僕は今月から勤め先が鎮守府となった。単に26歳にしてようやく士官学校を卒業しただけである。公務員を目指した結果がこれ。最近の軍に男手が足りないため強い先生方の推薦により入ることになった。
「しかし軍の訓練ってほんっとにきつかったなぁ…」
ブラック企業を経験したりした私にとっては規律を守ることぐらいなんともないが、純粋に軍の訓練がしんどいものだったのだ。それが今日から晴れて事務に没頭すれば良く、しかも鎮守府のトップに座れるというのだから否応もなくウキウキする。が同時にこんなペーペ野郎を一部とはいえトップに置く中央の抜擢に裏も感じる。
さて今からこの目の前に広がる鎮守府で働くことになるが、実は初めてこの中に入る。理由としてはかの艦娘の機密を外部に漏らさないため個人の見学などはタブーにされているからなど。
「引継ぎ手続は済んであるから、まず挨拶と顔合わせか。大淀さんが案内してくれるらしいけど…」
「あの、すいませんがどちら様でしょうか?申し訳ないんですけどここ部外者の方の立ち入りは禁止されているんです。」
「えっ?」
みると、頬に絆創膏をつけた女の子がこちらを見ている。その眼には好奇心がありありと映っている。
「ああ、僕、いや自分は本日付でこちらのほうに配属となりました綿貫千早といいます。若輩者ですがよろしくお願いします。」
「ぅえっ?こ、ここに?もしかして新しい提督ですか!?」
「はい、それで大淀さんを探しているのですがどこにいるのかわかりますかね?」
「は、はい!私は朧って言います!私が案内しますね!いきましょう!」
なんだか高揚しているようだけど、私に何か期待しているのだろうか。ひとまず今日からここに住むのだから、今日中に荷物を片してしまいたいな。
そんなことを思いながら朧の後ろを歩いていると
「あっ、朧ちゃーん!今からみんなでパフェ食べに行こうっなったんだけど…。あっ」
「潮ー、いたー?漣のやつ先に行っちゃったわよ。いたなら早くいきましょって…そいつは?」
「この人が新しい提督。今案内してるの」
「そ、それってこれから一緒に暮らすってことだよねっ!?」
「潮落ち着きなさいって、もしかしたら変な気起こす変態かもしれないのよ」
ここに着任するだけでこのようなリアクションをみせられると、やっていけるか不安になってくる。というか前もって伝えられていないのか?この二人も朧と同じ制服を着ているのでここの関係者のようだ。とりあえず自己紹介しておくべきか。
「綿貫千早といいます。これからよろしくお願いします」
「あ、綾波型10番艦潮です!」
「その8番艦の曙よ」
「えっ、あやなみがた…?てことは君たちがあの艦娘?まさかその年で戦闘に出てるのかい?」
「はぁ?舐めてんの?私らがやらなきゃ誰があいつら倒せるっていうのよ」
驚いた。知識としてはある程度知っていたし、比較的若々しい容姿をしているものもいるというのも知っていた。だがまさか若いどころかここまで幼いとは思わなかった。どう見ても中学生かそれ以下じゃないか。
「ああすまないな。決して舐めているわけじゃないんだ。ここからは一人で行くから大丈夫だよ。ありがとうな。」
わざわざ友人が呼びに来た朧もこれから用事があるのだろうからあまり拘束しておくのもアレだ。もう玄関近くにきているし、もう一人でも問題ないはず。
「ちょ、ちょっと待ってください!任された仕事を途中で放棄するなんてあるまじき行為です!絶対にやり遂げますから!」
「そうね、姉妹が任された任務は七駆として放っておけないわ!」
「大丈夫だよ。もう庁舎に入ったらなんとかなるしね。君たちもお友達が待っているんだろ?」
「それとこれは関係ないです!任せてもらっていいですから!」
「まってほしいのです!」
唐突に会話に入っていた声の主を聞くと、やはり中学生以下の容姿をした制服をきた女の子達が。でも制服が違うが。
「君が新しい司令官だね?私たちは大淀さんから迎えに行くように言われてね。さあ一緒にいこうじゃないか。」
そう言って私の手を引く銀髪の子。わざわざ迎いを出してくれていたということはもう僕がこちらについたことは伝わっていたのか。別に到着時間は決まったりしていなかったはずだけど。
「ちょっと響!そんないきなり男性の手を触るなんてズル…いけないのよ!ここはレディな私がエスコートするから一旦離れなさい」
「暁!まずは自己紹介からでしょ。司令官、私が雷よ。私に任せて!ちゃんと案内してあげるわ!」
「ちょっと待ちなさいよ!私たちが先に案内役をかってでたのよ。ここは私たちに任せておきなさい」
おお、なんだか白熱してきた。曙が先着であることを主張しているがでも正直言ってどちらでもいい…
「曙ちゃん、電たちはその前から、その、お願いしてて楽しみにしてたのです。どうにか譲ってもらえませんか?」
「くっ…電にそんな風に言われたら強く言えないじゃない…。ていうかなんであんた達が新しい提督が男の人って知ってたのよ。そんなこと聞いてないわよ。」
「電は秘書官じゃなくてもしっかりお手伝いしていたからね。書類を持っていくときに見ちゃったんだとさ。ここは電の顔に免じてくれないかい?」
「しょうがないわね。ここは譲ってあげるわ。間宮で漣が待ってるし行くわよ二人とも」
話がまとまったらしく僕は新しく来た暁型の娘達と行くことになった。去り際の朧と潮の後ろ髪ひかれたような顔が印象的だった。
「しれーかん!私ね、家事ならなんでもできるわよ!いいお嫁さんになると思わない?そのね、その夜のほうも司令官が満足でき…」
「雷ちゃんおちつくのです。司令官さん、電たちは司令官さんに対して興奮しているので大目に見てほしいのです」
「…まあ期待にこたえられるように頑張るよ(興奮ってどういうことだ?)」
「ハラショー」
朧たちはなかなかに勢いのある子たちだったが、この娘たちもまた個性ある発言をするようだ。
そんなこんなでやっとこさ大淀さんに会うことができた。大淀さんはとても知的な雰囲気の女性で正直幼くない人を確認できてホッとした。挨拶の打ち合わせ中にそれとなく聞いてみたところ大人びたひとも多くいるようだ。
「あの提督、いまさら言いづらいんですが、ここの艦隊の皆さんはその、あまり男性に対して普通とはいえないような対応をすると思われますので気を付けておいてくださいね」
「どういうことですか?大淀さんもそうなるんですか?」
「いえいえ、私は問題ないですよ。(私のことは信頼できる人物とみてほしいですから…)」
「やっぱり男がはいってくるのが心配ですか?でもすぐになれると思うしこちらもちゃんと気を遣いますし…」
「いえ…皆さんに会ってみればわかると思いますので。でもみんなが悪い感じではないので気にしすぎないでくださいね」
不安を押し付けられた。
悪い感じって暁たちはその括りに入るのだろうか?初対面で決めつけることはよくないけどもあからさまな異常は感じなかったしなぁ。テンションが高く感じたが、あれは転校生がやってきたときはちょっと浮足立つ現象と同じようなものだろう。
―――夕刻
夕食のあと大広間にて挨拶をした。内容もそつがないようなことをいった。しかしなるほど、みんなが歓迎してくれた訳じゃない。少なからず手放しで受け入れてくれてない人がいるのはわかった。
名簿を確認したところどうやらここの古株の娘らが該当するようだ。逆にとても慕ってくれる娘たちはよその鎮守府から転属になっやってきた娘たち。二極的過ぎて反応にこまってしまう。まあ新参者が全員に受け入れられるわけじゃないか。
自分の部屋に戻り、休んでいるとノックの音が。
「提督、千歳です。今日からここで働くのということでしたがどんな一日でしたか?」
「いやはや、やっていけるか不安なところもあるかな…」
この娘は反応が悪かったほうだったはず…?挨拶の時に感じたのは気のせいだったのかな。
「うふふふふ。お疲れのようですね。早くおやすみになっては?」
「そうさせてもらうとするよ。君らの役に立てるようにも明日からはちゃんと立案やら書類やらやらないといけないからね」
「提督」
「はい?」
「作戦行動を任せるとは一言も言っていませんけど?」
言葉が出ない。朗らかな会話だと油断していた。千歳さんは良くないどころか排他的な気持ちを僕に抱いているようだ。いや今の発言以外は刺々しさのないし、自分が気にしすぎるあまり聞き違えたのかもしれない。
「あの僕はここに配属された身として職務を放棄するわけにはいかないのです」
「そうですか、では失礼します」
どうにかして繰り出した僕の意見は聞く耳もたんと言わんばかりに会話を打ち切って出て行ってしまった。これは同じような反応だった娘たちもこんな対応をすると思っておいたほうがいいな。大淀さんがいっていたのはこのことだったのか。
ひとまずどれぐらいの支障が出るか確認してからだな。もしかしたらドッキリとか試されているのかもしれないし。少なくとも慕ってくれている娘たちもいるから悲惨なことにはならないはず。
未知数の壁を前に考えるのを後回しにして私は眠りにつくことにした。
別に主人公の名前はアルペジオの影響はうけていませんともええ。
入りの章なのでほとんどヤンデレなどの要素を含んでいません。
ちなみに読者さんとしてはヤンデレや異常性癖となる背景はしっかりとしていてほしいですかね?それとも唐突に訳も説明せず病ませるほうがいいでしょうか?
ご意見お待ちしております。