例えばこんな篠ノ之箒   作:々々

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はっちゃけ黒兎②/物語の裏側②


原作2巻 その弐

 あの後何とか逃げたり、防いだりして他のグループが終わるまで持ち堪えることに成功した。どうして私がこんな目に、と思っても仕方がない事だ。

 

「初めての者もいたと思うが、ISの操縦の基本は覚えることは出来たな?これからも暫くは基本の確認になるから、自分は何が出来て何が出来なかったをキチンを覚えておけ」

 

 女子たちの「ハイッ!」という返事が返る。千冬と真耶は時計をちらりと見て、まだ少しばかり時間があるのを確認する。

 

「織斑先生。少し時間がありますがどうしますか?」

 

「そうだな。時間があるなら軽く演習でもしてみるか、誰かやってみたいものはいるか?」

 

 一つの手がびしっと上がる。他の生徒よりも小さなところから上げられた手はみんなの視線を集める。

 

「ラウラか……。他にはいないか?」

 

「教か…、織斑先生っ!よろしければ相手を指名させて頂いてもいいですか?」

 

「ほぅ。誰だ?」

 

「篠ノ之箒です」

 

 本人も含め、一組全員が納得する。

 

「ラウラ・ボーティヴィッヒ。それなら一夏のほうが良いのではないか?教室でライバル宣言をしていたではないか」

 

「私とヤツが戦うのはこんな場では相応しくない。なんて言ったってライバルだからな。それ相応の場所というものがある」

 

「……なら私は何なのだ」

 

 ため息を漏らす。

 

「篠ノ之、お前はどうする?」

 

「一応確認しますが、それって断る事は?」

 

「出来ると思うか?」

 

「是非、やらせていただきます」

 

「それでは皆のもの、観客席に向かえ。そこまでの戦闘にはならないが、ここで見るよりもあっちで見た方が分かりやすいだろうからな」

 

 既に諦めモードの箒とやる気満々のラウラが対照的に映る。1組のみんなは心の中で箒に手を合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ。初日に貴様と戦うことが出来るとは、私も運が良い」

 

「どうしてそこまで私に何かしらを仕掛けてくる」

 

「なに、貴様がおにいちゃんの恋人ならばどれ程の腕なのか確認せずにはいられない。何故ならば私は妹だからなっ!!」

 

 頭痛が痛いと言ってしまうほど、箒は既に手一杯である。朝に言われたおねーちゃんとはその事だったのかと理解する余裕もない。

 

「『おにいちゃんの恋人』だと?」

 

「なに?貴様ではないのか?」

 

「私に恋人はいないが。まずおにいちゃんとは誰だ?」

 

「それは……。っと、話を続けたいところだが先生方の準備もできたようだ。武器を構えろ」

 

 肝心な事が聞けないまま戦闘の始まりまでを数える、真耶の声が流れる。箒は再び葵を取り出し構える。ラウラもプラズマ手刀を発動し構える。

 

「それでは行くぞっ!篠ノ之箒っ!!」

 

 いつものIS訓練でのスピードよりも格段に早くラウラが距離を詰め、手刀を振り下ろす。

 

「くっ!」

 

 予想だにしない速さに、少し反応が遅れつつも葵で受け止める。すかさずもう片方の手刀が襲い掛かってくるが、葵を押しラウラとの距離を無理矢理作る。

 手刀は虚空を突き。その間に箒は姿勢を整える。

 

「やるな篠ノ之箒」

 

「そういう貴様もやるなラウラ・ボーティヴィッヒ」

 

「ラウラでいい」

 

「それなら、私も箒でいいさっ!」

 

 地面を強く蹴り近づく。慣れ親しんだ様に刀を振るう。少しのブレもなく狙い通りの所に刀は進み、ラウラのワイヤーブレードによって阻まれる。

 

「甘いな」

 

 プラズマ手刀とワイヤーブレードによる多方向による攻撃を一本のみで捌くのは困難と判断し、襲いかかる2つのワイヤーブレードを斬り無理矢理逃げ道を作る。

 しかしラウラの攻撃は終わらない。計四本の剣を使って逃げ道を無くすかのように攻撃する。対する箒は葵一本で僅かな隙間を作り、攻撃をかわす。

 

「やるなっ!」

 

「そんな笑顔で言われても、嬉しくはないのだがなっ!」

 

 ラウラ攻撃の手を増やすのを感じ、ブースターを使って一度後ろに下がりもう一本葵を取り出す。ラウラの更に増えた6本VS箒の2本。

 他の人からすれば箒の方が不利に見えるが、実際戦っているラウラからすればたかが一本増えただけなのに先程より勝手が違う。

 こちらが攻めだったはずなのに、いつの間にか守りに入っている。一本でこちらの剣6本を捌き、その隙間にもう片方の剣を差し込んでくる。どれだけスピードを上げても、それより早く剣を振られる。

 

「っ!不味いっ!」

 

 ワイヤーブレードの制御が甘く、その隙間をこじ開けられてしまった。プラズマ手刀で対処しようとするが間にあわず、仕方なくレールカノンを使う。

 

「くそっ!」

 

 悪態をつきながら距離を取り、迫りくるレールカノンの対処に移る。対処の方法は簡単。迫ってくる砲弾を只斬るだけ。音をも置き去りにして砲弾を斬る。

 

「これで終わりか?」

 

「レールカノンを斬るなど、貴様人間か?」

 

「そのつもりだが……?」

 

「これは使いたくなかったのだが、仕方があるまいっ!」

 

 片方のプラズマ手刀を解除して、その手を前に掲げる。その不自然な動きに疑問を感じつつも、箒は突進を仕掛ける。

 

「かかったな」

 

 ニヤリとラウラが笑う。観客席から見ると、ラウラが手を前に出しただけで箒が止まったように見えている。

 

「くっ!なんだこれは……」

 

「私のISの機能なのだが、できれば使いたくなかった。しかし、これほど箒が動けるならば致し方あるまい」

 

「動けないか……」

 

 どれだけ剣を振るおうとしても腕が一ミリたりとも動かない。

 

「これはAIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)と言って、簡単に言ってしまえばPICを使って動こうとする際に逆の加速度を与えるものだ。対処法はいくつかあるが、そのISでは無理だろう」

 

 レーザー武器が無いその装備では、と付け加える。正直言って箒には打つ手無しとなった。それに、午前の授業が終わるまで残り数分のためこのまま終わりとなっても良いのだ。

 しかし、負ける事はしたくなかった。()()()が動きを止められるくらいで負けるのならば、白夜と対等になるのは夢のまた夢。

 ――考えろ、考えるんだ。ラウラはなんと言った。動きと逆の加速度を与えると言っていた。それはきっとあのISの演算を経て、発揮されるはずだ。それならば、一度逆方向に力を入れ、コンマ一秒で本来の向きに力を入れれば良いのではないか。

 機械すら欺く速さで動けば不可能ではない。流石に生身では成功率は五分五分だろうが、今はISに乗っている。失敗はするはずも無い。落ち着け私――

 

「どうした?これで終わりか?」

 

「そんなわけがなかろうっ!」

 

 箒の体は予定通りに動いた。AICの演算を誤魔化し、本来動きを妨げるために加えられる加速度を見方につけ、かつて無い速さで移動する。

 思ったより早い移動にラウラが、そして箒も驚く。剣をふることができず、蹴りをラウラに食らわせる。

 

「なっ!」

 

 土煙を上げるほどの速さで地面に落ちる。それ程機体にダメージ入っていない。予め出来るだけ機体を傷つけることが無いように忠告されてきたからだろうが、コレはラウラの心に火を着けた。力が足りない。ラウラはそう思った。善悪を問わず、とにかく目の前にいる箒と戦うための力が。

 

 するとラウラ以外の時間が止まった。

 

 そしてどのからか声がする。「力が欲しいか?」「誰でも無い、君が「君でいるために」「それが君を飲み飲もうと「君はそれが欲しいか?「欲しいだろう」

「それならば望め」「力が全てだと「力以外はないもいらないと「君が君じゃなくなってもいいと」

「叫べ、その一言を「力を手にするための言葉を「魔法の言葉を「呪いの言葉を「その言葉は」

 

「起動せよVT(ヴァルキリートレース)システム」

 

 

 再び時間が加速する。ラウラは呆然と、頭の中に流れて来た言葉を繰り返そうとする。

 

「起動せよ、ヴァルキリートレース……」

 

 しかしその言葉が言い終わることは無かった。土煙を切り裂くように箒が降り立つ。

 

「どうしたラウラ?私はまだまだ戦えるが、お前はどうだ?」

 

「ほう……き」

 

「うん?顔色が悪いが大丈夫か?」

 

「くっ!鎮まれっ!」

 

 不完全ながらも起動ワードを言ってしまったため、ラウラの機体が足元から元の黒から泥のようにドロドロした何かに変わっていく。それに違和感を感じた箒は行動を起こす。

 

「ラウラっ!取りあえず、侵食されているところ以外のISを解除しろっ!」

 

 それは偶に束から送られてくるIS関連の資料に乗っていたVTシステムに良く似ていた。しかしそれはある程度のダメージが蓄積されない限り発動しないと書かれていたのだが、今回は発動してしまっている。

 

「大丈夫だラウラ。落ち着け。私は何もしない」

 

 上半分のISを解除したラウラのことを、同じくISを解除した箒が抱きしめる。柔らかな感触がラウラを包む。千冬が他の生徒を避難させ、二人に放送で呼びかけるが届いていない。

 資料に書かれていた発動条件は機体ダメージの他に搭乗者の精神状態も関わると書かれていたことを思い出す。

 

「私の心臓の音だけに集中しろ。私はラウラの事を攻撃しない、だから安心しろ。ここには敵はいない、私達二人が寄り添っているだけだ」

 

 ラウラの荒かった呼吸が次第に収まる。泥は無くなり、展開されていた残りの部分も消える。

 

「大丈夫か?ラウラ」

 

「すまなかった……」

 

 それだけ言ってラウラは意識を手放した。間もなく千冬がやってきて、二人を保健室へと連れて行った。

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■

 

「という事なんですが。束さんはVって名前に聞き覚えはありますか?」

 

『そんなVなんて頭文字言われただけじゃ流石の束さんもわからないかなー。クーちゃんはどう?』

 

 先程までいた牢獄から一部屋移動した通信室で、白夜と束そしてクロエは会話をしていた。先程開放したブルーは別室でシャワーを浴びている最中である。

 

『Vですか。今まで通りに色で言うと、やはり紫に関係しているのでしょうか』

 

『でもでも、ブルーっちは青って感じじゃないよ?それこそ紫か髪の色の赤だって』

 

「殆ど付けられる名前なんてそんな物よ」

 

 扉からシャワーを浴び終え、IS学園の制服に着替え終えたブルーがやって来る。モニターの前の椅子に座る。

 

「私のBは余り物の中で選ばれただけだし、案外Vもそんな感じかもね」

 

『……あっ!』

 

『どうしたのクーちゃん?』

 

『一つの名前の理由が分かりました。が、その人のヒントにはなりそうに無いですね』

 

「そうですか」

 

『なんで白くんはそこまでVくん、Vちゃんかもだけど、その子のことが気になるの?』

 

「いえ、ただ胸騒ぎがするので。これと言って深い意味は無いんですよ」

 

 テーブルに置かれたお茶を飲み、話で乾いた喉を潤す。

 するとピーピーと機械が音を上げる。それは目の前の物ではなく、モニターの先の機械からする音だった。

 

「どうかしましたか?」

 

『なんか学園のアリーナでやばめの事が起こったかもかも』

 

『これはVTシステムの起動!?』

 

『まだそんな醜悪なものが……ってこれ箒ちゃんの近くだよっ!?』

 

「VTシステム?」

 

「『強くなるなら強い人の模倣をすればいいんじゃね?』みたいな奴だよ。ウチもそれに似た事はされたからある程度は知ってる」

 

「なるほど」

 

『なんで、そんなに落ち着いてるの!?箒ちゃんがピンチかもなんだよ?よく分かんないけどカメラは土埃のせいで使いものにならないしーっ!』

 

「箒ちゃんなら大丈夫ですよきっと。私の弟子ですし」

 

「あー、あのアタシをぶっ倒した子ね。あの子良いわよね、きっと私でもアレコレ教えてたかも」

 

「それなら今度会った時にでも教えてあげて下さい。私が教えると偏ってしまうので、貴女なら箒ちゃんも付いてくると思いますし」

 

『あ゛ーーっ!どうして二人はそんなに落ち着いていられるのかなっ!?』

 

 アリーナで箒が戦っている中、束もまた自由人二人に振り回され大変な思いをしていた。

 

 

 そんな大変な思いをした束だが、後日VTシステムの資料が役にたったと箒に感謝され、箒とクロエがドン引きするほど喜ぶのでまぁ良しとしていいだろう。




戦闘シーンの書き方が分からないです。これでいいんですかね。駆け足気味になってしまう。
強い人たちの戦闘シーンって強すぎて長く書けないんですよね……。

とまぁ、箒ちゃんとラウラのアレコレはまた次回という事で。
白夜との絡みは本編では書けないかもですね。




次回

ラウラ「だって私も一緒に居たかったもん」

箒ちゃん「それなら私は今日からラウラの姉だ」

VTシステムちゃん「にゅふふ、次は覚悟しとけよ」

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