光に集う竜   作:クロバット一世

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最近忙しいです


8話 過去、そして襲撃

 

紅蓮の炎に包まれ、帝都には黒煙が立ち込めていた。

 

「はぁ…はぁ……ちくしょぉ……」

 

5年前、炎が辺りを包む中、金髪に赤い瞳の少年は歩いていた。現在このアーカディア帝国では、少年リヒトの実の父親アティスマータ伯を中心にクーデターが勃発していた。しかし、リヒトはこのクーデターを、許せずにいた。

姉のリーズシャルテが帝国軍に誘拐されたのだ。帝国軍は反乱軍の中心人物の娘でもあるリーシャを取引材料として利用しようとした。

 

しかし、父はその取引に応じなかった。実の娘よりも、クーデターの成功を選んだのだ。普通に考えればそうかもしれない。1人の娘のために長くから計画していた反乱を失敗されるわけにはいかないの幼いリヒトにはわかっていた。

でも、それでも許せなかった。どうして反乱軍の代表としてではなく、父親として考えてくれなかったのか…どうして姉さんを選んでくれなかったのか…気づいたらリヒトは1人炎の中を歩いていた。ただ、悔しかった。姉さんを救いたくてもその力が無いことに、自分が動いたところで何も変わらないことに、力が欲しい…どんな奴にも負けない力が…

 

 

「…………?…………あれは……」

 

ふとリヒトは空を見上げた。そこに写っていたものにリヒトは言葉を失った。

 

 

漆黒、その存在を言い表すにはその一言だった。

漆黒の大型の神装機竜が帝国の装甲機竜をたった一機で相手取りいとも容易く討ち取っている姿を……自分では相手にすることすら出来ない力を前に無双の力を見せている漆黒の巨竜を確かに見た。

 

 

そうだ、あんな存在になりたい……大切な人たちを奪われないために……理不尽な力に屈しない力が……

 

 

 

「おや、こんなところに少年が……身なりからして貴族でしょうか?ここは子供がいるようなところでは無いですよ?早く安全なところへ……といってもこの辺りには無いと思いますが……」

 

ふと声の聞こえた方を向くと白い長髪の青年がこちらに向かって歩いて来た。青年の腰には純白の機攻殻剣を装着していた。

 

リヒトはとっさに身体を身構えて警戒した。しかし、青年は微笑みながら

 

「どうぞ心配なく、私は貴方をどうこうしようとは思ってませんよ」

 

優しい口調で近づいて来た。

 

「っ!!近づくな!!」

 

声を震わせながらリヒトは落ちていた剣を青年に向けた。

 

「…………お姉さんの居場所を教えましょう」

 

「っ!?」

 

青年の言葉にリヒトは驚きを隠せなかった。

 

「……どこにいるんですか!?」

 

リヒトは藁にもすがる思いで青年に聞いて見た。嘘でも良い、姉さんを救える可能性があるならどんなものにもすがってやる。

 

「あの大きな建物のあたりにいるはずです」

 

青年はそう言いながら遠くにある1つの建物を指差した。

 

「…………っ!!」

 

リヒトはその方向へ走り出そうとしましたが

 

「やめておきなさい、あのあたりにはまだ帝国軍の連中がいくらかいます。貴方ではたどり着けませんよ」

 

そう言って青年がリヒトの肩を掴んだ。

 

「貴方にもわかっていることでしょ?自分ではたどり着けないってことくらい……」

 

「……それでも……行くんだ……」

 

「……?」

 

リヒトの言葉に青年は一瞬肩に入れている力が緩んだ。

その瞬間を逃さずリヒトは青年の手を振りほどいた。

 

「ここで俺が姉さんを助けにいかなかったら……あとで絶対に後悔する!!そんなの嫌だ!!身体が動くのにじっとしてなんかいられない!!」

 

「…………………。」

 

リヒトの目を青年はまっすぐと見つめ、優しく微笑むと、

 

「……どうやら口でいくら言ったところで変わりそうも無いですね……では」

 

そう言いながら青年は自分の腰にある純白の機攻殻剣をリヒトに渡した。

 

「私の相棒を貴方にあげましょう。ふざけた連中に渡すよりは良いでしょうしね。それを使ってお姉さんを助けに行くと良いですよ」

 

青年から機攻殻剣を受け取ったリヒトは鞘から剣を抜くと刀身を見つめた。純白に美しい青のラインがあるその刀身はとても美しかった。

 

「詠唱はここに書いてある通りです。そうすれば貴方の呼びかけに応じて機竜を纏えるはずです」

 

そう言うと紙に詠唱を書き込んでリヒトに渡した。

 

「貴方はまだまだ未熟者です。だから強くなりなさい。その機竜を、《ゼルレウス》を使いこなせるだけの力を手にし、大切な人を守れるようになりなさい」

 

そう言うと、青年は炎の中を歩いて行き姿を消した。

 

青年が去ったあと、リヒトは意を決して詠唱を唱えた。

 

「招来せよ、願いと災いを司る光の竜。天界より悪を裁け____《ゼルレウス》!!」

 

詠唱とともに身体を光が包み、リヒトは白銀の神装機竜《ゼルレウス》を纏っていた。

 

 

「待ってて姉さん……今行く!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………夢かよ……」

 

ふと目がさめると、そこはベットの上であった。

 

(あの人が何者で、なぜ俺に《ゼルレウス》を渡したのかはわからない……でもそのおかげで今がある……)

 

「おっ、お前も目が覚めたかリヒト」

 

声が聞こえそちらを向くと笑みを浮かべているリヒトの同居人、黒の混ざった金髪の少年アテム・ライバートがこちらを見ていた。

 

「アテムか……おはよう」

 

「結構うなされてたけどわりー夢でも見てたのか?」

 

「……まぁ似たようなもんだな」

 

そう言いながらリヒトは着替えをして《ゼルレウス》を腰にはめると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!」

 

「「っ!?」」

 

突然悲鳴が聞こえた

 

「アテム!!」

 

「おうっ!!」

 

2人は声のした方向へと走り1つの部屋へとたどり着いた。

 

「あっ…リヒトにアテム!!」

 

すると、そこへルクスも走ってきた。あとはグレンがいないようだが

 

『…んで……えがっ…………にいる……よ!?』

 

どうやらグレンは扉の先にいるようだ。

 

「グレンっ!?何があったの!?」

 

慌ててルクスが扉を開けようとする

 

『うわぁぁぁ待て待てルクス!!まだ開けるんじゃね……』

 

グレンの慌てる声が聞こえるが時すでに遅くルクスは扉を開けた。そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上半身裸のグレンとシャツしか上にまとっていない寝ぼけ眼の少女、フィルフィ・アイングラムがいた。

 

 

 

 

「……えっ……と……」

 

「グ……グレン?フィーちゃん?」

 

あまりの光景にリヒトとルクスは固まってしまった。

 

「ほほぉ〜なるほどなるほど大体わかった」

 

するとアテムはニヤニヤしながらリヒトとルクスの肩を掴み部屋を出ようとした。

 

「早く出るぞ2人とも、これ以上お楽しみを邪魔しちゃマズイって(ニヤニヤ)」

 

「ちょっ……待てっ……話を」

 

「皆まで言うな、わかっているから(ニヤニヤ)」

 

「違うんダァァァァァァア!!」

 

グレンの大声が学園中に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇっ!?フィルフィと同じ部屋!?」

 

「……そうだよ……」

 

騒動の後、彼らは食堂で一緒に食事をとりながら今朝のことで話をしていた。グレンの話によると昨日フィルフィとの鍛錬の後夜中に1人で訓練して風呂に入り部屋に戻ってそのままベットで寝たところ、フィルフィと同じ部屋だったとのことらしい。

 

「学園長には言わなかったの?」

 

「言ったよ!!そしたらなんて返事がきたと思ってる?」

 

 

 

 

 

 

 

『妹のこと、よろしくお願いねグレンくん♪』

 

 

 

 

「年頃の男子と自分の妹を一緒の部屋にするなんてあの人何考えてんだよ!?フィーもフィーで『わたしは別にグーちゃんと同じ部屋でも良いよ』って言うしあいつほんと警戒心ねぇよコンチクショー!!」

 

グレンは頭を抱えながら顔をテーブルに伏せた。

 

「ヤハハッ懐かれてるんだし良いじゃねーか俺が代わって欲しいくらいだぜ」

 

グレンの様子を見ながらアテムは大笑いした。

 

「お前……人ごとだと思って……」

 

 

 

「相変わらず苦労しているみたいですねグレンさん」

 

すると背後から少女の声がした。

 

「お前って…アイリ?」

 

「お久しぶりですグレンさん」

 

そこにはルクスの同じ色の髪と同じ首輪をつけた少女、ルクスの妹のアイリ・アーカディアであった。

 

「なんだなんだルクス、お前こんな可愛い妹さんがいるんだな」

 

アテムは笑みを浮かべながらルクスの肩を叩いた。

 

「うん、紹介するよみんな。僕の妹の」

 

「アイリ・アーカディアです」

 

アイリは礼儀正しくリヒトたちに挨拶をした。

 

「はぁ…ほんとにグレンさんと言い兄さんと言い…転校早々問題を起こすなんて…気をつけてくださいよ。リヒト様も、兄さんたちが色々迷惑をかけていないですか?」

 

「ううん、色々面白い話もできるし、こっちこそ姉さんのことでトラブルに巻き込んじゃったし…」

 

「何かあったら言ってください。では私はこれで失礼します」

 

そう言うとアイリはリヒトたちに再び頭を下げてそこを去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう…良い風だな…」

 

リヒトはその夜バルコニーで風に当たっていた。

すると、

 

「あっ…リヒト王子…」

 

すると、そこにルクスがやって来た。

 

「だから堅苦しくしなくて良いって言ってるだろルクス、どうしたんだよなんか元気ねえぞ?」

 

「あ…ごめんリヒト」

 

ルクスは少し何かを考えているようであったが意を決したように言葉を続けた。

 

「あのさ……リヒトは『王女』ってなんだと思う?」

 

ルクスは暗い顔をしながら聞いてくる。

 

「いきなりどうしたんだ?」

 

話が見えないのでルクスに尋ねると、どうやらあの後姉さんと街へ出かけたらしく、そこでついルクスが言った「王女らしくしたほうがいい」という言葉に「王女とはなんなんだ?」といわれたらしい

 

「………。」

 

リヒトとリーシャには妹がいた。本来なら、帝国軍に捕まり父に見捨てられたリーシャや父の言いつけを無視して独断で姉を救おうとしたリヒトではなく彼女が王女になっていたかもしれない……しかし、妹はクーデターの際命を落とした。父はクーデターの傷が原因で命を落として今の義母が王位を継いだ。そして父の形見であった俺たちが王子と王女になったのである。旧帝国の烙印のことを隠されたまま…姉さんの心にはその傷がまだ残っているのだ……

 

「…………。」

 

リヒトは口をつぐみながら自分の『横腹』をさすった。

 

「……姉さんは王女の資質があるよ、絶対に」

 

「リヒト……」

 

「姉さんは学園のみんなにも街のみんなにもたくさん愛されている、十分王女に相応しい人だと思うよ。俺はこの剣を手にしたあの日から、もう姉さんが1人にならないように戦うって決めたんだ。この機攻殻剣にかけて……」

 

「……うん、そうだね。ありがとリヒト」

 

暫く考えこんで何か決意したのか、そう言ってバルコニーを後にして行く。リヒトはそれを見送った。

 

「……必ず守る……俺がもう2度と後悔しないように……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ朝日が昇って間もない朝方。

 

 

ゴォオオン!! ゴォオオン!!

 

 

 

 

「おい起きろリヒト!!」

 

突如、耳を劈く大きな鐘の音が聞こえてきてリヒトとアテムは目を覚ました。

 

「この音は……まさか!?」

 

 

警報。敵の襲来を告げる音が城塞都市に鳴り響いた。




次回、久しぶりのバトルシーンです。










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