Baby Princess ~それぞれの日常~   作:明棲木親池

6 / 21
夕凪と星花2

陽太郎は、約束通り夕凪と星花を連れて賑わった商店街へと来ていた。

当初は、夕凪が魔法の国だと言って困らせ、しっかり者の星花に尋ねても、三国志にゆかりのある場所という始末。

陽太郎は三国志のお話が中国であることは知っていても、日本でゆかりのある地があるのかどうかを知らない。ましてや魔法の国は存在しているのかどうかも分からない。

よって二人共の意見は却下となった。

そして、色々と条件を出していく内に、近場であることと陽太郎の懐事情により、近所の商店街となったのだ。

 

昼下がりの商店街は、活気と熱気は溢れていた。

だが、どこかそれが嫌じゃなく感じるのは、この場所ならでは――人情といったものが未だ根付いているからだろうか。

陽太郎の左右にいる妹二人は、その光景に目を輝かせていた。

まるでテーマパークに連れて来てもらったとでもいうような反応を見て、思わず陽太郎の頬は緩む。

これで良かった、かな……?

心の中で安堵すると、二人の妹の手を取り、活気と熱気の一部となった。

 

天使家は、それはそれは大所帯で、そんなこと陽太郎には分かりきっていて、体感しきっていた――と思っていたのだが……。

「おっ! 天使家のお嬢ちゃんたちじゃねぇーか! なんだ今日は綺麗なお姉ちゃんと一緒じゃねーのか?」

「あらあらいらっしゃい! あれま、今日は春風ちゃんも蛍ちゃんもいないのね」

――どうやらここでも天使家は人気者であり、かなり目立った存在であった。

それもそうか……なんたって、ここ近所の商店街だしな。

天を仰ぐように、陽太郎が改めてその凄さを実感していると、

「お兄ちゃん! お兄ちゃん! みてみて――っ! 夕凪、なーんもしてないのにおやつもらっちゃった!」

当の本人たちはあまり感じていないよう。

そこがさらに凄いな、と思う。

「みんな夕凪が魔法使いの子孫だってわかっちゃったのかな? えへへ――」

元気よく言うと、また元気よくもらったおやつを食べる。

しかし、陽太郎はその後ろで何やらこそこそと小さなポーチに何かをしまっている星花の姿が目に入った。

「星花……?」

陽太郎はそう声を掛けると、

「え? あっ――お兄ちゃん。ど、どうしました……?」

星花はびっくりしたのと同時に、白い紙きれをポーチの中に押し込んだ。

陽太郎はそれがレシートであることを見逃さなかった。そしてそれが何を買った時に出たものなのかも――。

「ちょっと待っててね」

「えっ――?」

そう言うと、陽太郎は少しその場を離れ――夕凪が食べているおやつと同じものを買ってきた。

「これって……?」

目の前に差し出されたおやつに星花が困惑していると

「夕凪だけじゃ不公平だろ? それにこれは、その――星花が妹にプレゼントしたのと同じように、お兄ちゃんから妹へのプレゼント……みたい、な?」

なんだか言ってるそばから恥ずかしくなってきた陽太郎は、それを誤魔化す意味も含めて星花におやつを渡すと、夕凪へと視線を向ける。

「おーい、あんまり食べると春風に怒られるぞー」

「うわぁー! たいへんたいへん!」

夕凪が慌てておやつを手から離してしまいそうになると――

「危ないよ夕凪ちゃん!」

星花がなんとかフォローに入る。

「あ、ありがとう星花ちゃん――あっ! 星花ちゃんも夕凪と同じおやつもらったんだ!」

「――うん。そうなんだ」

星花はどこか恥ずかしそうにそう言うと、陽太郎を見て

「ありがとうございます――お兄ちゃん」

とそっと囁いた。

                        (完)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。