バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第七問

 

ここはFとAクラスの自習室とはまた違う自習室、隅の方で男子が話し込んでいた。

 

「は? 覗き」

 

少年は思わず聞き返した。自分をここまで引っ張ってきた彼はいきなり何を言い出したのか。

 

「ああ、突っ込んだ連中が居るだろ。アレに便乗すればキツイ処分なしで覗きができるはずだ」

「だが……」

 

勧誘された方は躊躇する。当然だろう、やろうとしていることは犯罪だし、もしも大事になれば自分の居場所も無い。

勧誘している方が一枚の写真を取り出した。随分と色気のあるその写真は顔が見えていない。

 

「これ見てみろよ」

「こ、これは……」

 

口の中に唾が溜まっていくのが感覚的によくわかる。それほどにこれは素晴らしいものだと彼の本能が告げていた。勧誘している方が同意を求めるように笑った。

 

「な?」

「……ああ、これは」

 

ゴクリと唾を飲んで少年は悪魔の誘いに乗ってしまった。

 

                    ☆

 

その頃、FとAクラスの自習室にて、いつものメンバーが固まって自習をしていた。雰囲気はかなりだれているようだが。

 

「はぁー自習って飽きるよね」

 

明乃と似たような表情をしてペン回しをしている明久、その解答用紙はやはり大体埋まっていた。そのつぶやきを隣で聞いた日暮が同意する。

 

「そうだな。三日連続自習はきつい、てかマンネリ化するよな」

 

あーつまんねーと日暮は愚痴をこぼす。最終日前なんだしもっとこう、イベント的なのないのかよとか呟いている。さらにその横に居た秀吉も疲れているようでシャーペンを置くとべたっと机に突っ伏した。

 

「正直、ワシも飽きたのじゃが……」

「明日までの辛抱だ。ヒデヨシ」

 

南はため息をつく。全員マンネリ化した自習に飽きているようだ。

そんな空気も読まずに須川が問題用紙を持って明久の方へ来た。

 

「はぁ、ここの問題わかんねーんだが」

「あー、そこね。この絵は『テニスコートの誓い』だね。フランス革命の時に起こった平民の集会だよ」

「なるほどな。ありがとよ」

 

明久から聞いた回答を即座にメモする須川、その様子を見た明久が言った。

 

「はいはい、てか須川君が一番まじめにやってるね」

「そうか?」

 

たぶんだれているメンバーよりは真面目にやっているだろう。

 

                    ☆

 

自室に戻る明久の肩を誰かが叩く。振り返ってみれば、黒髪黒目のどこにでも居そうな男子生徒だった。明久が振り返ったのを確認すると男子生徒は話し出す。

 

「おい、ちょっといいか」

「誰、君? てか、何か用?」

 

とりあえず明久の知り合いではない。そのまま、男子生徒が明久に言った。明久の発言なんて聞いてないようだ。

 

「単刀直入に聞くが覗きやらないのか?」

「は?」

 

明久は驚いた。それもそうだろう、普通やらないだろそれ。明久は心の中でツッコミを入れた。

 

「だって、お前写真で脅されてんだろ?」

「……頭どうかした? それとも今冬木でちょろっと流行ってる電波の類?」

 

ここ最近、明久や実家の周囲で電波のような行動をとる人間が増えているのだ。実は転生者の類なのだがそれを明久が知るわけがない。転生なんてものがホイホイ起こってるとか普通は考えないだろう。

 

「チッ 脅迫状は姉の方に行ったのかよ」

「……脅迫状? 姉さんに脅迫状?」

 

明久の雰囲気が変わる。何というべき一気にどす黒くなった。雰囲気が変わった明久に怖気づきつつ聞いた。

 

「な、何だよ」

 

怯えた様子に毒が抜けたのか明久の雰囲気が戻る。冷え切ったような雰囲気になった空間も一気に緩んだ。明久が苦笑する。

 

「いや、何でもないさ。とりあえずお断りします。そんなのやったらマジで家族に怒られるし、それに信用してくれてる人たちに悪いしね」

 

明久にとって家族や友人が世界そのものなのだ。家族や友人に失望されたりしたら本気でへこむだろう。明久の発言を聞いて男子生徒は舌打ちをしてから言った。

 

「いい子ちゃんぶりやがって」

「っ」

 

そのままドンと壁に押し付けられる明久、背中の痛みに顔をしかめている明久に男子生徒が何かを言おうとした。

 

「い「ちょーっとまった!!」

 

しかし、それは後ろからの声に遮られた。

 

「……姉さん、広夢?」

 

明乃と日暮だ。どこかへ向かう途中ならしく、明乃は女子用の赤いジャージ、日暮は持ち込んできた自前の青ジャージを着ている。

 

()()()の弟になにやってんのさ!」

「ゑ?」

「明久、古典じゃねーから」

 

日暮のツッコミが冴えわたる。明久はと言えば明乃の発言にポカンと口を開けていた。それもそうだろう、普段はぼく口調の姉がわたしなどと言ったのだから。

明乃はそんなのも気にせずに男子生徒に笑う。

 

「はいはい、君さー。なに道の真ん中で覗きの勧誘なんてしてるのー? 先生に見つかったら補習もんだね。これ」

「まあ、私はタイミングがよかったのかしらね」

「げ、鉄人!?」

 

男子生徒は鬼の教育指導教員である西村先生の顔を見るとすぐに逃げ出した。それを西村先生が追いかけた。

明久が息を吐いた。ホッとしたようだ。そして明乃のところまでやって来た。

 

「はぁ、助かったよ」

「うん? なんで、わたしたち双子じゃない」

「ところでその口調どうしたの? 何ていうか昔に戻ってるっていうか……」

 

明久の脳裏に在りし日の姉の姿があった。

 

「昔って? これ罰ゲームなんだ。女の子っぽい口調にするっていうの」

「……そっか」

 

明久の表情が少しだけ沈んだ。明乃は気が付いておらず、先ほどまでやっていたマインスイーパーの話をしていた。日暮がこそっと明久に言う。

 

「なんか寂しそうだな」

「あ、えっとなんでもないよ?」

「……そうか」

 

日暮は少しだけ同情するような表情をしてから、眉間にしわを寄せちょっと頭痛がしているような表情になった。

明乃がちょっと首を傾げて聞いてきた。

 

「ねぇ、聞いてる?」

「あ、うん」

 

明久はちょっと慌てた。真面目に聞いていなかったのだ。どうしようとか思っていると日暮がフォローを入れる。

 

「はぁ、言峰は引き運はいいのに、何であそこまで一発目から爆弾見つけるんだ?」

「アハハハ……知らないよ。むしろぼくが知りたいね」

 

明乃が思わず素に戻っていた。気が付いた明久が注意を入れる。

 

「あ、口調」

「あ、えっと内緒でね?」

「おっけー」

「分かった」

 

三人はそのまま別れて明乃と日暮は罰ゲームの缶ジュースを買いに行くのを実行にし、明久は自分の部屋に戻るために道を急いだ。

 





僕っ子にそれなりに理由があってもいいんじゃない?
そんなわけで無駄にシリアス…いや、シリアルはいりまーす。

転生者設定……要りましたかね?


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