例えばこんな篠ノ之箒   作:々々

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2巻の前日の話になります。






閑話②

 

 

「箒さんっ!わたくしにお料理を教えてくださいっ!」

 

 

 

 

 

 ある日の日曜、いつもの白夜との鍛錬を終えシャワーを浴び部屋に戻ろうとしていた箒は廊下でばったりセシリアと出会った。

 

 

「あっ!箒さん。あなたを探してたんですの」

 

「セシリアか、どうしたのだ?」

 

「何でも明日、鈴さんが一夏さんをお昼ごはんに誘ったという情報を得ましたの」

 

 

 急いで探し回っていたようです息切れをして肩で呼吸をしながら箒と話す。

 

 

「ふむ。しかしそれはあまりいつもと変わりがないのではないか。よく食堂にいると聞くが」

 

「今回は食堂ではありませんのよっ!なんと、なんと!手作りお弁当ですのっっ!!!手遅れになる前になんとかしなくてわっ!!!!」

 

「お、落ち着けセシリア。慌てたところでどうにもならない」

 

「だって二人っきりで手作りお弁当ですのよ。これがどうして落ち着いていられますかっ!!」

 

 

 興奮気味に話すセシリアに対して、落ち着けようとする箒だが何一つとして効果をなさない。

 

 

「セシリアはどうしたいんだ?一夏と鈴のお昼を止めさせたいのか、それともただその事を私に聞いて欲しいだけなのか。場合によってはセシリアを手伝うかもしれないし、はたまた逆に止めるかもしれない」

 

「すみません、少々取り乱してしまいましたわ……。わたくしは箒さんにお願いがあってきましたの」

 

「うむ。なんだ?」

 

「箒さんはお料理が上手だとクラスの方々からお聞きしましたの。それでよかったらでいいのですが、箒さんっ!わたくしにお料理を教えてくださいっ!」

 

「なんだ、それくらいなら構わんぞ。別の日にセシリアも一夏をお昼に誘うのだな」

 

「え?違いますわよ?明日のお昼に鈴さんの邪魔をしてやるんですのよ」

 

 

 少し黒い笑みを浮かべるセシリアに若干引きつつも、ここはどうするべきなのかを考える。セシリアと鈴はどちらも友達である。鈴の邪魔をしたくはないが、セシリアも応援したい。ここで料理を教えるべきか否か。

 

 しかし、箒が料理を教えまいと教えようとセシリアは料理を持って二人の昼ごはんを邪魔しに行くことは容易に想像できた。となると、セシリアの料理の腕がわからない以上このままセシリアを送り出したら、鈴の邪魔をするどころかセシリア自身の株を下げる事になるという直感的なものが働く。

 

 仕方ないかと内心ため息をつきつつも、セシリアに答える。

 

 

「よしっ。友の頼みだ、手伝ってやろう!」

 

「ありがとうございますっ!!」

 

 

 この結果が吉と出るか凶と出るか、それは神にすら分からない。

 

 

 

 

 

 

 何でも揃うと評判のIS学園の購買で食材を買ったあと、日曜日には自由開放されている家庭科室はと向かう。この家庭科室は日曜日は全生徒に開放され、その他の六日は昼ごはんを自炊したい人が申請することで使えるようになる。

 

 

「セシリアは今まで料理をしたことはあるか?」

 

「いいえ、恥ずかしながら」

 

「恥ずかしがる事ではない。セシリアの家庭の事は聞いたから、そうだろうとは思っていた。そうなると、いくつか案を考えて食材を買ってきたが、簡単に作れてそれ単品でお昼となるサンドイッチなんてどうだろう」

 

「おーっ!学生のランチっぽいですわ!」

 

「よしっ、それでは練習にかかるとしよう。まずはセシリアが一人でどれくらい出来るか確かめたい」

 

「わ、わかりましたわ。オルコット家当主としての実力をとくとご覧なさいませっ!」

 

「作るのは一つだけでいいからな」

 

 

 沢山作ってもしそれが不味かったら食材の無駄になってしまう、と言いそうになった言葉を飲み込む。調理台の近くに立って、セシリアの調理を見守る。

 

 

「サンドイッチですわね。となるとBLTなどでしょうか」

 

 

 不慣れなため口に出して必要だと思われる食材を取り出していく。食パン、ベーコン、レタス、トマトそしていくつかの調味料。

 

 

「さて、これからどうしましょう」

 

 

 料理の手順は分からないがイギリスにいた頃に出されたものと形を似せればきっと美味しくできるはずと結論を出し、調理を開始する。

 

 箒は姿形を似せる事に重きをおいたセシリアの調理に戦慄するが、調理をしている本人はその様子に全く気づかずにサンドイッチを完成させる。

 

 

「出来ましたわっ!!」

 

 

 先程の過程を経て作られたとは想像することもできないほど、美味しそうな見た目をしているサンドイッチが出来上がった。当の本人はやりきった感を出している。

 

 

「箒さん如何ですか?」

 

「どうだと言われてもな……」

 

 

 実際のところ食べる必要もないほど不味いということは容易に想像できた。また、白夜と鍛えた第六感がコレは危険だと警告している。どうやって伝えるのが一番傷付けることなく、尚且つ本人に気づかせられるかを考える。

 

 

「味見はしたか?」

 

「味見をしましたら、箒さんが食べる分が少くなってしまいますのでしていませんわ」

 

「それはダメだぞ」

 

「何故ですの?」

 

「珍味やゲテモノを除いて、どこにでもある食べ物の美味しい不味いの基準は大抵みんな同じだ。セシリアは自分で美味しいか美味しくないか分からないものを一夏や私に食べさせるのか?」

 

「はっ!そうですの……」

 

「そうだろう?なら味見をするんだ!でも、少しでいいからな」

 

 

 何とか説得する事に成功した箒はなにかあった時のために、いつでも対応出来るように備えている。セシリアはなんの疑いもなく、自分の作ったサンドイッチが旨いと疑わず、言われたように少し口に含む。

 

 

「ひゃっ!!?」

 

 

 口に入れた瞬間咀嚼する間もなく吐き出してしまった。想定していた中で最も酷くないものだったので、コップに入れておいた水を差し出す。

 

 セシリアはゴクゴクと、久しぶりに水を飲むかのように勢い良く水を飲み干す。

 

 

「なっ!なんですのっ!?」

 

「セシリアが作った食べ物だ」

 

「信じられませんわっ。わたくしがサンドイッチすら作れないなんて……」

 

「私は作ってる時点で分かっていたがな」

 

「どうしてっ!どうしてですの!?教えてくださいっ!!!!」

 

「使った食材は良いんだ。まずBLTの時点で間違えることは殆ど無い。しかしっ!」

 

 

 冷静にツッコミを入れていた箒だが、声を荒げて調理台の片隅にまとめて置かれているあるモノを指差す。

 

 

「たかがBLTにこれ程の調味料を使うのだっ!?それも上手に出来たモノにっ!」

 

「私が今まで見たものと見た目が違ったんですもの」

 

「それで必要のないものを付け加えたら元も子もないだろう……」

 

 

 頭痛が痛いなどど言ってしまうほど箒の心は乱れている。平常心、平常心と心の中でつぶやき深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

 

「これはセシリアがどれだけ料理が出来るかの確認だ。だからそこまで。だからそこまで落ち込むことは無い……筈だ。これから私が作りながらレシピや気をつけることを言うから、メモを取ること」

 

「分かりましたわ」

 

 

 最初に食べられるものではなくなったサンドイッチを捨て、使わない調味料を元に戻す。

 

 

「それでは最初に言うことは、レシピ通りに作ることだ」

 

「それでは何だか心配ですわ」

 

「レシピは基本だ。レシピ通りに作って失敗することは稀だ。ISの操縦だって基本が大事であろう?基本を蔑ろにして自分が良いようにやっても上手く行くことが無いのは理解できるな?」

 

「たしかにそうですわね」

 

「それではまず最初は――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど。基本には忠実に。それでも隠し味を入れたいときはあ、愛情をいれると」

 

 

 箒の作ったものと教わったレシピ通りにセシリアが作ったサンドイッチを昼食として食べながら教わったことの確認をする。最後の一言は箒に真顔で言われたことなので恥ずかしくなりながらも声に出した。

 

 

「わたくしが作ったものより美味しいですわ」

 

「セシリアのも一回目に比べたら格段に美味しいぞ」

 

「アレは忘れでくださいっ!ノーカンですのよ」

 

「ふふふ。そう言うことにしておこう」

 

 

 食事を終え、セシリアの淹れた紅茶で一服を入れる。

 

 

「箒さんはいつから料理をしてるんですの?」

 

「手伝いだけなら小学四年生からだ。それを含めると大体五年だな」

 

「思ったより長いですわ」

 

「その頃は白夜の家にお世話になり始めた頃だったから、何もしないというのがどうしても我慢できなかったのだろう」

 

「箒さんの昔話は気になりますわね。良かったら聞かせてもらっても宜しいですの?」

 

「私の話か……。それは一夏と別れる前と後どちらの方だ?」

 

「そうですわね。確かに一夏さんの話もお聞きしたいのですが、それは一夏さん本人から聞くことにしますわ。それよりも箒さんの白夜さんとのことを聞きたいですわ」

 

「つまり恋話を聞きたいと」

 

「そうなりますわね」

 

 

 何を話そうか考える。思い返せば白夜との思い出は沢山あるが、どれも箒の中だけに閉まっておきたいもののため口に出すのは少し憚れる。ましてやセシリアが望むような話になれば尚更だ。

 

 

「そうだな。今回の料理の事と関係のある話でもしようか」

 

「あっ、待ってください!今お茶のおかわりを入れますの」

 

「そこまで長い話ではないのだがな」

 

 

 空になっている二人のティーカップに再び紅茶を入れるのを確認して、箒は話し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が始めて料理を手伝いたいと思ったのは白夜とあって半年もしない時だ。風邪を引いてしまった私は自分が迷惑をかけているのではないかと考えていた」

 

「迷惑ですか」

 

「保護プログラムのせいで心の整理もつかないまま、祖父の昔の知り合いで、父とは顔見知りの白夜の元に突然行くことになってな。何処と無く不安を感じていたし、私のような見ず知らずの者を預かるという事をさせて申し訳ないと思っていた」

 

 

 一夏への未練もあったし、父さんや母さんといたいという気持ちもあった。それに姉さんには苛立ってもいたな。それが重なって、いろいろ私の中に黒い感情が生じたのだろうがな。

 

 

「そうなんですの。それにしても、箒さんのお祖父様とお知り合いということは白夜さんは一体何歳ですの?」

 

「なにか言ったか?」

 

「いいえ、何も言ってませんわ。ささ、お話の続きをお願いしますの」

 

「風邪が治ってから私は白夜に対して『わたしにも何かお手伝いをさせてください』と言ったのだ。我ながら勇気をだして言えたなと思う。そうしたら白夜は私の頭を撫でながら嬉しそうに微笑んだのだ」

 

 

 あれが初めて白夜に言った私からの我儘というかお願いだった。そして初めて教えてもらったのが、風邪を引いた時に食べさせてくれたお粥であった。それからは白夜と一緒に台所に立って料理をするのが楽しくて仕方がなかった。

 

 

「心温まる良い話ですわね」

 

「他にもあるのだがそれはまた別の機会に話すとしよう。時間はまだまだあるのだからな」

 

「そうですわね。あっ、一つ聞きたいことがあるのですが」

 

「なんだ?」

 

「白夜さんはいつも笑顔ですが、お家ではそうでは無いんですの?」

 

「うん?そのような事はないが」

 

「先程『嬉しそうに微笑んだ』とおっしゃってたので、てっきりそうなのかと」

 

「その事か。白夜はいつも笑顔だが、きちんとその時その時の感情によって違いがわかるものだ。楽しそうだなとか、考え事をしているなとか」

 

「よく見てらっしゃるのですね」

 

「過ごした時間が長いからな」

 

 

 いつまで白夜との一緒にいられるのだろう。IS学園にいる3年間は一緒だとしてもそれから先はどうだろうか。私がもし大学に進学したら?就職したら?そう考えると少し不安になる。

 

 出来れば一緒にいたいが、これが家族愛なのか恋愛感情なのかははっきりと分からない。ただ言えるのは私が白夜の事を好いているという事だけだ。




ちょぴっと恋愛要素も思い出してみた閑話でした。
久々に書くと内容が薄くなってる感がありますね。本編では少し地の文を多めにして行かないとですね。

次回からは2巻の内容になります。相変わらず焦点は箒ちゃんに合わせていく予定です。オリ主?あぁ、あの最強すぎて扱いに困る人のことですね。本当にどうしよう……。




久々の更新で沢山の人に拝見していただき、更にはお気に入り登録までしていただきありがとうございます。

次回は「やって来た黒兎!ドジっ子成分は通常より大盛り!!」でまた会いましょう。
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