例えばこんな篠ノ之箒 作:々々
それに伴って、名前付きモブも動かしやすいように色々と原作と変わっています。
今回だと鏡さんがネット検索して出てくる感じよりもアクティブな感じになっているのでご注意ください。
IS学園は普通の高校よりもやらなければならない事が多い為、土曜日も午前中だけだが授業がある。目覚めた後あたふたした箒だったが、起きた時間はいつもと変わらずゆっくり準備しても間に合う時間だった。白夜の元に来た時点で翌朝の鍛錬の道具を持って来ていた。竹刀を持って部屋の外に出ようとすると白夜に腕を掴まれた。
「今日は朝の鍛錬は無しにしましょう」
「どうしてだ?」
「意味は特にありませんが、体を休めるのも大切とだけ言っておきましょう。それに二人で久々に朝御飯を食べたいですしね」
その発言で箒は折れた。たしかにIS学園が運営する食堂は美味かったが、五年間白夜の手料理を食べ続けた彼女にとっては満足出来るものではなかった。
「今から作るので少し時間がかかりますが大丈夫ですか?」
「あぁ、全然大丈夫だ!」
隠そうとしていた喜びが声に出てしまい、白夜は微笑み箒は顔を背ける。
箒は料理が出来上がるまで手持ち無沙汰になった。
(こうしてるとあそこに居たことを思い出す。たしか、白夜が料理をしていて暇な時は後ろ姿を見るのが好きだったな)
調理をする心地良い音が箒の耳に届く。無理な体制で寝ていたせいか、ちゃんと体の疲れを取れていなかったのだろう、箒はこくこくと首を動かし船を漕いでいた。
「先程布団カバーも変えましたし少し寝ますか?」
「ん、だいじょうぶ」
白夜がいつの間にか目の前にいることにも気が付かないほど夢と現の間を彷徨っていたが、白夜の提案を断る。
「このまま出来上がるのを待っていてもきっと寝てしまいますよ。この後の授業にも支障が有るのでは無いですか?」
「確かにそうだが……」
「完成する頃にはきちんと起こします。私がご飯の前に起こさなかった事はありませんから、安心してください」
白夜の料理姿を見続けたかったが、ここまで言われて断れる訳もなく布団に入る。布団からは彼の着ている物と同じ匂いがする。去年の夏に抱きしめられた様に、今も優しく抱擁されている気がした。朝ご飯が出来る迄の少しの時間ではあったが、とても有意義な時間であった。
本日の日程が終わり、今日のパーティーの為に一年一組のそれぞれが自分に割り振られた仕事に取り掛かる。セシリアは一夏がパーティーの存在を悟らないように、授業が終わり次第直ぐに一緒に学食に行き、パーティーまでアリーナでISをする事になっている。
そして箒は、パーティー用の料理を作ることになっている。しかしまだお昼である故、料理を始めるには早すぎることやお昼がまだということで教室でクラスメイトと弁当を食べていた。予め教室で食べることを決めていたので各々が弁当やパンを持って来ていた。ちなみに、箒の弁当は白夜が朝ご飯と一緒に作ったものである。
「しののんの弁当おいしそう!!一口貰ってもいい?」
「いいぞ。他のみんなも食べるか?」
惣菜パンを食べていた布仏が箒の弁当に興味を示した。すると、前もって準備をしていた箒が鞄からもう一つの弁当と何膳かの箸を取り出した。
「誰かが興味を持ったら出そうを思っていたのだ。別に一人で食べようとしていた訳ではないぞ」
「しののん、誰もどうして今まで出さなかったのって聞いてないよ?」
「!?」
「てか、自分で作ったなら普通出すよね。ということは他の誰かに作ってもらったってこと?」
「ふふふふ。実は私、篠ノ之さんが昨晩何処に居たとかというトップシークレットな秘密を持っているのです」
「トップシークレットな秘密ってシークレットかぶりしてんじゃん!」
意味有りげに語るも鏡にツッコミを入れられイマイチ締まらない鷹月。
「まぁまぁ、それは良いとして。実は篠ノ之さんはね、昨日…」
「その口を閉じろっ!!」
「本音!!!」
「ラジャー」
「布仏!何をするっ!?」
仮にも暗部に仕える家系の布仏に適切な箇所を抑えられ、箒は今にも爆弾発言をしようとしていた鷹月を止めることが出来なくなった。
「実は篠ノ之箒さん、昨日雨宮さんの部屋にお泊りしたのだーーっ!!!!」
「「「「きゃーーーーー!!!!!」」」」
一緒に食べていた面子だけでなく、周りにいた者に歓声をあげる。
「もしかして篠ノ之さんヤって……」
「その様な事はしておらん!ただ体調を崩した白夜の世話をしていただけだ」
「なーんだ」
「ねぇねぇ、ヤったってなにを?ゲーム?」
「本音は何も知らなくていいからねー。よしっ、きっと白夜が作った食べよう!」
「たしかにそうだが、あからさまに話を変えようとしているな鷹月……」
そんな箒のつぶやきを無視し、それぞれが弁当のおかずを食べる。ある者は幸せな顔をし、ある者は驚きを表現し、ある者は口に箸を咥えたまま放心した。そこ光景を見て箒はしたり顔をする。
「どうだ美味いであろう」
「うん!おいしい!!」
「雨宮さんって料理しない人だと思ってたのに……」
「負けた。私より料理がうまい…」
箒、布仏、鏡、鷹月の順の発言である。
「篠ノ之さん料理上手いから、一緒に住んでた時も篠ノ之さんが料理してたんじゃないの?」
「私も初めから上手に作れた訳ではない。白夜に教えてもらってあそこ迄出来るようになったのだ」
「今日のパーティーの料理を誰が作るか決めた時に皆で作りあったけど、その時一番美味しかったのは篠ノ之さんだったしね。それより上となると誰も敵わないんじゃないかなー」
鏡の発言に皆が頷く。先日、数回に分けて料理担当を決める為に各人が持てる力を全て出した料理を食べ合う機会があった。一番評価が高かったのは箒であった。ちなみに、一番評価が低かったのは見た目以外が全くダメだったセシリアである。
「織斑くんの料理の上手さを聞いてなかったらきっと本番で轟沈してたんだろうなー」
「たしかに一夏の料理は美味しいが、他人の料理にケチをつけるようなヤツではないぞ?……おそらくセシリアの料理でも完食していただろう」
「それはおりむーが優しいって考えればいいのかな?」
「あれはイヤな事件だったね…」
箒と一緒に英国の神秘を体験した鏡が苦い顔をする。気がつけば皆がお昼を食べ終わっており、話の話題はこれから作る料理へと移っていた。
「篠ノ之さんの料理の師匠が雨宮さんってことは分かったけど、和食以外の料理はどうやって覚えたの?やっぱり本を見ながら練習?」
「和食以外も白夜から教わった。何でも、昔に世界を渡り歩いたとか」
「何だか雨宮さんって知れば知るほど遠ざかっていくよね……」
「でもでも、そのお陰で皆で料理できるから良しとしようよ!!それで何を作るんだっけ?」
「確認してないのー?」
「お菓子しか見てないであります鏡軍曹!!」
「いい返事をありがとう本音」
「それでなにをつくるの?」
「えーっと、確かね……」
パーティーの準備が終わり、時間まで少し時間が出来た箒は今回作ったいくつかの料理の内、フライドポテトを白夜に持って行った。持っていった際、一つを食べ「美味しいですね」と微笑んでくれた事が嬉しかった。白夜の自室がある職員棟から食堂まで上機嫌で歩いていると、校内地図が映し出された掲示板を睨む様に見る小柄な少女を見つけた。制服のリボンの色を見ると箒と同じ色だった為同級生と理解した。
「何処を探している?もし良かったら道を教えようか?」
一夏の訓練に付き添っていない時や、自己鍛錬が休みの時は白夜に付き添っている為、一年生の中では良く校内を知っている方である。
「それじゃお願いしようかしら。総合受付ってここからどういけばいいの?」
「総合受付は……、ここから遠いな。このまま私が案内するからついて来い」
「そこまでなら良いわよ、初めて会った人にそこまでしてもらうのも悪いし」
「気にするな。これから学びを共にしていく学友に時間を避けないほど忙しくないからな」
「ならお願いするわ。あたしは凰鈴音、鈴でいいわ。ちなみに転校生よ」
「総合受付と言っていたからまさかとは思っていたがやはり転校生だったか。私は篠ノ之箒だ。気軽に箒と呼んでくれ」
箒の後をついて行く鈴は少し考えをしているように顔を顰めていたが、ハッと思い出した。
「箒ってもしかして一夏と幼馴染だったりする?」
「ほぅ一夏と知り合いだったか。勿論その通りだが、すると鈴は一夏が言っていた『腐れ縁』というやつか」
その発言に鈴は首肯する。
「一夏が私の事を『腐れ縁』ね…」
「鈴のことが初めて話題に出た時は『セカンド幼馴染』と言っていたが、女性に順位を付けるのは軟派な男のする事だと注意したら『腐れ縁』と言ったんだ。もしこの呼び方が嫌だったら伝えておくが」
「いや大丈夫よ、そう呼ばれたことが無かったから少しむず痒くてね。ところで一つ聞きたいことがあるんだけど」
「別に私は一夏に惚れてはいないぞ」
「そうそう一夏に惚れて……、って何で質問分かったのよ!!」
「一夏の人間性に触れて惚れぬ者はほとんど居ないからな」
「ならなんで箒は惚れてないのよ」
少し興奮した様に尋ねる鈴に冷静に答える。
「私も昔は惚れていた。しかし離れてから分かるものがあるらしくてな、私の一夏へ向けていた感情は憧憬だったと気が付いた」
「そうなんだ」
「鈴が一夏から離れてもまだ一夏の事を好いているならその気持ちは本物であろう。さぁ、総合受付に着いたぞ。もし一夏の事について相談事があれば気軽に一組を訪ねてくれ」
「まだまだ聞きたいこと沢山あるから絶対行くと思うわ。ここまで連れて来てくれてありがとう、もしも同じクラスになれなくてもこれからよろしく!!!」
既に沈み、空には大きな満月が輝いている。膨大な敷地内に数個ある中庭のうち食堂に近いところに、既に季節が終わっている筈なのに満開の桜がある。その桜の木の下で呉座を敷き、徳利と盃を側に置きながら肩に羽織を掛けている白夜がいた。彼の元にやって来る人影があった。白夜はそれに気が付き声をかける。
「おや織斑先生、こんな所で奇遇ですね。もしかしてこれに釣られましたか?」
徳利を持ち上げ千冬に見せる。
「夜の散歩をしていたら雰囲気を感じて来ただけだ。それに織斑先生というとは止めてくれ、生徒や後輩に言われるならともかくアナタに呼ばれるのはくすぐったい」
「なら千冬さんと呼びましょう。それでどうでしょう、散歩のついでに」
「ここ最近忙しくて飲めてなかったからな、私も一緒させてもらおう」
白夜の隣に腰を下ろす千冬に、白夜が座布団を渡す。下に座布団を置き座る。それに続きそこの平たい酒器を渡す。
「用意がいいな」
「誰か来たら一緒に飲もうとお待っていましたから。それっぽい酒器ですが、別に呑み方は気にしないで下さい。特に気にしませんから」
「この様な酒器で飲むことは無いからそれはありがたいな」
白夜が千冬にお酒を注ぎ、千冬は一口飲む。味わったことの無い味わいが口中に広がる。
「うまいな…」
「私の知り合いから頂いたものですが、私自身こんな事で無いと飲みませんからね」
盃をに口をつけ、ぐびっと飲み干す。
「季節外れの狂い咲きの桜というのも風情がありよりお酒を美味しくしますが、今日は微かに聞こえてくる笑い声がお酒を美味しくしてくれますね」
「それは言えているな」
微かに聞こえる一組の生徒の笑い声。普通の者には聞こえないほどの小ささだが、些か普通から外れているこの二人の耳には届いていた。
「しかし良く呑むな。お酒が好きなのか?」
「お酒がというよりは、お酒を呑んでるこの雰囲気が好きなんです。散り際の桜がもっとも美しいと思うのですが、ここまで咲いている桜もなかなか趣がありますしね」
その服装も相俟ってか、千冬は過去にタイムスリップしたような感覚を覚えた。
「つくづくこの時代に生きているのが惜しいな。アナタほどの人間ならば、時代が時代なら大成したでしょうに」
「千冬さんまでその様なことを言いますか……」
「よく言われるのか?」
「そうですね、昔出会って仲良くなった方には殆ど言われましたし、ここ最近では箒ちゃんにまで言われてしまいましたね」
「あの篠ノ之が冗句を言うようになったのか。幼い頃を知る者としては嬉しい限りだがな」
その発言に白夜の笑みはより一層深まる。たしかに初めて会った時の箒ちゃんの堅さはすごかったですね、と心で呟く。
「ここまで心を開いてくれる様になったのは、ここ一年の出来事なんですがね。私としては嬉しかったですね」
「そうだったのか。どうして箒を引き取ったんだ?」
ふと湧き出た疑問を口に出す。
「理由は単純なモノですよ。只、柳韻さんに頼まれたと云うのと娯楽の為でしたし」
「前者は分かるが、娯楽?」
「数多くの剣を学んだ身として後はそれらを極めるだけでしたが、想像以上に独りでは中々進まなかったのです。そこで、私と張り合える又は私について来れる者を育てなければと思ったのですよ」
「それが篠ノ之か」
「そういうことになりますね。私の期待以上に育ってくれましたし」
「篠ノ之をその様な存在と見ているわけはないのだろう?」
「ですね。初めて箒ちゃんに会った時に思いましたよ、体を強くする前に心を治してあげないと、と。そこからは出来るだけ箒ちゃんにとって心安らげる場所を目指しましたし、結果として私にも懐いてくれました」
千冬は「懐いているのではなく好いている方が正しい」と言おうとしたが、お酒と一緒に呑み込む。これは箒が本人に言わなければならないと思ったからだ。
「ふふふ、自分を語ると云うのも恥ずかしいものですね。呑み直しです」
盃のお酒を勢い良く飲み干す。生徒達のパーティーが終わっても二人の宴は終わらなかった。
ちなみに作者はファース党では無いので悪しからず。