僕たちは怨霊と戦いながら廊下を走っていた。
「あー、もううっとうしい」
「一向に数が減らない」
もう、うんざりだと比奈丘さんが愚痴る。
「いや、これをどうにかするのは結界の基点を……あ」
こういった話は一般人の前では禁止だった。
「衛宮は妙に詳しいんだな」
「あはは、あー……」
どうやって誤魔化そうか。そう考えてると比奈丘さんが苦笑いを浮かべる。
「ま、衛宮が何していようがわたしには関係ないことだ。とりあえず今、この状況を把握できているのはお前だけだ」
「どうも、なんか僕の周りの人って理解在りすぎて怖いなぁ」
踏み込んでくる人が少ないとも言えるかもしれないなぁ。
「そうでもないだろ。我が強いやつしかいないと思うがな、明乃然り悠里然り日暮然り」
「あはは、そうかな?」
我が強いとはまた違う気がするんだけどなぁ。
「だろ。しかも根っからのお人よしときた。心底……憧れるな」
「……そうだねー。僕もそう思うよ」
それは同意する。人間って絶対に成れないものに憧れるんだよね。
「よし、その基点とやらを探すか。衛宮、場所くらい分かってんだろ」
「うん、それは大丈夫だよ。それにしても、一箇所壊せばどうにかなりそうかな?」
むしろそうであってほしい。基点全部回るのはきついよ。
「全部壊せばいいだろ。一番近いのは何処だ?」
「比奈丘さんって思った以上に大雑把だよね」
なんだろう無気力系とは思ってたけどやるときは徹底的にっていうタイプだとは思わなかったよ。
「悪いか?」
「んー、強いて言うなら。少しくらい考えてね? 姉さんレベルで猪突猛進とは知らなかったよ」
姉さんって加減が分からなくなるとすごい事やらかすからなぁ。例えば中学時代のクレーター騒動とか。
「あれレベルはない」
「ううん、姉さんレベルだよ。どう考えても」
根底では似たもの同士だからこの二人って仲がいいんだよね。
「んなわけあるか」
喧嘩しながら走りつつ僕らは基点のある場所へと向かう。そこは学園の外れの雑木林の中だった。そこに結界と同じ魔力で構成された丸い鉄の輪がある。
「あった、あの出っ張ってる奴」
「了解」
比奈丘さんが引き抜こうと近づいた。
「あ、ヤバっ」
「っと、あぶね」
あ、事前に注意するの忘れたよ。
「耐性ない人間は弾かれるから」
「そういうことは早く言ってくれ」
僕は鉄の輪に近づいてそれの前にしゃがんだ。
「ごめん、これは僕が外すよ」
「ほいほい……」
比奈丘さんの返事が途中で切れたことに驚いて振り向けば、比奈丘さんは謎の黒フードのナイフを僕が渡したあのナイフで防いでいた。
「比奈丘さん?!」
「衛宮、お前はそれをどうにかしろ。わたしが相手をしておく」
「っ ごめん。頼んだ!」
正直比奈丘さんが心配だけどしょうがない。これを外さないことには不味いよね。
「やっぱ術式が特殊だ。姉さん絶対に力任せに壊してるよ……どうしよう」
鉄の輪の術式を調べて気が付いたんだけど時すでに遅しって奴?
「よし! ……って、あれ?」
加勢をしようと振り向いてみれば、謎の黒フードは無数の剣によって地面に縫い付けられていた。
「よー、明久。無事そうで何よりだぜ」
「広夢?」
なんでいるのさ。
「おう、それにしても大掛かりな魔術だよなー」
「広夢……」
僕が驚いている比奈丘さんを指差すと広夢はそっちを向いた。
「んー? ………あ」
「やあ、比奈丘さん」
広夢も固まった。あ、日向君一緒にいたんだ。
「お、おう」
「はぁ、まだやる気か?」
広夢はまだ動こうとした黒フードにいつの間にか取り出した剣を突きつけた。
「っ」
「なぜだろう、その力妙に見覚えが」
黒フードが息を呑む。それを聞きながら僕は気になったことを考えていた。何処で見たんだっけ?
「あ、そうだ。他の場所も探さないと」
基点探さないとこの状況どうにもならないよね。
「あ、それだったら俺たちが調べた」
「これだろ」
広夢がいつもの端末に学園の地図を出して見せてきた。赤い×印で四つ印がついている。
「広夢、空気読みすぎ」
「ん?」
どしたー? と首をかしげて聞いてくる広夢に苦笑いしか浮かばないのはなんでだろう?
「衛宮、前々から思っていたんだが日暮って何者だ?」
「あははは、ゴメン。僕もはっきりしたことは言えないや」
正直知ってることって少ない気がするんだよね。前世があって、アーチャーそっくりなサーヴァントの元マスターで、パソコンが得意で……これくらいしか知ら………いや、これだけ知ってたら結構知ってるってことにならない?
内心そんなことを考えながら犯人を魔術的拘束で縛り上げる。
「それにしても、こいつが犯人なのはいいとして。何のためにここまで」
「……主に僕のせいなんだよね」
まさかサーヴァントを手に入れるためにマスターに襲撃をかけようっていう過激な魔術師がいるとは思わなかったよ。一応ケイネスさんの依頼ではその魔術師に雇われた護衛と他の魔術師の三人らしいんだけどこのフードの人からは魔術の気配がしないから多分護衛の方だね。
「いや、こいつらのせいだろ」
広夢が言い切った。いつも思うけど、そのざっくり感凄いよなぁ。
「日暮たちは理由知ってるのか?」
「まあ、さわりはな。さて、どうすんだ明久」
「一応協会に引き渡せって言われてるけど、正直面倒なんだよね。そういうわけでして」
僕は黒フードの頭に手をかざした。別にこれだけでどうにかなるとかじゃないけど、さっき縛るときに事前準備は済ませてるから大丈夫。
「よっと」
少しだけ魔力を込める。するとフードは倒れた。
「何をしたんだ?」
比奈丘さんが僕に聞いてきた。細かい作業をしながら僕は答える。
「ざっくりいうと記憶を消したんだ。この人妙な能力持ってるけどこっちの人間じゃないみたいだし」
魔術師とかじゃなくって超能力者の部類らしい。ついでに言うなら結界張った術者でもないみたいだし。
「まじか。それなのにこんな騒動に力かしてるのか?」
「みたいだね。そういうわけなんで、記憶を消したんだよ……ま、一部分だけーとか凄いこと出来ないから一か月分丸まるだけど」
それ以上のピンポイントとなると聖堂教会とかに頼まないと無理なんだよね。いや、姉さんは出来るのかな?
「それでも凄いだろピンポイントだ」
「そう? とりあえず他の壊しにいこうか。姉さん無理やり壊してるかも」
てか絶対壊してるよ。さっき分かったし。
「壊すと不味いのか?」
「一つ正しくない方法で壊すと全部壊さないと解除できなくなるんだ」
で、僕が正規の方法で外したにも関わらず結界は解除されない。
「うわ、面倒だな」
「見事に誰かが一つ壊してるみたいでどうにかしないと」
さて、移動するかと話し合っていると比奈丘さんが顔をしかめて僕の方を見る。
「衛宮、何か凄い音してないか?」
あー、僕も聞こえてるよ。
「だな。なんでだ?」
「こっちに近づいてきてる?」
広夢も日向君も同じように訝しげな顔をしてる。
「あ、いや。まさか………」
僕が言い切るよりも先に轟音が近くに来た。そして、僕らの目の前に黒塗りの大型バイクが止まる。見覚えがありすぎるんだけどこのバイク。それに乗っている黒コートに黒ヘルメットの二人組にも妙に見覚えが……。
「明久、無事かい!」
「全く、坊やは慌てすぎだよ」
二人組がヘルメットを取るとそこから現れたのは見慣れた黒髪くせっ毛のくたびれた男の人と銀髪の美女、つまりじーさんとナタリアさんだ。
「「……なんでさ?!」」
僕と広夢が同時に叫んだ。そして、僕と広夢が顔を見合わせる。
「……なんでさ」
僕はもう一度呟いてしまった。なんで広夢までそう言うのさ。一瞬、自分とダブったよ?
次回で大団円? そうなるのかは不明です。
てか最終章と銘打ってるけど最後になりそうにない詐欺
グダグダかつ迷走気味ですが、もうしばらくお付き合い下さい。