電車を降りて目的地である合宿所へ向かう。目の前には旅館かと思うくらいの大きな建物があった。
「おお、凄い」
「思った以上に大きいわね」
「……旅館」
「くぁー、確かに大きいな」
全員で思ったことを言い合いながらロビーへと向かった。そこには引き締められた体に浅黒い肌、黒髪をポニーテールにしたスーツ姿の女性が立っていた。
「あら、あなた達」
「西村先生」
もちろん西村先生だ。ここで生徒の集合具合を確認してたらしい。あー、ぼくらバラバラだもんね。
「Fクラスは殆ど集まってるわよ。後、居ないのは衛宮と木下と島田と日向と日暮の五人ね」
「バス組だけか」
電車よりバスの方が時間かかるもんなぁとか思ってたら後ろから声がした。
「おや、明乃ではないか」
「あれ、秀吉……ってアキと日暮君は?」
居るはずの二人が居ない。どうなってるんだろう?
「アキヒサは家族の用事を済ますために途中で降りて後で合流することになってる」
「ヒロは面白がってそれについていったみたい。まあ、いつものことだから気にしないでほしい」
驚いた。アキの方はちょっと想像がつくけど、日暮君、面白そうだからって一緒についていくって。
「え? そうなの」
「うん、止めようとは思ったんだけど止められなかった」
☆
まあ、そんなこんなで部屋の場所を教えてもらったぼくらは部屋へときていた。Fクラスの女子は全員一緒ならしい。とりあえず荷物を置いてぼくらは一息ついた。
「はぁ、落ち着く」
「本当に金掛けてるわね」
「……無駄に広い」
だよね。結構広いなーなんて考えていると鈴原さんが言った。
「それはこの部屋が六人しかいないからじゃ」
「そうかもな。確か八人で一つの部屋だったはずだ」
彩夏がそう言うなら正しいか。ぼくらが話していると夢路が声をかけて来た。
「そんなことどうでもいいわよぉ。お風呂いきましょう?」
そういえばお風呂どうなってるのやら。
「あーお風呂か、えっと時間は……」
~合宿所での入浴について~
・女子ABCクラス…20:00~21:00 大浴場(女)
・女子DEFクラス…21:00~22:00 大浴場(女)
・男子ABCクラス…20:00~21:00 大浴場(男)
・男子DEFクラス…21:00~22:00 大浴場(男)
・Fクラス木下秀吉…21:00~22:00 個室風呂④
はい?
「何があったのさ」
「あらぁ、これでいいんじゃないのぉ」
夢路、お前は感覚可笑しいから。隣で同じく冊子を見た悠里が眉間にしわを寄せている。
「違和感以外ないわよ。何で木下だけ別になってるのよ」
「……男子からの要望、それから一部女子からも」
神海、何処からそんな情報得たの?
「なんでよ?」
「木下の見た目の問題じゃないのか?」
鈴原さんがそう言えば、彩夏が返す。あ、なるほどね。
「……あー、木下 姉によく似てるものね」
「なるほどね」
全員が納得したその時だった。ノック音がして誰かが入ってきた。黒髪のベリーショート、日暮君だ。
「あー、俺もこの部屋なんだけど」
えええええ?! 全員の声が一つになった瞬間だった。
☆
どうにかバイクを回収して、バイクに乗ってこちらへ来た僕らは西村先生に部屋の場所を聞いて、部屋へとやってきた。広夢とはもう別れている。
「やっほー、着いたよ」
扉を開けてみれば全員がこちらを向いた。
「お、アキヒサ間に合ったか」
「ギリギリじゃが間に合ったの」
二人が安心したような顔をした。
「ヒロは?」
「え、普通に女子部屋だよ。部屋割りにもそう書いてあるし」
てか、その時点でみんな気が付きなよ。
「……女子部屋パニックになってないといいな」
だから、なんでみんな気が付かなかったの?
「見事にいつものメンバーだね……ってあれ? 須川君?」
「よう、俺もこの部屋だ。よろしくな」
須川君も同じ部屋か。
「そっかー、そういえばお風呂ってどうなってるの?」
バイク運転したから早めにシャワー浴びたい。
「ん? えっと……」
~合宿所での入浴について~
・女子ABCクラス…20:00~21:00 大浴場(女)
・女子DEFクラス…21:00~22:00 大浴場(女)
・男子ABCクラス…20:00~21:00 大浴場(男)
・男子DEFクラス…21:00~22:00 大浴場(男)
・Fクラス木下秀吉…21:00~22:00 個室風呂④
秀吉の表情が一気に凍りついた。
「……なぜじゃ」
「うん、何がどうしてそうなった」
「わかるわけがない」
分かるわけないじゃないか。そう言っている横で日向君と須川君が少しだけ考えるような表情をしてから呟いた。
「理由分かった気がする」
「俺も」
「なぜじゃ!!」
秀吉が問い詰める。
「「どう見たってその女顔だよ/ろ」」
「……ごめん秀吉、フォローできないや」
「ごめん、俺も……」
秀吉はとてもさみしそうな表情をした。そうだよね。前髪上げるとか、ちょっと目つきキリッとしてみるとか、涙ぐましい努力によって(当時からの比較で)女に見られる率は減ったのにこの状況とかね。
「てか、風呂の時間もうそろそろじゃないか?」
「あ」
色々と衝撃で飛んでた。
「支度全然してないぞ」
「ワシだけ分かれるのか……」
☆
お風呂に行ってみる。すると見事に誰も居なかった。偶然だろうけど他の人が居ない時間帯に当たったらしい。
「しっかしまあ、お金かけてるねー」
大浴場の感じはもう銭湯の域だ。周りをしげしげと眺めてた日向君が頭を縦に振ってから言った。
「だね。俺の学校もそこそこ施設に金掛けてる方だけど、ここまでじゃない」
「月海原学園だったか? 確かあそこって西欧財閥が資金出してるって言う……」
「西欧財閥って……あー、あの無駄に金持ちの」
メイガスとはちょっとばかし対立しているあそこか、まさかウィザードの方だとは思わなかったけど。
「衛宮の発想は正しい、後ウチの会長で西欧財閥の次期当主はバカだ」
「それもどうかと思うぞ」
須川君のツッコミが入った。うんそれは言い過ぎじゃないのかな?
「俺、大きい風呂って初めてかも」
「え、南って銭湯とか行ったことないの?」
「せんとう? 何だそれ」
僕が聞いてみたら南はすぐに首を傾げた。日向君が驚いた顔をした。
「銭湯知らない日本人っているんだな」
「あー、島田は帰国子女だからな。日本文化にはなじみが薄いんだよ」
南って基本見た目は日本人寄りだからね。少し肌の色は白っぽいけど。
「へぇ、そうなんだ。頼むから斜め上で解釈しないでほしいな」
日向君からは哀愁が漂っていた。
「ようは皆で入る大きなお風呂みたいなものだね」
「へぇ、はじめて知ったよ」
ルンルンで服を脱ぎ始める南、僕も脱がないとなぁとか思ってるとコトリと変な音がした。
ん? 振り返れば南の足下に黒い箱のようなものが落ちていた。
「何だこれ」
「南、触らないで、多分これ隠しカメラだ。下手に触って指紋着いたらまずい」
「え?!」
「ちょ、男風呂に隠しカメラって……」
須川君が慌てる。どう考えたって盗撮目的ですありがとうございました。呆れながらもみんなに指示を入れる。
「他にもあるかもしれないからみんなちょっと大人しくしてて」
「おう」
「分かった」
その後、隅々まで探してみたところ最初のも含めて三つ見つかった。どんだけ男の体に興味あるんだよ。
「どうすんだコレ」
「……はぁ、とりあえず誰か先生呼ぼう。できるなら男の先生がいいなぁ」
何でこんなことになったのやら。はぁーあ、なんでさ。
☆
お風呂の時間になったのでぼくらは大浴場にやってきた。脱衣所に来てみれば誰も居ない。
「あれ、見事に誰も居ないや」
「ラッキーじゃない。広いお風呂に入れるわよ」
「……もしかしたらほとんどが入った後」
あー、それの方が正しいかも。お湯ぬるくなってたりして。
「そっちの方が正しい気がするね」
「早く入りましょうよぉ」
「はぁー、ねむ」
「おいおい寝るなよ」
すぐに入って出て、もう寝たい。電車旅は楽しかったけど慣れないことはするべきじゃないよね。疲れた。
ガサガサと服を脱いでいると、コトンと音がした。黒い箱のようなものだ。
「ん?」
「……明乃、触らない。それ、盗撮用の監視カメラ」
「だな。下手に指紋着けて証拠能力がなくなるのも惜しい。言峰、触るなよ」
「へ?」
カメラ? 何で。
「……他がないか探す。全員下手に動かないように」
「土屋、俺も手伝う」
「なんでカメラなんて……」
「誰かが盗撮しようとしたんじゃないのぉ?」
それが一番正しいけどさ。犯人絶対に男じゃないよね。ここ男女別に分かれてるし、先生が一人ずつ見張りに立ってるし。
「はぁ、なんでこうなったのさ」
ぼくはアキじゃないけど言いたくなった。なんでさ
凸ってきた女子をボコボコにする話はよく見るけど、たまには明久たちが見つける立場でもいいと思うんだ。無駄にこの手のことのエキスパートが居たことに気が付いてしまった今日この頃(内訳:明久(衛宮家(てか切嗣)的な意味で)、神海(言わずもがな)、日暮(正義の味方の相方は正義だけじゃ勤まらないぜ))
恒例の閑話休題アンケートなのですが、感想欄でアンケートするのがアウトだと判明したので活動報告の方に設置しました。アンケートはそちらの方からどうぞ。こちらには結果だけを表記、もしも感想の方に投票が入ったとしてもそれは頭数に入れませんのであしからず。