それからしばらくして、とある砂浜に銀髪赤目の美女、アイリスフィールが白いビキニに黒いパレオ姿で歩いていた。見る人見る人が驚いたように振り向く。
「ふふっ、たまには遠出もいいわね」
「はい、しかし良かったのでしょうか。私まで水着を買っていただいて」
その隣を金髪の凛々しい碧眼の少女、セイバーがスポーティーな黒の水着姿で歩いている。こちらも人の視線を集めていた。
「いいわよ。気にしないから」
「そうですか、ありがとうございます」
談笑をしながら歩く二人だったが、その前に茶髪の男性と黒髪の男性の二人組が現れた。二人はピアスにネックレスなどいわゆるチャラいと呼ばれるような外見をしていた。
「おーおー、そこを行くお姉ちゃんたち。今暇か?」
「俺たちとお茶しない?」
どうやら典型的なナンパらしい。するとアイリスフィールはにこやかに笑った。
「あら、すてきなお誘いね」
「何を言っているのですかアイリスフィール」
にっこりと笑うアイリスフィールをセイバーは慌てた様子で止めに入る。だが、涼しい顔したアイリスフィールはさらりと言った。
「でも、ごめんなさいね。買出しに行かなくちゃ行けないの」
だから貴方たちのお誘いは無理ねとアイリスフィールは去ろうとする。追いすがろうとするナンパ二人組だが、それよりも先に誰かが声をかけた。
「アイリ」
完全に泳ぐ気なんて見えない和服姿の切嗣だ。切嗣の姿を見つけたアイリスフィールはにっこりと笑う。
「キリツグ! どうしたの? イリヤと一緒にパラソルの下にいるんじゃなかったの?」
「あー、うん。ちょっとね」
「アイリスフィール、それにキリツグまで、あの……買出しはいいのですか」
シロウやアーチャーも待っているやもしれません。とセイバーは言う。
「あ、そうだったね。急ごうか」
「一緒に行けるなんてうれしいわ」
そう言うと、切嗣の腕にアイリスフィールが抱きつく。そのまま三人はその場を去ろうとした。
「……なんだったんだよあのおっさん」
「ああ」
その場に残されたナンパ二人組が呟く。するとアイリスフィールとセイバーが顔だけをナンパ二人組へと向けた。
「「…………」」
「「ひぃっ」」
その顔はにっこりと笑っていたが背筋が冷えるようなものだった。多分、息子二人が居たらこう言うだろう。あの母と姉貴分にしてあの姉ありと。
☆
いっぽう、砂浜の別の場所。こちらでは一騒ぎ起こっていた。
「……失せなさい、この蛆虫共が」
「正直、君たちに興味ないんだよね。失せろ」
白髪に碧眼の身体のラインが出るような黒の水着を着た少女、カレンと茶色の髪に茶色の目、白地に水色、ピンクといったカラフルな色の水玉模様の入ったフリル付きのセパレートの水着を着た少女、明乃が追いすがってくるドM共を片っ端から伸していた。最初はただ単なるナンパを罵倒していただけなのだが、ドンドンと変態が寄ってくるようになったのだ。
「あ、姉さん! カレンさん!」
「ちょっと待ちなさい! アキヒサ!!」
少し遠くから声がしたかと思うと、黄緑の半ズボンタイプの水着に水色のパーカーを着た茶髪の少年、明久と銀髪赤目に白のワンピースタイプの水着を着た外見は幼い少女、イリヤスフィールがやって来た。
「よう、嬢ちゃん達、ようやく見つけたぞ」
また別の方向から呆れたような声がして、青髪に赤目、精悍な顔つきのアロハシャツにズボン姿の青年、ランサーがやって来た。
「あれ? アキ! それにイリヤさん、ランサーさんも?」
次々と現れた知り合いたちに驚愕する明乃。
「はぁ、嬢ちゃん勝手にいなくなるなよ」
主従コンビはそのまま会話を続ける。一方、明久はカレンに話しかけていた。
「そっちも海に来てたんだね。意外だよ」
「ワタシたちだけです。遠坂家に誘われたので」
「そっか、この前は急に凛がやってきてびっくりしたよ。しかも理由が暑いって」
アレはアレでちょっとした騒動だったなぁ、と明久は遠い目をする。
「あの家には冷房がありませんかから、蒸し風呂かと言わんばかりですから」
「うわ、本当? せめて冷暖房は完備しなよ」
普通の家庭だと冷暖房の普及率って半端ないのにと明久は呆れる。
「いえ、冬場はストーブがあるそうで」
「それは暖かそうだね。夏場は全く持って意味ないだろうけど」
むしろ暑いでしょうに、とさらに呆れればカレンは頷きながら自分の知っている情報を教えた。
「ええ、普段は別荘へと避暑に出かけるそうで」
「さすがブルジョア……あれ? もしかして、凛も来てる?」
「遠坂凛なら来てますよ」
他の方々は来てないですけど、とカレンは付け加えた。
「そっか、探したほうがいいかな?」
「もう! アキヒサ、勝手にいなくなっちゃ駄目でしょ! パラソルのところに戻るよ!!」
追いついたイリヤスフィールがぷりぷりと怒りながら、明久の手を取り引っぱっていく。
「え、ちょ……ごめん、じゃあね」
明久はこうして去っていった。カレンが視線を明乃の方へ戻せば。
「ランサーさんありがと、連中全然引き下がってくれなくってさー」
見事にドM共を伸したランサーに明乃は苦笑しながら礼を言っていた。
「それにしても下手なナンパが多いな」
「やっているのは自分も一緒でしょうに、香水匂ってるよ」
何処の美女をナンパしようとして失敗したのさ、と明乃はにやりと笑って聞いた。それを聞いたランサーは盛大に顔を引きつらせる。
「げ、嬢ちゃん妙に感覚が鋭いよな」
明乃に気づかれたことよりも明乃の死角になっているところから冷笑を浮かべるカレンが恐ろしかったからだ。
「それはどうも、カレン姉さんいこっか」
ランサーさん一旦荷物のところ戻るよーと明乃に言われて慌てて着いて行くランサーだった。
☆
「それにしてもしつこいナンパね」
「はい、姉さんよくあしらえますね。私一人だったら流されそうですよ」
海に来ていた黒髪ツインテールに碧眼、服装は赤いビキニタイプの水着にホットパンツを合わせた物を着た少女、凛とやや紫がかった髪に黒目がちの目、水着はパーカーに隠れてよく見えない少女、桜の二人はナンパを撃退しながら歩いていた。
「ふぅ、せめて知り合いの男子がいてくれたらなぁ」
「アサシンさんに荷物番任せたのは間違いでしたね」
「そうよね。あれ? 衛宮君?」
見慣れた赤銅色の頭を見つけて声をかければ、それは幼馴染の衛宮士郎だった。服装はオレンジの半ズボンタイプの水着だ。
「お、遠坂に桜?」
「あれ? 先輩どうしてここに?」
予定が合わずに誘えなかった衛宮家がなぜここに居るのかと二人は驚く。
「え、ああ。ここの海の家、藤村組の若い人たちがバイトしてるらしくてさ。この近くにあるコテージの宿泊券、爺さんが安く手に入れたんだって。そういう桜たちは? 爺さんが電話で誘ってたみたいだけど」
まあ、凛が乗り込んできた一件で色々とうやむやになったわけだが。
「あ、この近くにウチの別荘があって、そこのお手入れもかねて遊びにきたんです」
「そうなのか、あれ? 誰か保護者は?」
普段だったら誰かしら居るよなと士郎は周りを見渡す。
「それが、わたしたちが買い出しなのよ」
「そうか、俺が着いていこうか?」
ナンパとか大変みたいだしなと士郎は笑う。どうやら先ほどの二人の会話は聞こえていたらしい。
「え、いいんですか?」
「今、アーチャーの奴が荷物番だから俺、暇なんだ」
爺さんはアイリさん追いかけるし、兄さんは急に飛び出すし、イリヤはそれを追いかけるし、つまんなくって。と士郎は苦笑した。
「じゃあ、よろしく衛宮君」
「おう」
返事のない桜は、先輩と一緒に海とぶつぶつ呟きながらオーバーヒートしていた。
☆
一方、その頃。その砂浜付近にあるプライベートビーチにて。
「はー、海だな」
「海だねー」
ゆるくウェービーな茶髪を一人は編みこみで綺麗に、もう一人はポニーテールに纏めて、二人は体育座りで海を見ていた。波がいいよなーと二人は呟く。彼女たちはいろんな意味で上には上が居るということを更衣室で知ったのだった。そのせいで微妙にへこんでいる。
ちなみに、他の女性陣は色々とトラブって未だに宿泊場所である屋敷から出れないでいた。
「はいそこー、そんなところで現実逃避するなよ」
「ばーさーかー……」
赤い半ズボンタイプの水着を着た少年、シズが二人を現実に引き戻そうとするが、ポニーテールの少女、カナこと花楠は意味不明なことを呟きだした。
「カナ、落ち着いて。そんなさ、依存するのは止めたほうが……」
「やだ」
もう一人の青色の水着の少年、イナリが止めに入るが効果はない。そこにパタパタと足音がして、誰かがやって来た。茶色の髪をツインテールにした何処にでもいそうな少女、弓塚さつきだ。黄色いビキニタイプの水着を着ている。
「あ、カナちゃん。お待たせ!」
「あ、さつき! 水着似合ってるよ」
先ほど海で黄昏ていたとは思えないほどの復活ぶりだ。にっこり笑った笑顔がまぶしい。
「そ、そうかな」
てれるさつきを見ながら男二人はこそこそと話し始めた。
「……意外と男前だよね」
「それは認める。妹はああなのに、なんでああなる」
「いや、むしろなんであんな妹?」
そこ、何ウチの妹にケチつけてんだよ。と花楠は二人をにらみつけた。
途中からナンパ意味なくなっていた。
アイリさんは意外と無自覚小悪魔だなと思っている。異論は受け付けます。あくまで個人的にですから。
各人の水着姿は脳内補填すればいいかと。