例えばこんな篠ノ之箒 作:々々
それはIS学園でも変わらない。
12月24日と25日の境目。子供たちがサンタからのプレゼントを楽しみにしながら眠りにつく頃、IS学園の食堂に四人の人影があった。それぞれが赤と白の、いわゆるサンタ服を身につけており、脇にはパンパンとなり中身がぎっしり詰まっている事が分かるほど膨れた袋が置かれている。
一人を除き皆真剣な表情である。そして一人が口を開く。
「こちらサンタ1。これより作戦を始めるわよ」
「サンタ2了解しました」
「サンタ3も了解だっ!」
「……」
「サンタ4!返事はまだなの?」
「サンタ4、了解」
「うん。それでいいのよ」
水色の髪をした
「それじゃ、わたしは2年生に。うつほ……サンタ2は3年生に。そして2人は1年生をお願いね」
むしろ、そこまで言ってしまったならわざわざコードネームに言い直すよりそのまま言い切った方が良いのでは、と
カチリ。食堂に設置されている時計が0時を示した
「
「えぇ」
「はいっ!」
「……」
一人を除きそれぞれがやる気に満ち溢れている。
「それでは、作戦開始よっ!!」
生徒会主催、第n回聖夜のプレゼント大作戦が始まった。……始まってしまった。
✩*.゚✩*.゚✩*.゚✩*.゚
サンタ服の女子が2人、足音を殺して1年生寮の廊下を歩く。
「まず最初は誰の部屋からだ、ラウラ?」
「サンタ3と呼べっ!サンタ4」
どうして私の義妹は面倒なのばかりなのだと思いながらも、取り敢えずのいいわけを考えてラウラに伝える。
「誰にも聞かれる心配が無いならば、わざわざコードネームで呼び合う必要は無いのではないか?」
「む……。確かに一理あるな」
楯無に事前にコードネームで呼び合うように言われていたのだが、楯無の言葉よりも箒の言葉の優先度が高いのですぐにいつも通りと呼び方に戻す。
「義姉様、まずはセシリアの部屋だ」
ラウラは袋を持っていない方の手で、サンタ服のスカートのポケットからマスターキーを取り出す。
「千冬さんがこんな子供だましの行事に快く協力してくれるとは思ってもいなかったな」
「教官もこの行事には乗り気のようだからな。たしか、教官の分のプレゼントが会長の袋の中にあったと思う」
「千冬さん……」
「大丈夫そうだ。ISのハイパーセンサーを使えたら一発なのだがな」
「流石にそこまでは千冬さんが許さなかったらしいな」
「ならば仕方がない。潜入するぞっ!」
小声でやる気のある声を出すという器用なことをしながら、千冬から預かったマスターキーを鍵穴に差し込み解錠する。抜き足差し足忍び足で足音を消しながら、部屋に入っていく。
この日、生徒達は自分のベットに靴下をぶらさせげその中にサンタに向けた手紙を入れる。その際、欲しい物を具体的に書くのではなく、自分の願いを書くのが決まりとなっている。そして、そこ願いに合っている、または近いものをサンタが靴下の中に入れることになっている。
そうは言っても予め生徒会による秘密裏の綿密な調査によって何が欲しいかは調べ尽くされているので、よっぽどのことがない限り本人が欲しいものが靴下に入れられることになる。
セシリアはふわふわとしたパジャマを着てナイトキャップを被り、すやすやと眠っている。
最初にセシリアの同居人のプレゼントを箒とラウラが靴下に入れる。そして、セシリアの願いを二人で確認する。欲しい物は知っているが、どんな願いで書かれているかは知らない二人だが、セシリアの願いが何であるかは容易に想像できている。
靴下の中から手紙を取り出す。そこには『もっと一夏さんを振り向かせたいですわ』書かれており、それは二人の想像と一言一句同じであった。
「予想通りすぎて拍子抜けするな」
「それを言ってはならないぞ義姉様」
「しかしだな……」
そんな会話をしながらもゴソゴソと袋の中から、セシリア洋のプレゼントを探す。1年生全員のプレゼントが入っている袋は、束の協力によって量子化機能付きのものとなり、四次元ポケットに近いものとなっている。
「ラウラは何をプレゼントするのだ?」
「私はコレだな」
袋の中から一冊の本を取り出す。表紙には『これで誰でも料理が出来るように!?初心者編《DVD付き》』と書かれていた。
「最近のセシリアは料理を頑張っているから、私としては下調べと違っていてもこれを渡そうと思っていた。義姉様は何を渡すつもりだ?」
放棄が出したのはこれまた本であった。タイトルは『鈍感な彼に私を意識させる20の方法《不器用なお嬢様編》』
「義姉様も本か」
「あぁ。プレゼントを買いに出かけた際に雑貨に置いてあったシリーズ物だから、そこまでの信用度は無いと思うのだが、少しでもセシリアの役になればいいと思ってな」
『〇〇な彼に私を意識させる▲▲の方法《××編》』は巷で話題になっている本であり、書かれていることの殆どが女性からしたら些細なことであるのに、彼に振り向いてもらえたという声が数多くあるシリーズであった。
当然そのことを箒は知らなかった。そして知らなかった事が災いし、一夏をめぐる恋愛戦争にさらなる火種を与えることとなったのだが、これはまた別のお話。
「これでこの部屋は終わりだな」
「それでは、次の部屋に行こう!遅れるなよ義姉様」
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「次は鈴の部屋だな」
「鈴とティナの部屋か」
セシリアの部屋に引き続き数個のプレゼントを配り、ある程度のコツを掴んできていた。あらかじめ資料として生徒の好みが渡されているため、特段悩むことなくぱぱっとプレゼントを決められている。
同様に部屋に侵入する。ティナは綺麗な姿勢で寝ている。それとは逆に鈴は布団を蹴り飛ばして縮こまりながら寝ている。暖房が付いているものの、冬に寝巻き一枚だけで寝るのは体に悪いと思い、箒は落ちている布団や毛布を鈴にかける。
「年頃の女子としてはどうなんだ……」
「鈴だから仕方がない」
二人してため息をつき、ティナと鈴の靴下から手紙を取り出し書かれている内容を見る。
『(ルームメイトが原因の)ハチャメチャな日常に負けない精神力』
『一夏がアタシに振り向く』
「鈴は直球すぎる。そしてティナの願いは泣けるな」
「ラウラ言ってやるな。ティナの大変さは私とラウラが最も分かっている」
現在一夏を中心として4つの派閥に生徒は分かれている。一夏と恋人になろうとする専属機持ち達、一夏と楽しくお話できればいいという人達、男子軽視して一夏を視界に入れてすらいない人達。そして、いずれにも所属していないが故に周りに振り回される人達。
この部屋にいる鈴以外の者は一夏に特別な感情を持っているわけではないため、一番最後の派閥に所属している。
「それでは先ずは鈴のプレゼントを」
袋の中からラウラは『チャイナ服』を、箒は『朴念仁な彼に私を意識させる10の方法《幼馴染とは言えないけど腐れ縁で終わらせたくないツンデレ編》を靴下に入れる。
「義姉様あまりにもピンポイント過ぎないか?」
「私もそうは思ったが、ここまでくれば何かしらの作為があると思ってつい買ってしまった」
「確かに私も見つけたら買ってしまうな」
「しかしラウラのそれもどうなんだ?」
「流石の一夏でもこれを着た鈴を見れば振り向くだろ?」
「二度見は確定だな」
続いてはティアの番。二人はどちらも袋から数枚の紙を束ねた物わ取り出し靴下に入れる。
「ラウラは何を入れたのだ?」
「私は『エステ倶楽部《女王蜂の休憩所》』の特別優待券のセットだ。義姉様は?」
「私も似たような感じだ。『秘密美食倶楽部《XXX》』のお食事券のセットだ」
ともに学園内の非公認団体ではあるがそのリフレッシュの効果は抜群で、秘密裏にチケットが売買されているという噂もある。これで一緒に頑張る仲間が再び元気になればと二人は願う。
「よし。これでいいだろう」
「そうだな。長居したら気づかられるかもしれないから、次に行こう」
もう一度鈴の掛け布団を整えて部屋から退散していく。
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「次は私とシャルロットの部屋だな」
サンタ業もあと2部屋という所までやって来た。様々な苦難が2人の前に立ち塞がることもあったが、力を合わせてそれを幾度となく粉砕した。
始める前は3時間は多すぎるのではないかと思っていたが、じっさいここまでやるとあれこれするうちに時間がギリギリであると分かる。
「シャルロットは寝ているのか?」
「あぁ。私がサンタになる一時間前から眠っていた。随分とサンタが来るのを楽しみにしているように見えた」
ラウラは数時間前のシャルロットとの会話を思い出す。
☆
いつもの寝間着に着替えたシャルロットはいそいそとバレないように何かの準備をするラウラに話しかける。
「ねぇラウラ。今年はサンタさんが来てくれるかな?」
『サンタ』という単語にラウラは体をビクッとさせるが、ベッドに潜り込み目を閉じているシャルロットはそれに気が付かなかった。
「心配なのか?」
出来るだけ声からバレないようにするが酷く声が震えている。しかし、サンタが来るかどうかが気になるシャルロットはそれにも気が付かず、ラウラに訊かれた事に対して答える。
「うん。今年はいい子にしてなかったから心配なんだ。男装してIS学園に潜り込んだり、嘘ついたりしたから」
「そんなことは無い。シャルロットはいい子だった。それに、その程度でシャルロットにサンタが来なければ私には絶対サンタは来ないだろう。私に少しの望みも与えてくれないのか……」
「うぅ。ごめんラウラ。それだとラウラも可愛そうだから、サンタさんが来るって信じるよ」
「それがいい。私な元にもサンタが来てくれると信じることにする」
サンタの準備を終えたラウラは部屋のライトを消すために、スイッチまで移動する。
「それでは早く寝なくてはならないから、電気を消すぞ」
「うん。それじゃお休み。ラウラも早く寝るんだよ」
ラウラがサンタの服に着替え部屋を出る頃には既にシャルロットはすやすやと眠りについていた。
☆
「シャルロットが楽しみにしているのならば、しっかりをサンタをしなくてはならないな」
改めて箒はそう思い、ラウラは鍵を開ける。出てきた時と同様にシャルロットが眠っていることを確認し、部屋への侵入を開始する。
「シャルロットはいつもこの格好なのか?」
赤ん坊のように丸まって眠っているシャルロットは白猫のパジャマを着ている。その2つが相まってシャルロットは猫の様である。
「私もよく黒猫の方を一緒に着せられる」
箒としてはそっちの方ではなく、シャルロットが丸くなって寝ていることのほうが気になった。何かの本で一度寝ているときの体制が深層心理と関係あるというのを見た気がする。
それはそうとラウラのもこのパジャマを着ているのか。それも黒猫と来たならばさぞかし似合うのだろうな。これは場違いな思考だな。と再び気持ちを切り替える。
「シャルロットの手紙を見よう」
「そうだな」
下げられている靴下の中の紙を取り出し内容を読む。そこには綺麗な字で『一夏と一緒にいたい』と書かれている。
「健気だな」
「シャルロットらしい願いだ」
残り少なくなった袋からシャルロットへのプレゼントを探り取り出す。願いが事前調査と違ったとき用に生徒数以上のプレゼントもあるがそれは別枠として保管されているので、それ以外のそれぞれのプレゼントは渡さなかった数個と次の部屋の分だけとなっていた。
そして箒のプレゼントは『恋心に気付いてくれない彼に私を意識させる5の方法《男装経験があるフランス女子編》である。
「先程から方法の数が少なくなっていないか?」
「さっきの2つが多いだけでこれくらいが普通だ」
「それに場面状況がシャルロットにピッタリあっているし……」
「よく分からないニッチな所までカバーしますがうたい文句らしいからな」
「そうだったか。なら義姉様は何を買ったんだ?」
「私か?私は『絶対恋心に気づいているのに普段通りに接してくれる年上の彼に……』はっ!?ラウラっ、何を言わせるっ!?」
もののはずみで自分が買ったものを言ってしまった箒は大きな声で慌ててしまった。そしてラウラは急いで箒の口を手で塞いだ。
「シャルロットが起きてしまうっ!」
その言葉に箒もはっと気づき、恐る恐るシャルロットのベッドに目を向ける。
「す、すまなかった」
布団の中でシャルロットが動く音がする。二人は息を潜め起きないように祈る。そのお陰かすぐにシャルロットは動かなくなった。
「危なかった。すまん、ラウラ」
「いきなりあんなことを聞いてしまって私も悪い」
二人が安堵したのも束の間。シャルロットが布団の隙間からこちらを覗いていた。
「あれ?さんたさん?」
慌てて顔を見合わせてアイコンタクトを図る。すぐにどうするかは決定し、それに沿って二人は行動を始めた。先ずはラウラのターンから。
「ワタシハサンタジャアリマセン」
初手で敗北を確信し箒は別の手を考える。シャルロットはラウラの無理やりすぎる片言のせいで、むしろ逆にサンタだと思い始めているようで、暗闇の中でもわかるくらいに目をキラキラさせている。
「どうするのだラウラ。残りは1部屋だけだが、残されている時間もあまり無い。この場をどうやって凌ぎ切る?」
「義姉様これを」
ラウラが袋からプレゼントを取り出し箒に渡す。
「どういうことだラウラっ!」
「私達の使命を全うする為には少なからず犠牲が必要だ。このままだと二人共倒れとなってしまう。だから……」
「しかし」
「早く行ってくれ。こうなったシャルロットはなすがままにされるしか対処法がない」
「くっ」
「ここは私に任せてくれる義姉様」
「ラウラの思いは確かに受け取った。あとは任せてくれ」
箒はラウラの
「あれ?もう1人のサンタさんは?」
「他の子にもプレゼントを渡さねばならない。それを彼女に任せた」
「じゃあここにいるサンタさんは?」
「私はシャルロットが眠りにつくまで一緒にいてあげよう」
「ほんとぅ?」
「あぁ本当だ。先ずは歌を歌ってあげよう」
ラウラはシャルロットの布団に入り手を繋いで歌を歌った。心ではこれから箒が勇気を出せるように応援しながら。
前編後編の2つからなるクリスマスの話。時系列的には本編が終了している頃。恐らく矛盾は生じないはず。
そして箒とラウラがの書き分けが出来ないとかいう致命的な弱点を発見時しました。読みづらくてすみませんでした。