Baby Princess ~それぞれの日常~ 作:明棲木親池
「ごめんね、さくら――」
結局、全ての布団を押し入れから出してみたものの、さくらのお人形は見つからなかった。
「ううん――さくらがいけないんだもん……」
服の裾をぎゅっと掴み、今にも泣き出しそうなのを我慢している妹の姿に、陽太郎は居た堪れない気持ちになる。
一体どこに……。
陽太郎は視界の端で、元気にはしゃいでいる青空を捉えながら、思案した。
けれど、いくら考えても分からないそんな時だった。
「あ、いた――っ!」
背後から声が聞こえた。
陽太郎が振り向こうとした時、今度は前から声がした。
「あ、あった――っ!」
え、どっち?
陽太郎の混乱を尻目に、声の主たちは、それぞれがそれぞれの目的のために駆け出した。
「お兄ちゃん!」
「うさちゃん!」
目の前のさくらが自分を後方へと行くのを目で追う。
すると、そこにはうさぎのお人形と、黒い衣装を持ってこちらに駆け寄る蛍の姿があった。
「あれ、蛍? しかもそれって――」
「やっと見つけましたよ、お兄ちゃん!」
「え? あ、ごめん――」
陽太郎はそこでようやく、蛍が自分を探していたことに気が付いた。
「もう、お兄ちゃんがいなくなるから――って、さくらちゃん?」
蛍はぷっくりと頬を膨らませていると、半べそをかいたさくらが自分に抱き着いてくるのを感じた。
「ほたるおねえちゃん! それさくらの! さくらのおにんぎょうさん!」
「え? あ、ちょっと――お兄ちゃんこれって一体……」
「あはは――」
陽太郎は、なんとかさくらを落ち着かせてから、蛍に事情を話した。
「そう言う事だったんですか」
陽太郎は、ほっと一息。
「だから霙お姉ちゃんが――」
「でも、良かったよ。蛍がさくらの人形を持ってて」
当の本人はというと――陽太郎が敷きっぱなしにしていた布団に、青空と仲良くぐっすりと寝てしまっていた。
「ふふ――お人形さんが見つかって安心したんですね」
蛍の表情には、笑顔が見えた。
「あ、その……ごめん、蛍。俺、蛍が終わるのまだだろうって勝手に思って、それで――」
「ううん、いいんです。お兄ちゃんにはお兄ちゃんの用事があったみたいなので。でも――」
「でも?」
「もう、それも解決したことですし、今度はホタの用事にちゃんと付き合ってくださいね!」
「あぁ――もちろん」
そうして蛍は念願の燕尾服を着た陽太郎と並んだ。
「やっぱり、お兄ちゃんにピッタリ!」
「そ、そうかな――?」
ちょっと顔を赤くして、恥ずかしがる陽太郎。
蛍は、こうした姿をみんなに見せたかったが――
「お兄ちゃん、ちゃんとこっち向いてください」
――陽太郎のその姿だけはひとりじめしてしまいたい、と思うのであった。
数時間後、
「ちょっと! 何よこの布団は!? さてはバカ下僕の仕業ね!」
結局、陽太郎は氷柱に怒られた。 (完)