Baby Princess ~それぞれの日常~   作:明棲木親池

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蛍4

「ごめんね、さくら――」

結局、全ての布団を押し入れから出してみたものの、さくらのお人形は見つからなかった。

「ううん――さくらがいけないんだもん……」

服の裾をぎゅっと掴み、今にも泣き出しそうなのを我慢している妹の姿に、陽太郎は居た堪れない気持ちになる。

一体どこに……。

陽太郎は視界の端で、元気にはしゃいでいる青空を捉えながら、思案した。

けれど、いくら考えても分からないそんな時だった。

「あ、いた――っ!」

背後から声が聞こえた。

陽太郎が振り向こうとした時、今度は前から声がした。

「あ、あった――っ!」

え、どっち?

陽太郎の混乱を尻目に、声の主たちは、それぞれがそれぞれの目的のために駆け出した。

「お兄ちゃん!」

「うさちゃん!」

目の前のさくらが自分を後方へと行くのを目で追う。

すると、そこにはうさぎのお人形と、黒い衣装を持ってこちらに駆け寄る蛍の姿があった。

「あれ、蛍? しかもそれって――」

「やっと見つけましたよ、お兄ちゃん!」

「え? あ、ごめん――」

陽太郎はそこでようやく、蛍が自分を探していたことに気が付いた。

「もう、お兄ちゃんがいなくなるから――って、さくらちゃん?」

蛍はぷっくりと頬を膨らませていると、半べそをかいたさくらが自分に抱き着いてくるのを感じた。

「ほたるおねえちゃん! それさくらの! さくらのおにんぎょうさん!」

「え? あ、ちょっと――お兄ちゃんこれって一体……」

「あはは――」

陽太郎は、なんとかさくらを落ち着かせてから、蛍に事情を話した。

 

「そう言う事だったんですか」

陽太郎は、ほっと一息。

「だから霙お姉ちゃんが――」

「でも、良かったよ。蛍がさくらの人形を持ってて」

当の本人はというと――陽太郎が敷きっぱなしにしていた布団に、青空と仲良くぐっすりと寝てしまっていた。

「ふふ――お人形さんが見つかって安心したんですね」

蛍の表情には、笑顔が見えた。

「あ、その……ごめん、蛍。俺、蛍が終わるのまだだろうって勝手に思って、それで――」

「ううん、いいんです。お兄ちゃんにはお兄ちゃんの用事があったみたいなので。でも――」

「でも?」

「もう、それも解決したことですし、今度はホタの用事にちゃんと付き合ってくださいね!」

「あぁ――もちろん」

そうして蛍は念願の燕尾服を着た陽太郎と並んだ。

「やっぱり、お兄ちゃんにピッタリ!」

「そ、そうかな――?」

ちょっと顔を赤くして、恥ずかしがる陽太郎。

蛍は、こうした姿をみんなに見せたかったが――

「お兄ちゃん、ちゃんとこっち向いてください」

――陽太郎のその姿だけはひとりじめしてしまいたい、と思うのであった。

 

 

数時間後、

「ちょっと! 何よこの布団は!? さてはバカ下僕の仕業ね!」

結局、陽太郎は氷柱に怒られた。              (完)

 

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