「おい皆、来てくれ! プールが大変だぞ!」
岡島が大声で言う。そして、俺たちは岡島に連れられてプールに向かった。
「……ッ! めちゃくちゃじゃねーか……」
「ビッチ先生がセクシー水着を披露する機会を逃した!」
「それは別にどうでもいい」
「需要ねぇから」
「零士! 優希! どういう意味よΣ!」
俺と優希の指摘に、ビッチ先生の素早いツッコミ。可哀想ではあるけど、正直どうでもいい。
「ゴミまで捨てて……ひどい……。誰がこんな事……」
少し離れた所にニヤニヤしている寺坂組(狭間を除く)がいる。あいつらか。
「あーあ……こりゃ大変だ」
「ま、いーんじゃね? プールとか面倒いし」
渚がそんな彼らを見る。当然、寺坂が黙っているはずかない。
「ンだよ渚。何見てんだよ。まさか……俺らが犯人とか疑ってんのか? くだらねーぞその考え」
「はァ? お前らしかいねぇだろ。殺せんせーの弱点は水だ。そのためにもプールは必要なんだよ。それをこんな風にするのは、お前らぐらいなんだよ」
すると、寺坂を俺の胸ぐらを掴み、俺を見る。
「おい、黒羽、随分お利口さんになったのな。テメェ、手段を選ばない殺し屋じゃなかったか、ゼロ。俺らを殺してでも、あのタコ殺すんじゃなかったのかよ。それとも、所詮はその程度って事かよ」
挑発のつもりか。間違ってはいない。でも……、
「うるせぇよ。“手段を選ばない”じゃねぇ。依頼達成のために、最前の手段を選んでるだけだ。焦っても結果は出ない。今はただ、自分の武器を磨いてるだけだ。そんなのも分かんないのかよ単細胞」
「ンだと! テメェ!」
一触即発という雰囲気だ。それを察したみんなが俺らを止めに来る。
「零士、やめろ。そんなの相手にするな」
「やめとけよ。そんなのくだらないぜ」
悠馬と優希は俺を。吉田と村松が寺坂を抑えていた。
「全くです。零士君も寺坂君もプールの犯人如きで喧嘩しないでください。すぐに元通りですから」
流石マッハ20の怪物。プールは一瞬で綺麗になった。
「はい、これで元通り。いつも通り遊んでください」
それを見て、寺坂や寺坂を抑えていた吉田と村松は何とも言えない表情をする。
俺たちは気にせず、遊ぶ事にした。
バキィッ
職員室で烏間先生と少し話していた。それが終わって教室に戻る途中、そんな音が聞こえた。
カァン
バシュシュシュシュシュ
続いて、そんな音も聞こえた。そんな音、普通聞こえるはずがない。俺は急いで教室に戻った。
「放せ! くだらねー!」
俺がドアを開けようとすると、寺坂がイライラしながら出て行った。
「おい! 寺坂!」
とりあえず、教室の中に入る。
「何があった、お前ら」
「ん?寺坂がヤンチャしただけだよ。でも、こりゃ換気した方がいいね」
「りょーかい。メグちゃん、寿美鈴ちゃん、窓開けて」
一通り換気をした後、さっきの話を聞いた。要するに、寺坂は今のE組が嫌いという事だ。
「全く、何なんだアイツ」
「一緒に平和にやれないもんかな……」
陽斗と悠馬が遠くで話している。俺の近くにはカルマと陽菜乃。
「何か、昔の零士みたいだね。
「カルマ君の言う通りだね~。ホントに零士君みたい」
「うっせぇ」
だけど、ああいうのは厄介だぜ。俺は修学旅行のおかげで何とかなったけど……。あいつ、体格いいのになぁ。
ホント、嫌な予感がする。
ー寺坂sideー
地球の危機とか、暗殺のための自分磨きとか、落ちこぼれからの脱出とか、正直どーでもいい。その日その日を楽して適当に生きたいだけだ。
だから俺は……、
「ご苦労様。プールの破壊、薬剤散布、薬剤混入。君のおかげで効率良く準備が出来た。はい、報酬の10万円。また次も頼むよ」
シロから金をもらう。こっち方が……居心地が良いな。
「なにせあのタコは鼻が利く。外部の者ではすぐにバレてしまう。だから寺坂君、君のような内部の人間に頼んだのさ。イトナの性能をフルに活かす舞台作りを」
俺の目の前には、クロに鍛えられているイトナ。初めて会った時よりスピードもパワーも桁違いだ。
「クロ、どうだい? イトナの調整は」
「順調よ。おそらく、ゼロからの妨害、いえ、ゼロとブレット2人が相手でも、負ける事はないわ」
「何か変わったな。目と髪型が?」
「その通りさ寺坂君。意外と繊細な所に目が行くね。髪型が変わった。それはつまり、触手が変わったって事さ。前回の反省を活かし、より綿密に計画を立て、クロとの組手で更に触手に慣れさせてるんだ」
イトナのスピードやパワーは、もしかしたら黒羽に優ってるかもしれない。この短時間でここまで出来るのか。
「寺坂竜馬。私には君の気持ちが良く分かるよ。あのタコにイラつき、孤立している。だから私たちは君に協力を頼んだ」
クロが更に言葉を継ぐ。
「安心して。私たちの計画なら、99.9%の確率で成功出来る。後はあなたがその計画通りに動くだけで、数字は100%に近づくの。任せて」
しかもお小遣いまでもらえる。悪い事はひとつもない。
すると、イトナが近づいて来た。
「な、何だよ」
「お前は……、あのクラスの赤髪や茶髪の女顔、黒いのより弱い。馬力も体格もずっと上だ。なぜか分かるか? お前の目にはビジョンがない。勝利への意志も手段も情熱もない。ビジョン……それだけでいい……。そして、黒羽零士、兄さん、お前らは俺が殺す!」
そう言うと離れて行った。
「何なんだあの野郎、相変わらず! 脳みそまで触手なんじゃねーのか!」
「寺坂君。そんなに怒んないでよ。私が訓練ばかりに時間を取ってたせいだから。仲良くしましょ、私たちなら、あなたの力を最大限に活かし、最高の利益を得る事が出来る。決着は、放課後。手筈通り頼むわよ」
ー寺坂side outー
ー零士sideー
「殺せんせー、何で泣いてんの?」
「そうよ、さっきから意味もなく」
「いいえ。
「「「「「紛らわしいΣ!」」」」」
何だよ、鼻水かよ。なんて納得出来るかΣ!
「どうも昨日から体の調子が少し変です。夏風邪ですかねぇ……」
その時、今日一日来ていなかった寺坂が来た。
「おお、寺坂君! 今日は登校しないのかと心配でした! 昨日君がキレた事なら心配なく! もう皆気にしてませんよね? ね?」
「……う、うん……。汁まみれになっていく寺坂の顔の方が気になる」
確かに。そして汚い。
「おいタコ。そろそろ本気でブッ殺してやンよ。放課後プールに来い。弱点なんだってな水が。
てめーらも全員手伝え! 俺がこいつを水ン中に叩き落としてやッからよ!」
誰もやるとは言わない。当たり前だ。今までの態度じゃあ仕方ない。
「黒羽! お前はやるだろ。タコを殺せる最高のチャンスなんだ。手伝うなら賞金は分けてやるよ」
「……やだね。誰がテメェなんかの作戦に乗るかよ。殺し屋が金だけで動くと思ったら大間違いだ」
「ケッ。じゃあいいぜ、来なくても。そん時ゃ俺が独り占めだ」
寺坂はそう言うと、すぐの教室を出て行った。
「……何なんだよあいつ……」
「もう正直ついていけねーわ」
「私行かない」
「同じく」
「俺も今回はパスかな」
しかし、俺たちの足元は想像を絶する状態になっていた。
「皆行きましょうよぉ」
殺せんせーの粘液で身動きが取れない。
「うわっ! 粘液だ!」
「逃げらんねー!」
「せっかく寺坂君がやる気になったんです。皆で一緒に暗殺して、気持ちよく仲直りです」
「「「「「鏡見ろΣ!」」」」」
顔中ドロドロだ。あれは……キモい。
ー零士side outー
ー優希sideー
結局、零士とカルマはサボり、他の皆で行く事になった。
「よーしそうだ! そんな感じでプール全体に散らばっとけ!
おい白河! テメェもさっさとジャージ脱いで入れる!」
「バーカ。俺はスナイパーだ。そして泳げねぇ。だから、この木の上から狙わせてもらう」
「…………勝手にしろ」
さて、どうするか。念のため、インカムを使い、いつでも零士と連絡が取れる様にはしている。
手際は悪くない。プールへの散らばり方も、個人の泳ぎの技量で判断されてるから、一見穴はない。だけど……、
「それで君はどうやって先生を落とすんです? ピストル一丁では先生を一歩も動かせませんよ」
あの銃は少しこのクラスで使っている銃とはモデルが違う。でも、あの程度じゃ落とせない。一丁で落としたかったら対物ライフルで見えない所から狙撃ぐらいじゃないと無理だ。
「……覚悟は出来たかモンスター」
「もちろん出来てます。鼻水も止まったし」
「ずっとテメェが嫌いだったよ。消えて欲しくてしょうがなかった」
「ええ、知ってます。暗殺の後、ゆっくり話しましょう」
俺はスコープから2人の様子を見る。いよいよ実行の時。竜馬が銃の引き金を引く。しかし、弾は出ない。
何も起こらない。いや、待てよ。何か音が……。
カチッピッ
「みんな、逃げろ! 爆発するぞ!」
ドグアッ
俺の声は轟音と重なり、聞こえない。しかも爆発によってプールから放流。
「皆さん!」
殺せんせーが助けに向かう。
「くそッ! 竜馬! テメェ何しやがった!」
「……嘘だろ? これ……こんな事するスイッチだなんて聞いてねーよ」
竜馬は手に持っている銃を見ながら何か呟く。ダメだ、使い物にならねぇ。
「聞こえるか、零士。急いでこっち来てくれ」
{何だよ今の音! あのバカ何しやがった!}
「来れば分かる! カルマも連れて来い! 早く!」
俺は取り敢えず、手持ちのロープでメグちゃんと悠馬を助ける。
「メグちゃん、悠馬! 少し休んだらそのロープで助けろ! 俺はもう少し奥に行く!」
ワイヤーハンドガンを持ち、木と木の間をターザンの様に移動する。
「優月ちゃん、カエデちゃん! 捕まれ! 龍之介、創介! その岩、ちゃんと掴んどけ! すぐ助ける!」
くそっ! 間に合わねぇ。殺せんせー、まず大丈夫かよ。
「頼む。零士、早く来てくれ」
俺は小さな声で、相棒の到着を願った。
ー優希side outー
ー零士sideー
「……何コレ? 爆音して、優希から連絡あって来てみたら、プール消えてんだけど」
「優希の奴、何が起こったかは分かるけど、背景が何も分かんねえぞ」
その時、怯えきった声が聞こえた。
「話が違えよ。イトナを呼んで突き落とす話じゃなかったのかよ」
そういう事かよ。
「なるほどねぇ。あの3人に操られてた……ってわけ」
カルマが容赦なく、寺坂に言い放つ。
「言っとくが、俺のせいじゃねぇぞ、カルマァ! 黒羽ァ!
こんな計画やらす方が悪いんだ。皆が流されたのも……全部」
カルマが寺坂の顔面を全力で殴る。
「標的がマッハ20でよかったね。それに、優希がすぐに状況を判断した事にも感謝した方がいい。でなきゃお前、大量殺人の実行犯になって、犯罪者の仲間入りをする所だったよ。流されたのは皆じゃなくてお前じゃん」
カルマ……。俺がサボってなきゃ……。
「零士もそんな顔してないで、こっち来て。何が出来るか、俺らで考えよう」
「ああ」
とりあえず、皆が集まっている方に行く。
「悠馬、どうなってる」
「零士! カルマ! 実は……プールが爆発して……」
「OK。後は分かった。優希は?」
「あっちの岩の方。速水と倉橋を助けに行って身動きが取れなくなってる」
「了解。カルマ、ここは任せた。俺は優希たちと殺せんせーを助けに行く!」
俺は皆の制止を振り切り、走り出した。“オーバーロード”も使い、自分の出せる全速力で3人がいる方に向かう。
「優希! 速水! 大丈夫か? それと、陽菜乃は?」
水に半分使っている優希を見つけた。
「悪い。陽菜乃ちゃんはもっと奥だ。俺がいながら…………」
「泳げねえのによくやったよ。速水も大丈夫か?」
「……ええ。水をかなり飲んじゃったけど……」
「悠馬、メグ! こっちだ、頼む!」
俺はすぐに陽菜乃を探し始める。確かこの先は急な崖のはずだ。そこに水が流れてるなら、滝みたいになってしまう。そこから落ちるなんて事はあってはいけない。
「陽菜乃、どこだ!」
「零士君! 倉橋さんはあっちです! ですから先せ「あなたはこっちよ、殺せんせー」ッ!」
そこには上から殺せんせーを叩き落としたクロの姿。
「殺せんせー!」
くそっ。でも、あっちだったよな。
「いた!」
まずい……。水を飲んで気絶してる……。
俺は近くの岩を右手で掴み、陽菜乃の腕を掴む。
「……ッ! 陽菜乃、大丈夫か?」
返事はない。だが、脈はある。このまま誰がが来てくれれば……。
「ッ! やべぇ、岩で手切った……。血で滑る……」
誰でもいい。来てくれ……。でねぇと、陽菜乃が……。
「黒羽! そのまま待ってろ! 俺が行く!」
そこにいたのは……、
「寺坂……」
ロープを体に巻きつけ、急流に入って来た寺坂。その後ろでは皆がそのロープを支えている。
「倉橋をこっちに渡せ。そうすりゃ自分で来れんだろうが」
「悪ぃ、恩に着る」
俺は陽菜乃を寺坂に預けた。左手で岩を掴み直し、勢いをつけて、水から出た。
……はずだった。
「なっ……!」
「黒羽!」
寺坂が俺に手を伸ばしたが、空を切り、俺は崖の下に引っ張られる。俺の腰には触手。イトナだ。
バシャァァンッ
「やぁ、黒羽君。久々だね」
「ゲホッゲホッ! テメェは……シロとイトナ……。殺せんせーは!」
シロは俺の問いに対し、後ろを指差した。そこにはクロに押されている殺せんせーの姿。
「クロはね、殺し屋なんだ。殺せんせーが吸った水は触手の動きを弱める薬剤を入れた。寺坂君が撒いてくれたおかげで奴の粘液は出切っている。奴の助けは望まない方がいい」
イトナが前に出る。そして触手を操りながらゆっくりと俺の前まで来る。
「黒いの、もう一度勝負だ。お前に勝って、俺の強さを証明し、そして兄さんを殺す」
大分オリジナル展開にしています。
イトナvs殺せんせーの前にイトナvs零士をやります。その間は、殺せんせーの相手をクロにやってもらいます。
バトル要素が少し強そうですが、楽しんでくれたら幸いです。次回も楽しみにしていてください。