バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第十問

 

シロウが見覚えのある夫婦剣じゃなくって、一丁のスナイパーライフルを投影する。あれ? 確か銃の投影って難しいはずじゃ。驚いているとシロウが口を開いた。

 

「悪いがムーンセルでもオレの友人に手を出すのは承知しないな」

 

目の前には攻性エネミーの大群が出現している。これをどうにかするって……よし! 俺は声を張り上げる。

 

「シロウ! 宝具の開帳を!!」

「ああ、ヒロ 魔力は任せた!」

 

あの俺にとってはもう懐かしくなった詠唱が聞こえる。そして、詠唱が終われば、只剣が突き刺さる赤と機械の荒野が現れる。はずだった。

 

「あれ、なんか違う気が……?」

 

俺が知ってるのって確か空は赤くて炎が舞う感じだったのに、ここは雲一つもない青空が広がってる。シロウが俺の方に顔を向けて笑う。

 

「お前が頑張ってくれたおかげだよ。それじゃ、行くぞ!!」

「おう!!」

 

理由はよくわかんねーけど、シロウが幸せそうならそれでよし! そう結論付けて俺は戦闘に集中した。

 

                    ☆

 

シロウが粗方の攻性エネミーを倒した頃、固有結界は解けてしまった。それから広がった空間を見て驚く、電子の海に懐かしさの残るアリーナの道が出来ていた。

 

「!」

 

驚いていると生徒会室から通信が入った。

 

『これくらいBBちゃんにかかれば楽勝です!』

 

得意そうなBBの声が耳に入ってきた。どうやら作戦は成功したらしい。

 

「お疲れ様、BB」

「シロウ、もう大丈夫だぜ」

「ああ」

 

声をかければ、シロウが最後の攻性エネミーをちょうど倒したところだった。それを確認した後、生徒会からまた通信が入った。

 

退出(ログアウト)するわよ』

『皆さん、お疲れ様でした』

 

                    ☆

 

あれからかなりの数の召喚獣を倒したけど倒せども倒せども召喚獣は現れる。ウチの学校って普通の規模の学校だよね? 何でこんなに出てくるの? なんて考えながら無心で倒していたわけだけど、召喚フィールドが消えると同時に召喚獣たちも消えた。ふぅ、よかった

 

「お、全部消えた」

「……よかった。手持ち、もうなかった」

 

隣にいた神海が呟く。手持ちって多分投げる物のことだよね。うわぁ、危ないなぁ。

 

「え、ホント? うわぁ、ギリギリだったんだね」

「……教室に戻る」

 

神海がぼくの手を引っ張った。その感触でようやく終わったって実感が生まれる。よかった、これでもう終わりなんだよね。ぼくは笑顔で頷いた。

 

「うん!」

 

                   ☆

 

ふと、辛く悲しい夢を見た。

 

「うぅ……あれ?」

「あ、目()めたか」

 

気が付けば視線は天井、自分は仰向けに寝ていて、隣からは誰かの声がした。横を見てみれば緑の長い髪に白い肌、緑の目をした……。

 

「あれ、比奈丘さ……ってうわぁぁ、ごめん」

 

何で僕、比奈丘さんと手つないでるんだ?! 慌てて比奈丘さんの手を放した。

 

「別にかまわないさ」

「ここって仮眠室のベット?! 起きない――うわっ」

 

仮眠室のベット占領するわけにいかないよ。と慌てて起き上がろうとしたけど、頭がふらついてバランスを崩してまたベットに横になってしまう。

 

「寝とけ、寝とけ。お前ずっとうなされていたんだからな」

「いや、でも……」

 

僕が使ってるわけにもいかないし。そう返そうとしたら仮眠室の扉が開いた。南と秀吉が入ってきた。僕の方を見るとホッとした顔になった。それから二人が嬉しそうな顔で喋りだした。

 

「アキヒサ、目覚めたみたいだな!」

「よかったのじゃ」

「南、秀吉も……ごめん」

 

色々と迷惑かけたみたいだと僕が言うと二人はそろって首を傾げた。

 

「なぜ謝るのじゃ」

「そうだよ。明久頑張っただろ?」

「あはは、姉さんの方が頑張ったと思うよ?」

 

僕なんかより姉さんの方が戦ってたし。僕なんてほとんど何もしてないよ。

 

「ううん、アキヒサも頑張った。だから休んでていいんだよ」

 

南が僕に笑いかけてきた。

 

「……そうかな?」

 

そう聞くと比奈丘さんも秀吉も南も笑った。

 

「そうだろ、頑張った奴には休みはあってもいいだろ」

「そうじゃ」

「ああ、お疲れ様アキヒサ」

「……うん、ありがと」

 

そのままもう一回眠りについた僕だった。今度は多分いい夢見れるんじゃないかな。

 

                   ☆

 

Fクラスの教室で悠里が立っていた。多分今の今まで指示を出していたんだろうね。本当に悠里は凄いよ。

 

「ふぅ、無事解決できたみたいね」

「ただいまー」

 

悠里に声をかければ悠里はあら、とぼくらの方を見る。悠里はぼくを上から下まで見てホッとしたように笑った。

 

「明乃、怪我……してないわね。神海も大丈夫かしら」

「………平気」

 

それからもう一回、ぼくらが大丈夫そうなのを確認してから、悠里はため息をついた。

 

「全く、なんたってこんなことに巻き込まれたのかしらね」

「アハハ……ごめん、ぼくが運悪いから」

 

大体こういったトラブルに二人が巻き込まれる原因ってぼくだよね。苦笑いして答えたら悠里も神海も首を横に振った。

 

「そこじゃないわよ。アンタがもってくる悪いことは大体後にいいことに繋がるもの」

「……同感、明乃のせいじゃない」

「そう?」

 

そうだとうれしいけど、それ単なる慰めだよね。とりあえず、と悠里は言ってからちょっと物騒な目つきになって言った。こういう時って結構怒ってるんだよなぁ。

 

「犯人結局誰だったのかって話よ」

「さあね? とりあえず教室無事で何よりじゃない?」

 

後の事は先生たちに任せよう、いつもは西村先生とか熱心な先生以外そんなにまともな仕事してないんだ。こういう時くらいは仕事してほしいなぁ。

 

「ま、それもそうよね」

 

                   ☆

 

研究室では安堵と歓喜の渦が巻き起こっていた。研究員の一人が学園長に報告へ来る。

 

「報告します。フィールド全消滅、召喚獣の暴走も止まっています」

「はぁ、やっとこさ回復かい……ん?」

 

安心した学園長の端末がメール受信を伝える。学園長が確認してみれば「再度、今回のハッキング事件の犯人について」という件名だった。学園長は内容を確認すると苦笑いする。

 

「……こりゃまた安直なのを」

 

また、メールの着信音が聞こえた。

 

「ふむ」

 

メールを確認する学園長、すると学園長にしては珍しく純粋に驚いたような顔をした。

 

「おや?」

 

さらに添付ファイルを見て学園長はにやっと笑う。その顔は何処か黒幕染みていた。

 

「ほほぅ……はぁ、そりゃ問題さね」

 

                    ☆

 

遠い海に溺れる夢を見た。

 

「……ん」

「あ、ヒロ 起きた?」

 

目を開けて、顔を上げればパソコンの画面が見えた。声を反芻して誰の声か思い出す。

 

「ウミ? あー、接続(ダイブ)解除して……えっと?」

 

いつも接続解除した直後って記憶があいまいになるんだよな。ぼうっとそんなことを考えていると画面の中から声がした。

 

『全く、君はその接続を解除した際に記憶が飛ぶのは少し気を付けた方がいいんじゃないか?』

「え?」

 

驚いて画面を見直せば、そこにはデフォルメ姿のシロウが居た。ちょうどアバターみたいな感じの、何でだ?!

 

『どうかしたのかヒロ』

「ええええええ?!」

 

                    ☆

 

それから一日後、学園長室にして。

 

「どういうことなんですか! 学園長先生?!」

 

学年でも1・2を争う成績優秀者、夢路恵利が学園長直々に呼び出された。そして、彼女は渡された通知について学園長に詰め寄っている。

 

「どうもこうもないよ。アンタがこの学園に及ぼした影響はとんでもないものさ。本当だったら退学ぐらいさせたいものだけどそれは出来ない。だから、これが妥当な処分さね」

 

そう、学園にハッカーを招きこんだのは夢路だったのだ。もっとも夢路自身が直接招いたわけではない。彼女がしたのはハッカーにメールで依頼をすることだけだ。それから学園長の端末に日暮を犯人に仕立て上げた偽証拠の詰まったメールを送りつけるようにも指示した。あくまで指示しただが、十分にその証拠はジナコによって揃っており言い逃れは出来るはずがない。

 

「そんなっ」

 

夢路が持っている通知には以下の事が書かれていた。

 

 

――― 2年Fクラス 夢路恵利 この者を観察処分者とする。

 





そんなわけで完全俺得話終了です。多分今度は閑話休題を挟んで本編に戻りますのでご安心ください。

超絶賛スランプですみませんでしたorz この章終えるのに何日かかったことやら。


閑話休題アンケートの結果はザビエル道場にてお知らせします。
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