暗殺教室 with 黒羽零士《凍結》   作:grey

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ようやく本編。
最初に出た原作キャラがまさかの浅野君。そして理事長、倉橋。
それと倉橋とのフラグ立てられたかな?微妙かも…。



本編
依頼の時間


『…メアリ……、おい、メアリ! 何で俺を庇ったんだよ!』

 

 少年の前には、たった今銃で撃たれた血塗れの少女が横たわっている。

 

『…レイ君に…生きて……欲しかったから…』

 

『何言ってんだよ! ずっと一緒だって言ったじゃないか! 死ぬな、メアリ!』

 

『…ゴメンね……レイ君…。でも……私…幸せだよ…。大好きな人を……守って……、大好きな人の…腕の中で死ねるんだから………』

 

 少女の声はどんどん小さくなり、少年の目からは涙が溢れ出す。

 

『…そんなに……泣かないでよ…。死ぬのは…レイ君じゃなくて……私だよ……』

 

『…何で…何でお前が死ななくちゃいけないんだよ! …もう少しでお前は…家族全員と会えたのに……。お前は…幸せになる権利があるのに! 何で!』

 

 少女は死にかけているとは思えない程の力強い目で少年を見る。

 

『そんなの……どうだって…いいよ。私は……レイ君と…一緒にいれた…それだけで…幸せだから…。だから…生きて……私の分まで………。私の分まで……幸せに…なって……、レイ君』

 

 その言葉を最後に少女は命を落とした。

 

 

「……また…あの夢か…。今日は良い事ねぇな…」

 

 彼の名前は黒羽 零士。椚ヶ丘中学校3-Aの生徒だ。

 

「今日は…確か中間の結果が発表される日か…。仕方ねぇ、行くか」

 

 零士は眠そうな目を擦りながら起き上がり、僅か数分で支度を済ませ家を出る。学校の途中でコンビニに寄り、おにぎりとお茶を買い、それを食べながら学校へ向かう。

 

 

「やぁ、おはよう黒羽。いつも通りの遅めの登校だな」

 

「ははは、まぁね。おはよう、浅野。テストの結果出てるよな、見に行こうぜ」

 

 この間やった1学期中間試験の結果が廊下に貼り出されている。零士と浅野はそれを見るために廊下に出る。

 

「流石、浅野。安定の1位じゃん! やっぱスゴイな」

 

「まだまださ。この程度で満足していてはこの先、足元を掬われてしまうよ」

 

「(よく言うよ。こんなの出来て当然。どうせそう思ってんだろ)ええと、僕のはどこかな?」

 

 本音を言葉に出す事なく、零士は自分の順位を探す。

 

「あったよ、黒羽。15位だ。前回より上がったんじゃないか?」

 

「あぁ、本当だ。この間は25位だったかな? まぁ、今回は数学と理科がいつもより良かったし、当然って言えば当然かな?」

 

「そうだな。君は文系の3科はいつも高得点。今回に限っては3科共に100点。苦手なその2つも80点、調子良いみたいだな」

 

 この学校では成績が物を言う為、零士は少し安心する。そんな時、上から順位を見た時、普段トップ5は五英傑が独占しているのに、今回は違う名前が載っているのに気がつく。

 

「なぁ、浅野。今回五英傑がトップ5独占じゃないんだな。赤羽…何て読むんだ? …ゴウかな?」

 

「赤羽 (カルマ)だ。彼はE組だが、成績で落とされたわけではないからな」

 

「へぇ、赤羽 業ね…。あの停学処分ばかり受けてるっていうあの。ていうか、数学100かよ…。化け物か…」

 

「君が出来なさ過ぎるんだよ。数学なんて簡単だろ」

 

 零士は浅野も100点だった事に気づく。

 

「(化け物め!)まぁ、僕にとって国語が簡単である様なものか」

 

 そんな時、校内放送が流れた。

 

 {3-Aの黒羽 零士君。理事長室に来てください。繰り返します。3-Aの黒羽 零士君。理事長室に来てください}

 

「…なぁ浅野。僕、何かしたっけ?」

 

「君がそんな事するわけないだろう。君が問題なのは欠席が多過ぎる事だ」

 

 そう、零士は学校に殆ど来ていない。週に2回来るか来ないかという感じなのだ。来たとしてもHRギリギリなのだ。

 

「おそらく、この間の大会の事だろう。集会で皆の前で表彰されていたが理事長自ら言いたい事があるんじゃないか?」

 

 零士はサッカー部に所属しており、チーム内でも一目置かれる程の実力がある。そして何故か部活関係では決して欠席も遅刻もしない。

 

「だといいんだけどね。まぁ、行ってくるよ。E組に行けとかだったらどうしよう」

 

 零士は冗談の様に言う。浅野も“そんな事はないだろう”といった様子で笑う。

 

 この学校では本校舎の生徒の殆どはE組を差別している。零士もその例外ではなく、むしろ積極的に差別をしていると言える。

 

 そんな様子で零士は理事長室に向かう。

 

 

「理事長、黒羽 零士です」

 

「どうぞ。入っていいですよ」

 

「失礼します」

 

 零士はあまり理事長の事が得意ではない。嫌いではないのだが自分の事を全て見透かされているという様な感じがするのだ。

 

「えっと…今日はどういったご用件で…」

 

「まぁ、その話をする前に、黒羽君、この間の大会では得点王、そして大会MVPだったそうじゃないか。改めて、おめでとう」

 

「ありがとうございます。“その話をする前に”という事は…別の要件で僕は呼び出された、という事でしょうか?」

 

「そんなに焦らなくてもいいじゃないか、黒羽君。相変わらずだね君は」

 

「(あなたが苦手なんですよ)今日は少し悪い夢を見てしまったもので…」

 

 本音は言う事なく無理矢理でも理由をその場で考えて言う。全くの嘘というわけではないが。

 

「そうか、明日は良い夢が見られるといいね。では本題に移ろう。結論から言うと君は明日からE組だ」

 

 その言葉を聞いて零士は一瞬固まった。この世で一番聞きたくない事を聞いた気がしたからだ。

 

「ええと…僕の聞き間違いか何かでしょうか?“E組行き”という風に聞こえたのですが…」

 

「あぁ、聞き間違っていないよ。その通りだ、黒羽君」

 

「どうしてですか! 今回のテストは悪いどころか前回より良くなっているんですよ! それに理事長が言った通り大会でもしっかり結果を残しています!

 それなのにどうして⁈」

 

 零士は理事長に言われた“E組行き”が納得いかないといった様子で声を荒げて言う。

 

「そんなに大声を出す事ないじゃないか。少し落ち着きなさい。

 いいかい、黒羽君。これを見たまえ」

 

 そう言って理事長が出したのは一枚の紙だった。

 

「これは……?」

 

「これは君がこの学校に入学してから今日までの出席や遅刻、早退を記録したものだ。これを見れば分かる様に君は2年と1ヶ月程この学校に在籍し、遅刻や早退をせずに出席していたのは1年分もない。要するに君のE組行きの理由は出席日数の不足だ」

 

 その紙には零士の出席の状況が細かく記されており、お世辞にも優等生とは言えず、むしろ劣等生という言葉が似合う状況だった。

 

「納得いきません! たかが休みが多いだけで、成績も悪くなく、部活でも結果を残している僕をE組に行かせるんですか!」

 

 零士はそれでも諦めず、何とかしてE組行きを阻止しようとしている。

 

「黒羽君。よく聞きたまえ。休みや遅刻、早退の多い人間はどんなに仕事が出来ても信頼されないんだよ。君なら信頼というものがどれだけ大切かを知っているはずだ」

 

 その言葉を聞いて、零士は反論する事が出来なかった。

 

「はい、分かりました。明日からで「しかし、それは表向きの理由だ」…えっと…それはどういう意味ですか?」

 

 理事長が零士の言葉を遮って話を始めた。

 

「本当の理由は今日中に分かるだろう。そして、その理由を聞いた時、君はどうすれば本校舎に復帰出来るのか、自ずと理解するだろう。頑張りなさい、黒羽君」

 

 どういう事かさっぱり分からない、という顔をしながら零士は理事長室を後にした。

 

 

「黒羽! どうだった?」

 

 理事長室から出て来た零士に声をかけたのは呼び出される前に話していた浅野だった。

 

「全く…この世で一番聞きたくなかった言葉を聞かされたよ」

 

「! …まさか………」

 

「あぁ、E組行きだ。理由は…情けねぇよな。出席日数の不足だってよ。本当に笑えねぇよ」

 

「あの人は何を考えているんだ! 僕がもう一度話をしてやる!」

 

「待てよ浅野。良いんだ、僕が悪い事に変わりはない」

 

 先程の理事長室での零士の様に浅野は不満そうにしている。

 

「だが「安心しろ。次の期末までにしっかり結果出して本校舎に復帰してやるよ」そうか…、分かった。絶対、戻って来いよ!」

 

「おう、もちろんだ。

 じゃあ僕はもう帰るよ。理事長がさ、E組行きを言われた後なのにA組の授業を受けるのは辛いだろう、って言ってくれたから。その好意に甘える事にしたよ」

 

「そうか、じゃあな、黒羽」

 

「あぁ、じゃあな、浅野」

 

 そう言って零士は机に置いておいた鞄を持って学校を後にした。

 

 

 家に帰る途中、零士のスマホに一通の電話が来た。

 

「(知らない番号だな…。誰だ?)」

 

 零士はそう思いながらも電話に出る。

 

 {もしもし、君は黒羽 零士君で間違いないか?}

 

 聞こえて来たのは男性の声だ。

 

「はい、そうですけど。あなたは…?」

 

 {俺は防衛省の烏間 惟臣(からすま ただおみ)という者だ。君は明日からE組に行く、間違いないな}

 

「はい、ところで防衛省が何の用ですか? 僕が防衛省に関わる理由なんてないはずなんですが…」

 

 確かにその通りである。しかしそれは彼が普通の中学生ならばという話だが。

 

 {そのE組に関係ある。そして君自身にも関係がある。この教室で暗殺をして欲しい。ここまで言えば分かるか?殺し屋“ゼロ”}

 

 そう、黒羽 零士は中学3年生にして殺し屋。彼は普通の中学生ではない。

 

「へぇ、俺の事知ってんだ、鳥間さん。この国を少しナメてたな。まさか俺の事を突き止めるなんて。E組で暗殺? 別にいいけどターゲットは? まさかそこの教師を殺して欲しいって事?」

 

 零士は一人称を“僕”から“俺”に変え、言葉使いも雑になって話す。

 

 {察しがいいな。とはいえ電話で依頼というのもおかしな話だ。君の家で話せないか? 今君の家の前にいるんだが、後どれ位で帰って来る?}

 

「じゃあまず俺ん家から離れろ。国の人とはいえ依頼者を自宅に上げるつもりはない。依頼をしたかったらきちんとした手順を踏んでもらいたい。だが、俺の事を突き止めたご褒美に手順を教えてやる」

 

 零士はあくまでも上から目線で話す。

 

 {どうすればいい?}

 

「簡単だ。まず俺ん家から離れる。そんで近くに商店街があるだろ。そこの“Assassin’s cafe”(アサシンズ カフェ)っていう店に行け。そこで“Assassin’s coffee”(アサシンズ コーヒー)を頼め。いいな、分かったな」

 

 {あぁ、分かった。ではそこで}

 

「あぁ、俺も着替えて直ぐ行く」

 

 その会話で電話は終わった。

 

 

 烏間は先程電話した相手に指定された店に来ていた。

 

「まさか…殺し屋の指定した店の名前に“Assassin”と名付けるとは…」

 

 自分から殺し屋です、と言っている様なものである。

 

 烏間は覚悟を決めて中に入る。

 

「いらっしゃいませー。お一人様ですか?」

 

 対応してくれたのは20代位の若い女性だ。

 

「後で連れが来る」

 

「分かりました。

 当店では先にご注文をして頂いてから席にご案内する事になっています。勿論追加で注文する事は可能です。何にいたしますか?」

 

「“Assassin’s coffee”を頼む」

 

 烏間は彼に言われた物を頼む。

 

「……分かりました。では席にご案内します」

 

 そう言って彼女は他の席から死角になっている所まで行き、そこの扉に鳥間を案内する。

 

「(確かにこれなら殺し屋に依頼する所が見られずに済む。この店自体が殺し屋のアジトなのか? それとも彼が個人的に利用しているだけなのか?)」

 

「こちらの席になります。お連れ様が来たらここまで案内しますね」

 

 すると目の前にコーヒーが出て来る。

 

「はいよ、“Assassin’s coffee”。ところでアンタ、どこで“ゼロ”の事を知った?」

 

 鳥間に話しかけて来たのは自身と同じかそれ以上の年齢の男。

 

「彼に直接電話した。俺は防衛省の烏間 惟臣だ。あなたも殺し屋か?」

 

 烏間は男の問いに答える事なく逆に質問する。

 

「あぁ、俺は神田 龍牙(かんだ りゅうが)。殺し屋“ファング”とも名乗っている。そんでこの店のマスターだ」

 

「お父さん、殺し屋でしょ。お役人さんなんかに簡単に名乗っていいの?

 烏間さん、初めまして。娘の(まい)です」

 

「大丈夫さ、舞。こいつはレイの客だ。心配いらねぇよ。

 烏間さん、コイツは殺し屋ではねぇが俺の技術を少し教えてる。この店でバイトと情報収集をしてもらっている。」

 

 ファングを“お父さん”と呼ぶ彼女はファングの娘で舞というらしい。

 

「そうか。ゼロ、いや零士君はまだか?」

 

「ん?あぁ、もう直ぐ来るさ。上から今来たって連絡があった。

 ほら、噂をすれば」

 

 烏間が入って来たのと同じ扉から待っていた彼が入って来る。

 

「よう、烏間さん。無事に着けたみたいだな」

 

 零士が椚ヶ丘の制服から黒のパーカーにジーパンという姿に着替えてやって来た

 

「あぁ。まさかこんなストレートな名前の店だとは思わなかった」

 

「ははは、だろうな。

 それじゃ、知っているとは思うが改めて自己紹介だ。俺は“ゼロ”、殺し屋だ。本名は黒羽 零士(くろば れいじ)。偽名でも何でもねぇから安心しろ」

 

「俺は防衛省の烏間だ。今はE組で体育教師をしている」

 

 すると舞がパソコンを弄って何かをしている。

 

「零士、烏間さん、ちゃんといるよ、防衛省に。データベースをハッキングしたから間違いない」

 

 その言葉に烏間は何とも言えない表情をしている。

 

「まぁ、疑っちゃいなかったがこれでハッキリしたな。じゃあ依頼とやらを聞こうか」

 

 烏間の目の前にいる零士はとても中学3年生もは思えない雰囲気で話を進める。

 

「君が明日から行くE組では今、暗殺を行っている。君にはそれに参加、いや方法は問わない。そこにいるターゲットを暗殺して欲しい。そのターゲットというのが「殺せんせー」!何故それを…」

 

 烏間が言おうとした事を舞が先に言う。

 

「E組の教師でタコ型の超生物。3月に月の7割を蒸発させた張本人であり、来年の3月には地球も破壊すると宣言している。生徒から“殺せんせー”と呼ばれ、慕われている。奴を殺すには国が開発した対超生物用の物質を使うしかない。そんな所かしら?」

 

 舞は本来なら国家秘密であるはずの事をペラペラと喋って行く。これには烏間も開いた口が塞がらない。

 

「そんなに驚くな烏間さん。コイツには俺の技術を仕込んだって言ったろ。その1つがハッキングだ。今じゃ俺なんて足元にも及ばねねぇ位の腕前だ」

 

「はははっ、国のセキュリティーを再確認した方がいいんじゃねぇの、烏間さん」

 

 烏間は一度仕切り直すといった風に咳払いをして話し始める。

 

「まぁ、そういう事だ。そして奴を殺せた場合、成功報酬として100億円を用意しよう。出来るか?」

 

「“出来る”か“出来ないか”じゃねぇよ。“やる”か“やらねぇか”だ。そして答えは勿論“やる”。俺が“やる”と答えた以上、必ず結果は出すぜ」

 

「ではこちらからは奴に効くナイフとBB弾を支給する」

 

 烏間はトランクに入ったそれらを零士に渡す。それを一通り確認した後、再び烏間の方を向き直す。

 

「本当にこんなゴムみてぇなのが効くのかよ」

 

「あぁ、効く。実際に触手の破壊に成功した生徒もいる」

 

「へぇ、そりゃすげぇや。そんでさ、烏間さん。武器のオーダーメイドって頼める? 俺もそこそこ殺し屋やってるつもりなんだよね。そうすると普段使ってるやつの方がしっくり来るわけよ」

 

「あぁ、構わない。出来る限りそちらの要望に応えよう」

 

 “それじゃあ”と言いながら零士は鞄からダガーと靴を取り出す。

 

「1つはこのダガーと同じモデルで頼む。形はこれと同じで重さはそちらの都合に任せる。個人的には重さも一緒にして欲しいが、その素材じゃ無理そうだしな。そんで柄の部分は金属で頼む。無理してここの重量をあげる必要もない」

 

 烏間は注文が多いという様な顔をしながらダガーを受け取る。

 

「次はこの靴。これにはナイフが仕込んであって、このストッパーを外すとナイフが出る様になってる。これは靴は同じものでそこにナイフを仕込んでくれ」

 

 烏間はこれを黙って受け取る。

 

「分かった。大体1ヶ月位で出来るだろう。出来るだけ開発を急がせる」

 

「ちょっと待った! 遅い、遅過ぎる。1ヶ月は長いぜ。俺は潜入暗殺は専門じゃねぇんでな、あんまり長いとボロが出る。出来れば1週間で頼む」

 

 烏間はその無茶な要求に顔を顰める。

 

「それは無理だ。このダガーも靴も君の特注品だろう。それを再現するんだ」

 

「あのなぁ、俺が行かねえと殺せねぇんだろ。この国は技術力だけはトップクラスだ。その気になれば出来るだろ。1週間で頼む」

 

 烏間はその言葉に押し切られる。本来ならこんな無茶な要求は却下するべきなのだが零士の言う事も間違ってはいない。彼がターゲットに一番近づく事ができ、尚且つ技術や実績を持った殺し屋なのだ。

 

「分かった。戻ったら開発チームに最優先でやらせる。他に何か言いたい事や質問はあるか?」

 

「そうだなぁ、まず俺らを捕まえる事はしねぇよな」

 

 殺し屋としては当然の質問を零士がする。

 

「勿論だ。国もこうして力を借りざるを得ない状況だ。それは保証する」

 

「次は生徒とターゲットに俺が殺し屋だという事を話すな。警戒されると厄介だ」

 

「分かった、こちらからは言わない。ただし、E組の講師に1人殺し屋がいてな、彼女にはバレてしまうかもしれない」

 

「構わねぇ。じゃあ明日早めに行って釘を刺しておく事にしよう」

 

「それで全てか? では…「悪い。後もう1つ」何だ?」

 

「ターゲットを殺す際に生徒を巻き添えにして報酬が支払われないって事はねぇよな」

 

 烏間は零士が何をやろうとしているのか分かったのか零士を睨みつけながら言う。

 

「それはない。だがそんな事をするつもりなのか?」

 

「あぁ。そのやり方が1番可能性がある」

 

 今の零士に中学3年生の面影はまるでない。残虐な殺し屋、そのものだった。

 

「どうするつもりだ」

 

 烏間は質問をせず、それを阻止しようとするかの様な強い口調で言う。

 

「E組の生徒の中で1人でいい。何も知らずに俺の事を信用し、尚且つ俺に歯向かうことのない非力な駒、それを作る。その準備を武器が出来るまでに済ませるつもりだ」

 

「具体的に何をやるつもりだ! 生徒の命が脅かされる様な事は…」

 

 教師として当然の反応だ。

 

「教師の鏡だねぇ烏間さん。でもそれをここで言うわけにはいかねぇ。どこからターゲットに漏れるか分かんねぇからな」

 

「……分かった。依頼内容は以上だ。明日からよろしく頼む」

 

「よろしく、烏間先生」

 

 零士は不敵な笑みを浮かべながら手を差し出す。そして烏間はその手を取り、2人は握手をする。

 

「さて、龍さん。今から明日に向けて少し買い出しに行くんだけど足りない物とかある?」

 

「そうだなぁ、砂糖がなくなりそうだ。いつものを頼む」

 

「りょーかい。じゃあ、烏間さん。僕は買い物に行って来ます。ゆっくりしていってくださいね」

 

 零士は先程の殺し屋としての雰囲気を一切感じさせない中学3年生らしい表情で店から出た。

 

「悪いね、烏間さん。レイの奴はちょっと昔色々あってな」

 

「何があったんですか?殺し屋とはいえまだ14歳。何があったらあんな風に…」

 

 ファングは零士が出て行ったのをしっかり確認して話し始めた。

 

「レイは…恋人を殺し屋に殺されてな。恋人も殺し屋だった。レイと恋人、そして殺した奴の3人で当時チームを組んでいた。つまり裏切られたんだ」

 

「そんな事が…」

 

「あぁ。それからアイツは誰も信頼しちゃいない。依頼者の事も心のどっかでは疑ってんだろう。そして俺や舞、仲間の殺し屋の事さえな」

 

 そう話すファングの顔はとても悲しそうだった。

 

 そしてファングはコーヒーを一口飲み、再び口を開いた。

 

「烏間さん、アイツを、レイをどうかよろしくお願いします。依頼なんて失敗してもいい。アイツを周りと信頼し合える様にしてやってくれ」

 

「私からもお願い。あの生意気なクソガキを生意気なガキにしてやって」

 

 舞の言葉に烏間は笑みを浮かべながら“分かった”と一言言って席を立った。

 

「烏間さん、いや()()また来いよ。サービスしてやるよ。それに暗殺の方も少しは手を貸す」

 

「あぁ、また来る、()()

 

 

 零士は買い物を済ませ、“Assassin’s cafe”に砂糖を届け、自宅に帰っていた。

 

「はぁ、明日からE組かぁ。依頼とはいえ行きたくねぇなぁ」

 

 零士はやや大きめな声で独り言を言う。そして先程から零士の事を二度見する人が多い。しかしその理由は独り言を言っているからではない。

 

「ねぇねぇ、お母さん。あの人凄いね。ボールが全然落ちない」

 

「本当ね。サッカーが上手いのね」

 

 親子がそんな会話をしている。そう、零士はただの買い物帰りではない。リフティングをしながら帰っているのだ。足やヘディングを駆使して一度も落とす事なくやっている。

 

「はぁ、E組ってスッゲェ設備悪いんだよなぁ。エアコンねぇし。知り合いも前原や磯貝位しかいねぇしな。まぁそれは寧ろ好都合だけど…」

 

「やっ、やめてください!」

 

 そんな時、1つ先の角から声が聞こえた。

 

「お嬢ちゃん、買い物の帰り? 偉いねぇ」

 

「ホントホント。俺達がご褒美をやるよ」

 

「こっちにおいでよ。ほらっ」

 

「離してください!」

 

 そこにいたのは零士と同い年位の女子だ。

 

 零士はフードを深く被り、リフティングをしながら近づいていく。

 

「お前らさぁ、女の子を誘うならもっとマシなやり方できねぇのかよ? 今時漫画でもねぇぞそんなの」

 

 零士がイライラした様子で話す。彼は今、人生の中で3本の指に入る程イライラしている。

 

「んだと? お前こそ、今時そんなヒーローいねぇぞ」

 

「別に、ヒーローになりたいわけじゃねぇよ」

 

 そう言うと零士はその場にボールを残しいきなり不良達の前から消える。

 

「なっ!どこ行った、あのガキ! いきなり消えやがった…」

 

「大丈夫か、君。怪我とかない?」

 

「えっ……はい。でもどうやって…」

 

 零士は女子を不良達から助けていた。不良達はそれに驚き、イラついている。

 

「テメェ、何しやがった!」

 

「ん? まぁ一種のスキルだと思ってくれよ。で、どうすんの?帰る?」

 

 零士は不良達に挑発を続ける。

 

「バカかよ。お前をボコって、お嬢ちゃんと遊ぶだけさ!」

 

 そう言うと不良達は一斉に零士に襲いかかる。

 

「君は少し離れてな。この程度1人で十分だ」

 

 零士は女子を自分から離し、不良達の攻撃を全て防御している。

 

「(スゴイ…。烏間先生みたい…)」

 

 女子がそんな事を思っている事を知らず、零士は防ぎ続ける。

 

「大したことないね、お前ら。さぁて、こんだけ攻撃されたんだ。やり返しても正当防衛だよな!」

 

 すると零士は不良達に攻撃の仕方を教えるかの様に次々と反撃していく。

 

「チッ! このガキ! 調子に乗るなよ!」

 

 すると残った最後の1人の不良がナイフを懐から取り出し零士に襲いかかる。

 

「危ない!」

 

「安心しろよ。この程度、そこら辺の石ころ1つあれば十分だ」

 

 零士はそう言うとしゃがんで石を1つ拾うと不良に向かって投げる。

 

「ヴッ………」

 

 バタンっ

 

 不良は石が当たると直ぐに倒れた。

 

「あの…何を……?」

 

「ん?石を投げただけさ。石でもある程度の威力と当たり所さえ良ければ人を倒せる」

 

 零士はそう言って女子の方を向く。零士は先程の戦闘でフードが外れていた。その顔を見て女子は思い出した様に言った。

 

「あ!もしかしてあなた、A組の黒羽 零士君?」

 

「お…じゃなくて僕の事知ってんの?」

 

「うん!この間の試合見たよ!カッコよかったね!あっ、私は倉橋 陽菜乃(くらはし ひなの)。E組だけどね」

 

 零士が助けた女子は明日から通うE組の女子生徒、倉橋陽菜乃だった。

 

「あ、あぁ。ありがとう。怪我とかない?」

 

「うん、ないよ。助けてくれて本当にありがと。じゃあまたね、サッカー頑張ってね!」

 

 倉橋はそう言うと走って帰って行った。

 

「しまったぁ。よりによってE組かよ…。少し本気出したからバレないといいんだけど…。まぁ、好都合かもな。アイツ、倉橋とか言ったっけ? なんかムカつくし、平和そうな頭してるし、いい駒になりそうだ」

 

 零士は倉橋の方を見ながら不敵な笑みを浮かべ、ボールを拾い、帰って行った。




オリ主がとんでもない人になりそう…。
安心してください。その内柔らかくなりますから。
近い内に神田 龍牙や舞の紹介も更新しておきます。
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