Baby Princess ~それぞれの日常~   作:明棲木親池

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蛍3

「できたっ!」

蛍は、仕上がった燕尾服を目の前で広げると、これを着たお兄ちゃんを想像した。

ふふ――なんだか、ホタが並んじゃうとお店みたい。

二人仲良く店を切り盛りしている姿が目に浮かぶ。

もちろんオーナーは陽太郎。

「お兄ちゃん喜んでくれるかな――」

ぎゅっと燕尾服を抱きしめると、蛍は自分の今の気持ちを込めるようにそう呟いた。

 

   *

 

陽太郎はリビングでチビたちと遊んでいた。

「お兄ちゃんおうまさんごっこしよ!」

青空が元気よく言う。

「青空がおうまさんね!」

ただ、元気が良すぎるのか、青空は膝と手を床に着き、馬の鳴きまねをして陽太郎を困らせる。

「ははっ……ちょっとお兄ちゃんが乗るには厳しいかな?」

頬をかき、苦笑いする陽太郎。

すると、服の袖を引っ張られる。

振り向くとそこには十六女の――さくらがいた。

「あ、あのねおにいちゃん。さくらのおにんぎょうさんがどこかに行っちゃったの……」

「そっか、なら、一緒に探しに行こうか?」

「いいの!?」

「うん、もちろん。あ、そうだ。なら、このおうまさんも一緒でいいかな?」

そう言うと、陽太郎は青空の脇に手やり、抱き上げる。

青空は嬉しそうにまた、馬の鳴きまねをした。

 

   *

 

「お兄ちゃん出来ましたよ!」

蛍は勢い良く扉を開けた。

「凄い勢いだな」

すると、椅子に腰かけ、本片手にコーヒーを飲んでいる次女――霙がそう言った。

「あれ? お兄ちゃんは?」

けれど、蛍は気にすることなく、必死に陽太郎の姿を探す。

「あぁ……あいつらならさっきここを出て行ったぞ」

「らってことはお兄ちゃんの他にも誰かいたの?」

「確か、さくらと青空が一緒にいたな。おおかた、また断り切れずに何かやらされているのだろうな」

ふっ――と鼻であしらうと、霙は視線を本へと向けた。

だが、蛍はそれどころではなかった。

お兄ちゃんどこにいってしまったの――っ!?

いち早く完成した服を着て欲しい蛍は、着た時同様にリビングを出ようとした時、

「あ、そうだ」

背後から霙が何かを思い出したように呟いた。

それが陽太郎の情報かもしれないと思い、蛍は瞬時に振り向く。

「どうしての霙お姉ちゃん?」

「いや、あいつを見つけたら必然的“これが”を渡す機会があると思ってな」

それは陽太郎の情報ではなく――――。

 

   *

 

「ここら辺かな?」

「うん。さくら、ここで起きたの」

陽太郎は、さくらと青空を連れてチビたち専用の寝室へと来ていた。

ここでは年長の真璃から下の妹たちが寝ている。

「うわぁーい! そら、ねんねする!」

青空は敷いてある布団にダイブすると、ごろごろと転がり始めた。

「あぁ、ちょっと青空――」

それは別に寝るために敷いたのではない。

もちろん初めはちゃんと押し入れにしまわれていたのだが、さくらのお人形が布団の中に紛れ込んでいるかもしれないからと、陽太郎が布団を押し入れから出したのだ。

この光景を氷柱にでも見られたらなんと言われることか――。

想像しただけでも恐ろしい。でも、理由を言えば許してくれるかな?

そんな危機感を覚えながらも、陽太郎はさくらのお人形探しを続けた。

――そういえば、蛍の衣装はまだなのかな?

「どうしたのお兄ちゃん?」

「あ、うんん。なんでもないよ。多分、この中にあると思うから一緒に探そうか?」

「うん! さくらお兄ちゃんのおてつだいする!」

まだ大丈夫だよね、きっと――。

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