これはゾンビですか? ~いいえ、彼は問題児です 作:白ウサギ@FGO
歩がゾンビになるという事件からだいぶたった。
今は授業中なんだがいかんせん、とても退屈だ。暇が売れたら一稼ぎできる自信があるぞ。
そんなどうでもいいことを考えていると、歩から話しかけられる。
「カーテン、閉めてくれね?」
「無理。織戸にでも閉めてもらえ」
「その織戸が寝てるから頼んでるんだが」
「しょうがねえなあ。この授業が終わったら閉めてやる」
「助かる」
さて、俺の親戚の相川歩だが実はゾンビで魔装少女だ。
眠くなってきた頭で、俺は歩が魔装少女になった時のことを思い出した。
十九時十二分ぐらいだったか。
その日も俺は、学校で暗くなるまでのんびり過ごし、夜になってから校門を出た。
あ?何でゾンビじゃないお前まで残ってるかだって?特に理由はねえよ。
それで家まで歩いて大体五分で着くんだが、今日は俺と歩は寄り道したい気分だったわけだ。
俺達の家の近くには墓場があるんだが、歩はそこが好きらしい。
俺?俺はまあまあ普通だな。夏は涼しいし。
俺達はシャリシャリと足音を鳴らして中ほどまで進み、墓石の上に腰を下ろす。
俺が買ってきたばかりのパンを食べながら月見気分で空を見上げていると、歩がペットボトルを空に投げた。
「結構飛んでくなー」
そんなことを呟きながら空を見てると、二つほどペットボトルじゃないものが落ちてきた。
「おい、歩。なんか熊と人間が落ちてきてるぞ」
「相変わらず目がいいな」
俺達はそんな会話をしながら、その場から離れる。
ドゴーン!と俺達がさっきまでいた場所には穴が開いている。
そして俺達はよせばいいのに、面白そうだからと穴に近づいた。
「いたたたたたたた~」
「おい、歩。今年は墓場でコミケやるのか?」
「俺に聞くな。そうゆうのは織戸にでも聞け」
そこには、学ランを着た熊の上にコスプレをした少女が腰を押さえていた。
そして何故か俺の横にはチェーンソウが置いてある。
とりあえず、拾ってみた。
「おーい、大丈夫か?」
俺がそんなことをしている間に、歩がその少女に話しかける。
「あ――っ!」
何やら俺の方を指差している。
「あたしの魔装錬器!返せっ!早く!急げ!すぐさま刹那の内に
「歩、パス」
「うおっ」
とりあえず、歩にチェーンソウを渡す。たぶんこのチェーンソウが魔装錬器だろう。
「待て。待て待て。魔装錬器ってなんだ?」
「たぶんそのチェーンソウだろ」
俺達がそんな会話をしていると、その少女のコスプレがすーっと消える。
おお?これは役得だな。
歩がチェーンソウを差し出すと、その少女は奪い取ろうとする。
だが、
「痛っ!なんで!」
少女が触ろうとすると、火花が飛び散る。
「おい、そんなことより服とか着なくていいのか?」
「ほえ?」
俺の言葉を頭のなかで反復しているのだろう。二秒ほどたって全身が赤く染まる。
「こっち見んなっ!こんの変態っ!エロスペシャルがっ!」
「エロスペシャルて……ウォーズマンの必殺技みたいに言うなよ」
「うっさいっ!」
問答無用で俺達の顔面を思いっきり足蹴にして、近くの墓石に隠れた。俺は避けたけどな。
すると、今まで何もしてこなかった熊が俺達に飛び蹴りをかましてきた。
俺は避けたが、歩は当たって墓石に頭をぶつける。
そして歩が持っていたチェーンソウは、俺の方に飛んできた。
「おい、そこのお前、この熊はなんだ?」
「そいつは凶悪女子高生クマッチだ!早く逃げろっ!じゃないと、あんたらなんかすぐに殺されちゃうんだからなっ!」
「ハッ!寝言は寝て言え。こんな熊程度に俺が殺されるわけないだろ」
「それは俺も同感だ。だが、神無は危ないんじゃないか?」
そういやあ歩には俺の力については教えてなかったな。
「ばか!ほんとばか!あんたら相手の力量も測れないのか?これだから、この世界の人間は!」
全く。と呆れた声を出す少女。お前も俺達の力量測れてないけどな。
とりあえず石を拾い、投げた。
俺が投げた石は、第三宇宙速度という馬鹿げた速度を叩きだし、歩ごと熊を吹っ飛ばした。
「ぎゃああああああっ!」
「あっ、手が滑った」
「てめえ、俺を殺す気か!」
「元々お前は死んでんだろ」
俺達がそんな会話をしていると、さっき吹っ飛んでいった熊がこちらに襲いかかってきた。
俺は熊の攻撃を避け、歩はまたしても吹っ飛ぶ。
すると歩が、
「学ランでいいか?」
「知るかっ!は?何言ってんの?」
「お前の着替え」
それだけ言うと、歩は一気に距離をつめ、熊の頭を両手でつかみ首を回す。
ゴキャっという音がして熊の首が落ちた。
何故歩があれだけの力を出せるのか、それはあいつがゾンビだからだ。
痛みも感じないし怪我もすぐ治る。しかも、普通の人間の何倍もの力を出すことも可能だ。
まあやり過ぎると腕とかもげるけどな。
「そういやあ、さっきのは一体なんだ?」
「さっきって言うと、お前と熊を吹っ飛ばしたことか?」
「ああ、そうだ」
「とりあえず、その学ランをあいつに渡してこい」
俺がそう言うと、歩が少女に服を渡した。
その時に「こっち見んなっ!」と言われて蹴られたけどな。
「それで、さっきのは?」
「ああ、俺には特殊な力があってな。あれはそれの一端だ」
「すごいな」
「まあな。それで、結局さっきの熊は何だったんだ?」
「さっき言ったじゃんかっ!凶悪悪魔男爵クマッチだっ!」
さっきと変わってるぞ。
「それにしても、B級メガロのクマッチを一撃で倒すなんて――」
「一撃も何も、普通首が一回転したら死ぬだろ?あれで死なない奴は、今のところ一人しか知らないね」
その一人は歩のことだろうな。
「それよりそこのあんた、あたしの魔装錬器取って」
「別にいいぞ」
そう言って俺はチェーンソウを拾って持ってくる。
「全く。なんでこのあたしが、こいつに拒絶されなきゃなんない訳?」
「さあ?」
「俺が知るか」
「よし、……ちょっとあんたらの家に連れてけ。電話しなきゃ」
「電話ならここにあるぞ」
俺がポケットから出すと、少女が一歩あとずさる。
「何よその魔道具……」
「ただの電話だが」
「ほんとにか?あたしを騙したら、そこのクマッチみたくなるからな」
「さっさと電話しろ」
俺はそう言って、電話を渡すと少女はどこかに電話をかけだした。
「あ、大先生ですか?リフレイン年ライジング組のハルナです!」
ようやく少女の名前が分かった。どうやら彼女はハルナというらしい。
「え?あ、まだ見つかってません……すみません。実はミストルティンがあたしを拒絶するんです。え、はい。こう、ばちばちっと。あ、はい。魔力枯渇ですか。なるほど――まさか!こんな世界の人間がそんな魔力持ってる訳ないじゃないですか!……なるほど。確かに、それしかないですね。わかりました。とりあえずこの世界で出来ることを先にやります。帰る手段は、また――はい。すみません。お忙しいところを――はい。ではまた」
ようやく終わったみたいだな。終わったんなら携帯を返せ。手を差し出すと、乱暴に携帯を返された。
「あんたら、あたしの魔力奪っただろ」
「あ?何のことだ」
「とぼけんな!この天才美少女悪魔男爵ハルナちゃんの魔力を根こそぎ持っていくなんて、ありえないくらいの魔力がないと出来ないって大先生が言ってた!」
「確かに俺は魔力を持ってるが、お前の魔力は奪ってない」
「だったらお前か!」
「いや、俺はゾンビだ」
「ほえ?」
「ただの生きる屍。死人だ」
「不死者!ならあんたも?」
確かに簡単には死なないが、
「残念ながら俺は人間だぜ。まあ普通ではないがな」
「ふーん」
俺がそう言うと、ハルナは俺達に指を指してこう言った。
「あんたら、責任とって貰うからなっ!」
「責任だと?」
「そうだ。あたしの任務は、この腐った世界でアーティファクトを探し出すこと。それと、魔装少女としてこの世界に現れるメガロを倒すこと」
「あー、『魔法少女』ねー。そうじゃないかと思ってたんだ」
「はあっ?あたしは『魔装少女』だ!そんな陳腐なもんと一緒にすんな!」
「違いが分からん。で、メガロってのは、あのクマのことだな?」
「そう。さっきの恐ろしい奴だ」
「なんであんなのと戦ってるんだ?」
「メガロってのはね、あたしの世界を壊そうとする害虫だ。一匹残らず駆逐しないと、あたしら魔装少女に未来はない。つまり、あたしは戦士な訳。すごいっしょ!」
「なるほど、天敵って奴だな。お前の世界を壊したいんなら、なんでわざわざこんな世界に現れるんだ?」
「おいおい歩。そんなの自分のところに被害が来ないようにするためしかないだろ」
「その通りだ。とにかく、あたしは戦えなくなったから、あんたらがやれ!」
「は?」
「あんたらは今、現時点をもって魔装少女だっ!光栄だろっ!」
びしっと指を指された。
「俺は別にいいぞ。だが、変身する気はない」
俺は即答したが、歩はやりたくないようだ。
「歩、諦めろ」
「諦めきれるか!」
「とにかく、あんたらには魔装少女をやってもらう!その間……超スーパー究極ウルトラ不本意だけど、あんたらの家に居させて貰うからな。それで、あんた名前は?」
どうやら歩に言ってるみたいだな。
「歩だ。相川、歩……ていうか、やっぱりもう少し考えて――」
「……アユム。そう、アユムだな」
「……わかった。その……魔装少女とやらは、やってやる」
ようやくやる気になったみたいだな。
「そうと決まれば、早速魔装少女になる練習だ!」
俺は練習しなくていいよな。
「ただし、一つ条件がある」
まあ、そうだろうな。
「俺のことはお兄ちゃんと呼んでくれ」
刹那の内に蹴られていた。そりゃそうか。
「歩、お前にそういう趣味嗜好があるのは別にいいが犯罪者にはなるなよ」
「ならねえよ!」
まあそんな訳で、俺達の家に新しく住人が増えたのだった。