今回は優希の過去。前半は優希の1人語り風になってます。後半は優希と速水の一騎打ち?です
優希には零士と比べて過去を匂わせる描写はほとんど入れませんでした。そんな彼の過去が今分かります
では本編スタート!
昨日、俺と零士はみんなに自分の過去を話すと約束した(零士は俺がその場で言っただけだが)
だから今日は授業の前にその時間を殺せんせーが作ってくれた
優希が教室に入ると普段は遅刻する奴もみんな席についていた
「おはようございます、優希君。おや? 零士君の姿がないようですが…」
「大丈夫ですよ。ちゃんと後で来るので」
「そうですか。では、話してくれますね」
優希はそれに無言で頷く
「えっと…まずは何から話していいのかな? 過去と言っても俺は割と単純。親に捨てられた。俺がまだ、小学校1年生の頃だ」
そう言うと優希はその時の出来事を話し始めた。始めはとても仲の良い家族だったこと。両親は様々な商品試験を一挙に引き受ける会社をやっていたこと。丁寧に試験をやっていて、その結果はとても信用出来ると評判だったこと
「まぁ、今思うとさ、俺の目とか耳とかの能力の原点はここなんだよな。親父の会社で色んな物を見て、触って、色んな音を聞いて。そうしてく内に身についた能力だと思う。
でも、そんな幸せも、長くは続かなかった」
優希は続けて話す。ある日突然、父親が株やギャンブルにハマったこと。始めは上手くいってたものの、それも長くは持たなかったこと
「そして、金はほとんどなくなり、会社も潰れた。両親は俺を残して雲隠れ。俺は児童施設に行かざるを得なくなった。まぁこれで第1章終了ってとこかな」
みんなは何も言えなかった。目の前にいる“白河優希”という男はとてもそんな過去を持っているとは思えなかったからだ。普段からおちゃらけてばかりいて、彼のそんな姿にみんなは迷惑しながらも楽しんでいた。みんなもそれほど大した過去ではないとさえ思っていた
そんな暗い過去を話したにも関わらず、優希はヘラヘラしている。むしろ今まで以上にだ。“どうした? もしかして俺、今すげぇかわいそうな奴になってる”なんて言い出す始末だ
「おぉ、何の応答もなし…か。じゃあ2章行くぞ。児童施設で過ごしつつ、俺は小学校に行ってた。でもさ、ガキってさ、イレギュラーな奴をすぐ叩くじゃん。だから俺も叩かれた」
優希は言う。毎日のようにイジメられる日々の辛さを。自分には何もない、生きる価値さえないのではないかとさえ思ったこと
「そんな時だ、俺が師匠に会ったのは。最近出来た喫茶店があるって聞いたからそこに寄ったんだ。俺、昔からコーヒーが好きでね。そこで会ったのが今の俺の師匠、“神田龍牙”こと“殺し屋ファング”だ。そこで、師匠は俺の悩みとかを全部見抜いてみせたんだよ。それから、俺は毎日通い続けた。そして、ある日、いつ死んでもおかしくない様な俺に生きる道を示してくれた」
龍牙はその道に行くメリットだけでなく、デメリットも教えてくれたそうだ。簡単に表舞台に戻ることは出来ない。好きな人と自由に恋愛も出来ない。ある日突然、死ぬかもしれない。他にも色んなことを教えてくれた
「俺の答えは決まってた。どうせ、このまま生きても、自殺しただろうからな。それからは…辛い修行とかもあったさ。まぁ、内容はご想像にお任せするけど。ああ、そういや、俺に女装のスキルを仕込みやがったのも師匠だわ。マジふざけんな。思い出しただけで腹が立ってきた!
少し脱線したけどさ、これで終わりかな、俺の過去は」
誰1人、話が終わっても何も言おうとしない。いや、言えなかった。優希曰く、自分の過去は殺し屋の中では軽い方だそうだ。誰かの死を間近で感じたわけじゃない。自分の手で家族を殺したわけじゃない。でも、ただの中学生が受け止めるには少々重過ぎたのだ
「あれ? ちょっと待てよ。頼むから何か言ってくれよ。なーんか、俺がスベったみたいで嫌なんだけど」
こんな時でもヘラヘラしてる優希。そんな様子を見て、ただ1人、席を立った者がいた
「…ねぇ、白河。何であんた、そんなにヘラヘラしてんの?」
「ん? そりゃするだろ。だってさ、凛香ちゃん、親が株やギャンブル失敗して息子を残して雲隠れした話だぜ。笑えるだろ。それに、息子はグレて殺し屋の道へ進んだ。これとかもう傑作だろ。お前らもそんな顔せずにもっと笑っていいんだぜ。ハハハハハ!」
それを聞いて、笑った者はいなかった。そして、優希の言葉がジョークであろうとなかろうと速水を怒らせるには充分だった
「そんなの笑えないわよ! 何でそんなに笑えるの? 何でそんなにヘラヘラしてんのよ!」
「…うるせぇよ、速水。ヘラヘラして何が悪い。何も分かってねぇくせに、分かったようなこと言ってんじゃねぇよ!」
普段は優希は速水のことを“凛香ちゃん”と呼ぶ。でも今は名字で呼び捨て。今日初めて、優希が感情的になった瞬間だった
「私だって少しは分かるわよ! 私もあんまり自分の意見とか言えないし、相談も出来ないから。だけど、私はこのクラスで少しは変われた。それに、少しは白河にも感謝してるし。今度は私が手助けしたい。私が変われたんだから、白河だって変われるわよ」
優希はそれに対し、何も答えない
「あんたがヘラヘラしてるときって、自分の本当の気持ちを隠してるときでしょ。辛いこと、苦しいこと、悲しいこと、何でも。私だけじゃ頼りないかもしれないけど…ここには色んな悩み持ってる奴、沢山いるんだから、頼りになる奴の1人や2人いるはずよ。それに…私ももっと強くなるから」
優希の中で何かが変わったかどうかはわからない。でも、1つだけ言えることは、今の優希の目からはどんなことがあっても流れなかった筈の涙が流れてるということだ
「はやみん言うねぇ。私もそれには同じ意見だよ。優希、私ら友達でしょ。もっと相談しなよ」
「優希、俺たちだけ、お世話になってばかりじゃだめだからさ、お前も俺らのこと頼れよ。困ったときはお互い様だと俺は思う」
中村と千葉も続けて言う
「…あ、あれ? 何で俺泣いてんだ? もう…泣かないって…決めたじゃねぇか……。弱気になったら………」
「優希君。君はもう1人じゃありません。決して同じ悩みを持っている人はいませんが、このクラスにいる仲間はみな、辛いことや苦しいことなどを経験しています。もっと、気軽に相談してみてはどうですか? それでダメなら、先生や烏間先生、イリーナ先生に相談しなさい。必ず、力になります」
殺せんせーが最後に一押し。優希の目からは今まで溜め込んできた、堪えてきた涙が一気に溢れ出した。そして、彼の仲間たちが近づき背中をさすったり、肩を抱いたり、からかったり…した
「…みんな、その…ありがとな。これからはもっと頼らせてもらうよ。それと凛香ちゃん、ホントにありがと。埋め合わせ、今度絶対にするから」
「期待してる。
ねぇ、白河。今度から…優希って呼んでもいい…///?」
「…大歓迎。なんなら“ダーリン”って呼んでも構わねぇよ」
いつものペースに戻って来た優希。速水の苦労はこれから更に増えそうだ
「調子に乗るな!」
速水が優希の背中を思いっきり叩く。そして、それを見て皆が笑顔になる
「…みんな、そろそろ席に座ろうぜ。
それを聞いて、みんなは席に座る。そして
ガララ
ドアが開いた
「おはようございます、零士君」
「おはよう、殺せんせー」
未だに過去が謎に包まれたままの黒羽零士だ。そして、その過去をこれから話す男
「…準備出来てるみてぇだし、早速話すよ。覚悟のねぇ奴は早めの退室をお勧めする」
無事、クラスに過去を話し、受け入れてもらえた優希。優希と速水、互いの中でそれぞれの存在は大きくなっていく。くっつくのも時間の問題かな? と言いつつ人によっては時間がかかってると思う所でくっつくかも
次回からはついに零士。度々あった彼の過去描写。それがようやく繋がります。おそらく1話を長くして2部構成。少し短く切って3部構成になりそう
次回は彼の“殺し”の原点。一体彼に何があったのか