これはゾンビですか? ~いいえ、彼は問題児です   作:白ウサギ@FGO

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第七話 犯人は……

 次の日、俺がいつものように学校に向かう準備をしていると、ユーがトントンとボールペンでテーブルを叩く。

『今日は ここにいろ』

 珍しいな、ユーがこんなこと言うなんて。これは何かありそうだな。

「わかった。今日はここにいる」

 豆腐ももらわなきゃ駄目だしな。歩もメモを見たが、早く帰ると言って学校に行ってしまった。

「あれ?ヘッドホンの人は今日は行かないの?」

「ああ。ちょっとな。それと……」

 俺は、ハルナにアリエル先生との話を伝える。

「あんた大先生と喋ったの!大先生はあんたなんかが気軽に喋っていいような人じゃないんだからっ!すごいんだぞ!大先生なんだからなっ!」

 そんなことを大声で叫ぶ。

「まあとにかく、魔力回復に専念しろだとさ」

 俺はそう言って私服に着替えるため、二階の自分の部屋に上がっていった。

 

 

 

 午後には豆腐が届いたので、アリエル先生に電話する。

「はい~。こちらマテライズ魔法学校で~す」

「アリエル先生か?九十九神無だ。京豆腐が手に入ったから渡したいんだが」

「あら?もう渡せるんですか~?」

「ああ」

「じゃあ取りにいきます。そうですねぇ、そちらの時間でぇ、九時にいきますねー」

「わかった。どこで待っていたらいい?」

「そうですねぇー。あまり人気がないところの方がぁ、いいかも知れませんね。結構ぉ目立ちますので~」

「わかった。それじゃ住所を教えるからそこに来てくれ」

「はい~」

 これで問題ないな。

 

 しばらくたって、歩が帰ってきた。

 居間でテレビを見ているとハルナがこっちを見て言う。

「ヘッドホンの人、お腹すいたんだけど?」

「わかった」

 さて、さっさと作るか。一応弁当の残りは昼に食べておいたから問題ないしな。

 

 ご飯も食べ終わったし、時間もちょうど九時だから行くか。

「歩、ハルナ。今からアリエル先生に会いに行くがお前らどうする?」

「アリエル先生?」

 俺の言葉に歩は首を傾げている。

「そういえば歩には言ってなかったな。アリエル先生はハルナの担任の先生で、大先生って呼ばれてた人だぞ」

「へえ、そうなのか」

「それでどうするんだ?」

「俺は行こうかな」

「あたしは……いかない」

「それじゃあ歩と俺だけで行くか」

 もうすぐ九時なので豆腐を取り出し、家を出る。隣にはハルナが何故かいる。

「いかないんじゃなかったのか?」

「コ、コンビニにいくんだからねっ」

 そう言ってハルナは途中で別れる。たぶんあとで来るんだろう。

 

 

 

 墓場はいつものように静かだった。予想通り人は全くいない。

 卒塔婆の陰には、ツインテールをした中学生くらいの少女がいる。あれがアリエル先生か?

「大先生ですよね?」

 歩がそう言う。だが彼女がとった行動は――

 歩を『刃物で突き刺す』というものだった。

「……はっ?」

 これには俺も驚いた。歩もかなり驚いている。

「こんばんは。相川さん、九十九さん」

 どうやら彼女は俺のことを知っているみたいだな。

「……お前は誰だ?」

「京子ですよ」

 京子って確か織戸が言ってたやつか?

「ノモブヨ、ヲシ、ハシタワ、ドケダ、グンミーチャ、デー、リブラ」

 京子がその言葉を言うと服がコスプレ衣装に変わっていく。

 ……こいつが犯人だったんだな。

 ふと歩の方を見ると、微動だにしない。

「そんなちっぽけな魔力で戦おうなんて……笑止です。結界一つで動けないんですか?」

 とりあえず歩が結界で閉じ込められているので、結界を殴る。

「そんな攻撃が効くと思って……なっ!?」

 驚いてるな。まあそりゃあそうか。結界を拳一つで砕いたしな。

「あなた、何者なんですか?結界を素手で壊すなんて」

「ただの魔力を持った一般人だぜ」

「あなたみたいな一般人がいてたまりますか」

 そんなこと言われてもな。

 しばらくしてハルナもこっちにきた。

「なあ、アユムとヘッドホンの人。こいつ誰?」

「歩を殺した魔装少女だ」

「アユム達の敵?……だったら、あたしの敵だな」

 そう言ってハルナが両手を広げて立ちふさがる。

「へえ、面白い。ミストルティンはどうしました?素手で戦うつもりですか?……思い上がりもいい加減にして下さい!」

 だん。砂利だらけの地面を蹴り、こちらに向かってくる。歩はハルナを抱えてその場から飛ぶ。

 俺に迫っていた剣は体に触れた瞬間弾かれる。

「やっぱり武器は効きませんか……あなたもどうやったら死んでくれますかね」

「そう簡単に死なねえよ。……歩、とりあえずチェーンソー取ってこい。今のお前じゃ勝てないぞ」

 俺の言葉に歩は心配そうにしている。

「……わかった。絶対死ぬなよ」

「絶対死なねえよ」

 とりあえず京子に軽く攻撃して、歩の方に行けないようにする。

「……ほんとにあなた、何者なんですか?人が殴った威力じゃありませんよ」

「そう言われてもな。それに、これでも手加減してるんだぜ?」

 そんな会話をしながらも、俺は攻撃を続けている。

「武器が駄目なら……これならどうですかね?」

 そう言った京子の剣の先が赤い光を灯し、火球が現れる。

「そんなの効くと思ってんのか?」

「いいえ、思っていませんよ」

 破裂音と共に、ものすごい速さで火球が打ち出される。それは俺ではなくハルナの方に飛んでいった。

「……まさか結界まで使えるとは思いませんでした。ハルナに教わったんですか?」

「いや。知り合いの魔装少女に教えてもらった」

 俺達がそんな会話をしながら戦っていると、ようやく歩がやって来る。その隣にはセラもいた。

「遅かったな」

「悪い、少し遅れた」

 セラも来るとは思わなかったな。

「やれやれ、歩とヘルサイズ殿に言われて加勢に来てみれば……敵は人間――ですか」

「心配するな。あれは人間の皮を被ったバケモンだ」

「そうですか……あなたたちも大変ですね。この町は、私がいた里よりも殺し合いが多い」

「あれ?その目――」京子がセラを刃で指す。

「私と同じじゃないですか」

 そう言った京子の目が赤く染まる。くるりと身を翻せば、黒いマントを着ている。

「セラ……「知りません。私とはまた、別の力を感じます」」

 どうやらセラの知り合いではないみたいだな。

 京子を中心に紫の風が吹く。……メガロでもあるのか。

「なんでだよ……なんであいつ、メガロと同じ魔力持ってんだよ」

 ちらりとハルナを見ると、ぶつぶつと何かを呟いている。これじゃあハルナは戦えそうにないな。

「いきます」

 セラがそう言って木の葉の剣で突撃すると、紫の風が渦を巻く。

 幾度か剣を交えた頃、セラの背後の紫の風が細長い竜巻になった。

 逆手に握られた木刀が脇腹に食い込もうと襲い掛かり、セラは後ろに飛ぶ。そこで竜巻に巻き込まれ、弾き飛ばされたセラを俺は受け止める。

 怪我はそこまで酷くないな。

「なあ、どうしても聞いておきたいんだが、なんで人殺しなんかしたんだ?」

「相川さんだって、人を殺して永遠の命が貰えるなんて知ったら……殺すでしょう?」

「ふざけんな……そんなもん、欲しくねえよ」

「それは嘘ですよ。だって相川さん、不死身じゃないですか。九十九さんはどうですか?貴方は相川さん達と違って、不老じゃないみたいですし」

「そう言われてもな。別に俺は永遠の命なんて欲しいとは思わねえし」

「そうですか。……がっかりです」

 京子がそう言うと竜巻がもうひとつ作られ、バレーボールほどの大きさの独楽のようになった。

 高速回転しながら、竜巻は京子のまわりを衛生のように回る。

「なんだよ、あれ。あたし、あんなの知らない」

 ハルナが目を丸くしている。魔法の類いではないみたいだな。十中八九、吸血忍者の能力なんだろう。

「では、本気でいきますよ?」

 そう言って京子は突進を掛け、俺達はそれを迎え撃つ。

 俺は京子の後ろにまわり、京子の背中に攻撃をする。

「後ろから攻撃なんて卑怯ですね」

「不意打ちしたやつがなに言ってやがる」

 ……チッ、やっぱり避けられたか。本気というのは本当みたいだな。

 もう一度攻撃しようとしたところで、歩がこちらに抱きつく形で倒れてきた。

「セラ、お前何しやがる!」

「歩、さっさとどけ。俺にそういう趣味はない」

「俺にもねえよ!」

 歩がどいたので俺も立ち上がる。

「やっぱり変態ですね」

「お前が俺を蹴ったんだろうが!」

「あの竜巻は危険です。危うくすりつぶされるところでしたよ」

 だからって蹴るなよ。巻き込まれたじゃねえか。

 歩が正面から、セラは側面から、俺は後ろから攻撃する。まずはあの竜巻をどうにかしないとな。

 セラと歩の方に気をとられている隙に、竜巻に拳を叩きつける。

「なッ!竜巻を破壊した?ほんとに何者ですか、貴方!」

 やっぱり動揺したな。結界を破壊したときも驚いてたしな。

「秘剣、燕返し!」

 その隙にセラが京子に攻撃を仕掛けるが、ギリギリでかわされる。

 攻撃を防がれて舌打ちしたセラへ剣が払われる。

 セラが咄嗟に足を引いてかわしたからか、切断はされていないみたいだな。

 京子が追撃しようとしたところで、俺は石を投げて牽制する。

「ほんとに鬱陶しいですね。さっきから邪魔ばかり――」

 そこで歩が京子に踵落としをしたが避けられ、逆に攻撃される。

 歩が距離をおこうとバックステップをしたが、京子の竜巻に直撃する。

 あの竜巻、いつの間に作りやがった。

「このまま体をすりつぶしてあげます」

「それは困るね」

 歩はそう言って、攻撃してきた京子を抱き締める。

 京子の背後からセラが剣を歩ごと突き刺した。

 セラが剣を引き抜くと、京子の体は砂利の上に倒れた。

「終わったみたいだな。ゾンビの歩らしい倒しかただったぜ」

 そう言って俺は歩に近づき、手をさしのべて立ち上がらせる。すると、セラが俺に倒れ込んできた。

「おいおい、セラ。どうしたん――」

「歩!」

 セラの背中には、剣が突き刺さっていた。

 京子のやつ、死んだはずじゃなかったのか。

「一回死んでしまいました――ですが、残念です」

「どういうことだ?」

「私は、あと九回ほど死ねますから」

 まるでゲームの残機みたいだな。そういえばクリスが、膨大な魔力が必要だけど死人を生き返らせるアーティファクトがあるって言ってたな。

「歩、いったん下がるぞ」

 とりあえずセラを抱えてハルナのところまで下がった。歩も俺の言葉を聞いて下がる。

「もしかして生体の宝珠を使ったのか?」

「生体の宝珠?」

 俺の言葉に歩が首をかしげる。

「おや、どうして知ってるんですか九十九さん」

「言っただろ、俺の知り合いに魔装少女がいるって。そいつに教えてもらったんだ」

「そういえばそんなこと言ってましたね」

 京子はそう言いながらゆっくり歩いてくる。

「なあ神無、生体の宝珠ってなんなんだ?」

「生体の宝珠は、死人を生き返らせるアーティファクトだ。生きてるやつに使うと、一度だけ死を無効にする。確かそれには膨大な魔力が必要なはずだ」

「なるほど、そこでサクリファイスか」

「そういうことだ」

「サクリファイス?」

 ハルナが困惑に満ちた声で俺達に聞き返す。

「ようは、膨大な魔力があれば作れるんだろ?この世界の人間を殺して、それを膨大な魔力に変えれば、生体の宝珠とやらを作ることが出来る。そうだろ?」

「正解です」

「でも、こんな世界の人間の魔力なんかじゃ全然足りないはずだ!」

「夜の王ってやつに魂を生け贄として捧げると、すごい量の魔力がもらえるんだったか?」

「案外詳しいですね。まさかあの方のことも知っているなんて」

 次の瞬間、京子の体がぶれて歩の目の前に現れる。巨大な火球が歩へと放たれるが、いきなり消失した。

「あはっ、やっと来てくれました。お待ちしてましたよ」

 背後を振り返ると、そこには何故かユーがいた。

 なんで来たんだ?いつもはいたいはずなんだが。

 炎をユーが襲ったが、手を払うだけで消える。

「歩、なんでユーがここにいるんだ?」

「分からない。でも、ユーと一緒に戦えば――」

 歩がしゃべっているうちに、京子がユーに剣を降り下ろす。

 ユーはそれを防ぐが、一撃の重みに耐えきれず、ひざを崩す。

「あら?」

 京子が怪訝な顔をし、ユーを蹴り飛ばそす。

「……なるほど。その籠手には魔力を消す力があるのですか。すごい防具です。ですが、扱う人間が弱すぎます。……ちょっと残念ですね。膨大な魔力も勿体ない」

 ユーは戦闘能力はそこまでないのか。だから、いつも戦わないみたいだな。

 ユーはハルナからチェーンソーを奪い取り、何かを呟く。

 まさかユーも魔装少女になれるのか?

 俺の予想通りユーの姿は魔装少女の衣装に変わる。

「……着るやつが違うとここまで変わるんだな」

「俺もそう思ったけど、なんで俺の方を向いて言う!」

 そりゃそうだろ。歩とは雲泥の差だぞ?

 そんなことを考えていると、ユーがこちらに吹き飛んできた。

 やっぱりユーじゃ、京子には勝てないみたいだな。

「よし、ユー。一緒に――」

 ユーが地面を指差す。

『逃げろ 邪魔』

 逃げろと言われてもな。

『せめて 動くな 絶対に』

「あいつは九回も殺さなきゃダメなんだぞ?俺も一緒に――」

「歩、ここはユーの言う通りにした方がいい」

 俺の言葉にユーはうなずく。

「神無!?」

「ユーには京子に勝てる策があるんだろ」

 俺の言葉を聞き、歩はユーの目を見て一つ頷いた。

 

 

 

 歩side

 俺は、迷っていた。

 ユーは京子と斬り合いながら大木の方へと戦場を移したんだ。先ほどの青い目が忘れられない。暗がりの中、遠くに見える二人のところに向かうべきなのか、それともユーを信じてここで待つべきなのか。

 神無はユーの方をじっと見つめている。

「歩……」

 セラが意識を取り戻したようだが、顔が蒼白になっている。

 これは恐らく、あのときと同じだ。地が足りないんだろう。

「ハルナ、セラに血を分けてやってくれ」

「しゃーないなぁ。今回だけだからな」

 セラがハルナに口付けするのを見届けると、俺は立ち上がった。やっぱり、ユー一人に任せるなんて出来ないだろ。どんな勝算があるのかは知らないが、さっきの戦いかたを見てたら、心配で仕方ない。

 砂利を踏みしめた瞬間に、セラが俺の服を掴んだ。

「待ってください」

「何をだよ!」

 俺はセラの手を振りほどき、一歩前に進む。次にセラは肩をつかんできた。

「あなたがいっても邪魔になるだけです。ヘルサイズ殿の言葉には、とても強い力がある」

「その能力については聞いているさ」

 確か、言葉を聴いたものが言葉通りになる。みたいな恐ろしい能力で、使うと頭が痛くなるんだろ。

 ――ん?

「言葉を聴いたものが……。それって、対象者を選べないのか?」

「その通りです。見てください」

 セラに言われて大木の方を見ると、京子が膝から崩れ落ちている。すぐに立ち上がるが、また崩れ落ちた。それに対して、ユーはチェーンソーから手を離し、頭を抱えていた。

「ヘルサイズ殿は今、こう発言しているのです」

 

「死んで」

 

 その言葉を聞いて神無は、ユーの居る方向に歩き出そうとする。

 俺は慌てて神無の腕を掴むが、無視してそのまま進んでいく。

 くそッ、なんて馬鹿力だ。

「神無!今ユーの所に行ったらお前も死ぬぞ!!」

「止めるな、歩。そんな重い言葉、ユーに使わせられるかよ」

 確かに俺もそう思う。けど今ユーに近づいたらお前も死んじまうぞ。

 俺が神無の腕をつかんでいる時、墓場に激しい光が瞬いた。目を開けていられないほどの光に、力が抜ける。

 空から何かが降ってきた。それは、見るも無残になったガントレットにプレートアーマーの少女だった。綺麗な髪がふわりと広がり、神無のところに落ちていく。

 ユーが着ていた魔装少女のコスチュームが淡い光となって消える。

「おい、ユー!しっかりしろ!」

 珍しく神無が焦ったような声をあげている。

「まだ死んでいませんよ……その人の魔力を手に入れるために、わざわざこの姿で戦っておびき寄せたんですから」

 耳から血を流した京子が、こちらに歩いてくる。その表情は、狂気に満ちていた。

 こいつ、まさか自分で耳を破壊してユーの言葉から逃れたのか?無茶しやがる。

 京子は自分に剣を突き刺し、一度死んで傷を治す。

「おい、歩。ユーを任せる」

 そう言って神無が服を羽織っているユーをこちらに預ける。

 神無の方を見ると、珍しく怒ってるみたいだった。

「先に行くぞ」

 そう言って神無は京子に攻撃を仕掛けた。

 

 

 

 神無side

「貴方だけで私が倒せますかね?」

「どうだかな」

 そう言いながら、俺は京子に拳を当てる。

「さっきよりもスピードが上がっている……?」

「言っただろ。手加減してるって」

「あれは本当だったんですか……」

 そんな会話をしながらも、俺は京子に攻撃し続ける。

 その時、木の葉の手裏剣が京子に突き刺さる。

「だらっしゃあああっ!」

 ハルナが緑色の剣を降り下ろすが、京子はしゃがんで避けた。

 セラが京子に攻撃し、変わり身の術で隙を作る。その隙に、魔装少女になった歩がチェーンソーで切りかかった。

「変――歩、すごく気持ち悪いぞ」

「お前、いま変態って言おうとしただろ!」

「何言ってんだ。変態じゃなくて変質者だ」

「余計悪いわ!」

 歩の攻撃は京子に避けられ、こちらに吹き飛ばされる。俺は歩の腕をつかんでたたせた。

「悪い」

「いや、問題ない。それよりも次で決めるぞ」

 俺はそう言いながらギフトカードを取りだし、疑似神格・梵釈槍(プラフマーストラ・レプリカ)を出す。

「なんですか、それ」

「そんなの教えるわけないだろ」

俺はそう言いながら、槍を京子に投擲する。

 京子は避けようとしたが、ハルナが結界を張ってくれたようで動かない。

「くっ」

 槍を木刀と剣で防ごうとするが、全て砕けて京子に刺さる。

 一際激しい雷光が周りを照らし、圧倒的な熱量を撒き散らして爆ぜた。

「おい、神無。今のはいったいなんだ!」

「今のは俺の切り札の一つだ。刺されば必ず相手を殺す槍だぜ」

「何で今まで使わなかったんだ?」

「負荷がすごいから1日一回しか使えないんだよ」

「終わりましたね……」

 俺達がしゃべっていると、セラ、ハルナ、遅れてユーがこちらにやって来る。

『終わったの?』

 ユーの質問にセラが答えた。

「ええ、神無がやってくれました」

 その言葉を聞いて、ユーが満足気な表情を浮かべる。

「それで、こいつはどうするんだ?まだ死んでないみたいだが」

 そう言って俺は裸の京子を見下ろす。まだ諦めてないみたいだな。

「ちゃんと息の根を止めてやらんとな」

 そう言って歩が京子に一撃を加えようとしたとき、白衣の少女が歩の腕を止める。……誰だ?

「おい、止めるなよ。こいつは生かしておく訳にはいか――」

「あなたがアユムさんですねぇ?ウチの生徒に何をするんですー?」

 この声、……アリエル先生か?

「大先生!あの、違うんです!アユムはバカだけど違うんです!」

 ハルナが今までで一番動揺している。やっぱりアリエル先生みたいだ。

「アリエル先生……助けて……」

「大先生、こいつはな、この世界でしてはいけないことをしたんだ。離してくれ」

「嘘です!私、そんなことする訳ないじゃないですか……」

「今更何を――」

「私、何度も説明したのに……その人たちが、よってたかって……ハルナまで」

「大先生、俺たちを信じてくれ」

「と言われましてもー、この子はいい子ですしぃ、何より――少なくとも今、あなたがしようとしていることがぁ、いけないことだと思うんですがぁ?」

 そう言いながら、アリエル先生は歩を投げ飛ばす。戦うしかないか。

「大先生!なんでアユムを信じないんだよ!アユムは……こいつらは……めちゃ良い奴なんだぞ!」

「んー、信じるにはぁ、材料が少なすぎますねぇ」

 アリエル先生がポケットから両手を出すと、剣が握られていた。

「そこの金髪の男の人、さてはとてもお強いですねー。私と組みませんかぁ?」

 俺のことみたいだな。

「ハッ、お断りだ」

「おや、その声はカンナさんですかー」

 俺はアリエル先生の言葉を無視し、攻撃を仕掛ける。

「素晴らしいですね~。これほどの人間がぁ、こんな世界にいるなんて」

「お褒めにあずかり光栄だぜ」

 そう言いながら、俺はアリエル先生を蹴りつける。

 アリエル先生はそれを避け、剣で俺に切りかかった。

「どうなってるんですかぁ~?剣を弾くなんて」

「誰が教えるか」

 そんな会話をしながらも、俺達は攻撃を続ける。

 その時、アリエル先生の背後から京子がアリエル先生を串刺しにした。

「楽しいダンスだった」

 京子から男の声が聞こえる。こいつ、京子じゃない?

「そんな……なんで……」

 そう言ったのは、怯えた顔をしたユーだった。

「おい、お前は誰だ」

「やあ、元気そうで何よりだ。そんなに恐い目をしないでくれ、ユークリウッド。まだ何もするつもりはないんだから」

 俺の言葉を無視して、男の声は喋り続ける。青い霧が京子の体を包み、持ち上げる。

「では、皆さん。また会いましょう」

「……アユムさんが正解だったのですね。もう、私を騙すなんて、駄目ですよ!」

 アリエル先生が刺された腹部を押さえながら声をかけるが、暗い霧と共に風にのって消えた。

「逃がしませんよぉ!待ちなさい!」

 そう言って、アリエル先生は京子を追いかけていく。これで終わりか?

 そう考えていると、ユーが俺の腰に手を回す。

「ユー?」

 何故かユーの手は震えていた。

「あんたすごいじゃん!大先生とあんなに戦えるなんて!」

 ハルナはそう言いながら、こちらを満面の笑みで見てきた。

「うまく歩けません。肩を貸してください」

 そう言われたので、俺はセラに肩を貸す。

「ユー、さっきのはなんだったんだ?」

 歩が、俺も気になっていたことをユーに聞く。

『あれは あの霧は 私が消滅させたはずの――』

 

『ゾンビの力』

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