ミネルバがネコカフェに着くと、ネコ耳和風メイド、ネコ耳ボサボサ頭にヨレヨレの白衣、ネコ耳金髪縦ロールの3人が待っていた。
金髪縦ロールが1階の管理人、ヒメだ。
鞭と吐息を使いこなすテイマーだ。
といっても、テイムモンスターのレベルが低いため、戦闘能力はテイマーの中でもかなり低い。
「待たせたね。とりあえず適当な席に座ろうか」
ミネルバが席に着くことを確認してから、管理人3人が席についた。
ずいぶんと緊張しているようだ。
表情からミネルバにもそれが理解できた。
緊急事態だ、仕方あるまいと結論付け話を進める。
「さて、知っての通り本日0時に、ネコさま大王国は原因不明の転移に巻き込まれ、見知らぬ土地に移ったわけだけど、各階層に異常はあったかな?まずはシノブ」
「はい。各種機能に問題はありませんでしたが、転移に気付いた世話人やテイムモンスターが少し騒いでおりましたが、今現在は静かになっております」
「環境の変化は問題ない?温度や湿度とかもそうだけど、変化が大きいとストレスになりそう」
「今の所、気候的な大きな変化は感じられません。
そのあたりも含め、世話人には注意するよう伝達しておきます」
「お願い」
シノブは表情は変わらないが、ネコ耳の主張が激しい。
ネコの耳ってあんなに動き回ったかな?とミネルバが思うほどだ。
「次はヒメ、お願い」
「はい。ミネルバ様。
1階は、特に問題は見つかっておりませんわ。
食料・水ともに問題ありません。
ネコ達も落ち着いたものです」
「そう、それはよかった」
ヒメのネコ耳はピンとしたままで落ち着いたものだ。
シノブのは、表情は変化しにくいけど、ネコ部分は変化が激しいとかそういう設定なのかもしれない。
「2階は通り抜ける分には問題なかった。
クイズに関しては、私も通り抜けられる自信がなかったので、起動テストは行っていない」
ギミックはギルド武器安置部屋からマスターソースで弄る必要がある。
ギルドメンバー全員の知恵を持ち寄って作られたネコクイズはとても難しい問題ばっかりだ。
記憶が薄れてることもあり、ミネルバには、クリアできる気がしなかった。
また、クイズギミックは結構値が張る。
現状、これを常用するのは、金銭的にかなりつらい。
「ハカセ、3階はどうだった?」
「は、はい。特に問題ありません」
ハカセのネコ耳ペタッとしているが、
シノブみたいに、パタパタ激しく動きまわったりはしていない。
「宝物庫およびギルド武器も、特に問題なかった。
ギルドのシステムとしては特に問題無い」
少し安心した。とりあえずネコ達の生活に大きな影響がでることはなさそうだ。
ミネルバは安堵の息を漏らす。
他の3人も少し緊張が解けたみたいだ。
「では、これからの方針について話す。
外部の反応次第だけど、友好的に接触し、金銭や資源の入手手段を確立、ネコさま大王国の維持・管理に努めたい、と私は考える。
ネコカフェのオープンなんかもしたいけど、維持・管理に目途がついてからかな。
優先順位としてはかなり下になる。
皆はどうしたい?」
ミネルバは3人を見る。
「私たち、ネコさま大王国のものは、誰かの悲しみを慰め、癒し、誰かに愛されるために創造されたと考えております。
多くの方と友好的になる方針には、異論ございませんわ」
ヒメがそう言うと、シノブとハカセも同意する。
ネコさま大王国のNPCのカルマは基本的に中立から善よりとなっている。
ミネルバは、そのあたりも影響を与えているのかもしれないと考えた。
「うん。よかった。
ただ、最悪のケースの基本方針は固めておきたい。
もし、勝ち目がない敵が攻めてきた場合は、城を放棄してギルド武器を持って逃げ出すこと」
「しかし、この城を放棄するなど!」
シノブが声を荒げる。耳と尻尾がピンと立っている。
表情もあまり大きな変化がないが、少し必死になっているように見える。
「逃げたほうが生存率が高いなら、迷わずそうすべき。
これだけは聞き入れて」
この点に関してはミネルバも譲れない。
逃げた先でも大変だろうが、城を守るために玉砕覚悟なんていうのはもってのほかだ。
「かしこまりました」
3人同時に頭を下げるが、少し震えている。
やはり、受け入れにくいのだろうか。
ミネルバはそう考え、さらに言葉を重ねる。
「私の城への愛着より、あなたたちへの愛着のほうが上。
絶対に逃げること」
3人の震えが、さらにひどくなった。
説得は後に回したほうがいいかもしれないと、ミネルバは別の話を聞き出した。
「詳しい逃走経路などについては、城外の地形も関連するので後で検討しよう」
「はい」
「というわけで城外の地形の把握も進めたい。
隠密能力を持った地図を作れるようなモンスターはいる?」
ミネルバはテイムモンスター系を愛でるだけで、詳細能力までは把握していない。
「申し訳ありません。
条件に当てはまるのは私くらいかと」
シノブが申し訳なさそうに発言した。
ネコさま大王国のモンスターはほぼネコだ。
テイマーの指示は理解できるが、会話や筆記ができるわけではない、とのことだ。
会話可能な世話人のケットシーには隠密能力を持たせてない。
また、道のそばという場所に転移した以上、仮定異世界人が突然できた城に対して接触を試みるのは時間の問題だ。
その時のため、高い戦闘能力をもつシノブは動かしたくない。
「あ、あの探知系の魔法道具で、ちょ、調査するのはどうでしょうか?」
ハカセがビクビクとしつつも、発言した。
「そんなアイテム……あったな、たしか……
いいアイデアだ。ハカセ。悪くない。後で宝物庫からとってくる。
この件は、ハカセに任せて構わない?」
「は、はい。お任せください」
ハカセはコクコクコクと大げさに頷いた。
「それと、道のそばに転移したということは、近いうちに外部からの接触があるはず。
相手の出方がわからない以上、すぐ城に人を入れるのには避けたい。
そこで城壁外に簡単な家を建てたい」
ミネルバはストーンシークレットハウスを取り出した。
「これを使えば、すぐに家を建てられる。
しばらくは外部との接触は、このアイテムで作った家で行いたい」
「接触するメンバーはお聞きしたいですわ」
ハカセは戦闘能力の低い生産系がメインだ。
魔法職もかじってるが、ミネルバよりさらに弱い。
ヒメはテイマーだから、個としての戦闘能力は低い。
シノブはニンジャだ、戦闘、看破能力も高い。
ミネルバは近接戦闘は弱いが、転移系を習得しているため、逃げるのには問題ないだろう。
「私が接触する。シノブは護衛役としてそばに。
接触の際は、ヒメは庭で、警備役モンスターの能力の底上げをお願い」
「念のため、防御能力が高いネコをミネルバ様の盾としてお連れになってはいかがでしょうか?」
シノブが心配そうにネコ耳を揺らしながら訪ねる。
「初対面に大型のネコはインパクトが強すぎて怖がられるかもしれない。
始めはやっぱり小型のネコから」
周囲3人がなんとも言い難い表情になっている。
ミネルバは小さく咳払いをした。
「私とシノブだけでいい。
いざとなれば、転移ですぐ城に避難する。
シノブには離れていても一緒に転移が可能になる使い捨てアイテムを渡しておく」
「貴重なアイテムを……ありがとうございます」
ネコが課金ガチャに出たときのはずれアイテムだ。
ミネルバにとっては、あまり使いどころもなく死蔵していたアイテムに過ぎない。
「とりあえずはこんなところかな?
ああ、そうそう、3階の大部屋の端に件のアイテムで私の家作ったけど構わない?」
「端と言わずに、すべてミネルバ様の部屋にすべきですわ!」
「いや、広すぎて落ち着かないし、部屋の模様替えもお金かかる。
今の状態で十分」
リアルだとスチームバスだったが、こっちだと湯に浸かれるのだ。
広さもこっちのほうが上。
「外部との接触は夜間より昼のほうが可能性が高いと思う。
なので、やることやったら私は寝てくる。
なにかあったらすぐ起こして。
皆も順番に休息をとって」
ミネルバは睡眠耐性はあるが、睡眠無効は持っていない。
予備の
戦闘用の指輪を外してまで、つけるべきかは悩みどころである。
「私たち管理人や世話人はお与えくださった
「……緊急時だし、しばらくは難しいしれないけど、近いうちに管理人も休息できるような体制に移行して」
ブラック企業に勤めていたギルドメンバーが世話人の人数は余裕があるローテーション組めるようにと強く主張し、かなり多めに配置した。
リアルでは上からの指示をただこなしてきた下っ端のミネルバには管理業務は厳しいだろう。
管理人に全投げになっているのはそういう意図もある。
「慈悲深きお言葉感謝いたします」
3人は大げさに頭を下げる。
ミネルバが、仕事ブン投げて、自分だけ寝る上司ってゴミだなと自嘲していたので、驚きが大きい。
「いや、気にしないで。大変だと思うけど頑張って」
「はい!」
気持ち的には寝にくいが、体のほうは眠くなってきている。
さっさと仕事を終わらせて、ベットに向かおう。
ナザリックのメンバーではありませんが、次こそは原作キャラが登場するはず。