Baby Princess ~それぞれの日常~   作:明棲木親池

13 / 21
虹子1

姉妹一おませさんな十七女――虹子は、今日もおしゃれに気を使っていた。

「うーん、どれがいいかな?」

可愛いゾウさんのプリントシールが貼られたタンスを覗き、下唇に小さな指を添える。

目の前には、色取りの洋服が綺麗に並べられている。

「これにしようかな……あ、でもこっちもいいなー」

中々決まらない。

そうこうしている内に、同じ部屋にいた青空が、

「にじちゃん! そら、さきにいってるよー」

小さな体で精一杯ドアノブを捻りパジャマのまま飛び出した。

次にまだ眠たそうに目を擦りながら、うさぎの人形を抱きかかえているさくらも出て行く。

どうしよう――。

三人はいつもお兄ちゃんの元へ行こうとしている。

だから、他に出遅れるわけにはいかない。

小さいながらも、やはり女の子。大好きなお兄ちゃんの元には自分が一番に行きたい。

そんな焦りを覚えていた時だった。

「あっ――そっか! お兄ちゃんにえらんでもらおうっと!」

虹子はぱっと顔を明るくさせると、タンスを開けたままパジャマ姿でお兄ちゃんの元へと向かった。

 

 

陽太郎は朝起きると、いつものように妹たちに囲まれていた。

「オニ―チャン! みてみて――っ! ヤバくない!? リカってばもう宿題終わらせちゃったんダヨー!」

元気印の七女――立夏はノートを広げると、嬉しそうにしていた。

「あぁ! ずるいよ立夏ちゃん!」

自分はまだ終わってないのに……と先を越された夕凪がそう言うと――

「もう夕凪ちゃん、立夏お姉ちゃんは自力でやったんだから……」

その言い分にため息交じりに星花が応える。

「そうダヨ! リッカ、お兄ちゃんに褒めてもらうためにいっしょーけんめい頑張ったんだから!」

えへん! と立夏が胸を張る。

「ふん――そんな不純な動機で頑張るなんて相変わらずだわ、立夏ちゃんってば」

立夏の頑張りを――というよりも、陽太郎が目的に介入していることが気に入らない九女――麗は棘のある言葉を口にする。

「えーいいじゃン別に! だってこうして宿題終わったんだしさ! ね、小雨ちゃんもそう思うでしょ?」

「あ、うん。そうだね……」

ちらり、麗の顔色を伺いながら八女――小雨が立夏の問いに答える。

「ほら! 小雨ちゃんもこう言ってるし!」

「で、でも立夏ちゃん……宿題は、お勉強の一環だから……」

「へ? どゆこと?」

首を傾げ、むむむ――とシワの寄った眉間に指を添える立夏。

だが、それでも答えは出ない。

麗は、そんな立夏の姿を眺め嘆息を吐く。

「はぁ……いい、立夏ちゃん。つまり小雨ちゃんはね、仮に達成することが出来ても、やった内容が身についてないと意味がないと言ってるのよ」

「う、麗ちゃん!? 私は何もそこまで――」

「ダメよ、小雨ちゃん。立夏ちゃんにはこれぐらい言わないと分からないんだから!」

小雨を制すると、キリッとした視線が立夏に突き刺さる。それと――陽太郎にも。

「え、俺も……?」

「ふん――知らない」

突然、自分へと向かってきた矛先に戸惑う陽太郎。

それを尻目に立夏は、麗から出された――やったはずの宿題の問題を出題され、難航していた。

そんな姿を見た星花は、

「ほら、夕凪ちゃんもちゃんとやらないと」

見事なまでに立夏を反面教師として夕凪にそう言い聞かせた。

「う、うん。夕凪、麗ちゃんに怒られたくないし……」

夕凪も夕凪で、ようやく理解したようであった。

生徒と夕凪は二人仲良くリビングを出て行く。

その姿を陽太郎が目で追っていると、入れ替わりでパジャマ姿の青空とさくらが来た。

「おはよー」

リビングには元気の良い朝を告げる挨拶が木霊する。

さくらはまだ目をこすったまま覚束無い足取りでいた。

「こらこら、危ないぞ」

すかさず霙がさくらを抱きかかえた。

「おい、お前は――――いや、そこで待って次に来るのを待っていろ」

霙は視線を廊下へと向けたかと思うと、こちらに顔を向き直し、含みのある笑みを浮かべ陽太郎にそう言う。

次……?

疑問符を浮かべていると、自然と答えは自分からやってきた。

「おにいちゃんおにいちゃん! にじねおにいちゃんにそうだんがあるの!」

あぁ――虹子のことか。

陽太郎はそこで合点がいく。

そして、向かってくる虹子を抱きかかえると、陽太郎は笑顔を浮かべた。

「そっか、ならまずは顔を洗ってから、だね」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。