超シリアス。過去編としては終了。後は零士がE組に受け入れられるかどうかだけ
では、本編スタート
「行くぞ、ライト!」
「了解、ゼロ君!」
俺とメアリはそれぞれ、ゼロ、ライトというコードネームを使い、殺し屋として生きていた
「よしっ、依頼終了っと。そっちはどうだ?」
「バッチリだよ。ていうか、私がゼロ君に劣るところなんて、数えるぐらいしかないんだけど」
「あァ?血を見て未だに顔を青白くしてる奴が何言ってんだ」
「う、うるさい!まだ慣れないんだもん」
一応自覚はあるのか、指摘され、落ち込んでみせるメアリ。ちょっとカワイイと思ってる自分がいる…
それからもひたすらナイフを振り、引き金を引き続けた。自分の中でも、それが日常になっていた。快感すらも覚えなくなり、殺すのが当たり前。いよいよ、戻れないところまで来てしまったのだと実感する
そんなある日。依頼を完了してすぐのことだった
「依頼完了っと。さぁ、戻るぞ、ライト」
「りょーかい。…ッ!レイ君!」
メアリがとっさに俺の本名を呼ぶ。すぐさま“オーバーロード”を発動し、何かに備える
「そこだ!」
俺の振ったナイフはもう一本のナイフに当たる。それが俺を狙ったものだということは一目瞭然だ
「誰だ、お前。同業者か?」
「ああ、そうだ。悪いが、殺らせてもらう!」
白い髪のそいつはナイフを持って俺に突っ込んで来る。だが、“オーバーロード”を発動中の俺には関係ない。そいつの動きなんて、止まって見える。俺はその攻撃を一歩も動かずに躱す
「残念。俺の勝ちだな」
足払いをして隙を作りナイフを首元に突きつけた
「…なっ…………」
「流石、ゼロ君!カッコいい!」
「別に…」
俺も強くなれた。そう実感できる。元々の身体能力は俺の方が上だ。だから能力の制御が多少出来るようになってからはメアリと互角かそれ以上になっていた
「行くぞ、ライト」
「ちょっと、待て!なぜ俺を殺さない!」
白髪の奴が俺らを呼び止める
「そんなの知るか。ライトに聞け。俺は殺すつもりだった」
「ダメだよ、ゼロ君。仕事以外で殺しはしない!分かった?」
プライベートでは彼女であるメアリに完全に主導権を握られている。正直俺はどうでもいいが、すぐ調子に乗るから面倒だ
「私はメアリ・リュミエール、コードネームはライト。こっちの目つきが悪いのは黒羽零士、ゼロだよ。あなたは?」
勝手に本名教えんなよ…
「…ハクアだ。コードネームはヴァイス」
「ハクア君かぁ。いい名前だね。じゃあ、行こっか!」
……………
「「は?」」
俺とハクアは誰が聞いてもマヌケそうな声を出す
そんなのはお構いなしにメアリは零士とハクアの手を取り、今日の寝床に行く。寝床と言っても、金はないので近くにある激安の宿だが
「何で俺まで…」
「諦めろ、ハクア。こいつはそういう人間だ」
鼻歌を歌いながらテキパキと料理を作るメアリ。そんな姿は少なくとも、殺し屋には見えず、母親の手伝いをする娘のようだ(母親や妻にはどう頑張っても見えない)
「はい、2人とも、どうぞ」
出てきたのはそこら辺で買ったパンと今作ったスープ。味はそんなに悪くない。しかし、金がないとはいえ、毎日これだと飽きる
「…いただきます」
「いただきます……」
「いただきまーす!」
食べる前から元気のない俺。食べるけど、ご馳走してもらうのが悪いと思うハクア。ご機嫌なメアリ。三者三様にも程がある
いつの間にか、俺たちと打ち解けたハクアは共に行動するようになった。“殺し屋ゼロ”、“殺し屋ライト”、“殺し屋ヴァイス”は裏社会で有名な殺し屋三人組になっていった
「なぁ、ハクア。ちょっと調べてほしいことがあるんだけど」
「ん?別にいいぜ、レイジ。何だ?」
「“リュミエール家”の場所を調べてくれ」
「いいけど…何か意味でもあるのか?」
「メアリの家だ。俺と違ってあいつは、売られたわけじゃない。だからあいつを、家族の元に帰してやりたいんだ」
「りょーかい。レイジの頼みでメアリの為ならやってやるよ。少し時間をくれ」
「もちろん」
ハクアの仕事はとにかく早かった。僅か1ヶ月で“リュミエール家”について調べ上げてしまった
俺はその情報を元に、メアリとロンドンに行くことにした。ハクアには悪いが、待っててもらう。その理由も説明したら納得してくれた
「レイ君。どこ行くの?」
「お前の行きたがってた場所さ」
ロンドンに着いても、メアリはあまり覚えていない様だ。仕方ない気もする。もう、6年近く離れていたのだから。俺も日本の事はほとんど覚えちゃいない
「着いたぜ、メアリ」
「!…ここは……。私の…家……」
「ああ。ハクアに調べてもらった。施設にいた頃から、帰りたいって言ってたろ」
「うん!でも……」
しかし、メアリは浮かない顔をしている
「どうした?」
「どうして、連れてきてくれたの?レイ君だって、自分のいた場所に戻りたいとは思わなかったの?別に私なんか後回しでも…」
「俺に帰る場所はないからさ。せめて、お前のだけは、帰してやろうと思ってな」
「ご、ごめん。嫌なこと思い出させちゃって…」
「いいさ。その場所を壊したのは俺だから」
そう言ってメアリを納得させる。俺とメアリは門の前に立ち、呼び鈴を鳴らす。すると、中から使用人が出てきて、メアリの顔を見て、泣き出す
「メアリお嬢様!みなさん、メアリお嬢様が!」
その声を聞いた途端、家からは何十人もの人が出てきて、メアリを見て涙を流す。メアリもその輪の中に加わり、一緒に再開を喜び合う
俺はただそれを見ているだけだった。とても、俺には入れない。俺はメアリの側にいるべきじゃない
「メアリ、彼は誰だい?」
「パパ!あの人はね、私の「護衛です。お嬢様を保護した後、6年間、必死でこの場所を探していました。ようやく、俺も肩の荷がおりました」…」
メアリは“何を言い出すの”という顔をする。でも、メアリは俺がそうした理由も理解出来ていないわけではない。結局、父親に本当のことは言わなかった
◆◆◆
家に入れてもらった後、俺は家の人たちから感謝をされ続けた。やっぱり、メアリの居場所はここだと、強く思わされた。俺なんかがそれを邪魔してはいけない
食事の後、俺はすぐに用意された部屋に行った。メアリは何か言いたそうだったが、家族との再開を楽しめと一言言っておいた
しかも、明日の夕方、日本にいる年子の姉が帰国するらしい。8年ぶりに家族全員が揃うらしい
「ッ!なんか……羨ましいな。無事でいたことにこれだけ嬉しがってもらえて。俺も、こんな家族…いや、もう考えるのはよそう。自分が嫌いになりそうだ」
その日、どんなに寝ようとしても寝れなかった。初めての殺しの夢を見たからだ
結局、寝るのは諦めて、出発の予定を早め、屋敷を抜け出した。外に出ると空の月が綺麗だった
「レイジ君、どこに行くんだい」
後ろを振り向くと、メアリの父親がいた
「どこって、帰るんですよ。自分のいるべき場所へ」
「メアリを置いてかい?」
「何言ってるんですか?ここは彼女の家ですよ」
「でも、メアリは君と共に行くと言っていた。一体娘に何をしたんだい、“殺し屋ゼロ”」
何でそれを知ってるんだ?いや、メアリが話したのかもしれない。あのバカ。何言ってんだよ
「だったら何だって言うんですか?安心してくださいよ。娘さんには傷1つ、つけてませんよ」
「ああ。6年も帰ってこなかった。何かあってもおかしくないと思っていた。それには礼を言う。でも、どうして娘を置いて行くんだい?」
意味がわかんねぇ。コイツは何がしたい
「当たり前じゃないですか。俺は殺し屋、娘さんはお嬢様。生きる世界が違うんです」
「そうかい。じゃあ、メアリが殺し屋だというのはメアリの嘘かい?メアリが“殺し屋ライト”だというのも」
「当たり前じゃないですか。あんな臆病者に、殺し屋は務まりません。もし彼女がターゲットなら、俺は殺してますよ」
一語言うたびに胸のあたりがズキズキと痛む。その痛みを堪えて話し続ける。すると、次々とメアリとの楽しい思い出が蘇ってくる
「そうか。じゃあ、娘が嘘をついているのか」
「そうですよ。あいつ、意外と嘘つきですから」
「だそうだよ、メアリ。もう出てきていいよ」
メアリが出てきた。気づかれないようにしたつもりだったのに…
「ねぇ、どうして!レイ君!何で勝手に…」
「俺には…ちょっと眩し過ぎた。俺には……お前の隣は相応しくない。この手は汚れてる。血に塗れて、もう二度とこっちには戻れない」
「それは私も!」
「それは違う。お前はまだ綺麗だ。殺しの時も、最低限の傷で済まそうとしてる。それは素晴らしいことだ。でも、殺し屋には向いてない。お前はココ。俺はあっち。分かったな」
「分かんないよ!私はあなたが好き!あなたと知り合ってしまった以上、あなた以上の男性になんか出会えない!だから……一緒にいてよ!ここでもいい。殺し屋の世界でもいい。どこか、誰にも知られない場所でもいい。だから!」
ふざけんなよ。せっかくの決意が…鈍っちまったじゃねぇか!
「俺も……一緒にいたいよ。メアリ…」
結局、俺はこの日、メアリの部屋で寝ることにした。大人の階段を登るなんてことはしなかったけど、いつもより深いキスをし、抱き合って寝た。いつもよりもグッスリ眠れた
◆◆◆
数日後、俺とメアリは近くを散歩しに家を出た。これからのことも話しながら歩き、結論が出ないまま、帰って来た
「ただいまー!」
返事はない。何か嫌な予感がする
「キャアァァァァァァッ!」
その時、メアリの母親の叫び声がした
「ッ!メアリ、今の声!」
「うん!ママの声だ!」
俺とメアリは“オーバーロード”を発動し、急いで屋敷の中に入る。すると、そこには今朝まで元気だった人たちが血を流して倒れていた
「…急所を疲れている。即死だ」
「…ッ!そんな…………。早く、ママとパパの所に!」
「おい、メアリ!」
メアリは俺の制止も聞かず、奥に走って行ってしまった
「クソッ!」
俺も遅れて追いかける
しかし、間に合わなかった。母親は既に生き絶え、父親もまさに銃で撃たれた瞬間だった
「ママ!パパ!」
「おい、お前が殺ったのか?何でこんなことをしたんだ」
銃を持っていたのは白い髪の少年
「ん~?そりゃぁもちろん、お前の為さ。お前のその絶望している顔が見たかったからさ」
「命を助けてやった恩を仇で返しやがって。それを分かってやったんだよな、ハクア、いやヴァイス!」
共に仕事をして、今は隠れ家にいるはずのヴァイスだった
「もちろんさ。俺はずっと狙ってた、お前のことを。ボスの命令でな」
“ボス”、その言葉を聞くのは久々だ。もう、二度と聞くことはないと思ってた
「テメェが俺に勝てると思ってんのかよ!」
「当たり前だ。お前程度なら、何人いても殺せる」
俺は負の感情に任せてナイフを振った。しかし、簡単に避けられ、逆に切られた。敵わない。実力が違いすぎる
「クッ…!」
「どうした、ゼロ。俺なんか簡単に倒せるんじゃなかったのか?」
悔しいけど、俺じゃ敵わねぇ。メアリも一緒に戦ってくれてはいるけど、勝てる見込みは少ない…。だったら……
「メアリ、逃げるぞ」ヒソヒソ
「えっ……でも」ヒソヒソ
「逃げなきゃ殺られる。こんな所で殺されていいのか」ヒソヒソ
「うん。分かった」ヒソヒソ
俺はウエストポーチに手を伸ばし、そこから閃光玉を取り出す
「これでもくらえ!」
俺は閃光玉を投げると、メアリの手を引いてすぐに屋敷から飛び出した。その後、俺たちは蘇りつつあるメアリの土地勘頼りに逃げる。俺はもうここがどこだかわからない
「はぁはぁはぁ。何とか撒いたか?」
「はぁはぁはぁはぁ。うん、そうみたいだね」
少し落ち着いたからか、メアリの目からは涙が溢れる
「…ッ!どうして……。パパと…ママが……、他のみんなが!」
俺は何も言えなかった。メアリに幸せを見せておいて、それは絶望に変わってしまった。俺のせいだ。だったら、俺が、ヴァイスを倒すしかない
「ひとまずは安心だ。落ち着くまでは待つから」
しかし、世の中そう甘くはなかった
「ああ、安心しろ。すぐに殺ってやるからよ」
零士はメアリの方をチラリと見る。ガタガタと体を震わせ、怯えている。まともに戦えるとは思えない
「ヴァイス……。もう来やがった……」
零士はナイフと銃をそれぞれ持ち、再び始まる戦闘に備えた
「死ね!」
ヴァイスは真っ直ぐ突っ込んで来た。しかし、スピードが速すぎる
「ッ!負けるかッ!」
零士も負けずに応戦するが、パワーで劣る零士にヴァイスの突進は止められない。一方的に痛みつけられ、その体には痛々しい生傷が刻まれていく
「オイオイ、どうした?もう終わりか?」
“オーバーロード”はすでに使っている。使っても、ヴァイスには敵わない。零士の全力はいとも簡単に敗れた。零士の感情は久々に死の恐怖を覚えた。それだけ零士は絶望していた。自分とヴァイスのどう足掻いても埋められない差に
「その顔だよ、その顔!その絶望に満ちたその顔!俺はそれが見たかった。さぁ、もっと絶望しろ!そしてその顔を俺に見せてくれ!」
ヴァイスの持つ銃から、数回の発砲音が発せられた。放たれた弾丸は遮られる事なく、真っ直ぐ零士の体に向かって行き、貫いた
「ーーーーーーッ!」
声にならない叫びが響く。一発も急所に当たっていない。故にその苦しみはループし続ける
ッ!ヤベェ。体がちっとも動かねぇ。こりゃ死ぬな。せめて……メアリだけでも逃してやらねぇと
零士はその一心だけで立ち上がる。しかし、もうすでにその体にはナイフを振る力さえ残っていなかった
「ハハハッ!いいねぇ!そうでなくっちゃな!ゼロ、やっぱお前最っ高だわ!安心しろ。ライトにも、必ずお前の後を追わせる」
そしてついに、その銃に残された最後の弾丸が放たれた。今度こそ、それは零士の心臓を目掛けて飛んで行く。しかし、その弾は1人の少女によって阻まれた
「ッ!メアリ!」
メアリは零士の言葉に右手を力なく上げて答えると、最後の力を振り絞って、倒れるのを防ぐ
「“オーバーロード”!」
メアリの眼は緑色に光る。普段からメアリの“オーバーロード”の色は緑だ。でも、今日だけはいつも以上に明るく、鮮やかな緑だった。そして、それは強烈な光を放ちながら徐々にその輝きを失っていく
「まだ動けんのか。流石だな。でも…………」
「うるさい!黙れ!」
メアリの手には零士が普段から使っているナイフ。それを勢いよく振り下ろした
「うわァァァァァッ!お、俺の右腕がァァァ!」
ヴァイスの右腕だったものが宙を舞う
「ハァァァ、ハッ!」
更に、腕を引き、力強く突き出されたナイフはヴァイスの体に突き刺さる。そして、その瞬間にメアリは力尽きたのか、その場に倒れる
「こ、この女ァ!死に損ないが!」
ヴァイスは刺さったナイフを力任せに抜き、その場に捨てる。これだけのダメージを負って、ヤバいと思ったのか、この場を逃げる
零士は急いで、メアリの元に駆け寄る
「…メアリ……、おい、メアリ!何で俺を庇ったんだよ!」
「…レイ君に…生きて……欲しかったから…」
もうすでに、メアリの眼からは輝きは失われている
「何言ってんだよ!ずっと一緒だって言ったじゃないか!死ぬな、メアリ!」
「…ゴメンね……レイ君…。でも…私……幸せだよ。大好きな人を……守って……、大好きな人の…腕の中で死ねるんだから………」
徐々に声も小さくなる。最後にこれだけの言葉を話せるのも奇跡だ
零士はそれに答えない。いや、答えられない。口を開いても嗚咽する声が漏れるだけだった
「…そんなに……泣かないでよ…。死ぬのは…レイ君じゃなくて……私だよ……」
「…何で…何でお前が死ななくちゃいけないんだよ!…もう少しでお前は…家族全員と会えたのに……。お前は…幸せになる権利があるのに!何で!」
「そんなの……どうだって…いいよ。私は……レイ君と…一緒にいれた…それだけで…幸せだから…。だから…生きて……私の分まで………。私の分まで……幸せに……レイ君」
その言葉を最後にメアリは動かなくなった
ポツポツと雨が降り始めた。その音で、零士の叫び声は掻き消される
しばらくして、零士は屋敷に戻る。荷物をまとめてどこかへ行くためだ。部屋に着くと、机の上に箱があった
「これは……」
中にはペンダントと手紙。差出人はメアリだ
【やっほー、レイ君。何か、いつも会ってるのに手紙って恥ずかしいね。
レイ君、どう?そのペンダント。レイ君の為に使用人のみんなを一緒に走らせて見つけたんだよ。レイ君に似合うのはないかなぁ、とか、レイ君はどんなのを喜ぶかなぁ、とか考えながら選んだんだ。
このペンダントには魔除けの効果があるんだって。自分の身に降りかかる悪いことを代わりに受けてくれるんだって。私はレイ君みたいに強くないから、せめてこれが守ってくれるようにって。
そういえば知ってる?今日って私とレイ君が出会って丁度6年目なんだよ。6年って長いね。でも、あっという間だったね。これからもそういう時間を一緒に過ごしていこうね。2人がヨボヨボのおじいさんとおばあさんになるまで。レイ君、愛してます。今までも、これからも、ずっと。2人で、もっと沢山の思い出を作ろうね。大好きだよ。】
零士の目からは再び涙が零れ落ちる。一度枯れたはずだが、そんなことはなかったかのように泣き続ける
「…ッ!メアリ…!ホントにゴメン!」
俺はバカだ。あの日、6年前をきっかけに俺は強くなったつもりだった。守りたいものは何でも守れると思ってた。でも、違った。俺は何も守れなかった。守られてたのは俺の方だった
失ってからそれの大きさに初めて気づくって言うけど、まさにその通りだ。メアリが俺にとってどれだけの存在か、分かってたつもりだった。でも、俺の心の穴は恐ろしいぐらい大きく、二度と塞がることがないほどに深かった
「何で!」
自分を殺したい。メアリを守れなかった俺を殺したい。“黒羽零士”を殺したい
「何でなんだよ!」
俺がいけなかったんだ。愛する資格も愛される資格も、そしてそれを受け入れる資格も最初から俺にはなかった。俺が関わったから、俺が触れたから、俺が存在したから、幸せだったはずのメアリの人生は崩壊した。俺が壊した。俺が殺した。メアリが死んだのは俺のせいだ
「何で…俺じゃなくてメアリなんだ!」
俺は弱い。どんなに人を殺せても、どんなに強い力が使えても、今の俺はまだ弱い
じゃあ、どうすればいいと言うのだ?なればいいじゃないか、強者に。俺が知っている、俺が身につけられる唯一の強さを手に入れればいいじゃないか。誰も失わないために、強くなればいい。誰かを壊さないために、受け入れなければいい。感情なんて無くしてしまえ。飢えた獣の様に、本能の赴くままに生きればいい。その過程で“黒羽零士”が死に、“殺し屋ゼロ”が生まれた時、俺は強くなれる
零士はまたしても、道を間違えた。後少しで、辿り着けた強さを捨て、またしても、破壊の強さを選んでしまった
彼は孤独だった。両親から与えられるはずの愛を受け取れなかった。狂った姉によって自分の存在価値を間違った方向に捻じ曲げられた。殺すことこそが強さだと勘違いし、殺戮を繰り返した。そんな彼に光を灯した少女でさえ、彼を変えることは出来なかった
◆◆◆
「これが俺、“黒羽零士”、いや、“殺し屋ゼロ”の過去だ」
そして再び、彼はようやく巡り会えたはず仲間を、自分を受け入れてくれる仲間を拒絶しようとしていた
長い。そして暗い。これにて過去編終了
いかがでしたか?零士が隠したがっていた過去。鷹岡が原因で開いてしまった零士の過去の蓋。そこから出てきたのは彼の闇そのもの。その禁断の過去に触れてしまったE組の決断は?
そして1つ補足。零士はこの1年後に優希や龍牙と出会います。上手く話に組み込めなかったのでここで言っておきます
感想などお待ちしています
では、また次回