「……………フッ」
「「…………………」」
ルクスの真下で少女が笑った。
鮮やかな金髪に、勝ち気な赤い瞳が印象的な少女。か細い体躯とは裏腹に、ある種の老成した笑みがその口元に浮かんでいる。色白の滑らかな肌は、入浴のせいで上気し、頬まで赤く染まっていた。
まぁ、簡単に言えば可愛い。この一言に尽きる。
「……おい変態共。死ぬ前に何か言うことはないか?」
引きつった愛らしい顔から物騒な言葉が飛んでくる。
まぁ怒るのも無理はないと思う。こういう状況なのだから…。
『……おいルクス、お前何とかしろ』
『えぇ!?そんな丸投げしないでよ』
『この場合一番非があるのはお前だろ!?俺は悪くない!!』
『グレンだって一緒に落ちたんじゃん!!』
そんな事を言い争いながらもとにかく謝ることを優先することにした。
「「……えっと…ごめんなさい?」」
「そうか…なら、さっさと上から降りろこの痴れ者があああぁぁぁぁぁぁぁッ!!後、なんで謝り方が疑問系なんだあああぁぁぁッ!!」
怒声を上げてきた。
「本当すいませんでしたああぁぁぁッ!!」
「ご、ごめんなさぁぁぁい!!」
少女が怒声を上げたと同時に全力で謝り、ルクスとグレンは一緒に大浴場の女湯を駆ける。
「「「「キャアアアァァァアッッ!」」」」
それと同時にあらゆる方向から少女達の悲鳴が聞こえ、風呂桶、椅子、石鹸など様々な物を投げつけてきた。
ルクスとグレンは洗い場の方へ撤退する。
「あっ…そうだ!!荷物の中身は…」
ルクスは荷物の中身が無事かどうかを確認するために荷物を開いた。
すると…。
その荷物から女物の下着がひらひらと出てきた。
「ルクス……お前バカなの?何火に油どころか火薬ぶち込んでんの?」
「えっ?あっ…いや、これは違う。この持ち主はまた別の人で…」
ルクスが慌てて弁解をするが、
「キャアアァァッ!!下着ドロ!!覗きの上に下着ドロだわっ!!」
「衛兵を、誰か衛兵を早く呼んでッ!!」
「剣を持ってきて、今なら正当防衛が成立するわ!!」
覗きの上に下着ドロの烙印まで押されてしまった。
「クッソ……逃げるぞルクス!!このままじゃゼッテー殺される!!とにかく今はどこが安全な場所に避難だ!!」
「わ、分かった…」
ルクスとグレンは大慌てで広い廊下をかけて行った。
「しっかし広いな〜周りの装飾も凄い綺麗だし、それにしても…何で女子校なんだっけか?確か…今の会長がどうのこうのって…」
ルクスたちが追いかけられる少し前…リヒトは浴場近くの廊下を歩いていた。
「あら……もしかしてあなたがリーシャ様の弟?」
その時、誰かに話しかけられその方向を振り向いたリヒトは………思わず息を呑んだ。
すらりとした細身の身体と、端正な顔立ちに、冷たい瞳。まるで完璧な美術品のように、少女は緊張も緩みも見せずリヒトの前に立っている。
姉のリーシャを可愛いと表すのなら、目の前の彼女は綺麗という言葉が言い表せた。
「あ……そ、そう!!俺の名はリヒト…リヒト・アティスマータっていうんだ!!」
「初めまして、私はユミル教国から来たクルルシファー・エインフォルクというわ。あなたのことは…リヒト様と言えばいいのかしら?」
「い…いや、リヒトでいいよ。様付けはあんまり好きじゃないから…呼びやすい呼び方でいい。」
「そう…じゃあそうさせてもらうわ、よろしくリヒト君」
そう言ってクルルシファーはリヒトに向かって手を差し伸べてきた。
「あ…よ、よろしく…」
そう言うとリヒトは顔を少し赤くしながら手を握って握手した。
その時、浴場の方から寮生の悲鳴が聞こえた。
「…………!!なんだ!?すいません!!ちょっと見てきます!!」
そう言うとリヒトはそのまま浴場へと走って行った。
「……綺麗な人だったな…」
リヒトはクルルシファーのことを改めて思い出していた。
浴場に続く扉の近くに差し掛かると、いきなりその扉が勢いよく開き、二人の少年が現れ走り去って行った。
「あいつらよ!あいつらが覗き魔よっ!」
「いや痴漢っ!」
「胸揉まれた子もいるって!!」
回りにいた寮生はもちろん、浴場にいた寮生の叫び声がこの寮全体に響き渡る。
「ちょっ…!なんで話が大きくなってるの!?」
「早く逃げろルクス!!このままじゃどんな殺され方するか分かったもんじゃねーぞ!!」
浴場から出てきた少年二人は逃げるようにこの場から走り去る。
「えっと……何がどーなってんの?」
その時、
「待てぇ!この痴れ者ぉっ!!」
今度はタオルを体に巻いたリーシャが姿を現した。
「ちょ…姉さん!?一体どうしたの!?」
「リヒトォ!!!今すぐ今逃げた二人を追え!!とっ捕まえて私の前に連れて来い!!」
リーシャは怒りに我を忘れていた。
「と、とにかく今の二人を追うか…」
リヒトはリーシャに案内してもらった学園の地図を思い出しながら出口に向かって走り出した。その時、
「お、リヒトも痴漢二人を捕まえに来たのか」
騒ぎを聞きつけたのかアテムもさっきの二人を探していたらしく合流した。
「アテム、確かここの出口は一つだからそこで待ち伏せていれば現れると思う」
「成る程な…それならそこで待ち伏せてとっ捕まえて簀巻きにすっか」
そんな物騒なことを言いながら二人は出口に向かって走り出したが、リヒトには一つ気掛かりがあった。
(姉さんの『あれ』が見られてないといいけど…もう俺は姉さんが苦しむところは見たくない…)
姉さんを苦しませる『あれ』、それがバレることだけは何があっても防がなければならない。
リヒトは気を引き締め走り出した。
「ハァ…ハァ…くそっ、ここに来てすぐにこんな目に会うなんて…大丈夫かルクス?」
「な…なんとか…とにかく早く出口に…」
「分かってる。多分この先が出口だ……っ!?」
すると、そこには二人の少年が待ち構えていた。
「よぉ痴漢兼下着ドロのお二人さん、おとなしく捕まっとけば半殺しで済むぜ」
暗い金髪の少年は肉食獣のような目と笑みを浮かべ物騒なことを言ってきた。
「先に言っとくが俺は下着ドロじゃねぇ。それはこっちの方だ」
「だから違うってグレン!!」
「ヤハハ、オモシレーなお前ら。痴漢じゃなくて芸人やれば良いんじゃね?」
二人組みの会話にアテムは笑っていたがリヒトは内心焦っていた。
『連中の一人、よく見たらあの首輪は旧帝国の皇帝一族じゃねーか。クソッ、よりによって…こいつに姉さんの『あれ』がバレるのは流石にまずい』
リヒトは機攻殻剣を抜くと、ルクスに向けて構えた。
「アテム、お前は赤髪の方を頼む。俺は白髪の方をやる」
「オッケー、任せな」
そう言いながらアテムも自身の片手直剣型の機攻殼剣を抜き、グレンに向けて構えた。
「行くぞオラァ!!」
アテムが剣をグレンに向けて斬りかかるとグレンもサーベル型の機攻殼剣を抜き防いだ。
「ぐっ…」
「ヤハハッなんだなんだ思ってたより楽しめそーじゃねーかヨォ!!」
それに対しアテムは更に斬撃を繰り出していた。
一方リヒトたちは
「お前か…姉さんの裸を見たのは…」
「ち、違うんだあれは事故で…っ!」
「言い訳は不要だ、さあ、早く投降するんだ。今なら裁判で弁護の機会が与えられる。」
「あれは事故だったんだ!」
「なら何故逃げた?」
「あの状況じゃ逃げざるを得なかったんだ!」
ルクスは必死にリヒトに弁護するが、
「……悪いが俺にも事情があってな…大人しく捕まってもらう!!」
リヒトは地を蹴り、一瞬でルクスの懐へ入るとすぐさま斬撃を放った。
しかし、ルクスもそれを次々と躱していった。
「なかなかやるな…じゃあこれはどうだ!!」
リヒトはルクスに右手で剣術で言うところの中斬りを放ち、ルクスはそれを躱そうとしたが、リヒトは瞬時に剣を左手に持ち替え斬撃を放った。
「うわっ!!」
流石にルクスもコレには対処出来ず足を滑らせ転んでしまった。
そして、リヒトはルクスに剣を向けて闘いは終わった。
一方ルクスたちの闘いをそばで見ていたグレンも、
「…悪いな、ルクスのやつがやられたみたいだし俺もこれ以上話がややこしくなるのは避けたいし降参するよ」
「ちぇっせっかく盛り上がってきたのによ…まぁ戦意のない相手を嬲っても面白くねーし、わかったぜ」
そして、ルクスとグレンの逃亡劇は幕を閉じた。
ハイ!!オリキャラたちと原作主人公の全員顔合わせとなりました。これから彼らはどのようになるでしょう…今後の展開に期待してください!!
感想待ってます。