ネコさま大王国で引きこもってネコを愛でたい   作:清瀬

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時間軸的には、小説6巻のゲヘナ終了後あたりです。


10話

『……プレイヤーかもしれないというわけか』

 

ナザリック地下大墳墓第9階層、アインズの執務室では、デミウルゴスからの《伝言(メッセージ)》による緊急報告を受けたアインズが精神の安定化を起こしていた。

予想されていたことだが、同時期に転移したプレイヤーがいたとの報告はアインズに少なからず衝撃を与えた。

城というから、仲間ではないだろうが、もしかしたらアインズ・ウール・ゴウンの仲間たちも来ているのではないか。

しかし、プレイヤーを理由なく殺し、他のプレイヤーから敵対されることは避けたい。

DQNギルドとして名高いアインズ・ウール・ゴウンに、守護者たちの性格もある。

争いにならないだろうか?せめて、無関心を保ってほしい。

期待と不安から、またしても精神の安定化が起こった。

冷静になったアインズはデミウルゴスに質問を行う。

まずは情報だ、どのようなギルドか確かめねばならない。

 

『デミウルゴスよ、城とそこに属する者についてわかっていることを聞かせてくれ』

 

『帝国主席魔法使いフールーダ・パラダインと城の主ミネルバが友好関係を結び、帝国は彼らを異国からの客人と扱うことになったと帝国が公表したようです。

 影の悪魔(シャドウデーモン)から報告が上がってきました』

 

「ふむ、少なくとも、城の者は、人と友好的にふるまうように装っているか。

 ミネルバというのは人間でよいのか?ほかの者の名やギルド名は聞いてないか?」

 

「種族に関しては宣言で触れられておりません。

 また、他の者やギルド名に関しても、現段階ではわかっておりません。

 申し訳ありません」

 

アインズは、デミウルゴスの言葉から本当に無念という思いが感じられた。

 

「いや、全ての情報が集まらずとも、プレイヤーの存在というのは緊急で報告すべき事項だ。

 今後の計画に大きな影響を与えるため、早い段階での報告が望ましい。

 お前の判断は私を大いに満足させたぞ、デミウルゴスよ」

 

アインズはいい上司になるための本を思い返しつつ、デミウルゴスを褒める。

実際、デミウルゴスに落ち度はないのだ。

これが原因で緊急連絡が来なくなっても困る。

 

「ありがとうございます」

 

電話中のサラリーマンのように、深々と頭を下げているデミウルゴスがアインズの頭に浮かぶ。

軽く咳払いをし、アインズは意識を切り替える。

 

「さて、引き続き、かの城に関する情報を集めよ。

 また、現段階では城との直接の接触は避けよ。

 彼らがどのような存在か、まだ断定するには早すぎるからな」

 

「はい。影の悪魔(シャドウデーモン)にそのように命じます」

 

伝言(メッセージ)》での会話を終了し、アインズは報告の途中だったアルベドに声をかける。

 

「バハルス帝国にプレイヤーと思われる者がいるとの《伝言(メッセージ)》だった」

 

「プレイヤー、もしやシャルティアを洗脳した者どもですか!?

 ただちに、階層守護者たちを集め、奴らを抹殺する計画を……」

 

アインズは鬼気迫る表情を浮かべるアルベドを慌ててなだめる。

 

「待て。落ち着け。

 そのプレイヤーがやったと決まったわけではない」

 

「失礼しました。

 しかし、捕らえて実験材料としてはいかかでしょうか?

 プレイヤーということで有用な実験材料となるかと思います」

 

たしかに、プレイヤーの蘇生確認をはじめとした実験したいことはある。

しかし、現段階ではかなり危ない橋を渡ることとなる。

 

「プレイヤーは城ごと転移しており、帝国がその城の主ミネルバとの友好関係があることを宣言した。

 城を攻めるということは、まだ見ぬプレイヤー全員を敵に回す行為となりえる。

 ヤルダバオトのように、仮面などで変装する手もあるが、あまり乱発すると関係性が疑われてしまう。

 それらを結び付けられると面倒だからな。」

 

「……わかりました」

 

不承不承ながらアルベドは頷いた。

 

「無論、奴らがシャルティアを洗脳したものだと分かれば、その対価は支払わせよう。

 しかし、この場合でも相手を知る必要がある。

 ほかにどんなワールドアイテムや能力を隠し持っているかわからん」

 

アインズは、ワールドアイテムを複数所持しているギルドの有力メンバーの名前は記憶している。

ミネルバという名は覚えがないため、せいぜい1個のワールドアイテムだけしか所持していない、と言いたいところだが、アインズはユグドラシル終了前に、ワールドアイテムがオークションに流れたのは知っている。

外部の情報を絶っていたため、誰が何を手に入れたのかは知らない。

つまり、オークションでワールドアイテムを複数手に入れ、こちらに転移してきた可能性もある。

ただ、アインズはかの城がそうである可能性は低いと考えている。

帝都近くという立地もそうだし、LV100プレイヤーは、探知スキルがないシャルティア相手ならアイテムさえあれば逃げることは可能だ。

シャルティアは、一対一の戦闘においては階層守護者の中で最強を誇るが、あくまでも相手がキチンと戦闘する気があっての話。

逃走を考える相手なら別の守護者のほうが有利になる。

城というギルド拠点がある状態で、転移系や逃走用アイテムなしにワールドアイテムだけを持っている可能性は低い。

 

「ミネルバの一行が犯人にせよ、そうでないにせよ。

 デミウルゴスの追加情報次第では、一度、会ったほうがいいかもしれんな」

 

「洗脳のワールドアイテムを持つかもしれない者と会うのですか?

 わざわざアインズ様が会われなくとも、われわれ守護者にお任せいただければ……」

 

「プレイヤーに一番詳しいのは私だ。

 無論、ワールドアイテムを持たせた守護者を立ち会わせるつもりだ。」

 

ミネルバなるものが所属するギルドが犯人である可能性はかなり低い。

しかし、可能性が低いからといってそれを排除する気はアインズにはなかった。

もう一度、仲間たちの子にも等しい守護者たちを殺すなど、絶対に避けたい。

 

「詳しくは、後で考えよう。先に警戒を促すべきだな。

 アルベドよ、守護者たちに帝都そばにプレイヤーらしき存在がいる件を通達してくれ。

 シャルティアを洗脳した犯人である可能性は低いこと、先走って行動を起こさないこと、をきっちりと伝えてくれ」

 

「かしこまりました」

 

アルベドは一礼し、執務室から出ていった。

八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)に声をかける。

 

「一人で集中して考えたいので、私室に入る。

 アルベドが戻ってきたら、知らせてくれ。」

 

「はい」

 

アインズは寝室に移動し、ベットに倒れこむ。

 

「プレイヤーか、友好的な関係を結べるといいんだけど……」

 

鈴木悟の残滓が色濃く出たつぶやきが、誰にも聞かれることなくひっそりと消えた。

 

◆◆◆

 

法国の最奥では、最高責任者達による会議が行われていた。

 

「バハルス帝国に城が突然転移してきて、城の主ミネルバがフールーダ・パラダインの友人となるか……」

 

「これは、ついに来たと考えるべきか?」

 

「非常に大人しい点が気にかかるが、そうであろうな。

 他の存在を警戒しているのか」

 

「占星千里の報告にあった、城の周囲の魔獣が気にかかる。

 知識面も担当していた彼女がわからない魔獣がな。

 知っている魔獣も、推定難度100だ。

 知らないのはあるいは、それ以上の存在かもしれない。

 空を飛ぶ魔獣もいるとのことだ。帝国を滅ぼすのも可能かもしれない」

 

「動物の耳や尻尾が生えた者が、占星千里の目に視線を向けていたというほうが、私としては気にかかるな。

 今後は城に目を向ければ、巫女姫と同じ道を進むかもしれん」

 

「危険を冒してでも、直接、接触すべきか?」

 

「フールーダが何度か城を訪れているのは事実なのだ。

 下手を打って、こちらに敵意を向けられても敵わん」

 

「できれば人類の守護者となってもらいたいが、従者が人でないこともある。

 それは、難しいかもしれん。

 力あるものがいつまで静かに暮らせるかはわからんが、それを望むならそうさせよう」

 

「帝国には王国を併合してもらわなければならん。

 静かだとはいえ、力あるものがいるのは、帝国にとっても悪い話ではあるまい」

 

「もともと、城の存在は計画になかったことだ。

 我らも別方面でやることや欠員も多い。

 後手に回ることになるかもしれんが、放置しておいていいだろう」

 

「そうだな。放置しかあるまいか」

 

「異論はないか?

 ……では、次の議題に移ろう」

 

◆◆◆

 

帝都アーウィンタール、歌う林檎亭。

ワーカーチーム『フォーサイト』が拠点としている宿である。

食事をしていたフォーサイトに声をかける人物が存在した。

 

「お食事中、申し訳ありません。フォーサイトの皆さま。

 実は、あなた方が会われた、ミネルバという方についてお話をお聞きしたいのです」

 

どこかの貴族に使える執事といった雰囲気を持つ、オールバックの金髪に長い金の髭、眼鏡の初老の男性だ。

眼鏡の奥の鋭い眼光と立ち振る舞いから、周囲の人間と違った風格を感じさせる。

 

「またかよ……最近、多いな……」

 

「適当な仕事引き受けて帝都からしばらく離れたほうがいいんじゃない?」

 

ヘッケランが思わずぼやき、イミーナも辟易したといった体で話す。

 

「申し訳ありません。お礼としては些少かもしれませんが、お食事代は私のほうで払わせていただきます」

 

「お、分かってるな。

 最近、タダで情報聞き出そうって奴が多くてよ。

 ……おい、店の奥借りるぞ。追加で、酒とツマミ、適当に頼む」

 

ヘッケランが店の主にそう告げると、テーブルの上の酒と皿をもって立ち上がる。

 

「個室に先行ってるから、金払ってから来てくれ」

 

「かしこまりました」

 

その後、ヘッケランは個室にてアルフレッドと名乗る執事に、何度か行ったようにミネルバとの出会いを語った。

話の途中にアルフレッドから質問などはなく、最後まで語り終えた。

喉を渇きを潤すように、酒を流し込む。

 

「さて、話はこんなところだ。

 聞いておきたいこととかあるかい?」

 

「それでは一つだけ確認を。

 アルシェさんは相手の使える魔法の位階がわかるとのことですが、ミネルバやシノブといった方の力は見られたのですか?

 帝国の主席魔法使い、フールーダ・パラダイン氏とご友人になられる人ですから、かなりの力のある魔法詠唱者と思われるので、少々興味があるのですが」

 

アルシェの体がわずかに震えた。

それに気づいた、ヘッケランが話し出す。

 

「ああ、すまないな。

 彼女はその時、体調が悪くてな、

 ミネルバさんが来て、すぐ席を外させてもらったくらいだ。

 それどころではなかったんだ」

 

「そうですか。今はアルシェさんのお体は問題ないのですか?」

 

「あ、はい……。ご心配してくださり、ありがとうございます」

 

「いえいえ、お気になさらず。

 さて、本日はお時間をいただきありがとうございました」

 

「かまわないさ。きちんと対価があったしな」

 

軽く挨拶したのち、アルフレッドは店を後にした。

アルフレッドが路地に入り周囲を確認していると、突然、転移門(ゲート)が目の前に開かれた。

それに対して、驚きもせず、彼は転移門(ゲート)をくぐった。

 

「セバス、何か目新しい情報はでありんしたか?」

 

転移門(ゲート)の先で、シャルティアがアルフレッドと名乗っていた金髪の男に問う。

 

「位階を見る力をもった娘はミネルバ登場後すぐに退席したため位階がわからないと言っておりましたが、その話を振った際、その娘はわかりやすいほど震えていました。

 私の推測になりますが、ミネルバは魔法詠唱者(マジックキャスター)であり、その魔力の量に恐怖したのではないかと思います」

 

「なるほど、この世界の人間は第3位階で熟練らしいから、第10位階の魔法を使えるものを見れば恐怖してもおかしくない、というわけでありんすな」

 

シャルティアは金髪のセバスをしばらく見て、微妙な表情を浮かべる。

 

「しかし、その頭と付け髭はどうも見慣れないというか……」

 

「アイテムで色を変え変装したとはいえ、私もどうにも落ち着きませんな。

 アインズ様が仰るには、お試し版アイテムで色は1日で元に戻るそうですが、早く元にもどらないかと思ってしまいます。

 せめて、早く報告して、変装だけは解きたいですな。

 やはり、造物主様がそうあれと定めた姿のほうが落ち着きます」

 

「そうでありんすね。

 引き止めて悪かったでありんすな。

 アインズ様がお待ちだから、さっさといきなんし」

 

セバスはいつもより早足でアインズの元に向かった。

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