バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第五問

 

ここは冬木のとある寂れた神社、普段は人間なんて絶対に居ない。そんなところに明乃と犬は来ていた。明乃は盛大にため息をついてから言う。

 

「とりあえず、本日無駄に冬木がおかしいってことは納得したよ」

 

前に居る人影を睨みつけてさらに続けた。

 

「……で? なにやってるんですか。親父もギル様も」

 

そう、目の前には明乃の養父言峰綺礼と教会によく泊まりに来るほぼ居候状態の遠坂時臣のサーヴァントギルガメッシュがそこに居た。二人の周りには色々と変な武器が落ちている。

 

「ほう、最後の相手はわが娘ということか」

「実にいいではないか。この娘は実に気骨があるからな」

 

二人は楽しそうに笑った。その様子に少し嫌な感じを覚えながら明乃は聞いた。

 

「本当に何やってんですか」

 

本当にこんなところで何をやっているのだろう。明乃は不思議で仕方がなかった。

 

「いや、聖杯に『ランサーに死ぬまでホットドックを食べ続けろ』という願いをかなえてもらおうと考えてね」

「なにしょうもないことに聖杯使おうとしてんですか?! てか、ランサーさんはぼくのサーヴァント!! ぼくの許可なしにそういうこと止めてもらえますか?!」

 

聖杯になんか変な願いを願うと知って明乃は激怒した。犬も同じように吠える。その対象が自分のサーヴァントであるランサーならばなおさらだ。明乃の言い分が終わると言峰は真顔で言った。

 

「なに、親子とは争うものだろう?」

「言ってること訳わかんねーし。そんな壮絶な親子関係お断りです!!」

 

多分それって「姉妹は殺し合うもの」じゃね?

 

「まあ、言い分は戦いが終わってから聞くとしよう」

「……はぁ、結局こうなる羽目になるんだ。ランサーさんマジでどこだよ」

 

せめてランサーが居れば戦力としてこっちの方が優位かもしれないのにと明乃は愚痴をこぼす。それを耳ざとく聞いたギルガメッシュが口を開いた。

 

「ん? 駄犬であればs」

 

ギルガメッシュの言葉を遮るように言峰が言い出す。多分、わざとだ。

 

「では、始めるとしようか」

「勝算なくてもやらなくちゃいけないときはあるってことで……親父、覚悟!」

 

黒鍵を構えた両者の戦いが切って落とされた。

 

「中々にできるようになってきたな」

「どーも、流石に十年やってたら板につきますよ」

 

地味に口論にもならないような会話をしながら戦いは続いていく。しかし、言峰の方が一枚上手であり、経験も深かった。

 

「とは言え、まだ未熟か」

「はっ、器用貧乏に言われたくありませんね!」

 

隙を突かれて明乃は黒鍵で服と地面を縫いつけられてしまった。明乃がしまったという感じの顔をする。

 

「っ」

 

言峰はにやけそうな口を押さえながら言った。

 

「ふむ、それなりに善戦するようにはなったがここまでだな」

「……」

 

黒鍵が振り下ろされそうになった時、別の黒鍵が飛んできた。

 

「ちょおおおおっと待った!!」

「「?!」」

 

二人が驚いて声のした方を見れば、茶色のウェービーな髪をポニーテールに纏めた学生服姿の少女が黒鍵を片手にびしっと言峰に指を向ける。

 

「女に手挙げるなんざ笑止千万! 見過ごせるか!」

 

思わずその場に居た全員がぽかんとなる。

 

「え、だれ?」

「……」

「む、よく見れば雑種(マスター)ではないか」

 

その言葉でギルガメッシュの存在に気が付いたらしく、少女が驚いた顔をする。

 

「……へ、ギルガメッシュ?」

「はぁ、はぁ、カナちゃん置いていくなんてひど、ってえ?!」

 

何やら茶髪のツインテールの少女がやってきたのだが、その少女を抱えて少女が逃げ出す。

 

「っ、何であいつがここに居るんだよ?!」

「え、ちょ ええええ?!」

 

二人が去った後をギルガメッシュは面白そうに眺めてから言った。

 

「ほう、我から逃げるというのか、つくづく傲慢な雑種(マスター)だな」

 

そのままギルガメッシュは二人を追いかけに行った。あまりの光景に明乃と言峰は固まっていたが、先に明乃の方が正気に戻った。

 

「………!」

「っ」

 

服と地面を縫いとめていた黒鍵を抜き取り、明乃は言峰に不意打ちを仕掛けた。上手くいき、今度は明乃が言峰の首筋に黒鍵を添える。

 

「不意打ちかもしれないけど……勝った?」

「まあ、そういうことにしておこうか」

「…………っ」

 

やった、親父に勝てた。と喜びたいところだが本人の居る手前自重した明乃だった。

 

                    ☆

 

そのしばらく前、ザビエル道場にて

 

「花札勝負ねぇ……僕は割と好きだけど他の人は大丈夫?」

「俺はあんまり縁がないけどまあいいぜ。それにしても何で花札勝負なんだ?」

「……才能だけに頼れなくて運も重要になってくる勝負だから。頭良ければ勝てる勝負じゃつまらないじゃないか」

 

日向が意味深なことを言えば日暮は納得したように頷いた。明久はいきなりどうした?と首を傾げている。

 

「なーる。そちらさんは? 事情については花札しながら説明するか」

「別に構いませんよ。なんかわけありみたいですし」

 

キャス狐は普通に頷いた。

 

「奏者ぁ」

 

全然構ってくれない己のマスターに赤セイバーは涙目になった。

 

「はぁ、そういうことなら受けて立とう」

 

少し機嫌は悪そうだがアーチャーも同意した。

花札をしながら現在の状況を説明していく。三回ほどの勝負(内一回こいこい)が終わって大体の説明が終わった。

 

「というわけ、ここに居る俺たちはこの世界の住民 二人が知っている俺たちよりも少しだけ生きた人間なんだ」

「ふーん、時空間の歪みって奴ですか。私はご主人様と一緒に最下層を攻略している際に巻き込まれたので確定済みですがお二人は?」

 

赤セイバーがちょっと考えるようなしぐさをしてから言った。

 

「余たちのところは……アーチャーが広夢を誘拐した直後だな」

 

赤セイバーの発言を聞いた日暮の顔色が悪くなる。

 

「……うげ、よりにもよってそこかよ。絶賛トラウマじゃねーかよ」

「広夢、大丈夫? 顔色凄いけど」

「マスターに触るな」

 

明久が日暮を心配すればアーチャーがキレた。少し顔色が戻った日暮が言いだした。

 

「……まあな。そういや、アーチャーが結構な時間戻らなくてどうにか逃げ出したんだよな……あ」

「あ」

「つまり今この時間にその時のヒロは逃げてると」

 

つまりこの展開も含まれての俺たちの時空なんだなと日向は納得した。

それから、日暮がアーチャーの方を向いて聞いた。

 

「ああ、多分な。てかさ、アーチャー 何で俺の事閉じ込めようと思ったんだよ」

「……」

 

アーチャーは目をそらして口を開かない。日暮が少し不機嫌そうに言った。

 

「黙秘は禁止、俺はお前相手に過ぎたことは過ぎたこととか言えるほど精神面強くねーよ。重ねて言う、何で俺の事閉じ込めようとした。いや、一時的にとはいえBBと取引してまで俺を裏側に閉じ込めようとした?」

「っ バレていたのか」

 

BBとの取引までばれていたとはとアーチャーは言う。日暮は呆れたように返した。

 

「当然、あんな芸当お前ができるなんざさらさら思ってねーよ。お前の得意は投影魔術と家事だけだろ?」

「なぜそこで家事が出てくるのかを問いただしたいのだが?」

 

日暮が少し小馬鹿にするような笑みを浮かべて言う。

 

「は? 何ではこっちの台詞だよ。仮にも三回戦まで一緒に居たんだぞ。つーか、英霊になっても変わってねーんだな。バカ宮」

「その名前で呼ぶなよ。ヒロ……って、は?」

 

条件反射的に答えてみてからふとアーチャーが気が付く。日暮は軽く手を挙げて笑った。その目は何故かオッドアイに変わっている。

 

「よー、バカ馴染み」

「ええええ?!」

 

にゃぱっと笑った日暮にアーチャーは素で驚いた。その様子を見てた二人がひそひそと話し出した。

 

「もしかして、あのアーチャー何も知らないで閉じ込めようとしてたとか?」

「うん、そう。この後で判明する話だから、むしろアーチャーがいきなり言い出した」

「全部が全部繋がってるんだね。平行世界って本当にあるんだ」

 

明久も妙に納得したらしい。そんな外野の事なんて露知らず、日暮はアーチャーに尋ねた。

 

「はぁ、俺としては幼馴染としてもマスターとしても失望したぜ。拉致って軟禁とかないわー」

「っ それは!」

 

アーチャーが一瞬反論するように畳を叩いて中腰になるが冷静さが戻ったらしくすぐに姿勢を元に戻した。

 

「それは? 結局本当のところは全然聞き出せなかった訳だし、今教えてくれよ」

「……マスター…お前は三回戦で負けたんだ。お前が表側に戻ったら……」

 

アーチャーが言いよどんだ。日暮はそれに呆れながら言った。

 

「死ぬ、だろ? はぁ、バカらし。俺は別にかまわなかったんだよ。もう願うこともなにもなかった。お前が普通に英霊やってるの見て、それだけで十分だったんだよ。それに、一応俺のバックアップは地上にあったから別にあの俺が『死んだ』としても普通に地上じゃ生きてたぜ?」

「……広夢、ちょっと口挟ませてもらうけどそういうことじゃないと思うんだけど」

 

明久が花札をしながら口を挟んだ。

 

「は?」

 

日暮は驚く。明久はさらに続けた。

 

「はぁ、あのさ『目の前』の広夢に死んでほしくなかったんだと思うんだけど。地上とかそんなことは関係ない。目の前に居る自覚は無くたって自分の大切な人に居なくなってほしくない。そういうことじゃないの? 少なくとも、僕がアーチャーの立場に居たとしたらそう考えるけど?」

 

明久が言えば、日向も続けた。

 

「それは俺も思った。どこかにバックアップがあるからって目の前で誰かが死ぬっていうのは見過ごせない。もしもそうだったとしても俺も手を伸ばそうとする」

 

明久と日向とアーチャー、三人の視線を受けた日暮が顔を赤くして叫んだ。

 

「っ お前ら全員お人好し過ぎだよ! はぁ、何で俺の周りにはお人好しが多いんだ?!」

「広夢も十分お人好しだと思う。死んでるの知ってたのに何で表に戻るのに尽力したんだ?」

 

日向が聞いた。表に戻ったら死ぬというのになぜ表に戻ろうとしたのだろうか?

 

「……俺さ、閉じ込められるのとか大っ嫌いだって話はしたよな」

「うん、それは聞いた」

「それだけで十分な理由になるぜ?」

 

普通はならない。明久がちょっと考えるしぐさをしてから言った。

 

「広夢ってあれだよね。『情けは人のためならず』を素で実践している人っていうか、目的のためなら手段は問わないタイプ?」

 

いや、そういうわけじゃないぜ? と日暮はそれを否定した。日暮がちょっと考えてから話す。

 

「そういや昔『正義の味方が9を救って1を殺すっていうなら、俺はその1を救うために9を利用してやる』とか言った。まあ、そういうこと……だからさ、1(じぶん)の心を救うために9(みんな)の脱出作戦に今俺は乗ってるんだ。死者の戯れってことでわかってくれよ……シロウ」

 

急に話題を振られたアーチャーは焦る。

 

「……っ、わかったよ……ヒロム」

 

よかったよ。と日暮は笑った。そうこうしている内に花札勝負が終わったらしい明久が嬉しそうに万歳しながら言った。

 

「よし、こっちの勝ちだね!」

「あ、花札すっかり忘れてた。悪い」

「だと思った」

「ここまで引きがいい人間に初めて会いましたよ」

「よもやここまでとはな」

 

「花札勝負も終わったことだし戻すよ」

 

視界が少しずつノイズまみれになる中、日暮が言った。視線はおぼろげになりつつあるアーチャーの方を向いている。

 

「……そうだ。全然言ってなかったな」

「は?」

 

アーチャーはポカンとした。日暮はそんなこと構わずに言った。

 

「『お前に逢えてよかった。お前がサーヴァントでよかった。お前がお前らしくあってくれてうれしかった。俺はお前の事が……』後は向こうの俺に聞いてこい、いいか?」

「はぁ、わかったよ。じゃあな」

「おう」

 

視界は完ぺきにノイズに消えた。

 

「あー、疲れた」

「あ、居ないし」

「お疲れ様、時空の歪みなくなったみたいだからもう、大丈夫」

 

                    ☆

 

言峰に勝利した後、明乃は謎のころしあむに居た。

 

「え、ここどこ?」

 

明乃は周りを見渡す。

 

「はーい、お疲れ様!」

 

そこに道着姿の藤村大河がやってきた。

 

「え、藤村さん?! てか、何やってるの?」

「はい、聖杯だよ」

 

虎の模様が入った魔法瓶が差し出された。

 

「いや、なんで?!」

 

色んな意味でツッコミを入れたくなるのも道理だろう。

 

「えー、なんか願い事してよ。ね? ね?」

「えー、じゃあ『ランサーさん見つかりますように!』」

 

ずっと見つからないし。と明乃は軽い気持ちでそう願った。

 

「うわっ」

 

虎の魔法瓶が光ったかと思うと。

 

「……あれ?」

「お、戻った」

 

元に場所に居た。ランサーも一緒だ。

 

「あ、ランサーさん 凄い、あの虎の魔法瓶効いたんだ」

「お、おう?」

 

何かずれたことに喜ぶ明乃を見て困惑するランサーだった。






終わったぁぁぁぁ。今回完璧雰囲気小説ですみませんorz

ランサー獣化の謎解けなくてすみませんでした。
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