でも、こういう話を書くの、嫌いじゃないかも…
黒羽零士はなぜ殺し屋になったのか、その原点が分かります
零士がドアを開け、教室に入る
「おはようございます、零士君」
「おはよう、殺せんせー」
教室には俺以外の人が全員集まっていた。優希が前にいるから、あいつの昔話をしたということは分かる
「…準備出来てるみてぇだし、早速話すよ。覚悟のねぇ奴は早めの退室をお勧めする」
零士はそう言うが、教室から出た者は1人もいなかった。零士はそれを確認するとスマホを取り出した。そして律にあるデータを送信する
「今、律に送ったのは8年前に起きた事件について書かれたものだ。律、少し読んでくれ」
「分かりました。
9月3日、東京のとある住宅で火災が発生した。この家の長男は軽い火傷で済んだものの、焼け跡から40代の男女の遺体が発見された。そして、どちらの遺体にも首に刃物で切られた跡があり、死因はそれと思われる。この家にはもう1人長女がいたがその遺体は見つかっていない。しかし、この規模の火災のため、亡くなって、遺体は燃え尽きたものと思われる「そこまで」…零士さん、これって…もしかして」
零士が律が読み上げるのを止めた。みんなは薄々分かっていた。この事件の生き残った長男こそ、目の前にいる“黒羽零士”なのだと
「お察しの通り、これは俺の家族だ。そして、男女の遺体は俺の両親だ。当時は泥棒か何かが家に入り、鉢合わせして、殺して火をつけたと思われてるけど。犯人は全部俺だ」
鷹岡の言っていた“零士が家族を皆殺しにした”。これこそがそれが意味することなのだ
「じゃあ…話すよ。“殺し屋ゼロ”いや“殺人鬼ゼロ”の原点を」
◆◆◆
8年前
「ガッ! ゲホッゲホッ!」
「あなたー。あんまりやり過ぎないでよ。学校とかにバレるからさ」
「分かってる。まぁ今日はこれくらいにしといてやる」
当時の零士は親から酷い虐待を受けていた。ある日仕事で失敗してからは何かがあればすぐ、零士を攻撃した
「大丈夫、零士」
彼女は姉の美波。美波は零士の頭がよく、運動も出来る、才色兼備な5歳年上の自慢の姉だった
「…大丈夫だよ、お姉ちゃん。僕が弱いのが悪いんだから」
父親はすぐに暴力。母親は傍観。零士にとって美波は唯一の味方だった
「そんなことないわ。ほら、見てみなよ」
そう言って指差したのは力尽きて倒れているカマキリとその周りを跳んでいるバッタだった
「本来カマキリはバッタを食べるの。でも、油断しているとああやって、一向に捕まえられない。そして、力尽きた。どんな強者でも、時には弱者に負ける時がある。だから零士、その内絶対、勝てる時が来るよ」
「うん!」
美波は周りの同い年の女子と比べると異質だった。妙に達観していて、よくおかしなことを言う。そんな美波のことをどこかで避けながらも、零士は美波のことが好きだった
そんなある日、その事件は起きた
いつも通り、苛立つ父親が零士を殴る。零士はそれを黙って受け入れる
「ふぅ、今日はこれぐらいにしてやる」
「…ねぇ、お父さん。1つ、聞きたいことがあるんだけど…」
「チッ。何だ、言ってみろ」
「何で僕はお父さんに殴られるの? お母さんもお姉ちゃんも殴られないのに、何で僕だけ?」
「教えてほしいか? それはな、お前が弱いからだ。この家で、誰よりも弱い。そして、俺はこの家で誰よりも強い。だから俺はお前を殴る。強者は弱者に何をしても許されるんだ」
それを聞いた時、零士の中で何かが変わった
そっか、僕が弱いから、強いお父さんに殴られるんだ
“知ってる、零士。人は必ず死ぬの。人間にとっての絶対的な強者は死。つまり、それを与えられる人間は強者なの”
そういえば…お姉ちゃんがそんなこと言ってたなぁ。じゃあ…
零士は僅か6歳という年齢で“人が必ず死ぬ”ということを知った。“殺せば死ぬ”ことも知った。しかし、同時に“殺した者こそ強者”という間違った解釈をしてしまった
「じゃあ…お父さんを殺せば…
ゾクッ
辺りが凍てつく氷のような冷たさで包まれる。それは全て、零士から発せられた殺気だ
「な、何を言ってるんだ! 俺を殺すなんて、で、出来るわけないだろ!」
零士は近くに落ちて中身の飛び出たランドセルから素早く筆箱を見つけた。中からカッターナイフを取り出し、刃を長めに出す
「じゃあ…殺ってやるよ」
ザシュッ
「うわあぁぁぁッ! おい、テメェ何しやがる!」
父親の手首は零士によって切られ、そこから血が吹き出ている
「このクソガキ!」
父親は零士に殴りかかる。しかし、零士はそれを軽々躱す
「遅い。遅過ぎるよ」
零士の眼は赤く染まり、口元には薄っすらと笑みを浮かべている。その笑みが余計に恐怖を掻き立てる
「この
父親はおそらく、零士を怯ませるために言ったのだろう。だが今の零士には関係ない
「別にいいよ、それでも。だってそれ、強いんでしょ」
零士はカッターナイフを父親の首に当て勢いよく横に移動させる
零士は今、初めて人を殺した。だが、そのことに恐怖も罪の意識も何もない。あったのは自分こそ強者だという実感と、殺しの快感だけだった
「…れ、零士…。な、何をしたの?」
「何って…殺したんだ。すっごく、気持ちイイんだ」
「だ、ダメよそんなの…。零士はいい子なんだから。その血塗れのカッターは捨てなさい」
母親は次に殺られるのを防ぐため、必死に説得しようとする
「うん、イイよ。これは捨てるよ」
零士はいとも簡単にカッターナイフを捨てた。それを見て、母親は安堵する
「れ、零士。どこ行ったの?」
零士はすぐに戻って来た。
「な、何するの? やめなさい!」
「ねぇ、お母さん。オレって強者? お母さんよりも強い?」
「あ、当たり前じゃない。零士は強者よ。私よりもね」
零士は再び口元に笑みを浮かべ言い放つ
「じゃあ、殺してもいいんだよね」
母親のもとに、赤眼の殺人鬼が近づいて行く
「こ、この
「だから…それ、最高の褒め言葉だよ」
包丁を持つ手を後ろに引いて、母親に向かって突き出す
零士の2回目の殺しが終わった。やはり、彼には己が強者であるという実感と快感しかなかった
そこへ、姉の美波がやって来た
「何してるの零士。ッ! それ…アンタが殺ったの?」
「うんそうだよ。オレが殺った」
赤眼の殺人鬼は新たなターゲットに狙いを定めた
「そっか…。ハハハッ! 最高よ、零士。やっぱりあなたは落ちこぼれじゃなかった! 私が見込んだ通り! どうせ私も殺すんでしょ! だったら…早く、私も殺してよ!」
両親が殺された現場を見て狂う美波。普通の精神状態の人間ならそんなことを言われても何もしない。だが、目の前にいるのは2人の人間を殺した正真正銘の殺人鬼。やることは決まっていた
肉塊から包丁を乱暴に引き抜き、零士は美波に向かってそれを振る。肉を切った感触がして、美波はその場に倒れる
零士はその場を一度離れ、庭から容器を持って来た。中にはストーブに入れる灯油が入っている。それを家中に撒き、火をつけた。火はあっという間に炎となり、家を包み込む
「ハハハハハハハハハッ! 最っ高の気分だ!」
◆◆◆
「と、まぁこれが鷹岡の言っていた俺が家族を皆殺しにしたっていうことだ。納得した?」
誰も答えない。予想を遥かに上回ることを話され、まだ受け止めきれていない
「その後、俺の罪がバレることはなかった。俺は親戚の家にお世話になることになった。でも、どこで知ったのか、俺が殺したことを嗅ぎつけた。そして、俺は売られた」
僅か6歳で家族を殺した。それだけでも信じられないことだ。しかし、零士の話はそれで終わりではなかった。更に、売られたというのだ
「俺が売られたのは外国にある研究施設。研究施設とは名ばかりで、実際は“殺し屋養成所”だ」
◆◆◆
親戚によって売られた零士は目隠しをされたまま、トラックに乗せられた。連れて来られたのはどこかの工場の跡地
周りにいたのは零士とあまり歳の離れていない男女20人。見た目は皆日本人。おそらく零士と同じように売られたのだろう
「さぁ、ガキども。今お前らに配られた袋を開けてみろ」
俺は正直にその袋を開ける。そこに入っていたのは…
「どうだ? ナイフと拳銃だ。今からお前らには自由を賭けて殺し合いをしてもらう。生き残った1人だけが、そのチャンスを得る」
「殺し合いなんて嫌だよ!」
「怖いよ、ママ、助けて!」
パンッ
男が真上に空砲を撃つ
「いいか、ガキども。お前らはその、親や親戚に売られてここにいるんだ。そして売られたときに、お前らの戸籍は完全に消えた。別に逃げても構わない。だが、居場所はないんだがな。誰からも愛されなかった故にお前らはここにいる。それを理解しろ!」
今の言葉を聞いて、20人のうちの大半はこの状況を理解した。ここにいる20人、全員が敵。生きるか死ぬか、まさに2択。素早く行動出来た者が生き残るのは確実だ。しかし、多少複雑な事情があるとはいえ、全員まだ子供だ。ナイフや拳銃を持った瞬間、その意味を理解し、体が動かなくなる
「おい、どうした? もう始まってるぞ」
そして、ただ1人、この状況を瞬時に飲み込み、動き出した人物がいた
次々と人を斬っていく赤い眼をした少年、“黒羽零士”。数分後には、彼以外の子供は誰1人立っていなかった
「! なんと…もう既に“オーバーロード”を発現させているのか…」
「これは逸材だ」
男たちが何かを話している
「おめでとう、黒羽零士君。君は自由になるチャンスを得た。だが、最後に1つ質問だ。君は人であることをやめられるか? いずれは“殺し屋”となり、誰からも恐れられる存在となる。誰からも愛されず、誰も愛さない。それでも君は出来るかい?」
要するに、ここで死ぬか、人であることを諦めて生きるか、選べってことだよな
「そんなの決まってる。なってやるよ、殺し屋。やめてやるよ、人間。それで、オレの望みが叶うなら」
「ほぅ。望みとは何だ?」
「強者になること。どんな奴であろつと殺せる、強者になることだ」
零士の赤く染まった眼が目の前の男を見つめる。あまりの殺気に男は少し怯んでしまう
「いいだろう。合格だ。後、数回、今日と同じことを繰り返す。いいな」
「むしろ、大歓迎。何人でも殺してやるよ」
零士はその後も沢山の子供と殺し合いをし続けた。全て一瞬で殺していた
そして、その頃には零士は自身に宿らせていた才能を目覚めさせていた
本来なら、決して目覚めることのないはずの才能
目覚めてはいけない才能
この世から、1つの尊い命を壊す才能
零士は僅か7歳という若さ“殺人”の才能を開花させた
まずは、お気分を悪くされた方いませんか?
そう思うなら最初から書くなという感じですが、零士というキャラを作る上でこの話は最初から決めていました。殺し屋とはいえ、同級生を躊躇いなく人質にとる。プライドが高く、どこか不器用で人間として何か欠けている。最初の頃の零士はこんな感じでしたよね。流石にそんなに人の道を外れさせるにはこれぐらいの過去が必要だと思ったんです。そう考えると、そんな零士を変えたE組はすごい、この一言に尽きます
ダラダラと語ってしまい申し訳ありません。一度、ここで整理しようと思ったので…
次回は今も心に残り続けている彼女が登場します。早く更新出来るよう頑張ります。感想やアドバイスなど、送ってくださるととても参考になります。もし、よろしければお願いします
それと、アンケートを活動報告の方に載せました。是非参加してください