バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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後703時間


第二幕

 

重大な戦争(タイムセール)を無事に勝ち抜いた僕は戦利品をスーパーの袋に入れて家へと帰ってきた。

 

「ただいまー」

「ようやく帰ってきたか」

「んー、とりあえず今日の料理当番は僕だったから……って、あ」

 

つい弟が遊びに来ているような感じで喋ってからおかしいことに気が付いて前を見れば、白髪に焼けた肌、服装は黒のインナーとズボンに赤い外套の拾った人がいた。僕がぽかんとしてしばらくして彼の方から尋ねてきた。

 

「どうかしたのかね?」

「いや、目 覚めたんですね」

 

いやー、よかった。どういう経緯かなんて知らないけど蔵の屋根に激突して地面に叩きつけられていたみたいだから目を覚まさないかと思ったよ。

 

「いや、いきなり何を言い出すんだね。私の正体を看破しておいて」

「?」

 

僕が首を傾げれば彼が驚くようなことを言った。

 

「だから私がエミヤシロ……」

「え、士郎なの?! え、魔術かなんか使ったの? でも、士郎の魔術は投影だけだし外見が変わるような品じゃないし、投影焼けくらいなら考えられるけどそれなったら元には戻らないし、昨日は普通だったよね?」

「…………」

 

墓穴を掘ったと言わんばかりの顔をした彼を見て何かあるなって思った。

 

「……とりあえず説明を求めます。はぐらかさないでね」

「ああ」

 

                    ☆

 

「ふーん、つまり貴方は士郎の未来の可能性の一つってことですか?」

「ああ、そう考えてくれるとありがたい」

 

まるでゲームのような話だと思った。たくさんある選択肢で未来が変わる、まるでマルチエンディング形式のゲームだ。僕も一緒に分岐点に立たされている気分なんだけど。

 

「で、自分のような未来になってほしくないから殺すと」

「ああ」

「それ、矛盾してません? 貴方が士郎を殺したとしたら貴方の存在は消えてしまう。なのに士郎は貴方に殺されている。おかしいですよね?」

 

何時か家族と一緒に見た映画を思い出した。一人の青年がタイムマシンを開発した科学者と一緒に過去へ行ってしまう話、青年の母が本当なら父親に惚れているはずなのに、なぜか青年に惚れてしまい過去が変わってしまうという科学者と青年の会話のシーンがあったはず。

 

「…………確かにそうかもしれない。しかし」

「でももしかしもないよ。あんた馬鹿じゃないの? 殺す以外にだって選択肢はあるはずだ。士郎がここで死んだらどうなる。遠い将来に士郎に救われる人たちが救われなくなるかもしれない。僕はだからと言って世界の抑止力になれなんて士郎に言うつもりはないよ。『正義の味方』に憧れて何が悪い………ごめん、自分勝手な意見だったね。うーん、とりあえず殺すって考えるのは止めようよ。多分さシロウは疲れてるんだよ。少しくらい休んだって誰も文句は言わないよ? しばらくのんびりしたら? そうすれば答えが見つかる……かもしれないじゃん」

 

そこまで言ってから僕はちょっと後悔した。士郎は『正義の味方』なんて真面目に目指していないって勝手に思い込んでいたけどそれは間違いだったのかもしれない。

 

「………マスター」

 

目から鱗が落ちたかのような顔をして、士郎の未来の可能性だと名乗る彼は僕を見た。

 

「え? マスターって何?」

 

別に何か契約するようなことしたっけ?

 

「む、知らないのか?」

「えっと、別に使い魔召喚したわけないんだよね。しかも英雄と………英雄? ……英霊、聖杯戦争、サーヴァント、マスターえっと………?」

 

じーさんこと養父である衛宮切嗣や養母のアイリさん、サーヴァントであるセイバーなどの話が頭の中でぐるぐると回る。えっと、何だっけ………?

 

「そこまで単語を知っているなら大丈夫だと思うがね」

「あー、思い出した。あれか、街中で夜にやる傍迷惑戦争」

 

そうだよ これだ。九年前に行われたって言う冬木市を舞台に聖杯という名の願望機の奪い合い。結局その願望機は重大な欠陥が発見されて聖杯戦争は停戦となった……だったはず。

 

「私としてはその解釈に驚いたのだが」

「そんなものでしょ。大体さ、魔術の秘匿とか根源とか面倒だし。自分の研究が出来ればそれでよし、お上の目に留まらない程度に頑張りますか これがポリシーだから、それに僕はただの魔術師だし」

 

魔術師ってどうして人間を人間とも思わないような行動がとれるのか不思議でならないよ。大体魔術にそこまで興味ないし。

 

「そこまで割り切る魔術師も珍しいと思うがね」

「まー、生家は緩い家系だったし。引き取り先はむしろ魔術には触れさせてくれなかったしね。『普通』の価値観はあるつもりだよ? むしろがっちがちの魔術師が理解できないね」

 

彼に笑いかければ彼も苦笑した。彼も魔術師に苦労させられた身なのだろうか?

 

「まあ、凛の奴に言うと怒られるけど」

「ん? 遠坂凛を知っているのか」

「幼馴染だよ。どっちかっていうと弟か姉さんの方が仲いいけど」

「そうなのか」

 

一応『士郎』なんだし凛のことも記憶にあるんだろうなぁ。ま、とりあえず

 

「今日の夕飯作らないとね」

「その程度であれば私がするが?」

 

お昼の弁当で負けてるので意地でも作りたいんだけど

 

「今日は僕が作るよ。あ、そうだ 何て呼べばいい?」

 

流石にシロウって呼ぶわけにもいかないだろうし。

 

「ああ、忘れていたな。私はアーチャーのクラスだ」

「了解、じゃあ聖杯戦争が終わるまでよろしくね。アーチャー」

 

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