Baby Princess ~それぞれの日常~ 作:明棲木親池
朝食を終えると、そのまま陽太郎は真璃に付き合う。
リビングには、十五女――観月が一緒にいた。
「あにじゃ、これから何をするのだ?」
「いや、俺もマリーに言われてここにいるから……」
そういう当の本人である真璃はというと――。
「これも……あぁ、そうだわ。あれがあったじゃないの」
何かの準備に忙しそうであった。
「よし、これで――あら、観月ちゃんもいたの?」
「おぉ真璃あねじゃ、わらわに気が付かんとはよほど集中しておったのじゃな」
「ふふ――まぁね。でも、もう準備はととのったわ。さ、始めるわよフェルゼン?」
「――始めるって?」
「もう、フェルゼンったら――そんなの決まってるでしょ!」
すると真璃は、勢いよく自分の後ろを指さした。
そこには綺麗に並べられたおもちゃのティーセットが置かれていた。
「きゅうてい遊びよ」
きゅうていって――あの宮廷か? ってことはつまりおままごとなんじゃ……。
「ほら! 早くこっちに来てフェルゼン! 観月ちゃんはそうね――フェルゼンの付き人役ね」
「しょうちいたした!」
「じ、じゃあ俺の役は?」
「そんなの決まっているでしょ? フェルゼンは――マリーのフェルゼン役よ」
それってつまり――――何をしたらいいんだ?
「はい、フェルゼン」
真璃はいつもの調子でそう言うと、ティーカップに紅茶を注ぐ動作をする。
それに釣られて陽太郎が――
「ありがと――」
と返事をすると、
「もう! フェルゼンったらぜんぜんダメ! もっとマリーがしているみたいに気品のよさを出さないとダメだわ!」
と言われても……。
陽太郎には二つの意味で付いて行けない世界であった。
挙句の果て、陽太郎の付き人役になっている観月に助けを求めるが……
「ん? どうしたのじゃ、あにじゃ――ではなく、ふ、フェルゼンどの?」
こっちもこっちで苦労しているようであった。
「あ、いや、何でもないよ」
その姿を見て、胸中で乾いた笑いが出るも、お兄ちゃんとしてどんな時でも情けない姿を見せてはならないと、陽太郎の闘志に火が付いた。
「よし、じゃあマリー俺はどんな感じでやればいいのかな?」
「そうね――そうだわ、うんとマリーを褒めなさい!」
「よしきた!」
生きの良い返事を返す陽太郎。
ただ、付き人であった観月はそれを見て――少し趣旨がズレていると感じていた。
だが、思っていても彼女はただただ陽太郎と真璃のその姿を見守るばかり。それはまるで――本物の付き人さながらの姿であった。
「もうフェルゼンったら――」
「マリーはえらいな」
……決して付き人は表には出さない。それが少し気に入らない光景であったとしても。
そんな時、
「観月ちゃん」
小さな声が背後から聞こえる。
声の主はエプロン姿を蛍であった。
「おやつが出来たから、マリーちゃんとお兄ちゃんを呼んでもらえる?」
「しょうちしたのじゃ!」
元気よくそう言うと、
「真璃あねじゃ、お兄ちゃん! おやつなのじゃ!」
半ば暴走しかけている二人を止めに入る。それもまた――付き人の役割、なのかもしれない。
こうして、おままごとは終了し、本当のティータイムとなったのであった。
「あにじゃ、あにじゃ。こんどはわらわの方にもつきあってはくれぬか?」
「あら、観月ちゃん。マリーのフェルゼンを横取りするつもり?」
「なら、今度は真璃あねじゃが付き人役をやる、というのはどうじゃろうか?」
「ふふ――まぁ、妹にはなをもたせるのも悪くないわね」
「だ、そうじゃ。だから――約束じゃぞ、あにじゃ」
(完)
すみません。予想以上に自分の中で真璃が収拾付かなくなってしまい、急遽、観月を加えてさせていただきました。ですが、タイプの違うおチビちゃんたちが描けて楽しかったので、これはこれで良かったと思っています。
これからもなるべく期間を開けずに書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。