Baby Princess ~それぞれの日常~   作:明棲木親池

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ヒカル2

 

「ごちそうさま」

とほっと一息吐く。

健康面をしっかりと考慮されている朝ごはんは、どこか精神面も健康にするんじゃないか――?

と陽太郎は、先ほどまでの朝のごたごたを思い返しながら、そう感想を抱いた。

それもこれも料理がおいしいから、なのだろうけど……。

春風と蛍は、嬉しそうに洗い物をしていた。

他の朝食を食べ終わった姉妹はと言うと――。

海晴はまだ帰ってきておらず、霙は何やら図書館へと出かけたらしい。

ヒカルは……どこ行ったんだろ?

とりあえずその以降の妹達は、宿題に追われているらしい。

ちなみに小学生以下は少し早い昼寝だと春風が言っていたのを思い出した。

というわけで、この家に来てからは初めてと言ってもいいくらいに、リビングは静けさに溢れていた。

陽太郎がゆっくりと腰を下ろしていると、不意に家の電話が鳴った。

春風がそれに反応して「はいはい――」と濡れた手をエプロンの裾で拭きながら、受話器を手にした。

まるでお母さんみたいだな――と思いながら、陽太郎がその光景を見ていると。

「あ、うん。分かった。なら、霙お姉ちゃんと一緒に明日みんなを連れて行くね」

春風の口から一応は、陽太郎も関係がある話が出てきた。

がちゃりと受話器を置いた春風に、陽太郎は訊ねる。

「明日なにかあるの?」

「あら、春風ったら、まだ王子様に伝えてなかったかしら?」

てへ、と可愛く舌を見せる春風にどぎまぎしながらも、陽太郎は首を横に振った。

「明日は珍しくママの事務所にみんなで行くことになったんです」

「……事務所?」

「はい。多分――王子様も一度は行ったことがあると思いますよ」

そう言われ、なんとか思い出そうとする。

あぁ、そういえば俺が初めて連れて行かされた場所って――。

「……行ったことあったと思うけど、あんまり覚えてないや」

「そういえば王子様ったら、あの時すごく緊張してて、ずっとヒカルちゃんのこと見てましたものね」

いや、あれは急に連れて来られたからで……と陽太郎は情けない言い訳を胸中で述べた。

「そ、それで明日は事務所に行って何かあるの?」

「もう海晴お姉ちゃんが先に行っているみたいなんですが、そこで家族のプロモーションビデオを撮影するって」

「ぷ、プロモーションビデオ?」

あまり馴染みのない言葉に、思わず聞き返してしまう。

「はい。だから、ほら――」

と、春風は廊下へ続く扉に視線を向けていた。

あ、なるほど。だからみんな宿題しているのか……。

いつもはすぐに飽きてサボっちゃう夕凪とかでも、流石のお母さんが相手だと、どうしようもないのか。

流石はこの一家の母、という感じだ。

陽太郎は改めてこの家のパワーバランスを確認した。

「あ、でも、王子様はゆっくりしてていいですからね?」

というと、春風は陽太郎の肩に手を置き、ソファーへ再び座るよう促した。

それに反発することもなく、陽太郎は腰を下ろすと、結局俺は何をするんだろう……? と疑問を抱く。

しかし、どこか安らぎを与える空間に陽太郎は、疑問そっちのけで微睡んだ。

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