暗殺教室 with 黒羽零士《凍結》   作:grey

26 / 51
約3/4はデート回。残りは急展開です

やや暗い雰囲気も出しつつ、でも楽しそうに。零士と倉橋の程よい距離感で書ければと思います

では本編スタート!



動物園の時間

 

 

日曜日

 

俺は椚ヶ丘駅で陽菜乃の到着を待っていた

 

「遅いなぁ。何かに巻き込まれてないといいんだけど……」

 

すると駅に向かって走って来る人がいた

 

「ごめん、遅くなっちゃって。もしかして…待った?」

 

息を切らしながら走って来た倉橋は今、零士の足元でしゃがんでいる。相当疲れるほど走ったのだろう

 

「ああ…待った」

 

零士は倉橋から目をそらしながら短く答えた。それもそのはず、しゃがんでいる倉橋は気づいていない内に上目遣いになっているのだ

 

とはいえ零士の回答は倉橋の問いに対しては普通はありえないものだった

 

「ちょっ……普通そういう事言う?零士君、こういうの知らないの?“待った?”って聞かれたら“俺も今来たばかりだよ”じゃないの?」

 

「知るかよ、んなモン。じゃあイマキタバカリダヨー。これでいいか?」

 

「心がこもってないよー!

もういいよ、それが零士君だもんね。じゃあ早く行こ、動物園!」

 

倉橋は零士にはどんなに粘っても無駄だと察し、動物園に向かう事に決めた

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

動物園

 

「へぇ、ここが動物園か…。人も沢山いるなぁ」

 

「来た事ないの?」

 

「まぁな。俺は昔っから殺し屋ばっかりだから。家族とも……どこにも行った記憶はねぇし」

 

零士は少し悲しそうな顔をする

 

「何かごめんね。よしっ!じゃあ今日は私が零士君に動物園の楽しさを教えてあげるよ!」

 

「ああ。頼む」

 

 

最初に行ったのはパンダの所だ

 

「これがパンダだよ、零士君!」

 

「見りゃ分かるよ。パンダぐらい知ってるし」

 

「もう、冷め過ぎ。もっと楽しもうよ!」

 

ハイテンションの倉橋とローテンションの零士。2人のテンションの差はとても大きい

 

「へぇ、パンダってのは寝てんだな」

 

「零士君がそれを言うの?」

 

「ははは…」

 

 

続いてはライオンだ

 

「わぁ!大っきい!見て見て零士君!ライオンだよ!」

 

「おぉ、デカイな。わっ!近っ」

 

零士は倉橋に手を引かれ、前に出る

 

するとライオンがも一歩、また一歩と下がる

 

「零士君……威嚇しちゃだめだよ…」

 

「……俺やってねぇんだけど…」

 

「…ライオンはやっぱりそういう殺気とかに敏感なのかなぁ」

 

「俺ってそんなに怖いかよ…」

 

「零士君はプライドが高くて不器用で冷たい猫なだけだよ」

 

「猫じゃねぇよΣ!」

 

猫ネタはどこまで引っ張るのか。少なくとももうしばらくは言われそうだ

 

 

「零士君、その……あの…」

 

倉橋は零士の方に左手を近づけたり遠ざけたりしている

 

「ん、どうした?トイレか?」

 

「……違うよ!女の子にそれは失礼だよ!」

 

「おぉ、悪い悪い」

 

零士の言葉に少し怒った倉橋は少し歩くのを速める

 

「ちょっ…おい、陽菜乃。待てって。その先、人がすごいぞ」

 

 

ー倉橋sideー

 

本当に零士君は何なの!今日の朝から私の事、全然分かってなくて!

 

「おい、陽菜乃!」

 

私は無視しながら人混みを進んで行く

 

「きゃっ!」

 

しかしそう上手く歩き続けられる事もなく、倉橋は零士とはぐれてしまう

 

「どうしよう………零士くーん!零士くーん!どこー!」

 

大分遠くまで来てしまったのか、零士からの答えはない

 

「……零士君からあんなに離れなければよかった……。まだ…全然楽しめてないのに」

 

倉橋はこの日をすごく楽しみにしていた。零士は気づいていないが、倉橋は零士のことが好きだからだ

 

やっぱり零士君は…私なんてどうでもいいのかな?“好き”なんて勝手に思ってるのは私だけで…零士君は“友達”とすら思ってないのかな?

 

そんなことを考えていると段々悲しくなってきた。目の辺りが熱くなり、雫が頬をつたる

 

「おい、陽菜乃。何してんだよ」

 

「!れ…い…じくん?」

 

「…泣いてんのかよ……情けねぇな」

 

零士君は普段と変わらない口調で話してくる。聞いていて一々イライラするけど、今の私にとって何よりも聞きたい声だ

 

「ゔゔっ、零士くーん!寂しかったよー!」

 

普通はここで“大丈夫か”とか“心配かけてゴメンな”とか言うべきだろう。だがそれを言わないのが零士だ

 

「痛っ!いきなり何するのぉ!」

 

「デコピン」

 

「そうじゃなくて!」

 

「はぁ…。お前さぁ、何で携帯出ないわけ?何の為の携帯なんだよ。ネットやる為か?それともただのアクセサリーか?」

 

私はカバンに入れていた携帯を取り出す。着信履歴がはぐれていた間に5件以上零士君の名前があった

 

零士君とはぐれてパニックになってて携帯の存在を忘れてた。恥ずかしい……

 

「えへへ、忘れてた」

 

よく見てみると零士の顔は少しほっとしている様な感じだ

 

そっか……零士君、心配してくれてたんだ

 

「えっと……ごめんね」

 

「はぁ、今度は気をつけろよ」

 

「はーい」

 

「おい、どこ行くんだよ」

 

私が先に行こうとすると零士君が呼び止める

 

「どこって…次の動物」

 

「ほらっ、またはぐれたら大変だろ」

 

零士君は私の方を見ずに右手を差し出す

 

「嫌かもしれねぇけど我慢しろよ…////」

 

「う、うん……////」

 

私はそっと……彼の手を握った

 

ー倉橋sideoutー

 

ー零士sideー

 

それからも俺と陽菜乃は色んな動物を見て回った

 

キリンやカバ、トラなど有名なものも多くいた。まぁ、もちろん俺の知らない様なマイナーなやつもいたが

 

そして今は…

 

グ-ッ

 

「腹減ったぁ」

 

「フフっ。零士君、お腹空いたの?」

 

「…悪いかよ」

 

「別に~。じゃあさ、そろそろお昼にする?」

 

「いいな、それ。どっか売店とかあったっけ?」

 

「えっと………零士君。ちょっとコッチ来て」

 

零士が倉橋に連れて来られたのはイスとテーブル、パラソルがある広場だ

 

「こんな所に売店とかあんのか?」

 

「そうじゃなくて……」

 

倉橋はカバンから何かを出す

 

「…お弁当、作って来たんだけど…食べない?」

 

…オベントウ、ツクッテキタンダケド…タベナイ?えっと…それって…

 

「どういう事?」

 

「もう!お弁当を作って来たの!零士君と食べようと思って!」

 

「それって…手作りって事?」

 

倉橋は顔を赤らめながら小さく頷く。そして弁当をそっと開ける

 

「…嫌、かな?」

 

「嫌じゃねぇよ。これ…陽菜乃が作ったんだろ。こちらこそ食べていいのかよ」

 

「う、うん。お母さんにも手伝ってはもらったけど…」

 

「いやいや、それでも嬉しいよ!いただきます!」

 

“この卵焼き美味い!”とか“この味付け、俺の好みなんだよ”とか言いながら食事はスムーズに進む

 

「陽菜乃って料理出来んだな」

 

「酷いよー、その言い方。私ってそんなに出来なそう?」

 

「んーまぁ、イメージあんまり出来ねぇかも。でも出来るって言われりゃそんな気もするか」

 

とにかく今日の零士は失礼極まりない

 

「あー、美味かった!ごちそうさま!」

 

「えへへ、よかった。作った甲斐があったよ」

 

「それにしても幸せ者だよなー。お前に好かれてる奴は」

 

「!な、何で?って私別に好きな人なんて…(零士君の事は好きだけど…本人の前じゃ言えないよ~)」

 

「殺せんせーが何か言ってなかったか?まぁ、いるなら手伝うよ。俺に出来ることなら何でもやるからさ」

 

倉橋の恋心を分かっていないからこそのセリフである。今これを読んでいるあなたは零士に対してイライラしている事だろう

 

「…そういう零士君は誰か好きな人いないの?それともまだメアリちゃんのことが好き?」

 

「…好きだよ。でも……アイツがまだ生きてたとしても…もう一度付き合うなんて事はしないよ」

 

「どうして?好きなら付き合いたくないの?」

 

「……俺のせいで好きな奴が不幸になるなら……俺はキッパリ諦める。元々俺はこんな眩しい世界にいる資格はないからさ」

 

またもや暗い雰囲気になる

 

その時、倉橋は零士の手を取り、訴えかける

 

「そんな事ないよ!零士君は私達と何の違いもない!殺し屋だって…今からやめれば何とかなるよ!」

 

……そんなに簡単なものじゃねぇんだよ。事の大きさを理解もしてねぇのにんな事言うんじゃねぇよ

 

零士はそんな事を言う事は出来なかった

 

「…ありがと、陽菜乃。よしっ、残り時間はまだたっぷりある。もっと楽しもうぜ!」

 

「うん!」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「あーっ、今日は楽しかったねー」

 

「だな。まぁ、普段凶暴なイメージの肉食動物に近づくと怯えられたのは正直ショックだけどな」

 

「フフッ、零士君、やっぱり殺気出し過ぎなんだよ。もっと力抜いてリラックスしなよ」

 

零士はそれには何も言わず、倉橋にただ笑って見せる。そして倉橋も笑い返す

 

…カワイイな、笑うと。って何言ってんだよ、俺は…

 

「帰るか」

 

「うん!」

 

ー零士sideoutー

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

ー烏間sideー

 

「浅野理事長、彼が明日から急遽E組での暗殺任務に参加してもらう事になっています」

 

烏間が隣にいる茶髪の少年を紹介する

 

「烏間さん、ただでさえE組への転校生が多いんです。これ以上増やすようでしたら別の方法を考えなければ。まぁ、お金の方は振り込んで頂いていているので文句は言いませんが」

 

隣の少年は烏間に対し、申し訳なさそうな顔をする

 

「すいません、烏間さん。師匠が無理矢理交渉したみたいで…」

 

「いや、君が謝る必要はない。君の実力も彼から聞いている。必ず戦力になると思っている」

 

彼はどこか零士君に似ている。見た目も似ていない。使う武器も違う。だが似ている。彼の雰囲気や佇まい、殺し屋とそうでない時のギャップ、そういった所がとてもよく似ている

 

「君に1つ聞いてもいいかい?」

 

浅野理事長が少年に尋ねる

 

「いいですよ。俺の答えられる範囲なら」

 

「この六面体の色を揃えたい。素早く沢山、しかも誰にでも出来るやり方で。君ならどうしますか?」

 

浅野理事長はルービックキューブを少年の前に置く

 

「ルービックキューブですか……。俺はこれには全部で3つのやり方があると思います」

 

「ほう…3つもですか。では、1つずつやって見せてください」

 

「まずは……純粋に本来のやり方で揃える」

 

少年は素早くルービックキューブを揃えてみせる。こんな早技、俺にも出来ない

 

「中々器用だね。じゃあ2つ目は?」

 

「分解して並べ直す」

 

鞄から取り出したナイフでルービックキューブをバラバラにし、並び直してみせる少年

 

「私もそのやり方には賛成だ。実に合理的でね」

 

「最後は…もっと簡単です。

 

 

 

 

塗りつぶす。同じ色でこの全ての面を一色にします。どうせどんなやり方をしようと結果は同じ。なら全て一緒にした方が合理的かと」

 

!驚いた。浅野理事長と同じ事を考えるだけでなくそれ以外の方法まで考えてしまった…

 

「確かに…実に合理的なやり方だ。君の編入試験の結果も悪くない。本当なら我が校のA組に来てもらいたいぐらいだ」

 

「すいません。俺は…殺し屋なんで。表舞台には立てないんですよ」

 

「そうか。じゃあ頑張りなさい」

 

ここで会話は終わり俺と少年は部屋を出る

 

「では俺からも一言。明日から、よろしく頼む」

 

「はい。よろしくお願いします。烏間先生」

 

そして少年は最後にこう呟いた

 

「……俺が殺ってやるよ殺せんせー。

そして……

 

 

 

 

会えるのを楽しみに待ってるぜ“ゼロ”!」

 




イトナが来る前に新たな転校生出現!正体は一体誰なのか?どうやら“ゼロ”の事をよく知ってる様子だが……

という感じで次回も続けてオリジナル回。やっぱりオリジナル回は難しい

デート回もとても難しい。そしてとても大変だ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。