネオアルカディアの人間と同じ怠惰の目をして自分をにらむ父親を許すことは出来なかった。

 

「バイルといい親父といい……人間ってのは、力(権力)を持つとホントろくなことしねーな……企業努力を怠った結果を、実の娘に尻拭いさせてんじゃねーよ。このくそ親父!!」

 

苛立ちのあまり、社長室の豪奢な机を蹴り飛ばしたファーニール。何事かと、社長室のドアの向こうに人が集まりだす。

 

「っち。時間切れか、じゃあなくそ親父! わりーがこの『ラファールリヴァイブカスタムⅠ』は俺様が死ぬまで借りさせてもらうぜ!!」

 

そういって、ファーニールは社長室の壁を抉り、外に飛び出した。

既に通報を受けていたのか、パトカーはもちろん、軍用ヘリや軍用ISに包囲されていた。

 

「はっ!! 上等だぜ……少しは楽しませろよ! お前ら!!」

 

生前、ゼロほどではないが、ファーブニルもかなりの年月を戦いに費やしていたため、数の不利など、むしろ「誤射がなくていいじゃねーか」と不利のうちにも入らなかった。

 

この一方的な戦いは、面目丸つぶれの軍部と、デュノア社の手によってもみ消されることになり、ファーニールの存在は公式に行方不明とされ、それを知ったシャルロットの心にしこりを残すことになるのだが、それは、今語られるべきことではない。




本当なら、本編と一緒にして抱き合わせ商法的に投稿しようとしていたアフターファーブニルですが、長くなってしまったかつ、本編の執筆がカメなので先にこちらだけ投稿しました。

次回予告は、前回と同じです。ごめんなさい。

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