例えばこんな篠ノ之箒 作:々々
短いですがお楽しみください。
箒と一夏は、夕日が差し込む教室に二人でいた。教室には二人以外の姿は見受けられない。
箒は向かい合う一夏の顔を直視出来ず、視線を斜め下に向けている。その頬は夕日のせいか少し赤くなっているように見えた。
珍しくもじもじとして、手遊びをすること数分。顔をあげ、また少しの沈黙のあと箒がついに口を開く。
「い、一夏!! もし私がトーナメントで優勝したら……私に付き合って欲しい!!!」
一世一代の告白のような勢いのあるものだった。
一度あげられた顔は再び床を見つめていて、箒の表情は読み取れない。
「それくらいならいいぞ」
「本当かっ!? 嘘話だぞ!」
「幼馴染の頼みごとを断るわけがないだろ」
一夏は、軽く返答した。
その返答に箒は下を見たまま笑みを浮かべ、小さくガッツボーズをする。その姿は歳相応の少女のものだった。
そんな一幕を廊下から覗き見していた一人の少女がいた。
気配の消し方は家の事情で身につけたものであり、普段の箒ならともかく、緊張している箒は気づくことができなかった。
「ま、まさかしののんが!? しののんは雨宮さん狙いだと思っていたのにぃぃ!!」
本音は器用に小言で叫び、気づかれてはいけないと自分で口を塞ぐ。バレてないか恐る恐る廊下から教室の中を確認する。
箒はまだ下を向いていて気づいた様子はない。しかし、恋心以外に鋭い一夏は気付いたようで、キョロキョロと周りを見回している。
「どうかしたのか一夏?」
「なんか声が聞こえた気がしたんだけど。気のせいだったかな?」
本音は廊下を駆け教室から離れる。クラスの皆にこの事を知らせないと、その一心で人が集まっているであろう食堂へ向かう。
しかしその途中で本音は千冬に見つかってしまった。
何とかその場を抜けられたものの、食堂についた頃には何を見て何を言おうとしたのか忘れてしまっていた。
「あのね! みんなみんな!」
「本音落ち着いてよ。そんなに息荒くしてどうしたの」
「それはみんなに伝えたいことがあったんだけど、織斑先生に見つかっちゃって、叱られて」
本音の一言に『千冬ガチ勢』の皆が本音の周りを囲む。伝えたい事をまた塞がれ、本音の記憶はぐるぐる分からなくなる。
「何を言いたかったの本音?」
「あれ? なんだっけ?」
すっかり記憶を忘れてしまった本音は腕を組み、記憶を探り何とかして伝えたかった事を思い出す。
ウンウンと唸ること数分。お腹も減って、食堂のお姉さん達に作ってもらったご飯を食べ終える。
「あっ! 思い出したよ」
ふとした拍子に本音は思い出すことが出来た。
「あのね! 今度あるトーナメントで優勝したらおりむーと付き合えるんだって!!」
本音の一言に食堂のみんなが沸き立つ。
ここにいるのは一年生のみのため、トーナメントの詳しい説明を聞くためにご飯を勢い良く食べ、片付けをして職員室に向かって走り出した。
「なーんか違う気もするけど、まぁいいか」
爆弾を投下した本人は幸せそうにケーキを食べた。
◆
そんなことがあった次の日でも、何かが変わるわけでもなく。一夏の話が一夏をめぐるトーナメントの話に変わっただけである。
この原因となった箒はというと、こちらもまたいつもの朝の鍛錬を終え、教室でいつものメンバーと話をしていた。
ここでも話題は一夏についてだ。
「トーナメントで優勝すると一夏かシャルルと付き合えるのか。二人とも大変そうだな」
「そうなの。本音がどこからか情報を持ってきてね。みんな大騒ぎなのよ」
「う、うん。そうなの! 私が聞きつけたんだよ」
箒と話をする事によって本音は昨日のことを完璧に思い出した。同時に昨日の会話について少し違和感を覚えた。
箒が白夜ではなく一夏に恋心を抱いていた、というすぐ分かることの衝撃で思考停止していた。しかし今思うと何処かおかしい。箒が白夜以外に惚れるわけもないし、ましてや今の反応だ。
箒と一夏はそんな約束をしてなかったのではないか。
どうしても違和感が拭えなかった。ここはいっそ箒本人に聞いてしまおうとするが、ここで邪魔が入る。
「
転校初日以外、ラウラのクラスでの立ち位置は大きく変わった。一夏と箒にいきなり声をかけ、自分の世界観を全面に押し出したような会話をしたため、近づきがたい印象を持たれていた。
しかし翌日になるとその印象はどこかへ飛んでいった。なんと言っても「ねーさまねーさま」と箒に駆け寄り、抱きつく姿はみんなの心を掴んだ。
「見てないし、貼られていたことすら今知ったのだが」
「ふふふ。それならば私が義姉様に教えてやろう」
腰に手を当ててドヤ顔をするラウラに1組の皆は心を撃たれる。ラウラは箒がお願いしてくるのをドヤ顔をしながらウズウズしながら待つ。
「どんなことだ?」
「なんとだっ! 今年からトーナメントがペア戦になった。つまりコレで義姉様と一緒にISに乗ることが出来るようになった!」
キラキラと上目遣いで『私とペアを組んで欲しい』と箒の方を見る。
箒も箒で自分も白夜にこんな事をしたなと懐かしみながら、ラウラの頭に手を置く。
「ラウラが私と組みたいと思うなら私も嬉しい。是非二人で優勝を目指そう」
その言葉にラウラの目はより一層輝く。
「それでは今から申込用紙を出してくる!」
軍で鍛えた脚力であっという間に教室から飛び出し、すぐに見えなくなってしまった。
箒はその光景を優しい笑顔で見送る。
「しののんが何だかお母さんみたいだー」
「ダメだよ本音。篠ノ之さん気にするかもよ」
「気にしてないが? 私も昔白夜に同じようなことを言っていたなと懐かしく思っただけだ」
それこそお母さんの思考だよ。
みんなの心のシンクロした。
「でもでも、しののん と らうらっちがペアになったら私たち中々優勝出来なくなるんじゃないかな」
「それは困るわね。私達が織斑くんやデュノアくんと付き合う可能性が減っちゃうわ」
「俺とシャルルがどうかしたのか?」
どこからともなく現れた一夏がいきなり話に入ってきた。これには接近に気がついていた箒と本音以外が驚きの声を上げる。
一夏とシャルルはみんなが何故こんな行動をとったとか分からずハテナを浮かべる。
「トーナメントで優勝すると一夏とムグッ!」
「俺と?」
「何でもない! 何でもないよ!」
「そうそう! トーナメントで優勝するために織斑くんやデュノアくんと練習出来たら良いなって話だよ。ねー、みんな」
「うんうん」
箒が二人に秘密にしなければならない事を言ってしまいそうになるのを皆で箒の口を塞ぎ、その場を逃れるため誤魔化しの言葉を言う。
デュノアは少しおかしく思うが、恋愛事が関わっているため一夏はそのままの言葉を受け入れる。
丁度その時、朝のHRがタイミグ良く鳴った。
「おっとチャイムが鳴っちゃったね。もっと織斑くんたちと話をしたいけど戻らなきゃー」
「織斑先生に怒られるもんね」
それぞれがラッキーと思い自分の席に戻る。
一夏は千冬姉に怒られまいとそそくさと席向かう。
「これからHRを始める」
「みなさん席についてくださーい」
教室に入って来た千冬の手には、猫のように掴まれているラウラがいた。
それによって更にラウラの印象が変わったとか。
◆
「義姉様! これからトーナメントの対策会議を始めるぞ! 筆記用具などの準備はいいか?」
一組の殆どはトーナメントのペアの申し込みや練習機の予約などなど、トーナメントにむけての行動に移っているため教室にはあまり生徒がいない。
ラウラは律儀に靴を脱いで、自分の机の上に立って椅子に座っている箒に指さす。
「そこまでする必要もないだろう」
一方箒は熱いラウラとは対象的にどこか冷めている感じだった。もちろん一夏との約束を叶えるために優勝を目指すつもりではあるが、ラウラほどマジで準備をするつもりはなかった。
「ダメだぞ! やるからには常に本気だ!」
「そ、そうか」
「まずは作戦を立てる必要があるな。義姉様がどれだけISを動かせるかはあの一度だけではわからないからな、これからアリーナに行って確認することにしよう」
机の上から降りて靴を履く。
箒の手を摂ってアリーナに向かおうとするが、箒はその場から動かない。
「どうした?」
「今日いきなりは無理だな。3日後なら出来るが、その前になるとIS抜きでの訓練しかできない」
「義姉様はISを持っていないのか!?」
「それはそうであろう。私は国家代表でも候補生でもないのだから、ISは予約を取らないと乗れない」
出鼻をくじかれたラウラは、腰から崩れ地面に手をつき倒れる。だがしかし、ラウラはこんなことでは挫けない。なぜなら、箒と一緒に何かをやるのが楽しみだからだ。
「そ、それならば今出来ることをするまでだ!」
「となると作戦会議か」
「うむ! どこかいい場所はないか?」
「それならばアソコがいいだろう。遅くまで話し合っても迷惑にならないし、別の目的も成し遂げることができそうだしな」
箒の言う場所がわからないラウラは?を浮かべながら箒の後に付いて行った。
新生活で忙しいですがモチベをあげて頑張ります