「戦闘・開始!」
審判役の教官の掛け声によって今タッグバトルの火蓋が切られた。
まず動いたのはリーシャであった。
リーシャは素早く上へ飛翔しルクスとグレンの二人に大砲を向けてきた。
「いきなり撃つ気かよ……」
機竜息砲《キャノン》。
いわゆる、竜の吐く強烈な炎をイメージさせる主砲。動力たる幻創機核《フォース・コア》からのエネルギーを充填して放つ、高熱と衝撃を秘めた一撃は、家屋一軒をゆうに吹き飛ばせる威力を持つ。
だが、発射までに"溜め"を要する分、回避行動までに十分な距離を空けられるか、防御の体勢を取られてしまう事が弱点だ。
…しかし
「姉さんだけが敵だと思わないほうがいい」
リヒトが瞬時に二人に接近し長剣を振るってきた。
リヒトの攻撃によって二人は防御するタイミングを失ってしまった。…そして
ドウンッ!!
強力な一撃が二人に放たれた。
その一撃は《ワイバーン》を装着しているルクスにはひとたまりもないであろう一撃だった。しかし、
「オリャァァァァ!!!」
グレンの《アカムトルム》のクローの一撃がリーシャが放った機竜息砲《キャノン》の一撃にあたり
ドカァァァン
「んなっ!!」
巨大な爆発が発生した。
陸戦型機竜《アカムトルム》の特殊武装その一《大地の牙(アースファング)》、クローが対象に当たった瞬間、高エネルギーを放出し大爆発を引き起こす強力な武器である。
「大丈夫かルクス?」
「うん、なんとか…やっぱり姉弟ってこともあってあのコンビネーションは厄介だね、ここはやっぱり作戦通りに」
「そうだな、あの二人を引き離すことにしよう、それに…俺の《アカムトルム》だとお前まで巻き込んじまうかもしんねーからな」
「ねぇ、姉さん…頼みがあるんだけど…」
「リヒト?」
「あいつらは多分俺たちを二手に分けて一対一を狙ってくると思うんだけど…敢えて乗ってみない?」
「リヒト…本音を言ってみろ」
リヒトの言葉にリーシャは彼の本心を悟ったらしくジト目でリヒトを睨んできた。
「うっ…やっぱりバレだか…だってさ、あいつらやっぱり強いからさ、ちょっと俺も一対一で闘いたいって思っちゃったんだよ。だからさ…ダメ…かな?」
リヒトは顔をかきながらリーシャに頼み込んだ。リーシャもリヒトの頼みにリーシャはハァ…と溜息を吐くと、
「まったく…お前の悪い癖が…わかった、グレン・ハーヴェイはお前に任せる、だが旧帝国の王子は私にやらせろ、あいつは私がやらなければ気が済まない」
「姉さん…」
リーシャの目はまっすぐとルクスを見ていた。どうやら姉さんにも譲れないものがあるらしい、
「わかった、姉さんも気をつけて、」
「お前は私を誰だよ思ってる?……お前の姉だぞ」
ニッと笑みを浮かべてリヒトの方を向いた、どうやら余計な心配だったらしい。
「そんじゃ、いってくるよ姉さん」
そう言うとリヒトはグレンの元へと向かって行った。
「驚いたな…まさかそっちから一対一に持ち込んでくるとはな」
「戦士の性ってやつだよ、どうしても君たちと一対一で闘いたくてさ…あっちのルクスとも闘いたかったけどそっちは姉さんが譲れないみたいでさ」
「そっか…まぁ俺も、テメェと闘いたかったから願ったり叶ったりだな…それにあと夜だってほとんど俺はとばっちりだったからさ、あいつもお姫様に軽くしばかれるくらいがちょうどいいんだよ、あいつのデリカシーの無さは折り紙付きだからな」
リヒトとグレンは互いに笑っていたが直ぐに空気が変わり、
「そんじゃ始めるか」
「そうだな、楽しませろよ」
そう言うと、リヒトは自身の長剣型の特殊武装《七星剣(グランシャリオ)》を、グレンも自身のクロー《大地の牙(アースファング)》を構えそして、
「「ハァァァァ!!」」
炎の竜と光の竜がぶつかり合った。
リヒトの剣撃がグレンへと繰り出されるが、グレンはクローのガードで防ぎ、カウンターを放った。
「ぐっ…」
リヒトはその一撃の重さに体が後ろにさがった。
しかし、直ぐに体勢を立て直し再び攻撃を繰り出した。
「同じことだ!!」
グレンは再び剣撃をクローで防ごうと防御の姿勢を見せた。しかし、
「甘いのはてめーだ」
リヒトの剣撃は先程とは桁違いの速さで放たれた。
「んなっ!?」
グレンはその速さに驚きとっさに後ろに下がり剣撃を避けようとしたが、剣の先が突如光り出し、光の剣撃が伸び、《アカムトルム》へと直撃した。
「ぐっ…やるじゃねーか」
飛翔型機竜《ゼルレウス》の特殊武装その一《七星剣(グランシャリオ)》、ゼルレウスに内包されている強大なエネルギーを刃先に蓄積し、剣撃そのものを巨大化させる特殊武装である。
「あんたもやるな、本当は今の一撃で終わらせるつもりだったんだけど…そう上手くはいかないな」
リヒトの一撃は間合い、威力、タイミングともに完璧だったと言えるだろう。しかし、グレン・ハーヴェイの今は亡き父、ヴァリウス・ハーヴェイはかつて帝国でその腕っ節だけで将軍にまで昇りつめた生粋の軍人であった。そんな父から幼少期、父が戦死するまで稽古をつけられていたグレンの身のこなしは、それをも上回る動きでかわしていたのである。もしグレンがリヒトの《七星剣(グランシャリオ)》の知識があれば確実に見切っていたであろう。
「どうやら、『こいつ』を使うことになりそーだな…加減が出来ねーからあんまり使いたくなかったけどな…あんたなら大丈夫だろ」
グレンはそう言うと、《アカムトルム》の右手から噴出口のようなものが展開した。
「いくぜ…避けたほうがいいぞ、もっとも…」
「っ!?」
ドカァァァン!!!!
突然リヒトの体に強い衝撃がかかり、壁へとぶつかった。
「見えねーと思うけど」
アカムトルムの特殊武装のその二《災厄の咆哮(ショックブラスト)》、これは砲身から強い衝撃波を弾丸として放ついわゆる衝撃砲である。砲弾が無いため、不可視の弾丸とも呼ばれている。
(これは…『気づいたら吹き飛ばされてた』見えない砲弾…しかも音から砲撃のタイミングが分からないように砲撃自体も工夫している…厄介だな…)
リヒトもすぐさま壁から出ていき、冷静に分析した。
そのあともグレンは衝撃砲をリヒトに向かって放ち、リヒトも回避のために大きく空中へと上昇した。
「どうしたリヒト!!飛んでばかりじゃ俺は倒せねえぞ!!」
グレンの言葉にリヒトはふと笑い、
「別に逃げるために飛んだんじゃない…『こいつ』を使うために飛んだのさ」
すると、《ゼルレウス》の背中から砲身のついた尾のようなものが出てきて、先端の砲身が《ゼルレウス》の左肩に装着された。
「くらいな…《星光の竜尾(スターライトキャノン)》」
「なっ…!!」
その瞬間、砲身の先端から青白い光が光り、光線となってグレンへと放たれた。
《ゼルレウス》の特殊武装その二《星光の竜尾(スターライトキャノン)》、ゼルレウスのエネルギーを光線として撃ち出すことが出来る特殊武装である。更に、出力を調整したり、パターンを変えたりも出来るため、とても使い勝手がいい武器である。
「なんだよ、まだまだ楽しめそうじゃねーか…そんじゃあ続きといこうか…」
「そうだな、お楽しみはこれからだ」
そう言って二人が互いの砲身を向けたその時、
「いいだろう、お前の腕に敬意を表して拝ませてやる、私の《ティアマト》の神装をな!!」
「……っ!?」
「神装………!?」
リーシャの声に反応し、リヒトがリーシャのほうをみると
「なっ……!?」
リーシャは《ティアマト》の特殊武装の《空挺要塞(レギオン)》だけでなく、七つの砲口を持つ、巨大な砲身《七つの竜頭(セブンスヘッズ)》までも同時に操っていた。
「ダメだ姉さん!!それだけの武装を同時使用してさらに神装まで使ったら…」
リヒトは慌ててリーシャを止めようとしたがリーシャは止まらず
「神の名の下にひれ伏せ!《天声(スプレッシャー)》!」
高らかな声とともにルクスの体は一気に地面へと叩きつけられた。
『神装』
神装とは、神装機竜だけに秘められた特殊能力。その能力は神装機竜の種類だけ存在すると言われ、個々の正体はほとんど知られていない。
装甲機竜と共に全身にかかった強烈な負荷、それに地面を陥没させるほどの力、《ティアマト》の神装は、重力を制御する。
「終わりだな没落王子!!」
リーシャは重力によって動けなくなっているルクスへと《七つの竜頭(セブンスヘッズ)》を向けたがその時、
ガキィィン
突然《空挺要塞(レギオン)》が地面へと落下し始めた。
それだけではなく、突然《ティアマト》が制御不能になったらしくリーシャも必死で動かそうとするが制御がきかなくなっていた。過度な特殊武装の使用に加えて神装まで使った為に暴走し始めているのだ。
「まずい…早く機竜から降りて!!」
「姉さん!!ルクスの言う通りだ!!このままじゃ姉さんが…」
「おい!!無理すんな!!こんなところで意地張ってんじゃねぇ!!」
ルクスとリヒト、グレンがリーシャを止めようとするが…リーシャはこのような終わり方は納得いかないらしく、
「こんなことで…私が負けるかぁぁぁぁ!!」
《ティアマト》をさらに操ろうとしたその時だった。
そこに決して起きる筈のない異変が起きた。
ギィイイイイエエエエェェエアアアアァァッ!!!!
「……!?この声はーー」
アテムが空を見ると雲を縦に貫き、獣の絶叫が降りてくる。
「あれは…幻神獣か!?」
演習場の高い空から人ならざる乱入者が彼ら目掛けて突っ込んできた。
お待たせしました!!今回は《ゼルレウス》と《アカムトルム》の特殊武装を出しました。気に入っていただけたでしょうか?
これからの活躍に期待してください。
それともう一つ
感想欲しいです。