「師よ、アインズ様にお会いしたのですが、アインズ様の魔力、あれはまさに魔法の深淵におられる神の魔力でした!」
久しぶりにフールーダが訪ねてきて、開口一番の台詞がこれである。
ここのところ、会談の関係や戦争準備に忙しかったらしく、久々だし頑張るかと思っていたミネルバの心が、一気に萎えた。
フールーダの語った話をまとめると、ナザリックに訪れたときに、フールーダが支配下に置くことができなかった
フールーダがミネルバの弟子でありアインズの魔力を見せてほしいとお願いすると、ミネルバの弟子ならということで了承された。
ミネルバ以上の
弟子にしてくれと頼むと、ミネルバの元でもう少し深淵に触れてこいと言われた、という流れになる。
ミネルバとしては、そのままアインズに引き取ってもらってもよかったという思いもあるが、帝国との結びつきということもありこのままでよかった部分もあり、複雑な気持ちだ。
「それを聞かせるためだけに来たの?」
「いえいえ、本番はこれからです」
フールーダは、カッツェ平野での王国との戦争、あれを戦争と呼んでいいのかは意見があるが、とにかく戦争について語ってくれた。
3万人近くの人間がアインズの放った範囲の広い麻痺魔法で倒れた。
とてもよく通る声で、これは警告だ、愚かなお前たちにも力の差はわかっただろう、次は麻痺で済まさず命をもらうと宣言すると同時に、上空に凄まじい範囲の爆発魔法を放つと、王国兵は狂乱状態となり、我先にと逃げ出した。
麻痺魔法で倒れた際に頭を強打するなりして運悪く死んだのが十数人、狂乱状態で押し倒されたりして死んだのが百数十人。
帝国の兵は、ロクに戦闘をせず事後処理に走り回った、とのことだ。
ミネルバとしては、数万単位で死んでいただろう《
「それでですね、我が神アインズ様が使った魔法についてお尋ねしたいのですよ。
アインズ様も、ミネルバ様に聞けとおっしゃられていたので」
アインズさん無茶ぶりするなと思いながら、ミネルバは答える。
「さすがに、その話だけから何を使ったかわからない」
フールーダはわかりやすく落ち込んでいる。
「私が使えるかどうかはわからないけど、今度、アインズさんに聞いておく」
フールーダをアインズさんに押し付けようか、などと考えながらミネルバはいつものように適当な第7位階魔法を使って見せた。
◆◆◆
ジルクニフは闘技場で人を待ちながら思いをはせる。
定期的にミネルバを訪ねたが、なかなか親交が深まってきたと思う。
今回の法国との会談で対アインズ大連合の足掛かりを作り、奴を滅ぼすための第一歩とするのだ。
ミネルバは相変わらず無表情だからわかりにくいが、会談の話次第では、奴を裏切るように話を切り出してもいいかもしれない。
それにしても、ここのところ、忙しかったからな。
帰ったら、うちのネコにちょっと豪華なゴハンをくれてやろう。
ついでに、甘えてくるなら撫でまわしてやってもいいし、ミネルバからもらったねこじゃらしで遊んでやってもいい。
始めこそ、仕方がなく構っていたのだが、しばらく飼っていると、なかなか可愛く思えてくるから不思議なものだ。
「陛下にお客様です」
ジルクニフは気持ちを切り替え法国との舌戦に全力を尽くそうとした。
あの言葉が聞こえるまでは。
「挑戦者は、魔導国国王アインズ・ウール・ゴウン陛下です!」
◆◆◆
ねこじゃらしを細かく揺らし、たまに止める。
世話人が緩急をつけるといいとの教えてくれた。
ネコがとても反応よく、ネコパンチを繰り出してくる。
とても、かわいい。
ちょっと高い位置で振ってみる。
ぴょんぴょんジャンプしながら、ねこじゃらしを狙ってくる。
とても、とても、かわいい。
ジルクニフがネコを飼い始めたので、ねこじゃらしを作り、フールーダに届けてもらった。
それがきっかけというわけでもないが、ミネルバの中でねこじゃらしがブームとなっている。
ただのねこじゃらしではなく、耐久自動回復クリスタルで作ったマジックアイテムのねこじゃらしである。
さすがにギルド武器のじゃらし王ほどの耐久力はないが、普通にネコと戯れる分には十分である。
我ながらいいプレゼントを選んだとミネルバは一人頷いていると、《
『ミネルバさん、アインズです。今、大丈夫ですか』
『大丈夫』
『戦争で使う魔法に相談に乗ってくれた件、ありがとうございました。
漆黒の英雄、モモンが協力してくれることも大きいですが、強大な力は持っているが理性があるアンデッドだと理解してくれた人もいて、エ・ランテルもかなり落ち着いています』
抵抗運動とかで死亡者がでてないというならいいことだ、だがそれより聞かなければならないことがある。
『気にしないでいい。
それより、フールーダに戦争で使った魔法について教えろと言われたけど、どんな魔法を使ったのか知らない』
『え、すみません。
あの男、どうも苦手で、適当に言って話を打ち切ったんですよ。
帝国との顔合わせの際に、探知妨害の指輪外して魔力を見せたら、我が神よとかいいながら足に口付けしてきたんですよ!
あれは、ドン引きでした……』
『うわぁ……ご愁傷さま』
ミネルバはフールーダに対して、探知妨害の指輪を外すことや第10位階魔法を使えるのを教えることは絶対に行わないと固く誓った。
『はぁ………すみません、使った魔法でしたね。
《
『ああ、わかる。魔法を貯める魔法陣を三重化して、3つだす。
それぞれの魔法陣に三重化魔法を封じ込めて、3×3で、9重化。
《
『そうです。《
ついでに花火変わりに爆発も派手に上げましたよ』
『わかった。とりあえず《
『ええ、構いませんよ。というか、理論とか聞かれても困りますよね。
感覚的に魔法の使い方はわかるんですけど、理論となるとさっぱりで……』
『私も……。
そういえば、用件は?』
『ああ、すみません。
実は、皇帝が帝国を、魔導国の属国にしてくれって願い出たんですよ!』
『はい?……アインズさん、洗脳系の魔法でも使ったんですか?』
『いえ、そんなわけないじゃないですか。
別に同盟関係で十分のつもりだったんですから。
魔導国のほうでいろいろ忙しいですし、属国なので基本皇帝に丸投げできるだろうとは言え、仕事が増えそうなことしたくないですよ』
『とはいえ、断ることもできないと』
『ええ、その通りです。
正式に結ぶのはもうしばらく後になるかと思います。
ただ、ネコさま大王国って、帝国に物資の提供させてたじゃないですか?』
『あ……、どうしよう』
せっかくの引きこもり生活が台無しである。
『ああ、安心してください。
帝国が物資の提供をしなくなったとしても、魔導国から提供しますので』
ネコさま大王国にとってはありがたい一言である。
ただし、アインズの利点がミネルバには想像できなかった。
『アインズ・ウール・ゴウンとしての利点はないように思うけど?』
『いえ、昔、ギルドメンバーの一部がネコさま大王国に行きたいって言ってたんですよ。
可能性が低いことはわかってるんですけど、もしギルドメンバーがこの世界に来た時に、ネコさま大王国があったけど維持しきれずになくなった、なんてなったら悲しいじゃないですか。
だから、維持したいんですよ』
『……それだけ?』
『ええ、俺にとって、仲間とナザリックが最優先です。
次に、俺や仲間に関連するものが優先されます。
その関連するものにネコさま大王国が入っていると思っていただければ』
『なるほど……』
嘘は言っていないように聞こえる。
逆に言えば、余裕があるなら物資提供はするけど、ナザリックが危なくなれば物資提供は打ち切るということだ。
『わかった。援助はあてにさせてもらうけど、こっちでも何か稼ぎの手段は考えてみる』
帝国の属国化の話がなくても、ミネルバはしばらくネコを愛でたら稼ぐつもりではあった。
魔導国が建国した時点で、先が不安になったためである。
『わかりました。
また詳細が決まったら、連絡しますね。では』
そういって、《
ネコさま大王国も実質アインズ・ウール・ゴウンの傘下となった。
それは仕方のないことだと、ミネルバは考える。
あのアインズ・ウール・ゴウンに滅ぼされなかっただけ幸運と思うべきだろう。
正直、帝国に属国化は王国を飲み込んでからとミネルバは推測していた。
少なくとも軍を動かしたりせず、知略でどうにかしたのだろう。
トップギルドのギルドマスターの智謀は恐ろしいものだ。
正直、アインズには恐怖を感じる瞬間がある。
智謀もそうだが、特にあの超位魔法を使った大虐殺のいつもと変わらない口調で提案された時など特に強く恐怖を感じた。
ただ、この世界では必要なことなのだろうということは、ミネルバにもわかっているつもりだ。
うまく付き合っていくしかないのだろう。
「はぁ……」
ミネルバは溜息を洩らした。
とりあえずは、金稼ぎの手段だ。
ユグドラシルの希少植物がここでも安定して育つなら、エクスチェンジボックスに投げ込んでユグドラシル金貨を楽に稼げるのだけど……。
アインズさんと皇帝に一言報告して、城の周囲に実験用の畑でも作ろうか、とミネルバは考えた。
「ずっと、ネコさま大王国で引きこもってネコを愛でたい……」
遊び足りないのか、またはミネルバのつぶやきに反応したのか、ネコがペシペシと前足でミネルバを叩いた。
これで10巻の内容も終わり、「ネコさま大王国で引きこもってネコを愛でたい」は、俺たちの戦いはこれからだエンドで、完結となります。
アインズ登場後の7巻くらいの話から、ミネルバがほぼ絡まない+原作とほぼ展開が変わらなかったで、滅茶苦茶話を飛ばした感じになってます。
技量不足でかなり唐突な終わりになり申し訳ないです。
下のは本文中に書きたかったのだけど作者の技量不足などで諦めた、設定や今後など。
・カッツェ平野の戦争
王国との戦争による死者の大幅減。
ガゼフはわざわざ別の召喚して探し出していないので、生存。
生存者が増えたため、魔導国での物資消費量が増えるなどの問題も出てくるはずです。
アインズ様の被支配層でいたいと思える理想郷発言をすでに聞いていますし、アルベドとかデミウルゴスがきっとなんとかしてくれます。たぶん。
・魔導国
大虐殺をしていないことで市民からの嫌悪感がほんの少しダウン。
ただ、万単位を殺せる力があることを見せたという点は変わりませんし、アンデッドであることを覆せるほどのものではないです。
・フールーダ
アインズ様に情報を流し終わった後は、帝国の勢力の維持に努めつつ、ミネルバの元を訪れる感じです。
ただ、アインズ様は、ナザリックの魔法開発の責任者の地位は与えないことに。
ミネルバが、アインズ様に弟子を押し付けたならば、責任者とするかもしれません。
そこそこの頻度で第7位階魔法を見せてもらって、研究に励み、本人は幸せを感じております。
原作の、神から魔法を教わることに比べると控えめな幸せとなりますが。
なお、ミネルバにも探知妨害の装備外してくれといったり、第10位階魔法を使えるのかと聞いていますが、はぐらかされています。
・ジルクニフ
アインズの使用魔法がランクダウンして兵士のトラウマや士気低下率がマシになり、法国からの視線もかなりマシになっております。
ただ、闘技場の密談の際に、アインズ様に挨拶されればいくらなんでも心がへし折れると思います。
ミネルバに媚売るためだけに飼い始めたネコですが、ジルクニフはかなり可愛がり、癒されております。
軍部からの苦情が弱くなったこととネコさまの癒しパワーで胃と髪は原作ほどひどくないはず。たぶん。
ジルクニフは愛妾との子供に愛情を感じないようですが、ネコを愛でてるジルクニフなら、後々、自身の子供にも愛情を向けられるかもしれません。
・アインズ様
ミネルバ及びネコさま大王国のことは大切には思っています。
ただ、ミネルバと友達か?と言われると「ミネルバは友人ではない、ギルメンこそが友人であり仲間だ」と断言する程度の距離はとっております。
仮にミネルバが殺されたら、私の保護下にあったものを殺すとは不愉快だといいつつ敵討ちくらいはしてくれるでしょうが、「クゥ、クズがぁああああああ!!」といったナザリックを汚された時ほどの激しい怒りは見せない感じ。
初期案だと、ミネルバともう少し親しい友人関係になりエンドの予定だったのですが、9巻の超位魔法が楽しみだとかいってる姿を読み直して、ミネルバが友達関係になるの無理っぽくね?と思い直し、微妙な距離間での中途半端なエンドになりました。
・ミネルバ
アインズ様が忙しいと聞いているので、緊急に連絡すべき事項がないときは、ミネルバ側から《
ちなみに、ジルクニフにアインズ・ウール・ゴウンを裏切れと言われるとは欠片も思っていません。
仮に頼まれたとしても、おとなしく同盟国のままでいたほうがいい、ミネルバでは絶対勝てない、など逆に説得をするはずです。
アインズ様はいい人だと思うのだけど、たまにでる人としての感覚がズレたところに怯えている状態。
アインズ様と友達か?と言われると、いや有名ギルドマスターだし恐れ多いという程度の距離はあります。
今後は、作物を育てる魔法を使って作物をエクスチェンジボックスに投入する以外は、引きこもってネコを愛でている生活を送ることになると思います。