バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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「それぞれの海」


第二問

僕が玄関を開けて、中に入ろうとしていると。リビングから話し声が聞こえた。

 

「え? 海かい」

「はい! 丁度ウチで海の家やってるところがあって。切嗣さんがの都合があっていたらで構わないのですけど……」

 

あ、タイガー来てたんだ。これはご飯多めにしないとまずいかな。

 

「海か……」

 

士郎の呟く声がした。冬木って港町だから遊べる海岸ってあんまりないんだよね。おかげで僕らにとっては海ってちょっと縁遠いものだよなぁ。

 

「え? キリツグ海行くの?! イリヤも行きたい!」

「え、そうなの? 舞弥さんも誘いましょう!」

「それでしたら他の方も誘うべきではないでしょうか。アイリスフィール」

 

女性陣の盛り上がる声が聞こえる。僕はアーチャーに促されて、玄関を閉めて中へと入った。うわー涼しい。食べ物の買い出し、アーチャーが担当だったんだけどどう考えたって一人じゃ疲れるだろうからって一緒に出かけたんだよね。道中が暑すぎてまいったけど。

 

「ただいまー……って何やってるの?」

「マスター、冷凍食品の類が溶けかかっているぞ」

 

アーチャーが忠告をしてくれた。あ、本当だ。

 

「え、あ。本当?! 士郎、手伝って!」

 

リビングに顔を出して、士郎に呼びかければ士郎はすぐに来てくれた。

 

「あ、うん。兄さん、今度海行くって」

「え、本当? うーん、海かぁ。水着あったっけ?」

 

一応聞いていた話題だけど盗み聞きは悪いよねってことで適当に誤魔化した。アーチャーの分の水着どうしよう。

 

「あはは、みんなで行くことになりそうだけどいいかな?」

「はい、おじいちゃんに伝えておきますね」

 

そんなわけで僕たちは海へ向かうことになったのだった。

 

                    ☆

 

一方、その頃。遠坂邸にて、和服姿の白髪に若干ただれた右半分の顔の男性とひげの生えた白のワイシャツに赤いベスト姿の男性が玄関先で会話をしていた。

 

「お前の家って暑いな。冷房ないのかよ」

「雁夜、冷房ってなんだい?」

 

中に入りながら和服の男性、間桐雁夜が赤いベスト姿の男性、遠坂時臣に尋ねた。

 

「そこから始まるのかよ?!」

 

あまりにもずれた発言に雁夜は呆れる。

 

「いつもは別荘に行くからね。夏場はこっちにいないことが多いんだ」

「へぇ、別荘ね。これだから金持ちは」

 

ジト目で雁夜が時臣を見れば、時臣はきょとんとした顔で雁夜を見つめた。

 

「え? 雁夜の家にもあるもんじゃないのかい」

「へーへー、後で兄貴にでも聞いてみるか」

 

                    ☆

 

「え、別荘ですか?」

「うん、調べてみたら十年ほど行ってないけど確かにウチにもあるみたいでさ。別荘の掃除とかもかねてみんなで出かけないかい?」

「へぇ、ウチにそんなものがあったなんて驚きだね」

「カリヤが向かうというのであれば私も向かいますよ」

「じゃあ、今度……あれ? 衛宮さん?」

 

雁夜の携帯電話が急に鳴り出す。番号を見てみれば、それは聖杯戦争で関わるようになった衛宮切嗣だった。

 

「はい、もしもし?」

『あ、間桐かい?』

 

やはりそれは衛宮切嗣だった。めったなことでは連絡してくることのない彼がどうして電話をしてきたのだろう、と内心首を傾げながら雁夜は話しはじめる。

 

「どーも、どうかしました?」

『いや、実は藤村さんからのお誘いで海に行くことになってるんだけど一緒にどうかと思って』

「あー、海ですか。丁度今、海沿いにある別荘の掃除の話してて」

 

なんていうタイミングの合わなささなんだろうなと雁夜は内心考えながら返事をする。

 

『へぇ、別荘なんてあるんだ。流石は御三家の一角だね』

 

その言葉には全く含みもなく、感心しているだけのようだ。

 

「いや、あんたも御三家だろ」

『僕は入り婿だからね』

 

すると急に声が途切れて、携帯を落としたかのような音や襖の開くような音、風が通り抜ける音が聞こえてきた。それからしばらくして、誰かが携帯を拾ったようで声が聞こえてくる。

 

『あ、雁夜さんすみません』

「明久君?」

 

衛宮家の長男、明久だ。慌てたような感じで少し早口に喋る。

 

『いや、ちょっと家が立込んでて……あ、ちょ、凛?!』

「明久君?!」

 

明久のその言葉を最後に、ツーツーツーと電話がきれたことを示す音が聞こえてきた。携帯を耳から離して、画面を見る。すると、通話終了の字が画面に出ていた。

 

「………切れた」

「おじさん、どうかしたんですか?」

 

一連の様子を見ていたらしく桜が不思議そうに聞いてきた。

 

「いや、何か衛宮さんところも海行くみたいで誘われたんだけど、てか凛ちゃん?」

 

明久が最後にそう言っていたような気がする。

 

「え、姉さんがどうかしたんですか?」

「あー、何かよく分からないや」

 

とりあえず別荘にいく日にちを決めようという話し合いになった。

 

                     ☆

 

さて、バイト先にて。私こと聖花楠は級友で、同じくバイト仲間の遠野志貴と話をしていた。ちなみにこの店の名前はアーネンエルベ、特異点と呼ぶ人間もいる知られざる秘境的な店だ。

 

「は? 海」

「うん、ウチにプライベートビーチがあるらしくてさ」

 

そういえばこいつの家は財閥だったな。

 

「へぇ、さすがブルジョア。私には縁がない」

「いや、頼む一緒に来てくれないか」

「は?」

 

家族水入らずとかその辺の話だろうに。

 

「いや、ちょっと……な」

「どうしたんだ」

 

何か苦虫潰したような顔をしている。

 

「俺、彼女いるんだ」

「はあ、それはおめでとう」

 

うわ、ついにこいつにも春が来たかと思ってしまった。

 

「それで、ちょっと修羅場が」

「私には関係ない」

 

こいつの八方美人癖は昔からだろう。呆れながら拭いていたグラスを拭き終わった食器を置く場所へと置いた。

その時、ケータイが揺れた。何かあったのか?

 

「ん? メール?」

 

メールが来ていた。内容を確認する前に差出人を見てみれば、王様の二文字……もちろんギルの(強制)登録のせい。

 

「……遠野」

「どうしたんだ。聖」

「海行くわ」

 

海に行こう、現実逃避というか現状逃避したい。

 

「急に?!」

「あ、さつき誘うけどいい?」

 

私の最大の癒しである彼女を連れて行かないわけがない。むかつくことに遠野に恋をしている彼女は簡単に釣られてくれるだろう。

 

「別に構わないよ」

「ついでに妹や友人も招くけどいいか?」

 

思えば、イナリやハルにシズ、みんなと出かけたことなんて片手で数えられそうなくらいだ。

 

「まあ、別に構わないよ」

「よし、休み全部奴に潰されるとかマジ勘弁」

「??」

 

ギルガメッシュから逃げるのは難しいだろうけど、それでも現状逃避しなけりゃやってらんないよ。





前回から閑話休題にはサブタイトルつけてます。他の閑話休題にもつける予定
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