例えばこんな篠ノ之箒   作:々々

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原作1巻 その陸

 就任パーティーから一日明けた月曜日の朝、一年一組の教室には全員が集まっていた。集まった理由は、昨日掲示されたクラス対抗戦についてだった。掲示された内容には優勝クラスへの特典も有り、まだISに触れる事の少ない一年生はそこまて豪華な物ではなかったが、二年三年の物は豪華でそれを目指してクラス全体で盛り上がっているのを箒や他のクラスメイトも見ていた。

 

 一年一組は一学年で最もアドバンテージが有ると云っても過言ではない。なんせ専用機を持っている人が二人もいるため、アリーナさえ取れれば何時でも練習が出来る。よって引き続き専用機を持つセシリアがIS操縦を教える事となった。他の皆はISを借りれたら共に練習する、と言った感じだ。それ以外の時は時間を見つけて他クラスの偵察など個々人が出来ることをする。

 

 一通り話し終わった。それぞれがHRが始まるまで思い思いの事をする。箒、一夏、セシリアの三人はこれからどの様に訓練を進めるか話し合っていた。

 

「とは言っても、他のクラスには専用機持ちはいませんのよ?何もここまで本気にやらなくとも……」

 

 四組に日本の国家代表候補生が居るものの、専用機の開発プロジェクトが凍結している。

 

「だからと言って、手を抜くことはいけないぞ。ふとした事で足元を掬われるかも知れんからな」

 

「専用機持ちが居ないってのはやりやすいかな」

 

「その情報古いわよっ!!」

 

 勢い良く開かれた教室のドアから一人の少女が現れる。校則で許される範囲で制服を改造し、髪をツインテールに結んでいる。

 

「もしかして鈴か?」

 

「そうよ、久しぶりね。箒も一日ぶりね」

 

「そうだな」

 

「二人とも知り合いだったのか?」

 

「迷ってる所を助けてもらったの」

 

「でもなんだその口調、似合ってないぞ」

 

「うっさいわね!!!」

 

 久しぶりに会った二人が話しているとチャイムが鳴った。しかし二人の耳には届いていなく、まだ話を続けている。その隣でセシリアが箒に尋ねる。

 

「箒さん、あのリンという方は一夏さんのどんな関係ですの?」

 

「私が転校した後にやってきた子だ。小学五年生からの腐れ縁で、去年自国の中国に帰ったらしい。それよりセシリア、今はそのことを忘れて準備をし授業に臨んだ方が良いぞ」

 

「どうしてですの?」

 

「アレを見ろ」

 

 箒が指を指した先には伝家の宝刀『出席簿』を抱えた千冬がいた。箒の言いたいことを理解したセシリアは直ぐに自分の席に戻り、意識を集中させ、煩悩を消し去る努力をする。箒も自分の席に戻る。

 

「おい」

 

「なによっ!!」

 

 声の主を知り鈴は顔を青くする。

 

「ほう、目上の人にその様な態度を取るのか凰」

 

「ち、千冬さん」

 

「織斑先生と呼べ。チャイムが鳴ったぞクラスに戻れ」

 

「分かりました!!」 

 

 結局出席簿で頭を叩かれたのは、急いで二組に戻っていく鈴を見ていた一夏だけだった。

 

 

 やはり一夏と鈴のことが気になり授業に身が入らなかったセシリアが千冬に怒られたり、一夏がボーッとして怒られたりしたが、午前の日程が終わった。昼休み箒は千冬に無人の教室に事情も聞かされず連れて行かれた。何かあったのかと思いつつ付いて行く。その教室の中には姉の束がいた。 

 

「やっほー箒ちゃん♪ひっさしぶりー」

 

 あまりにも唐突過ぎた為、箒は千冬に目線を向けて助けを求める。

 

「ちなみに束はこの日の為に半年以上前からアポを取っていた」

 

「えっ?あの姉さんが?」

 

 何が何でも我を通す束がアポを取っている事に更に困惑する。そんな彼女を見かねてか、束が話を始める。

 

「その事は後で触れるけど、まずはアレだね箒ちゃん入学おめでとう!」 

 

「ありがとうございます」

 

「うんうん、思ったより箒ちゃんがツンツンして無くてお姉ちゃん嬉しい!!私のせいで家族と別れさせる事になっちゃったから恨まれても仕方ないんだけどね」

 

「その事については許してはいないです。ただ、それでも自分の中では折り合いはつけましたし。それでどうして姉さんがアポを取ってまで会いに?」

 

「ちょーーっとこれから忙しくなりそうだからね。会えるうちに会っておかないととおもったのだ。思い立ったらすぐ行動しちゃうから、半年以上前、具体的には去年の夏から計画してたんだけどね」

 

「去年の夏……」

 

「何かあったのか?」

 

 箒はこれまで事を話した。書類でしか伝えられていなかった、千冬達から離れた後の事。更に去年の夏、一人でいる所をISに襲われた事、その際白夜に助けてもらった事を。 

 

「そのような事が……」

 

「その日の夜に白くんとお話して、箒ちゃんの入学の話とか用務員になるかどうかの話をしたんだよね。それでね箒ちゃん、箒ちゃんの安全の為にISを用意をしようと思うんだけど受け取ってもらえるかな?」

 

「それは専用機をお前が作るも言うことか?」

 

「そーだよちーちゃん。これから沢山前みたいな事も起こると思うんだ、毎回その場に白くんが居るわけでもないし、箒ちゃんがいくら強くなったってISに生身で勝てる道理もないからね」

 

「私は……」

 

「すぐ答え出すのは難しいかな?いいよまだ。ゆっくり考えても、束さんは箒ちゃんがいつ返事をしても良いように準備をしておくから」

 

「姉さん」 

 

「いいのいいの、これが家族をバラバラにしちゃった私に出来る数少ない事なんだから」

 

「ありがとうございます」

 

「急にこんな所に連れてきて悪かったな。昼の時間も残り少ない、これを持って教室で食べろ」

 

 千冬から箒に弁当箱を渡す。

 

「白夜が朝来てな、篠ノ之に渡すよう頼まれた。アイツも束がここに来るのを知っていたからだと思うがな」

 

 一礼して教室を去る。残った二人は再び話を始める。

 

「お前がここまで落ち着くとはな。私としては嬉しい限りだが」

 

「そんなことないよー、今回はこんな風にしないとダメだと思ったからだし。今回の束さんは真面目モードなんだよ」

 

 どこからとも無くパソコンを取り出し、画面を千冬に見せる。それを見た千冬は顔をしかめる。

 

「これが箒ちゃんといーくんを襲うために作られた計画書。世界中に散らばってたのを集めるのは大変だったけど、これで全部なはず」

 

亡国機業(ファントムタスク)か……」

 

「所属してる一人ひとりは弱いけど数が多くてね、天才の束さんでも白くんの友達に手伝ってもらってやっとかな」

 

「先程から言ってる白くんは白夜のことだよな?」

 

「うんそうだよ!白くんの友達に倣ってみたの。それでね仲間の一人が見つけたんだけど、近い内に襲撃を計画しているらしいの。私も直接は無理だけど手伝うつもりだし。長居すると見つかるかもだから、これにて今日はおわりかな」

 

 窓から飛び降りようとする束に千冬は問いかける。

 

「最後に一ついいか?」

 

「なにかなちーちゃん」

 

「去年の夏、篠ノ之を助けたのはお前か?」

 

「ううん、違うよ。箒ちゃんを助けたのは白くんだよ」

 

 そう言い残して窓から降り、クロエのワールドパージで姿を消す。

 

 

 

 

 

「本当に今までそれほどISに触れていなかったなど、信じられませんわ」

 

 先月予約を取っていたISが漸く使えるとの事で、箒は一夏とセシリアと訓練をしていた。始めは箒がISに馴れる為に二人から離れて三十分ほど剣を振ったあと、一度一夏と剣を交えることになった。結果は箒の勝利。その結果にセシリアは驚き、一夏は悔しがった。

 

「くそっ、ISだったら箒に勝てると思ったのに!!」

 

「まだまだ精進が必要ですわね、一夏さん。でも最初は二人とも拮抗していましたのに、急に箒さん有利になりましたの」

 

「たしかに……、何かワケがあるのか?」

 

「特に特別なことは無い、打鉄が体に馴染むようになっただけだ。一度馴染んでしまえばもう体の一部と言っても過言ではないからな」

 

「つまりどういう事ですの?」

 

「白夜に本格的な剣術を習う前に言われたことなのだが『手にした物や身に付けたは全て自分の思った通りに、つまりは体の一部又は体の延長線上として扱える様になれ』とな。だから、ISを着けていようが何時も通りの動きが出来たのだ。一夏なら分かるだろうが、生身で剣を振る際とISを着けた際のブレが有るのだが、それがほぼ零になると言うのがいいか」

 

 その説明に二人は口をポカーンと開けている。あまりにも次元が違いすぎた。

 

「これならば様々な事が出来そうだな」

 

 打鉄に標準装備されている葵を取り出す。その速度は国家代表に遅れを取らない速さだった。取り出した瞬間から手に馴染み、自分の思うように動くことが分かった。横に一閃振り切る。ただ見ただけでは何の変化も無かったが、ハイパーセンサー越しに見た二人には空気が動いた事に気が付いた。

 

「ふむ、やはり生身でやるのより楽に出来るな」

 

「何だか幼馴染がとてつもない事をさも整然とやってのけたんだが……」

 

「とてつもない事って、そこまでではないだろう。剣で衝撃波を飛ばしただけだ、剣撃を飛ばすのは映画などではよくあるだろう。それに白夜はISを使わずにバンバン飛ばすぞ?」

 

「お二人には私の常識がやはり通じないと理解させられましたわ。……まぁ気を取り直して訓練をしましょう。箒さんがここまで扱いに慣れているとは思ってませんでしたからすこし予定を変えて、箒さんに近接戦闘を教えて貰いましょう。箒さんできますか?」

 

「全然問題ない。これからやる事が早くやっただけだからな」

 

 一夏もセシリアも近接武器を出し、一夏はそれしかないのだが、構える。

 

「まずは地に足をつけた状態で、近接戦闘を行う。地上という普通の場所で出来ないことが、空中という普通と違う場所でできる道理はないからな。さぁ、かかってこい!」

 

 一夏が威勢よく声を上げて、セシリアもそれに続くように箒へと駆けていく。

 

 

 

 

 その日の訓練を終えアリーナからピットに戻ると、スポーツドリンクとタオルを持った鈴がいた。

 

「ここは関係者以外立入禁止ですのよ」

 

 同じく一夏を狙っているセシリアが敵である鈴を責める。しかし鈴はそんな事を気にせず、一夏の元に駆け寄り手に持ってるものを渡す。

 

「一夏おつかれさま!はいこれ、アンタが前に言ってたみたいにゆるめのスポーツドリンクよ」

 

「おっ、ありがとうな」

 

 目標を達成した鈴は箒もいた事に気が付いた。

 

「なんだ箒、あなたもいたのね」

 

「漸くISの順番がやって来たからな。一夏に今剣を教えているのは私だからな。といっても私もまだまだ教わる立場だがな」

 

「へぇ、箒って剣をやってるのね。実力はどんな感じなの?」

 

 鈴の質問に一夏が答える。

 

「俺も昔はやってたけどそのまま続けていたとしても追いつけないような、全く別次元なんだよな。箒の師匠が凄いからってのもあるけどさ」

「別次元って気になるわね。何?有名なの?」

 

「世間一般では全然有名じゃないが、ここに居る人なら殆ど知ってる人だぞ」

 

「あっ、箒さ……」

 

「IS学園にいるのね。って事は先生の誰か?」

 

 何かに気づき止めようとしたセシリアだが、その声は鈴の更なる質問と被さって届かなかった。

 

「用務員の雨宮白夜だ。鈴は知っているか?」

 

「……ごめんちゃんと聞き取れなかったかも、もう一度お願いできるかしら」

 

 距離もそんなに離れていなく、声の大きさも小さくなかったのに聞こえなかった事を不思議に思いながらも、先程と同じ名前を告げる。

 

「雨宮白夜だ、長い黒髪の和服の男を見なかったか?」

 

「……。箒」

 

「ん?なんだ?」

 

「直ぐにアレから離れなさい。アレの近くに居るだけで厄介事が起こるわよ」

 

 先程までと逆の雰囲気を出してた。鈴の言ってる意味が分からない箒と一夏の二人は揃って首を傾げた。

 

「鈴さん、お二人は代表候補生じゃありませんから何も知りませんわ」

 

「そうだったわね。少し早とちりしちゃったかも」

 

「白夜さんがどうしたんだよ!?」

 

「一夏、アンタも交流を持っていたのね。いい?教えてあげる」

 

 二人は耳を傾ける。

 

「アレは疫病神よ。アレが現れる所では必ず戦いが起こるの。人が死んだり死ななかったりはあるけど、必ずその戦いに参戦したいくつかの団体の内一つは壊滅してしまうの。だから世界的につけられた名前はアンタッチャブル(触れてはならないモノ)、その名前で呼ぶことすら危険だとされてるらしいけどね。中国では5師団が壊滅させられたのよ」

 

 その言葉に一夏は驚くが、箒はそれほど驚かなかった。そんな彼女から出てきた言葉はヒドく単純だった。

 

「それがどうした?」

 

「はっ?自分が何を言ってるか分かってるの?」

 

「私は鈴が言ってるの方が分からないがな。白夜といると私にまで厄介事が来るなど、そんな些細な事が白夜と離れる理由になど成り得ない。それに巻き込まれても対処出来る力を付けてもいるし、なにより白夜が私を守ってくれると言ったのだ、それを信じずしてどうして弟子と名乗れるのか。まぁ、5師団を壊滅させたのは信じ難いが白夜なら平然とやってのけそうだがな」

 

「あんたねぇ……」

 

「しかし鈴の忠告も心には止めておこう。一夏に関しては、唯一の男性操縦者と言う事で忙しいだろうから白夜には極力会わせないようにする。これでどうだ」

 

「もういいわ」

 

 そう言い残して、鈴はピットから出て行った。

 

「白夜さんがそんな風に呼ばれてるなんてな」

 

 着替え終わり、食堂に向かう最中一夏が言った。

 

「しかし、世界から危険視されているのにセシリアは普通に話をするんだ?」

 

 あの一件の性で一時、白夜と敵対していた――セシリアがそう思っているだけで、白夜は特に何とも思っていなかった――のだが、セシリアと一夏の試合が終わった後セシリアは白夜に謝りに行った。それからと言うもの、一夏と箒の鍛錬を見ている時に白夜が箒の様子を見にやって来、良く話をしていた。

 

 各国に白夜の存在が知られたのは箒と彼が戦った時であり、その日のうちにほぼ全ての国の代表と代表候補生に白夜の危険性が教えられ、恐怖を刷り込まれていた。

 

「イギリスは特に白夜さんとは何もありませんでしたの。寧ろ王室の方が白夜さんをお呼びして、剣を見せてもらう程友好的だと耳にしましたの」

 

「なるほどな」

 

 益々白夜についての謎が深まるばかりであった。




次回から出来事はそこまで変わりませんが、事情や背景が変わる予定です。束さんもここではパワーバランスを壊すほどの力を持ってないですしね。

今回も誤字が沢山あるかも知れませんし、一人称や二人称、口調が違う場合もあるかもしれないです。その時は教えていただければ、できるだけ直します。


それでは、感想や評価お待ちしております。
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