例えばこんな篠ノ之箒 作:々々
2巻分の展開の(脳内)プロットが出来たので、更新を再開しようと思いましたが、その前に作品の雰囲気を取り戻すために、閑話を2つ程経たいと思います。
短編や匿名での投稿で少し書き方が変わってるっぽいので。
竹刀のぶつかり合う音と二人の息遣い以外の音は道場の中には何一つとして存在しない。片方は型を確かめるように二振りの剣を振るい、片方はその細かな誤差を直すように剣を振るう。
剣を振りはじめてから2時間経つが、互いに集中力が途切れることは無い。少女はこの雰囲気に確かな満足感を覚えている。
しかし、この場に数人が向かっていると分かると徐々に打ち合いのスピードを遅くする。最後に箒が強い一撃を放ち、一先ず鍛錬は終わりとなった。
「ありがとうございましたっ!」
「箒ちゃんもお疲れ様です。もうこれくらいでは息切れもしなくなって来ましたね。少し休憩してから、具体的には彼らが来てから、次は新しい事を行ないます」
箒は進学祝いで貰った竹刀を大事そうに仕舞う。そして、脇に置いてある木刀を手に取って軽く構えた。
「おっ。やっぱりここにいた」
校舎と道場を繋ぐ廊下から一夏などがやって来た。その後ろにはセシリアと鈴、そして千冬がいることが二人の目に入った。
「おはよう、いや今はこんにちわだな。私を探していたのか?」
「昨日の夜に保健室から戻ったって聞いて、会うために箒の部屋に行ったんだけど居なくて。そうしたら相川さんが『篠ノ之さんなら雨宮さんに会いに行くって』と言われてさ。それで用務員室に行く途中に千冬ねえと会って、そしたら次は二人して剣道場に言ったって言われたから」
「それは済まなかった。それで、どうして私を探していたのだ?」
「どうしてって。怪我して夜まで保健室にいた奴がいたら、朝一で会いに行くのが友達ってもんじゃないのか?」
「そうだな。……ありがとう一夏。しかしだ、たかがかすり傷と精神的に疲れただけだからそこまで心配されるのは、少々行き過ぎではないか?一夏だけでは無く、セシリアと鈴にも言えることなのだが」
今日は日曜日である。クラス別トーナメントが行われたのが金曜日であり、襲撃後から土曜の夜まで箒は保健室にいた。
てっきり折れていると思っていた腕もかすり傷のみであった。その日は敵対組織と相対した箒の精神面を考慮して、そしてほとんどゼロに等しいが接触時に洗脳をされた可能性を考慮して、白夜が保健室で待機していた。
そして次の日の土曜日、怪我の様子を調べられた後生徒会長に取り調べを受けた。と言っても形式上だけのものであり、自らの身分を教えた更識楯無と共にお話するでけである。
取り調べが行われた場所は生徒会室であり、取り調べが一段落するとそこに役員の3人がやって来て楯無と虚は生徒会の仕事をするため参加できなかったが、箒と本音そして簪の3人でおしゃべりに興じた。
互いに人見知りをしてなかなか話が弾まずにいたのだが、優れた姉がいるという共通の話題によって昨日の夜までにはすっかり仲良しになっていた。
そんなわけで一夏たちは襲撃事件以降箒に会えず、心配になるのは仕方が無いと言えよう。
「そんなことありませんわっ!」
「そんなことないわよっ!」
喋るタイミングも言う内容も被った二人は睨み合う。それを一夏は慌てて、箒は呆れながらも少し嬉しそうな顔をして止めに入る。
「それで、千冬さんはどうしてこちらまで?」
「少し暇だったからな。剣道場に向かうついでにどれほど一夏が強くなったかを見てやろうとな」
「そうでしたか。それなら先にそれをやって良いですよ。私達はその後でも平気ですから」
「いいのか?篠ノ之も持っている木刀で何かするつもりだったのでは?」
「何もそこまで焦っていませんから。それに、わたしも箒ちゃんが教えた一夏くんの剣を見てみたいですしね」
「ならお言葉に甘えさせてもらおう。一夏っ!私がお前の剣を見てやるから準備をしろっ!」
なんとか二人を宥め終えた一夏は嬉しそうに返事をして、防具を付け始める。白夜と箒は壁から少し離れたところに並んで立ち、セシリアと鈴は座って二人を見ている。
「言っておくが、これは剣道ではなく剣を用いた訓練だ。全力でかかって来い」
「それくらい分かってるさ千冬ねえ」
「ならいい。構えろ」
それぞれが竹刀を構え、道場の空気が行ったん静まり返る。
「来い一夏っ!」
「ヤァァァーッ!!!」
初撃を一夏に譲って始まった。竹刀がぶつかりあう音と、摺足と踏みしめる音が響く。一夏は最初の一回しか千冬に攻撃できるチャンス無く、幾重も襲い掛かってくる千冬の重い剣筋を受け止める。
「アレが箒ちゃんが教えた受け太刀ですか。確かに一夏くんには合ってますね。あの速さの剣筋を見切れる者はそうそういないね」
「再び剣道を始めて、ここまで上手いのはそのお陰ですね。しかし、まだ一夏は伸びると思います」
「フェイントへの対処と受け方ですか……」
「はい。いくらISでの剣術の為と言ってもその2つは不可欠ですから。今も目線の誘導で騙されましたね」
「千冬さんもどんどんギアを上げてますから、仕方ないですがね」
二人の間で聞こえる程度の小さな声での会話が終わるとともに、二人の試合も終わりを迎えた。
「はぁ、はぁ……」
面を脱いで流れてくる汗を拭きながら、一夏は息を整える。
「まだまだ、千冬ねえには届かないか……」
「それはそうだ、私にはまだ届かない。しかし、強くなったな一夏」
既に息を整える終えた千冬がタオルを差し出しながら一夏を褒める。一夏はガッツポーズを取り喜ぶ。
「よっしゃーーっ!!!」
「と言ってもまだまだだがな。精進しろよ」
その傍ら白夜と箒は木刀を手にして、一夏と千冬と変わるように真ん中へと行く。一夏と千冬は座っている二人の元へ行き座って二人を見ることにした。
「それでは、この前行ったようにやりますよ。初めはゆっくりですから、それでまずは慣れてください」
「分かりました」
先程のように空気が張り詰める。勝手に動くことも、瞬きでさえ許されない程の重圧が生じる。
「では、いきますよっ!」
ゆっくりとした白夜の剣が振られる。箒はそれを見切り、自分の木刀を合わせ防ぐ。そのまま更にやってくる攻撃を計4回受け止める。そして次は箒が4本の剣筋を作り出し、それを白夜が防ぐ。そして何度も攻防を交換して、剣を振るう。
「あんな重そうな剣を受けて、よく直ぐに別の剣を受け止められるな」
「違うぞ一夏。あれは受けとめているのではなく、受け流しているのだ。それによって衝撃を抑えて、すぐに別の剣を防ぐことが出来る」
「受け止めるのではなく、受け流すか……」
「先程の試合でも感じたが、これはお前に必要な技術だ」
「俺に?」
「攻撃を防いだところでそれによって動けなければ、また攻撃が来る事になるだろう?受け流さなければお前の剣は相手にも届かないし、私にも届きはしない」
一夏は食い入るように二人の剣の防ぎ方に集中する。そこでセシリアがふと思った疑問を口に出す。
「お二人は何をやってるんですの?」
「型の練習だよな、千冬ねえ」
「そうだな」
「それになんの意味があるんですの?」
「刀の振り方、体重移動などこれまでの積み重ねによって型は作られてきた。型は基本動作に過ぎない。しかし、それらを踏まえたうえで戦闘の際に型によって得られた智慧を使って優位に立つことができる」
先程より少し早い剣の応酬が繰り広げられている。
「今はそれの確認だろう。別々に覚えた型をスムーズに使える為のな。基本を覚えたならば、次は基本をどれだけ上手に使えるかが大切になる」
「そうなんですのね」
武術というものを知らなかったセシリアはその言葉に納得した。
「……箒がアレの弟子ってのは本当だったのね」
「またその話かよ。そこまでの人なのか白夜さんって?」
「それこそ先進国で友好的なのは日本とイギリス、それとドイツ位なのよ!?まぁ、そんな風に教えこまれてるからってのもあるけど。国の被害を教えられたらそう思わずにはいられないのよ」
「俺にはさっぱりだ」
「一夏さんらしいですわね」
「アンタの箒に剣を教えてもらってるわよね」
「そうだけど」
「ならアンタだって間接的にアレのお世話になってるんだから、そんな簡単に済ませられる話じゃないの」
「お前ら話をする暇があるなら、二人を見ろ。場合によってはハイパーセンサーの使用も許可する」
二人の剣は初めの何倍も早くなっていた。鈍く重い剣は鋭く素早くなり、剣筋は4つから8つへと増えている。千冬はなんとか目で追えてはいるが、他の三人には無理であった。
白夜と箒の視界には相手以外は見えていなく、音も互いの息遣いしか聞こえない。周りにいる人や、木刀がぶつかりあう音は何処かへと消えていく。
数十分という時間があっという間に過ぎ去り、箒に疲労が見え始めると白夜は目でそろそろ終わりにすることを伝える。それを箒は理解する。
白夜の剣を受け止め、それを完璧に模倣して白夜に返す。そして最後に心の中でつぶやき、終わりの一撃を決める。
―――篠ノ之流、終式―――
たった一歩で白夜との距離を詰め、鋭い横薙ぎを放つ。距離を詰めた勢いで白夜の後方へと移動し、残心を決める。これにて今日の練習は終わりとなった。
武道なんて高校の体育でしかやっと事無いから分からないんじゃ。もしおかしな所があっても目を瞑ってくれるとありがたいです。
行間にスペースを入れてみたのですが、読みやすさはどうでしょうか。話で行間はバラバラですが、一番読みやすそうなものが分かったら全てそちらの方にするので感想を教えてもらえたら助かります。
今後とも再びよろしくお願いします。
それと前の話に出てきた箒ちゃんの偽名の『リト』についてですが
箒ちゃん
↓
セットで使われるのはチリトリ
↓
そんな名前は可愛そうだな……
↓
上手く名前っぽくできないかな
↓
あっ、真ん中抜けば『リト』ってそれっぽい
というわけで、ああいう偽名になりました。
もう出てこないので忘れてもらってもいい事なんですがね(笑)