幻想郷は今は夏。上空で輝き続ける太陽が暑く照らす。動物達は木々の影で身を休め、妖精や妖怪達は湖で遊んでいる。
「チルノちゃん!早く早く!」
誰かがある妖精の名前を言って誘い出す。
「あつぅ...。」
彼女はチルノ。氷の妖精と呼ばれいたずら好きのバカである。
「チルノちゃん!早くここの湖凍らせてよ!」
彼女をせかしているのは夜雀の妖怪のミスティア・ローレライ。夜でもないのに元気である。
「あいよ~~」
チルノは右手をかざして湖全体を凍らした。もしバカじゃなければ相当強いだろう。
「イィヤッッホォォォオオォオウ!!!!!!!」
凍った湖をすいすいと滑っているのは蛍の妖怪リグル・ナイトバグ。この妖怪もまた元気である。
「あぁ~涼しー」
チルノは周囲にある冷気を使って風のように吹かせ、木陰によりかかり休み始めた。手で扇ぎながら凍った湖で遊んでいる妖精や妖怪達を眺め続けた。
「なんでこんな暑いのかなぁ...ん?」
チルノが独り言を口にした時にある二人の人物が目に入った。
「誰だろ....?見たことないなぁ...」
その二人の人物は湖の周りの道をゆっくり歩きどこかに向かっているようだった。一瞬あの吸血鬼とメイドかと思ったが身長差を見て違う人だとチルノは思った。
目をこすってもう一度見るとある二人はその場にいなくなり消えてしまった。
「あれ....いなくなっちゃった.....。」
見失ったチルノは残念そうに顔を下に向け寝てしまった。
――博麗神社。
長い階段を上るとその先には幻想郷の東の端にある博麗神社と呼ばれる神社が建っていた。鳥居をくぐり中に入ると大きい本殿が中心にあり、周りには倉庫などがあった。本殿の横の居間で一人、ぐったりと両腕を広げ仰向けになっている巫女がいた。
「暑い......」
彼女の名は博麗霊夢。妖怪退治を生業としている。本来暇であれば庭の掃除でもしてるはずだが今は暇ではないらしい。体中の穴という穴から汗が吹き出し居間の畳に染み込んでいる。
その時空から何かが霊夢の目の前に飛び降りた。
「霊夢!異変だよ異変!!」
魔法使いの様な恰好をし、金色の髪をしている彼女は霧雨魔理沙。何やら慌てている。
「...異変?魔理沙がやってきていいわよ...私暑くて動きたくないから却下。」
霊夢がめんどくさそうに言う。
「まぁとりあえず話を聞いてくれ霊夢!」
汗を流しながら変なポーズをとる魔理沙。結構凄い事なんだろう。霊夢がゆっくりと起き上がり顔を見せる。
「....何よ」
「あぁ...昨夜、地霊殿組全員が誰かに倒されたんだよ!しかも10分で!」
魔理沙は右手にある文々。新聞を広げて話した。新聞の一面には大きくその内容が記されている。
「...それ嘘なんじゃないの?騙されてない?」
霊夢はその新聞を見て疑い始めた。文々。新聞はでっちあげや嘘の情報が多いために読んでも信じない人は少なくない。
「いや私も最初は嘘だと思ったんだけど、実際に行ってみたら滅茶苦茶になってたんだよ!」
「しかも誰かにやられたのかは全員覚えていないんだ!」
魔理沙は霊夢に「解決しないとやばいぞ!!」と訴えるように話した。
「...あの鳥頭が暴走したとかじゃなくて?」
「いや...それは違う...むしろぼこぼこにされて重傷を負っている。」
「今は永遠亭の所で休んでるが永琳に気をつけろって言われた...。」
「これはもうやるしかないよな霊夢!!」
右手を握りしめて霊夢に訴える魔理沙。
「でも誰がやったのか分からないんじゃ手の打ちようがないじゃない。ここは一旦冷静になって出てくるのを待つしかないわよ。」
「そりゃそうだけどさぁ!!」
二人の言い争いが始まった。こうなると誰かが来ない限りずっと続く。うるさいセミの鳴き声と同じくらい言い争いは騒がしかった。
「だーかーらーっ.....ちょっと魔理沙静かに!」
「はぁ?なんだよ急に。静かにって....」
霊夢の見ている方向を見ると鳥居の方から二人の若い男女が階段を上ってきた。
「珍しいな。ここにくるなんて」
「うるさいわね。黙ってなさい。」
魔理沙はにやにやしながら霊夢をからかう。
二人の男女は本殿前に立ち止まり動かなくなった。
「なによ早く入れなさいよ。」
「まぁ落ち着け霊夢。」
霊夢が催促しようとするも魔理沙に取り押さえられる。
「よく見ると妖怪と人間が一緒にいるわね。」
「え?嘘だろ?」
二人の男女のうち、男性は着物を着ていて灰色の短髪をしている人間。女性は見たことない服装で特殊な羽を持っており、白い髪の長髪の妖怪だった。
そして男性は霊夢達の方を見て話しかけた。
「巫女の服装をしているお前は博麗霊夢か?」
男性が霊夢に近づきながら爽やかな声で問いかけた。霊夢は自分の名前を知っていることに違和感を感じた。
「えぇそうよ。私がこの博麗神社の巫女、博麗霊夢よ。何か用?」
大幣を肩に乗せ返事に答える霊夢。普通に話しているように思えるが戦闘準備に入っていた。
「そうか....お前が博麗霊夢....。」
男性はまるでどこかで聞いたことのあるような言い方をした。
「んで?あなたは誰?」
今度は霊夢が男性に問いただした。男性は迷うことなくこう答えた。
「―――俺は博麗照(しょう)。あなたの義理の弟だ。」