○月○日
今日から、日記を書こうと思う。
改めて確認しておく。
俺は転生者だ。死んだ覚えもないし、よくある神様に間違って殺されて特典が云々――とか会話した記憶もさらさらないが、今の俺の体が六歳児である以上認めざるを得ないだろう。俺は17歳まで普通に生活していたことはしっかり覚えてるし、俺の元の母親はもっと……その、なんだ。オバサンくさかった。こんな綺麗な人じゃなかった。
と言うか、訳が分からない。
何で俺が。前世では特に何もしてなかったのに。選ばれる理由がわからん。
まあ、この世もそれなりには楽しいし、何か分かるまで第2の人生を楽しんで見ようと思う。
○月☆日
どうやら、少し調べてみたのだが、ここは日本らしい。日本の小さな都市、冬木市とか言う名前なんだそうだ。 (何か聞いたことある気がする。気のせいか?) 日本語を使っている時点で何となく分かっては居たが、それでも異世界で有りがちな脳内で勝手に日本語へ変換されているとかじゃなかったらしい。
俺の髪が何故か赤かったのもここがファンタジー世界ではないのかと考えた根拠だ。赤毛とか純日本人じゃねえだろ。母親に聞いてみたところ、「そんなの普通でしょ? 変な子」とか言われた。いや、普通なのか? 日本人=黒髪という訳ではないらしい。
俺の知る普通の日本と言うには少し気になるところだ。まあ、下らないことか。
……あれ?
平和なのは良いけど……。俺の隠された転生特典が覚醒するとか、無いのか?
□月△日
忙しくて日記を書けなかった。……嘘です。
日記を書くのを忘れていた。
時間は過ぎ行く物だ。
なんてセンチメンタルな
現状、なのだが。今日も平和。
この一言に尽きる。
……おかしい。一年経っても異世界からの侵略者とか世界を征服しようとする敵とかは出てこないし、隠された俺の力が覚醒する兆しが全く見えない。もしかしたら、やっぱりそんなファンタジー的な事はこの世界に無いのかもしれない。
いや、別にファンタジー世界で血みどろの戦いをしたいと言うわけでは決してない。決してない……のだが、男としてはそう言ったものに憧れを抱いていたのもまた事実。
でも死にたくはないので、誰かそんな奴を用意してくれないだろうか。
身に危険はないけど、暑く燃え上がるような勝負とか。
□月※日
剣道をやってみることにした。
この前書いていたのを読み返して、そして気付いたからだ。
……いや、これはスポーツでもやるべきだろうと。
身に危険はなく、暑く燃え上がる。
そして、もしこの世界で戦いが起きたときの保険として。……そろそろそういう希望を持つのは諦めるべきかな、とも思い始めたけれども。
前世でも、少年の下らない羨望と憧れから剣道はやっていて、それなりには成績も残していた。高校生全国大会みたいなのでベスト 16だった。今でもそれなりには出来る気がする。と言うか、それを考えて剣道やろうと思ったんだし。
□月▼日
今日、剣道の見学に行ってみた。
その道場でも上手い方の人と手合いをしたのだが、何か勝っちゃった。腕はそこまで衰えていなかったようで、一安心。
結果、俺には才能があるんだと勘違いした母親は、全力で俺の補助をしてくれるんだそう。
どうせなら、前世よりもっと上を目指すのも良いかもしれない。ほら、日本一とか夢があるじゃん?
その為にも特訓するべきだと思うので、今日はここまでにしたいと思う。
●月♪日
また、書くのをすっかり忘れていた。最後に書いたのが年単位で昔で、思わず笑ってしまった。どうやら、俺は中々忘れっぽい人間らしい。
1つ前の日記が剣道についてのことなので、剣道についての話を書いておこうと思う。取り敢えず、剣道はひたすら頑張った。小学生の部で全国優勝。ぶっちゃけ小学生最強の剣士と言っても過言じゃないのではなかろうか。やだ何それ格好いい。
あ、そう言えば。
何か知らないが、話で聞いたところには、近くの川でよく分からない巨大生物が出没したんだと。戦闘機とか射殺死体とか色々あったらしい。家で訓練していたから見れなかったが、もしかしたら漸くファンタジー要素が出てきたのかもしれない。
ほら、異世界からの侵略とかそんな感じ?
●月◆日
街が燃えた。書きたくはないが、書かなきゃいけないと思うのでこれを記しておく。
母親も、父親も。皆が皆燃えてしまった。いや、俺が見捨てたんだ。先に行け、と言った彼女達の言う通り、俺一人だけで逃げ出した。
俺にとって彼女達は本当の両親ではなかったのだが、不思議と涙が止まらなかった。
今この日記は入院している病院で書いている。数日経った今でも瞼を閉じたらあの炎が浮かんでくる。
今日は疲れた。早く寝ることにする。
●月■日
俺を助けてくれたオジサンが、「孤児院に行くか知らないオジサンの所に来るか、どっちがいい?」みたいなことを言って来た。
と言うか『僕は魔法使いなんだ』とか言われても困惑するんですが。「……アッハイ」としか返せなかったよ。でも魔法(正確には魔術らしい)を使えるのは本当らしかったので、素直に憧れた。……教えてくれと頼んでみたものの、のらりくらりとかわされた。
話を戻そう。養子云々の話だが、特に行く場所も無かった俺は迷うことなく話を受け、俺は衛宮切嗣の養子、『衛宮士郎』になった。
……にしても、この名前。どっかで聞いたことあるような。
まあどうでもいい。今日も疲れた。昨日は嫌な夢を見てろくに眠れなかったしな。取り敢えずここで筆を置く。
★月〒日
落ち着いた。久し振りにこの日記を書くのを再開しようと思う。
養子になって、幾つか気付いたことがある。
俺も弱くはないつもりだったが、コテンパンに打ちのめされた。……悔しいが、憧れる気持ちの方が強い。
退かぬ、媚びぬ、省みぬ精神で暇さえあれば突っ込んでみることにする。勝ちたい。
あと、切嗣は料理がそんなに上手くない。
男の元独り暮らしにあるまじき能力だ。仕方ないから、俺が練習してやろうと思う。今から切嗣の驚いた顔が楽しみだ。
*月〓日
イラついたから久し振りにこの日記を書く。前回再開するとか書いていたらしいが、ものの見事に忘れていた。テヘペロっ☆
つか、あの
今日、何やら女性が家を訪ねてきた。気が強そうな虎女である。名は藤村大河。剣道が得意らしく、一試合やった。接戦の末に俺が勝利。『タイガーとか言う名前の癖にそんなに強くないんだなww』と煽ってやると、体格差に任せた取っ組み合いに発展。勿論負けました。こういう時ばかりは自らの小ささが恨めしい。いつもは身軽で便利なんだけどなぁ。牛乳飲んだら身長って延びるのかしらん?
気付いたのだが、どうやらあやつにタイガーという呼び名は禁句らしい。知るか。今度からもタイガーって呼んでやる。
料理の練習は上々。それなりのものなら作れるようになった。
*月∞日
今日は雪が降った。積もった。
切嗣が大人の癖に容赦なかったんだが。ちょっとアレはどうかと思う。体が冷えきって、明日は風邪を引くんじゃなかろうか。ちべたいちべたい。
*月%日
暇さえあれば俺が切嗣に挑み、暇さえあればタイガーが俺へと挑みかかってくる。最近、衛宮家は
そんなに俺は暇じゃねーんだよ。早く諦めろ。
(´・ω・`)月(*´ω`*)日
切嗣が何処かへ出掛けて1ヶ月が過ぎた。
生憎、タイガーと試合ばかりやっている俺は寂しいと感じなかったが(感じる暇が無かったとも言う)、最近タイガーに負けることが増えてきた。……不味い、もう少し頑張らなきゃ。
タイガーは今日も家に泊まるらしい。おいこらそれでいいのか保護者。まあ、料理を美味しく食べてくれる人というのはありがたいので文句を言うつもりは無いが。
(´;ω;`)月( ; ゜Д゜)日
切嗣から魔術のイロハを教えてもらった。
2年間ひたすら頼みまくって流石の切嗣も根負けしたのだ。魔術回路を作ることとか、簡単な強化魔術の説明とか。初めての事ばかりで凄く面白い。
今日は魔術回路を作る練習をした。……何というか、もう少しくらい楽に出来ないのか、と思うくらいしんどかった。下手したら死にそう、コレ。
◇月(ФωФ)日
3か月ぶりくらいにこの日記に手を付ける。魔術回路の作成にも少しだけ慣れてきた。……というより、安定してきたと言うべきかもしれない。
今日の昼、切嗣に隠れて『魔術回路の定着』を試してみた。逐一魔術回路を作り直すのは非効率的だと思ったからだ。『考えたことは、なるべく実行してみればいい』と、剣道で負けた際にアドバイスとして貰ったしな。
結果としては無理だったが、暫く特訓すれば出来なくもなさそうな気がする。感覚的には、開きっぱなしにした方が効率が良さそう。……でもそれ疲れそうだよなぁ。
◇月§日
あれから5ヶ月。……さすがに自分の忘れっぽさに草不可避なのですが。
あ、そうそう。魔術回路の定着が出来るようになった。今のところ、開けるのは5、6本だけだけど。
あと、強化した竹刀で石を砕けた。強化すげぇ。
タイガーも強くなってきて、最近は割合的に負けが多くなってきている。もっと頑張んなきゃ。
あ、後思うに定着させるより電源みたいにオンオフ切り替えられる方が効率良さそう。定着させると魔力が微妙に暴走気味になるしな。
┫月┳日
魔術回路の使える数も増えた。オンオフの切り替えもそれなりに出来るようになった。
そのお陰か、強化の効率も上がった。
それを見た切嗣に、苦い顔で『もう魔術を教えるのは終わりだ』と修行を打ち切られた。……なにゆえ。
ならばと切嗣に剣道で挑んでみたところ、初めて一本取れた。諸手を挙げて喜んだのは言うまでもないことだろう。……まあその後にボコボコにされたけどね。
おいらボコだぜ! なんちて。
≦月≧日
切嗣が死んだ。最後に交わした会話は、不思議な物で1ヶ月経った今でも鮮明に残っている。一応忘れないように記しておく。
『僕はね、正義の味方になりたかったんだ』
過去形だったことが気になって、「諦めたのか?」と聞いてみると、切嗣は『正義の味方は子供の時にしかなれない』なんてことを言っていた。
なら――
なんて、俺は1つ答えていた。
「俺が代わりになってやるよ、正義の味方」
自分でも、バカみたいだ、とは思ったのだが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
単純に、切嗣みたいになれるのが嬉しかったのかもしれない。
そんな俺に、切嗣は『安心した』と言い残し、目を閉じてそのまま帰らぬ人となった。
葬式でタイガーはボロ泣きしていたが、俺は何故か泣けなかった。切嗣から受け取ったものがあるから寂しくない、とでも思ったのか。両親が死んだときは滅茶苦茶泣いたのに――我ながら、不思議なものだ。
良い機会だから、剣道はやめて他のことに力を入れてみようと思っている。
あ、そうそう。あれからも、タイガーは家に入り浸っている。てっきり切嗣だけが目的だと思っていたのだが『士郎一人だけじゃ心配でしょ』と、珍しく頼れる大人な感じで言った通り、未だに家へと来てくれる。
……ホントに、ありがたいもんだ。