これはゾンビですか? ~いいえ、彼は問題児です 作:白ウサギ@FGO
第九話 テスト勉強ともう一人のゾンビ
京子を取り逃してから四日が過ぎた。
京子は未だに行方が知れない。アリエル先生も探してるみたいだが、どうも難しいようだ。
「なあ神無……お願いがあるんだ」
「どうしたんだ、歩」
突然歩が俺に話しかけてくる。どうしたんだ?
「勉強、教えてくれないか」
そういやあ、歩はいつも授業中寝てたな。
「しょうがねえなあ」
「助かる」
復習になるし、別にお礼なんて言わなくても良いんだけどな。
俺達は家に帰って鞄を部屋に置き、居間に行く。
「さて、早速始めるか」
「ああ」
歩はそう言いながら、数学の問題集を広げる。
「アユム、カンナ。なにやろうとしてるわけ?」
「勉強だ。来週からテストだから歩が俺に教えてほしいんだと」
「テスト?なんの?」
ハルナが小首を傾げ、ユーがテーブルを二回叩く。
『多分 耐久力』
それはない。
「衝突実験だなっ!」
「無茶言うな。そんなテスト、俺と神無しか受けられないだろ?」
「ハルナ、筆記試験だ」
俺は簡単に説明する。
「なあ神無。ここの問題ってなんだ?」
そう聞かれたので、歩が指している問題を見る。
「ああ、ここはな――」
そう言いながら、俺は歩に分かりやすく教える。
「ああ、そういうことか」
「ていうかさ、こんなとこテストに出るの?」
そういえばテスト範囲はもう少し先だった気がするな。
「……いや、テスト範囲はもっと先だが」
「はあ?じゃあなんでこんなとこやってんだよ。アユムってそんっなにバカなの?脳にシロアリでも棲んでんの?」
「でもさ、やるなら最初からやらないと」
「で、このテストいつなんだよ」
「月曜日だ」
「あんた、勉強嘗めてるだろ?あたしがヤマ張ったげるから、ちょっと貸せよな!」
ハルナはそう言って、歩の問題集をパラパラとめくり、
「なんだよこの簡単な問題集。このレベルで……今の時期から見て――この辺りからがテスト範囲?」
さすがだな、ハルナ。歩はそれを聞いて少し悔しそうだな。
「じゃあ、ねー。こことここ、あとは――」
そう言って次々と丸をつけていく。
「でもな、ハルナ。俺にはそんなところ、全然わからないんだよ」
「知るかっ!やってみない内から何言ってんだ!カンナにでも教えてもらえ!」
正論だな。まあ、頼まれた以上はちゃんと教えるが。
「テスト科目の教科書全部持ってこいよなっ!」
そう言うハルナはいつもの笑顔だ。その反面、ユーはとても寂しそうな顔をしていた。
いつもは無表情だが、最近はずっと寂しそうな顔をしている。
やっぱりあの時のことが関係してるのか?
京子の背後にいるやつは、歩と同じ『ゾンビ』らしい。そいつと何があったのか、今まで気になっていたがこの際聞いてみるか。
「そういやあ、ユー。歩以外に、ゾンビっているのか?」
『居ないと 信じていた』
信じていた――ねえ。
「それはいったいどういう奴で、ユーとの間に何があったんだ?」
「それは俺も気になってたんだ。俺にも教えてくれ」
「私も興味があります。差し支えなければ、是非」
「あたしはどーでもいいけど、聞いとく」
俺達がじっとユーを見つめていると、ユーは少し考えてから机を二度叩いた。
『冥界には 私と同じように強い能力を持ったものが居る
彼はその中の一人で とても強くて頼りになる存在だった
だが メガロに死があるように 彼にも死が訪れた
私は 彼をゾンビに変えたが 死なない体を手に入れた彼は 悪意に飲まれていった
私だけが 彼を止めることができた だから 私は言葉にした
消えて と
私たちは彼が消滅したと思っていたが
どうやら その場から消えただけだった』
「その者がヘルサイズ殿へ、なにをするつもりだとお考えですか?」
『彼は とても私を恨んでいた
どんなことがあっても守ると誓い合ったのを
裏切ってしまったのだから 当然』
「も、もしかして恋人とかっ?」
ハルナが顔を赤くしている。確かにそれっぽいが。
だが、それを聞いてユーは首をふった。
『彼は何かを企んでいる』
………面倒ごとが起きそうな予感がするな。
ユーの話を聞いて、みんな黙っている。そんな空間に耐えられなかったのか、ハルナが、
「し、心配すんなよなっ。あたしに任せろっ!絶対絶対、大丈夫なんだからなっ!」
何の根拠もなく、胸を張る。ハルナらしいな。
「そうです。私が守ります」
「俺も、ユーのためならなんでもするさ」
「俺も同感だ」
『ありがとう』
俺や歩だけではなく、セラとハルナがユーのために何かしたいと考えたのは、京子との一件で絆のようなものが芽生えたからかもな。
他にも聞こうとしたが、携帯が鳴ったので俺は居間から出つつ携帯を取り出す。
この特徴のある電話番号、アリエル先生か?
「もしもし」
「あ、カンナさんですかぁ?」
やっぱりアリエル先生か。
「ハルナに変わった方がいいか?」
「いえいえー、カンナさんにー、お願いがあるんですぅ」
「――何かあったのか?」
「え?わかりますぅ?ちょっと困ったことになりましてぇ、カンナさんにしか頼めないことができちゃったんですよー」
だんだん喋るペースが早くなる。どうも切羽詰まった状況みたいだな。
「俺でよかったら、やってもいいぞ」
「そう言ってくれると思ってましたよ~。助かりますぅ。えっとですねー、ちょっと預かって欲しいものがあるんです。あ、私が取りに行くまでの間だけでいいんですけどぉ」
「別に問題ないが、ハルナには言わない方がいいか?」
「はい。ハルナにも内緒でお願いしますぅ。あ、もう切りますねー。とにかく~、絶対送りますからぁ、ハルナにもわからないようにしてくださいねぇ」
そう言って電話が切られる。
そういやあ、いつ来るのかも、何が来るのかも言ってなかったな。