Baby Princess ~それぞれの日常~ 作:明棲木親池
陽太郎は、約束通り夕凪と星花を連れて賑わった商店街へと来ていた。
当初は、夕凪が魔法の国だと言って困らせ、しっかり者の星花に尋ねても、三国志にゆかりのある場所という始末。
陽太郎は三国志のお話が中国であることは知っていても、日本でゆかりのある地があるのかどうかを知らない。ましてや魔法の国は存在しているのかどうかも分からない。
よって二人共の意見は却下となった。
そして、色々と条件を出していく内に、近場であることと陽太郎の懐事情により、近所の商店街となったのだ。
昼下がりの商店街は、活気と熱気は溢れていた。
だが、どこかそれが嫌じゃなく感じるのは、この場所ならでは――人情といったものが未だ根付いているからだろうか。
陽太郎の左右にいる妹二人は、その光景に目を輝かせていた。
まるでテーマパークに連れて来てもらったとでもいうような反応を見て、思わず陽太郎の頬は緩む。
これで良かった、かな……?
心の中で安堵すると、二人の妹の手を取り、活気と熱気の一部となった。
天使家は、それはそれは大所帯で、そんなこと陽太郎には分かりきっていて、体感しきっていた――と思っていたのだが……。
「おっ! 天使家のお嬢ちゃんたちじゃねぇーか! なんだ今日は綺麗なお姉ちゃんと一緒じゃねーのか?」
「あらあらいらっしゃい! あれま、今日は春風ちゃんも蛍ちゃんもいないのね」
――どうやらここでも天使家は人気者であり、かなり目立った存在であった。
それもそうか……なんたって、ここ近所の商店街だしな。
天を仰ぐように、陽太郎が改めてその凄さを実感していると、
「お兄ちゃん! お兄ちゃん! みてみて――っ! 夕凪、なーんもしてないのにおやつもらっちゃった!」
当の本人たちはあまり感じていないよう。
そこがさらに凄いな、と思う。
「みんな夕凪が魔法使いの子孫だってわかっちゃったのかな? えへへ――」
元気よく言うと、また元気よくもらったおやつを食べる。
しかし、陽太郎はその後ろで何やらこそこそと小さなポーチに何かをしまっている星花の姿が目に入った。
「星花……?」
陽太郎はそう声を掛けると、
「え? あっ――お兄ちゃん。ど、どうしました……?」
星花はびっくりしたのと同時に、白い紙きれをポーチの中に押し込んだ。
陽太郎はそれがレシートであることを見逃さなかった。そしてそれが何を買った時に出たものなのかも――。
「ちょっと待っててね」
「えっ――?」
そう言うと、陽太郎は少しその場を離れ――夕凪が食べているおやつと同じものを買ってきた。
「これって……?」
目の前に差し出されたおやつに星花が困惑していると
「夕凪だけじゃ不公平だろ? それにこれは、その――星花が妹にプレゼントしたのと同じように、お兄ちゃんから妹へのプレゼント……みたい、な?」
なんだか言ってるそばから恥ずかしくなってきた陽太郎は、それを誤魔化す意味も含めて星花におやつを渡すと、夕凪へと視線を向ける。
「おーい、あんまり食べると春風に怒られるぞー」
「うわぁー! たいへんたいへん!」
夕凪が慌てておやつを手から離してしまいそうになると――
「危ないよ夕凪ちゃん!」
星花がなんとかフォローに入る。
「あ、ありがとう星花ちゃん――あっ! 星花ちゃんも夕凪と同じおやつもらったんだ!」
「――うん。そうなんだ」
星花はどこか恥ずかしそうにそう言うと、陽太郎を見て
「ありがとうございます――お兄ちゃん」
とそっと囁いた。
(完)