ネコさま大王国で引きこもってネコを愛でたい   作:清瀬

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11話

「アインズ様、情報が集められず、申し訳ありません」

 

「いや、セバスが悪いのではない。

 相手がこちらの想定より、情報を制限していただけだ」

 

影の悪魔(シャドウデーモン)以外にも、セバスが変装し、アルフレッドとして帝国で調査を行ってもらったが、追加情報はあまり得ることができなかった。

相手が会うのは城の外のストーンシークレットハウスでのみ。

城内に人を入れた様子はない。

まさか、ギルド名すら名乗っていないとはアインズも思わなかった。

フールーダ・パラダインであればもう少し情報を持っているかもしれないが、ミネルバに入れ知恵された可能性のある魔法詠唱者(マジックキャスター)とその弟子たちの領域に、影の悪魔(シャドウデーモン)を送り込む危険は冒せなかった。

得ることのできた大きな情報は、ミネルバが人間の魔法詠唱者(マジックキャスター)、シノブがキャットマンのNPCであると推測できるくらいだ。

ただ、戦闘メイドプレアデスのように、本当の種族は異なる可能性はある。

それと、非常に大人しく、基本城に引きこもっているらしいが、《遠隔視(リモート・ビューイング)》に転移系の魔法を合わせれば、誰にも気づかれず、外に出ることは難しくない。

可能性こそ低いが、シャルティアを洗脳した犯人が彼らの場合、あまり自由な時間を与えすぎるのも考え物だ。

 

「セバスよ、お前が丁寧に仕事をこなしたおかげで、ミネルバの慎重さがよくわかった。

 よい仕事であったぞ。

 休息の後、通常の仕事に戻ってくれ」

 

「は、かしこまりました」

 

一礼し部屋を出て行くセバスを見ながら、アインズは次の一手を考える。

 

◆◆◆

 

ミネルバはネコ部屋で、うつ伏せに寝転がって、ふてくされていた。

ネコ達はミネルバの上で足踏みしたり、顔をこすりつけたり、勝手気ままに過ごしている。

ミネルバがこうなったのは、少し前にさかのぼる。

 

王国で、ヤルダバオトなる悪魔が大暴れし大きな被害を被ったため、フールーダにその悪魔を探知してくれと頼まれたのだが、ミネルバのままではその手の魔法は使えない。

頼みを断って、適当に第7位階魔法を見せて弟子を返した後、ミネルバは二重の影(ドッペルゲンガー)の能力で探知の魔法を使えるものに変化した。

ヤルダバオトはミネルバにも危害を及ぼすかもしれない、転移後の世界にしては高レベルな悪魔である。

その悪魔に対しては、危機感を抱いていた。

ミネルバは探知魔法を使おうとしたが、対策をしていないことを思い出し、とどまった。

コピー元のギルドメンバーが、探知魔法は、使用前に多数の情報系魔法を使い対策を行ってから使うものだと話していたのだ。

しかし、ミネルバは、その対策魔法を覚えていなかった。

コピー先の魔法を使うことは滅多になく、使う必要が出た場合もウィキ頼りだった。

ユグドラシルであれば、コンソールから現在の変化で使える魔法一覧を見れたが、こちらでは、そのコンソールが死んでいる。

具体的な魔法名を思い浮かべ、その魔法を使おうと意識を向けると、範囲やリキャストタイム、MP消費量などを含め使い方がわかる。

しかし、その対策用の魔法名がわからない。

ミネルバの使用可能魔法は、コピー後も含めると千を超えている。

自身がレベルアップで覚えた魔法や、有名どころは記憶している。

しかし、普段使わないような情報系の魔法やマイナーな補助魔法までは憶えていない。

ユグドラシルでギルドマスターになった時には過疎化が進んでおり、大体ソロ狩りで、たまにギルメンとネコを愛でたり、外部からネコを愛でに来る人の応対をする程度だ。

非戦闘系の魔法の記憶が抜け落ちても仕方ない。

戦士職は、自身の近接戦闘の適正のなさでユグドラシル時代から死んでいたが、魔法職まで死んでいることに気が付いたミネルバは愕然としていた。

 

そんな理由があり、ミネルバはふてくされていたのだ。

しかし、ミネルバにさらに追い打ちをかける出来事が発生する。

 

「ミネルバ様、アインズ・ウール・ゴウンの使いを名乗る人物が面談を申し込んでいます。

 簡単な幻術を纏って、人間のように見せた闇妖精(ダークエルフ)が2名です。

 といっても、それなりのレベルなら簡単に見破れる程度でした。

 幻術は帝国対策かと思われます」

 

ミネルバの上のネコを抱き上げながら、シノブが言った。

 

「幻術をかけてきたアインズ・ウール・ゴウンの使いか……。

 え、アインズ・ウール・ゴウン!?」

 

ミネルバの無表情が崩れる。

ミネルバの中では、アインズ・ウール・ゴウンといえば、異形種PCのみで構成されたDQNギルドという印象が強い。

そしてタチの悪いことに、めちゃくちゃ強いのである。

神話級(ゴッズ)アイテムがほとんどないネコさま大王国みたいなお遊びギルドではなく、ワールドアイテムを馬鹿みたいな数所持していたガチギルドである。

鉱山を独占し、超希少な鉱物を独占していたこともある。

1500人VS41人で41人のアインズ・ウール・ゴウン側が返り討ちにした動画は、その手の動画を普段見ないミネルバも見た記憶がある。

ネコさま大王国のフルメンバーでも、絶対に勝てない。

ミネルバだけでは、一人すら倒せないだろう。

 

「わかった。すぐ行こう」

 

どちらにせよ、ここで拒否する勇気などない。

できるだけ、穏当な内容なことを期待しながら、ミネルバは立ち上がった。

いつもの部屋に着くと、幻術のかかった闇妖精(ダークエルフ)の子供がいた。

それぞれ、巻物みたいなものを背負い変わった小手を着けているが、あきらかに外装から浮いている。

なにか、特別なアイテムなのだろうか。

アインズ・ウール・ゴウンから喧嘩を売られた時点で、負けなのだ。

気にせず、話を進めよう。

ミネルバは小さく息を吐き、話を始めた。

 

「私がこの城の主、ミネルバ」

 

「あたしはアウラ・ベラ・フィオーラ、こっちがマーレ・ベロ・フィオーレ。

 二人とも、アインズ・ウール・ゴウン様に仕える階層守護者です」

 

階層守護者ということはNPCなんだろうかとミネルバは考えたが、それよりも気になることがあった。

 

「……様?アインズ・ウール・ゴウンはギルドの名前であって、個人の名前でなかったはずだけど?」

 

ミネルバは疑問を口にした。

 

「あ、あの、至高の41人のまとめ役の方が、今はそう名乗られています」

 

「ああ、たしか……そう、モモンガというのが元々の名前かな」

 

見た目が骸骨の魔王様といった割に、名前が可愛かったのでミネルバの記憶にもギリギリ残っていた。

名前と見た目のギャップが大きくて気にしていたのを、こっちに来たのを機に名前を変えたのかな、とミネルバは勝手に推測した。

 

「人間のくせによく知ってるね。

 いや、人間だからこそ詳しいのかな?」

 

アウラが意地悪く笑みを浮かべながらそういった。

 

「アインズ・ウール・ゴウンは有名だから。

 それと、私は二重の影(ドッペルゲンガー)

 

人間を侮蔑するような意志を感じたので、ミネルバは種族を晒すこととした。

アインズ・ウール・ゴウンは異形種ギルドだから、異形種であることを晒し、できるだけ友好的に話を進めたいとの狙いがあった。

ミネルバは白いのっぺりとした顔に、黒い穴が開いた埴輪のような姿に代わる。

ミネルバ自身は、この二重の影(ドッペルゲンガー)の基本の姿があまり好きではないので、すぐ人間の形態に変化しなおした。

 

「なんだ、二重の影(ドッペルゲンガー)だったんだ」

 

「うちの城に人間はいない。ネコとかケットシーとか」

 

正確にいうなら、ギルドメンバーは人間が多かったのだが、ミネルバはもう会うことはないだろうとも思っている。

 

「ふーん。まぁ、いいや。

 アインズ様のお言葉を伝えるよ」

 

そう言うと、アウラとマーレは居住まいを正した。

 

「この城にいるプレイヤーを招き、友好的に会話をしたい。

 特に問題ないなら、3日後の14時、この城のそばに転移門(ゲート)を開く。

 と、アインズ様は仰られたよ」

 

「いくつか質問していい?」

 

「いいよ」

 

「そっちも知ってると思うけど、バハルス帝国の監視がこの城を見てる。

 転移門(ゲート)を見られて、帝国に色々言われるのは面倒。

 幻術で囲いを作るから、その中に転移門(ゲート)作ってもらうのは可能?」

 

「だ、大丈夫だと思います」

 

このあたりはわざわざ人間の幻術をかけて、気を使っていることからも大丈夫だろうとミネルバは考えていた。

 

「あとは、プレイヤーは私だけなんだけど、シノブを連れて行っていい?

 うちの城を管理する者にも、他の場所見せて勉強させたい」

 

本音でいうなら、探知系に優れた護衛を念のため連れていきたいというわけだ。一人で行くとなれば、管理人たちが心配するだろうという意味もある。

 

「いいんじゃないかな」

 

「わかった。それで返事だけど……」

 

ミネルバも、アウラたちを見習い、姿勢を正してから宣言する。

 

「ギルド『ネコさま大王国』の現ギルドマスター、ミネルバが、アインズ・ウール・ゴウン殿の招待をお受けする、と伝えてください」

 

「わかりました。

 第6階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラと、」

 

「同じく第6階層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレが

 アインズ・ウール・ゴウン様にお伝えします」

 

アウラとマーレも宣言した。

 

◆◆◆

 

「そうか、まさかネコさま大王国だったとは……」

 

アインズの執務室では、アウラとマーレが報告を行っている。

ネコさま大王国の興味はネコにだけ注がれていて、ワールドアイテムなどには欠片も興味がなかったはずだ。

戦闘能力も低く、外部から呼んだネコ好き集団の援軍こそが本隊と呼ばれていた。

アインズの記憶していたギルドマスターの名前は異なるが、ネコさま大王国が有名になりギルドマスターの名前を知ったのはかなり前のことだ。

ギルドマスターの変更があったと考えるべきか、あるいはこちらにきた唯一のプレイヤーがギルドマスターと名乗っているか。

どちらにせよ、城の外観等はアインズの記憶の中のネコさま大王国と一致する。

アインズは、敵ではなさそうなことに安堵していた。

 

「どんなギルドなんですか?」

 

「様々なネコを飼っていたギルドで、多くの者がネコを愛でるため集まったと聞いている。

 何名かの仲間は行きたがったのだが、異形種ということで、訪れたことはないはずだ」

 

「至高のお方が訪れることは拒否したのですか!?

 あの城、滅ぼしにいきましょう!」

 

アウラが怒気を放つ。

マーレもやってやるぞと言わんばかりの表情だ。

 

「違う、違う。

 アインズ・ウール・ゴウンの名は有名過ぎたし、不特定多数が集まるネコさま大王国に訪れると厄介事に巻き込まれる可能性が高いということで、自発的に訪れなかったのだ」

 

アインズとしては、彼らの忠誠心は非常に嬉しい。

嬉しいのだが、この好戦的な部分はもう少しなんとかならないものかと、溜息を吐きたくなった。

 

「この世界では、プレイヤーの数は少なく、訪れても危険は少ないだろう。

 仲間たちが行ってみたいと思っていた場所だ。

 落ち着いたら、一度遊びにいくのもいいかもしれんな。

 アウラとマーレも一緒に来るか?」

 

「いいんですか!?お供させていただきます」

 

「ボ、ボクも一緒に行きたいです」

 

「ネコはペットとして有名な動物だ。

 あるいは、お前たちも気に入るかもしれんな」

 

アインズとしては、こういっておけば守護者が先走って滅ぼしに行く可能性は減るだろうと思い、釘をさすつもりで言った。

ただ、骸骨とネコが戯れる姿を想像して、ちょっと後悔もした。




・ミネルバの魔法
アインズ様は自身の使える700以上の魔法を暗記しているため、その魔法に意識を向ければすべて使うことが可能です。
ミネルバは、変化した時のあまり使う機会がない魔法名は暗記していないため、そもそも意識を向けれないという設定。
火球(ファイヤボール)》を始めとした自身がレベルアップで覚えてた魔法や、《大治癒(ヒール)》のように有名どころの魔法は、記憶しているので使うことが可能です。

・ミネルバの戦闘力
装備については伝説級(レジェンド)で、指輪課金だけしている設定。
二重の影(ドッペルゲンガー)は基礎ステ少な目だが、変化による多数の手札により、相手の弱点を突くことができる玄人好みのクラスという設定。
が、上の魔法が使えない設定により、ロクに弱点を突くことが出来ず、ネコさま大王国のギルドアイテムは耐久力しかないネタ装備です。
この状態でナザリックNPCに勝てるのか……無理っぽいですね。

・ネコさま大王国のギルド戦について
小説だと特に記載がなかったはずだと思います。
あったとしても、すみませんが独自設定ということでよろしくお願いします。
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