[約束されし悪運EX]
明乃と青い大型犬は冬木の町を歩く。明乃は妙に喧騒が聞こえることに首を傾げていた。
「それにしても今日の冬木は妙だなぁ。無駄に戦闘意欲のある人間が多いし、なんかメガネの鬼とか居るし」
あれはまさしく鬼だった。まあ、ラスボス系少女には勝てなかったようだが。明乃の背後にゆらりと誰かの人影が出てきた。足下の犬は少しだけ唸った。
「メガネですか!!」
その声にびくっとして振り向けば淡い紫の髪に同じ色の髪の長身の女性……桜のサーヴァント、ライダーが居た。どうやら戦闘服ではなく私服のようだ。それにしてもスタイルいいなぁとか考えながら明乃が返する。
「うわっ……ってライダーさんか、どうしたの?」
「それよりもメガネです! メガネ!」
鬼気迫る顔で迫ってくるライダーにたじろぎながら明乃は返す。
「びっくりした、なんか凛がメガネが外れないとかでそこら中の人叩きのめしてるんだよ」
「そうですか……遠坂凛が……」
ふふふ、まるで悪役のような笑い方をしながらぶつぶつとライダーがなにやら呟いている。その様子に目を丸くしているとライダーを追ってきたらしい緑色を基調とした服装の青年がやってきた。凛のサーヴァント、アサシンだ。彼も私服姿らしく普段の戦闘服とは違いマントの代わりに緑色の上着を着ている。
「はぁ、いい加減にしてほしいんだけどねぇ。お嬢がなにやって用が俺には関係ないでしょうに」
「あれ、緑のほうのアサシンさんも居たんだ」
明乃は少し驚いた。あまり接点のないと明乃が思っていた二人だったからだ。
「まあな。よくわからねーが、ライダーのメガネが盗まれたんだと」
「へぇ、そうなんだ。ところでだけどウチのメンツ誰か見てない? 家に帰ったら誰もいなくてさー」
犬が何かを訴えるように吠えるが、その意味を理解できる人間がここに居るわけも無くスルーされた。
「そうかい。だが、すまんが俺は何も知らないな」
「ちぇー、ランサーさんにはパスすら繋がらないしどうしたものかなぁ……」
パスは何やら混線しているようで、呼びかけてみても応えてくれないのだ。
「遠坂凛は一体どちらに行きましたか?」
「あー、凛なら桜ちゃん似の女の子を襲撃しにあっちへ行きましたよ?」
そういえばあの子たち何者だったのかな? ドッペルゲンガーとか? などと内心首を傾げながらライダーに伝えれば。
「なっ、桜が!? こうしてはいられません。急がねば!!」
「あ、ちょ、ライダー?! ああ、悪い。嬢ちゃんまたな!」
ライダーはかなりの速度で駆けて行ってしまった。アサシンが慌てて追いかける。そんな二人の様子を見て明乃はくすりと笑ってから呟いた。
「………なんだかんだで緑のアサシンさんは面倒見がいいと思うなぁ。ねー、わんちゃん」
犬に問いかければ同意するように犬も頷いた。そうだよねーとか笑っていた明乃にさらに別の声がかかる。
「あ、あの! 明乃さん」
振り向けばそこには学生服姿の桜が居た。髪の長さも普段見慣れている長さだ。こっちがぼくの知っている方の桜ちゃんだなと思いながら明乃は不思議に思ったことを聞いた。
「あれ、桜ちゃん? ってどうしたのそのメガネ……てか今日平日じゃん」
「ちょっと前に、姉さんがいきなり襲ってきて……あ、今日は半日なんです」
そういえばそうだ。自分たちは特別に課題付の授業休止だが、凛や桜、士郎の通う学校が同じようになっているわけがない。なのに何でここに居るんだ? その答えは桜からすぐに返ってきた。
「ところでなんですが姉さんはどちらに?」
「んー、あっちだよ。それとそのメガネ、ライダーさんのらしいよ」
「ありがとうございました」
桜は足早に去って行った。その様子を見送ってから明乃は家族を探すために魔力の濃そうなところを探し始めた。
☆
[ウィーアー「ノット」ヒーローズ]
冬木の商店街を抜け、観光というか土地案内みたいな感じになってきた二人は先ほどからちょくちょく見かける喧嘩に首を傾げていた。
「うーん、今日は妙に戦闘意欲の多い人いるなぁ」
「だな。なんでこんな状況になってるんだ?」
そこに間の抜けたアナウンスが聞こえてきた。
『えー、こちら、毎度おなじみ聖杯戦争、聖杯戦争でございます。敗れた夢、忘れていた野望などございましたらお気軽に―――――』
まさかの内容に明久が愕然とする。
「なんでさ」
「ここまで堂々と公言していいのか? 秘匿とかあるだろうに」
「うん、一応秘匿ってあるはずなんだけど。てかこのアナウンス聞いていると竿竹屋思い出すんだけど」
「あー、確かにバイクの廃品回収車みたいな感じだな」
それ以前の問題で聖杯がそんなひょいひょい見つかった方がおかしいのだが。
「とりあえず気になるから探しに行こうかな」
「面白そうだし俺も着いてくわ」
「そう、いいの? 観光じゃなくなるけど」
今日の約束は観光案内なのだ。ここから先は明久の判断で動く騒動探しなのだ。それは約束には含まれていない。
「ま、大丈夫だろ」
「それならいいけど」
☆
[月の裏から狂気爛漫]
三人は冬木を行く。アーチャーが観光案内のガイドのように細かく説明しながらのんきに町を歩いていた。
「それにしてもなんていうか、なーんか嫌な雰囲気ありますね。この町」
「バカなことを言わないでくれ、連続幼児誘拐とかホテル倒壊とか謎の海魔事件とか大災害とかないいい街じゃないか」
「なんか無駄に具体的ですね。アーチャーさん」
「む、あそこにいるのは………」
三人の目の前をベリーショートの黒髪の少女とハニーブラウンの髪の緩い雰囲気の少年が通り過ぎようとしていた。アーチャーが一人の方を見て叫ぶ。
「マスター?!」
黒髪の少女がギギギと擬音が付きそうな感じにこちらの方を向いた。顔は青ざめている。
「……あ、アッチャー?」
「なんか違うよそれ! アーチャーじゃないの?!」
緩い雰囲気の少年が合っているようで妙に頓珍漢なツッコミを入れた。親しげな様子にアーチャーの表情が見る見る間に消えて行く。
「貴様は誰だ。
声はまるで絶対零度のようだ。その様子に気が付いた黒髪の少女が少年を横抱きにして走り出した。
「逃げるぞ明久」
「え、ちょ うわっ?!」
住宅街を駆け抜ける早さはかなりのものだ。
「待てぃ!!」
アーチャーも負けじと追いかける。もうそれは敏捷Aくらい行きそうな勢いで。そして二人が残された。
「……あー、行っちゃいましたね」
「行ってしまったな」
ぽつんと二人は道の真ん中に取り残されている。キャス狐は首を傾げながら言った。
「これ、追いかけるべきなんですかね?」
「ふむ、追わねばあるまいな。アーチャー以外にこの町を知っておるものが居ないぞ?」
「はぁ、追いかけましょうか。てかアーチャーさん何時の間に拗らせてたんでしょうかねぇ」
自称「呪殺系ヤンデレ」巫女狐は三人の中で一番まともなはずのアーチャーの変貌にため息をついた。
悪運EXよりも幸運A++の方が妙な目に遭ってる件
紅茶さんは広夢の中ではアッチャーさんでキャラ確立しているみたいです。CCC紅茶でプレイなう。とりあえず「ハローッワーーーーークッ!!」に吹いた。キャス狐の方がよっぽど常識人になってきたようなないような……あるぇ??