例えばこんな篠ノ之箒   作:々々

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皆さんの応援のお陰で早く投稿できました。

前の話は誤字が多く、今回は気を付けたつもりですが今回も多かったらすいません。たぶん、何個か有るとは思います…。


原作1巻 その弐

 箒の朝は早い。日が出てない内から準備をして、日が出て間も無い涼しい時から鍛錬を始める。校庭から少し行った所に在る大きな木が作る木陰で、竹刀を降ることがIS学園に来てからの日課となっていた。

 

 徐々に身体を温め十分に温まったら竹刀を木刀に変える。白夜との生活で型の練習の際は木刀の方がブレが少なく振りやすかった。初めにやる型は篠ノ之流だ。まだ父の様に力強くも、白夜の様に滑らかで美しくは出来ないが、日に日にその完成度は上がっていた。

 

「ふぅ」

 

 木刀を木に立て掛け息を吐く。漸く篠ノ之流の型を一つの舞として出来るだけの体力を身に付けられた。それを実感する。額を流れる汗を拭こうとして部屋から持って来た道具袋の中を探すが見つからなかった。

 

「忘れてしまったか」

 

 このまま汗を流し続けて練習し、部室棟のシャワーを使おうかと思っていると視界の端からタオルが差し出された。

 

「ありがとう」

 

 誰から差し出されたかを確認せず先ずは汗を拭く。タオルは冷水で冷やされ、火照った身体には気持ち良かった。汗を拭き終わり、タオルを貸してくれた人を見て口をパクパクさせる。

 

「やっぱりタオルを忘れてましたね箒ちゃん」

 

 少し青が混じった黒い着流しを身に纏う白夜が居た。

 

「びゃ、白夜!!いつから見ていたっ!?」

 

「大体3日前からでしたかね」

 

 箒としては今日の何時からか聞いたつもりであったが、3日前と聞いて固まってしまう。

 

「私の元を離れてからも鍛錬を続けていたみたいですね」

 

「はい。こうしている方が気分が落ち着くので」

 

「なるほど」

 

 うーんと唸る。

 

「少しばかりズレが有りますね。剣を構えてもらえますか?」

 

 白夜に言われた通り木刀を構える。すると背中の方から腕を伸ばし、箒の腕を触る。既に見稽古を終え、大方の部分の習得は済んでいる為、残った細かい部分の修正は直接教えてもらった方が、感覚派の箒にとって言葉の説明よりも性に合っていた。

 

 30分ほど身体をくっつけていたがいつもの事なので、恥ずかしがったり、喜んだりする程の事ではなかった。白夜は仕事がある為別れを告げ、箒も自室でシャワーを浴びる為部屋に戻った。

 

「おはよう篠ノ之さん」

 

「ああ、おはよう鷹月」

 

 同室者の鷹月が起きていた。珍しく既に制服に着替え終わっている。その事を不思議に思いながら手早くシャワーで汗を流す。

 

「鷹月が既に制服を着ているとは珍しいな。いつもなら私が戻ってくる頃に目を覚ますというのに」

 

「偶然目が覚めちゃって散歩してたの。そしたら良いのもが見れたし」

 

「ん?なにか言ったか?」

 

 最後の言葉を聞き取れず聞き直したが、何でも無いと誤魔化された。近い内に先程の鍛錬の写真、傍から見ると白夜が箒に後ろから抱きついている写真を見せられ慌てる事になる。

 

 

 

 

 その後鷹月と一緒に一夏の個人部屋に行き、そのまま三人で食堂まで向かう。知り合いの居ない一夏を思っての行動でもあり、彼の事が気になっている娘への手助けの意図もあった。予め朝食をゆっくり食べている時間が無いことを伝えていた為、一緒に食べていた皆は朝のHRに遅刻せずに済んだ。

 

 そして昼休みが終わり、午後一番の授業は日程を変えHRの時間となった。内容は学級長を決めることだった。仕事の内容が説明され、自薦他薦問わないと千冬が言うと一夏が推薦された。当然本人は断ったが自薦他薦問わない為、その要望は却下された。

 

 諦めるしかないと思った時、イギリスの代表候補生のセシリアが自薦した。一夏としてはこのまま上手い具合にセシリアがやることを望んでいたが、セシリアが日本や男性を下に見た発言をしてしまい、それに対して一夏も乗ってしまった。売り言葉に買い言葉。来週にISを使った決闘をすることが決まった。その際ハンデの話となり、一夏が「いらない」と云う発言にクラスの女子数人が反応し、「つけてもらったほうがいい」と言った。

 

 一夏の立場が危うくなった時、狙ったかの様に教室の扉が叩かれた。副担任の真耶が確認しに行くと白夜が本を持ってやって来たのだ。詳しく聞くと一夏の紛失した参考書を次の時間の授業の有ると便利な為、HR中に持って来たらしかった。丁度HRが一段落していた為、教室の中に入り直接一夏に手渡し、不備がない事を確認し教室を出て行こうとした。

 

 その時だ、一夏と対決する事となり気分が良いセシリアが言ってしまった。

 

「貴方、用務員としてここに勤めてますが、男がそんな事をして恥ずかしいとは思いませんの?」

 

 あからさまに白夜を中傷する発言だった。

 

「おいアンタ!!」

 

 一夏はそんなセシリアの事を立ち上がり怒ろうとしたが、近くにいた白夜に腕を取られ止められた。

 

「私はただこの学園にお願いされたから来ているのであって、別に恥ずかしいなどと云う感情は無いのですが。私が頼まれたのは用務員としての仕事と、有事の際の生徒の保護ですから。私は只それを全うするだけですよ」

 

「貴方のような男に助けられたくないですわ」

 

 女尊男卑の思想の性で『女性は自分の身を自分で守り、男性は自分の身を女性に守ってもらう』という考えを持つセシリアにとって、白夜の言葉は気に入らなかった。

 

「そう言われましてもね。ならこう云うのはどうでしょう。私は一応剣をそれなりにやっています。なのでこの学園の剣道部と戦う、と云うのは。もちろん貴方方が望むならIS共戦ってもいいですが。それでは、学園の方に負担がかかってしまいますしね」

 

 貴方がそれなりなら私はどうなるんだと箒は思った。また、彼の言った負担というのはアリーナが使えなくなる事ではなく、ISが一機使い物にならなくならという事なのだが、生徒達には伝わっていなく、ISと戦って勝てる気でいる彼の事を笑った。

 

「欲を言っていいならこのクラスの篠ノ之さんと戦ってみたいですね。去年の全国一位らしいので、どうですか織斑先生?」

 

「私のクラスの者の失言だ。貴方がそれで良いと言うなら私は何も言うまい」

 

「ありがとうございます。それでは放課後剣道場で待ってます。そうだ織斑くん、箒ちゃんに……と伝えておいてくださいね」

 

 

 

 

 

 あの後千冬によって何事も無かったかの様に再開されたHRの後、一時間授業をし、一組の殆どの生徒が剣道場にやって来ていた。白夜に指名された箒は、一夏から白夜の言葉を聞き自室から昨日渡された竹刀を持って来た。そして剣道着を着ていたが、防具を着けてはいなかった。

 

 そして少し遅れて白夜はやって来た。濡羽色をした美しいな着流しに、少し蒼の入った羽織を身に着けていた。彼が入ってきた瞬間、三人が身体を強張らせた。それは真耶と千冬と箒だった

 真耶は代表候補生時代に向けられた殺気に似た物を、千冬は代表時代の事を思い出し、箒は彼の服装を見て本気で来ているのだと知った。噂を聞きつけ一組以外の生徒が、更には他学年までいたが、他の者は只々彼の着流しの美しさに見惚れていた。

 

 共に二本の竹刀に防具無し。防具をつけていない事を真耶に注意されたが、長年この形式でやって来たと伝え何とか説得することが出来た。

 

 共に向かい合う。構えは無く、剣先は下を向いている。上段や中段に構えて選択肢を減らしたり、フェイントを掛ける暇すら無い程、最初の一手は素早くそして重要になる。ピリピリとした緊張感が走るが、二人の顔はそれを感じさせない。

 

「箒、初めに云っておきますが、私を殺す気で掛かって来てください。良いですね」

 

 『箒ちゃん』ではなく『箒』、この呼び方の違いから白夜が箒を弟子ではなく、対等な立場として接していることを理解する。

 

「言われなくてもこの雰囲気ならそうするつもりでしたよ」

 

「それなら良いです。織斑先生、始める合図を出してもらっても宜しいですか?」

 

「あぁ分かった」

 

「お願いしますね」

 

 二人の顔付きが変わる。箒は目を細め、出来る限り白夜のみを視界に収めるようにし、呼吸を可能な迄浅くし白夜に呼吸を読まれないようにする。

 

「始めッ!!」

 

 箒は全く零の構えから突きを放つ。白夜の胸を目掛けたそれは、床を強く踏みしめた音と空気を割いた音のみという結果のみに終わった。

 

「くっ」

 

 焦る心を抑える。目の前には突きを回避した彼の姿は無い。何時も白夜がやる手の一つである。自分の存在を空疎にし、周りに紛れ込む。特に今回は人が多い為、何時以上に見つけ辛くなっている。

 

「あれ?どこに行ったの?」

 

 誰かが言った言葉で他の者も探し始める。そこで箒は目を瞑る。五感を一つずつ減らして、他の物を高める。目を瞑り視覚を、そして味覚、嗅覚、そして聴覚もシャットダウンする。残るは触覚のみ。

 

 道場の空気の流れのみを感じる。元から感じている風の流れを無視する。観客が動き、また白夜が見つからないと話す度に揺れる空気の振動も無視。自然の中の不自然。長く居たからこそ分かる彼の癖を探す。

 

 時間にしてはたった十数秒の事だが、箒には何分もの時間が過ぎた様に思える。ここで集中を切らしたら、彼に狩られる。ここまで隠れた彼を見つけ出し、こちらから攻撃を仕掛けるのは自殺行為に等しい。只々彼を待ち続け、其の一太刀を受け止めるしか無い。カウンターなどしようものなら負けは決まる。

 

 微かな流れの乱れを感じた。次の瞬間、左から殺気が吹き荒れる。突如現れ、振り下ろされる竹刀を両手に持つ短い竹刀と長い竹刀で挟むように受け止める。余りの衝撃に上手く衝撃を流す事が出来なかった。

 

「良く気付きましたね。遂に心眼を開眼しましたか。やはり人を更に成長させるには戦闘が一番ですね」

 

 箒にその言葉に対して答える余裕はなく、力が込められた竹刀を上手く逸し、距離を取る。常に白夜に意識を向けている為、再び見え無くなることは無い。周りからは白夜いきなり現れた事に対して驚く声がする。が、それは二人の耳には聞こえて来なかった。

 

「次は私から行きますね」

 

 ダンッ、道場の床を強く蹴り一瞬の内に箒の前に至る。右手に持つ長い竹刀を主として連撃を繰り出す。それを箒は二本の竹刀で防ぐ。しかし白夜の手にはまだ短い竹刀が有る為、箒の防御の隙間にそれを差し込む。箒は身体を無理矢理動かす事で回避をするが、それは長くは続かない。

 

 白夜を探す事で精神を擦り切らせ、猛攻を防ぐ事で体力も尽きそうになっていた。それに気づいているのは白夜と千冬のみ。

 

 こちらが撃てる決め手は一つしかない。先ずは受け身になっている状況を変えるべく防御の形式を変える。最後の集中力を用いて、避けられるものは避け、どうしても避けられない物を短い竹刀のみで攻撃を受け流す。

 

 そして見つけた小さな隙間。短い方でこの試合で初めて白夜の攻撃を受け止める。そして直ぐに手の力を抜き短い竹刀を離す。すると、白夜の体のバランスが崩れる。そこに、両手での突きが放たれる。

 

 試合の最初で、片手のみによって放たれたものよりも、疾く鋭い。そして先程と違い、手に確かな感触があった。一撃は与えられたと思った瞬間、首に二本の竹刀が添えられた。手に来た衝撃から暫くは動けないと思っていた白夜によるものであった。そして自分の竹刀の先に目を向けると、箒の竹刀が突いていたのは白夜が身に着けていた羽織であった。

 

 勝敗が決すると、緊張の糸が切れ体が倒れる。それを優しく白夜が受け止める。

 

「今回も私の勝ちですね」

 

「はい。やはりまだまだ鍛錬が足りませんでした。……疲れたので後は任せていいですか」

 

「えぇ、任せてください」

 

 体に続けて意識も落ちる。こうして自分達とは全く違う次元にいる二人の戦いを目にした生徒達は、呆然とすることしか出来なかった。

 

「という事なので。わざわざ時間を設けてもらってありがとうございました。これで私の実力が分かってもらえましたでしょうか。もしこれでも気に入らなければ、何時でも襲ってくれて構いませんよ。あっ、でもですね、仕事中や周りに他の人が居る時は辞めて下さいね」

 

 一度箒を床に降ろし、お姫様抱っこをする。

 

「それでは、後の事は織斑先生よろしくお願いします。いつもの調子なら、30分ほどで箒ちゃんも目を覚ますと思うので」

 

 

 

 

「篠ノ之、入っていいか?」

 

「良いですよ」

 

 千冬が保健室に入ると目を赤くした箒がいた。

 

「泣いていたのか」

 

「……少しばかり。何時もより上手く出来たつもりでいましたし、何より何時もより手を抜いてくれていた彼に一撃も食らわせることが出来なかったのが……」

 

 その発言に千冬は眉を顰める。

 

「あれで手を抜いていたのか?」

 

「はい。きっといつも通りにやっていたなら、姿が見えなくなった時点で一方的に敗けてました。今回は力を見せることを目的としていたので、そうしたのでしょう」

 

 溜息を吐く彼女を見て、改めて彼女の生きていく道を千冬は見た。その道は殆どの者が途中で挫折し諦めてしまう程険しい、終わりが無い武の道。

 

「ふふふ」

 

 気付けば笑いが溢れていた。

 

「織斑先生?」

 

「いや何でもない。それと、今は織斑千冬とここに来ている。昔みたいに名前で読んでくれていい。しかし、そうなると頼みづらいな」

 

「どうしたのですか?」

 

「一夏の事だ。禄に鍛えてもいないのに、代表候補生に喧嘩を売ったあの愚弟の事を篠ノ之に頼もうと思ったのだがな。ISに乗る以前に本人が動けなければ意味がない。取り敢えず剣を使えるようにさせるために、同門の者が教えるのが一番良いと思ったのだが、私が手を貸したら贔屓をしてると思われてしまう。お前に頼もうと思ったのだが、まだまだ師を超える為にやらなければならない事が沢山あるだろう。だからどうしようかと」

 

「それなら大丈夫ですよ千冬さん」

 

 近くに置いてあった紙を取り、千冬に見せる。そこには流暢な字で『織斑の手伝いをするように』と書かれていた。教える事で身に付く事があるという事だろう。

 

「そういう事なので明日から一夏を鍛えさせていただきます」

 

 彼に似た笑みで箒は言った。

 

 

 

 

 

 千冬が保健室を去った後、タイミングを見計らったかのように白夜が晩御飯を持ってやって来た。真剣勝負で箒が動けなくなった時は毎回この様に、白夜が箒の部屋にやって来てご飯を食べさせていた。

 

 ご飯を食べ、歩けるようになった箒は壁に手をやりながら自室へと辿り着いた。鍵を開け部屋に入ると腹部辺りに何かがぶつかった。それほど衝撃も無かった為倒れずに済んだ。

 

「しののん大丈夫なの?」

 

「なんだ布仏か。私は大丈夫だ」

 

 部屋に入って行くとルームメイ卜の鷹月だけで無く、他のクラスメイトも居た。

 

「どうしたんだ皆?」

 

「篠ノ之さんが食堂に来なかったから大丈夫なのかなって。織斑先生も保健室には行くなって言ってたし、織斑くんも心配してたよ」

 

「それは済まなかった。一夏に関してはきちんとメールを返したから大丈夫だと思う」

 

 その後、皆で今日の試合の事について色々言われた。自分では納得のいかない物だったが、それでも褒められると云うのは嬉しいものだった。

 

「そうそうこれ見てよ。つい撮っちゃったよ」

 

 鷹月が携帯を皆が見れるように置く。画面には箒がお姫様だっこされている写真が映っていた。

 

「これがどうした?」

 

「どうしたって恥ずかしくないの?」

 

「恥ずかしいか。確かに皆に見られたのは恥ずかしいが、こんな事は昔からよくあった事だ。今更照れてもな」

 

「篠ノ之さんって見た目通りサッパリしているというか…」

 

 思ったより箒が慌てなかったため、鷹月は別の写真を取り出す。

 

「ならこれからどうだ!偶然早起きしたら取れちゃったやつ」

 

 次は今朝、後ろから直接指導を受けている時の写真だった。先程の写真の時よりも歓声が多かった。そして、実際やられている所を見たことがなかった箒は、予想以上に恥ずかしい格好で教わっていたことを知り顔を赤くして何とか携帯を奪い取ろうとしていた。

 

 箒にとって疲れた一日ではあったが、それはとても充実した一日でもあった。




初めてちゃんと戦闘シーンを書いたのですが如何でしたでしょうか。


これからもウチの可愛い箒ちゃんをよろしくお願いします。


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