バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第四問

さて、どうしてこうなったと花楠は呆れかえった。

 

「はぁー、がんばれよー」

 

気の抜けた声で目の前の状況を応援した。そこには多種多様な美少女たちが気合を入れて準備体操をしている。今回、このプライベートビーチに花楠を誘った遠野志貴との相部屋を獲得するためにビーチバレー大会を開こうとしているのだ。

 

「わたしも参加したかったのに」

 

花楠の親友であるさつきが不機嫌そうに口を尖らせる。

 

「だ、駄目だよ! さつきちゃん死んじゃうからね!」

「俺も同意見だ。止めておけ」

「僕も同じくかな」

 

ハル、シズ、イナリの三人が全力で止めにかかる。確かにそうだろう、どう考えても人外しかいないようなビーチバレー大会にただの人間であるさつきを参加させるわけにはいかないからだ。

 

「あはは…………」

 

渦中の遠野志貴は盛大に苦笑いしか出来なかった。ちなみにだが、頬には大きな手のひらの痕が着いている。取り合いの際に女性の胸が当たって嬉しそうな顔をしていたのを花楠に咎められたのだ。

それからしばらく、壮絶な打ち合いが続く。

 

「うわー、これプライベートビーチじゃなかったらヤバイだろ」

「目で追えないよ」

 

花楠とハルが眺めながら感想を述べる。

 

「これ、ボールよく潰れないよな」

「だな。どう考えてもあの頑丈さは普通じゃない」

 

志貴とシズが少々観点の違うところを話し合っている。そんなシズの肩を誰かの手が叩く。シズと気配に気が付いた志貴が振り返れば若干顔の赤いイナリが苦笑いしていた。

 

「うん、これはもう放っておいて中に入らない? 僕なんか頭くらくらしてきた」

「熱中症か? ほい」

 

話を聞いていたらしき花楠がよく冷えているらしきペットボトルをイナリに渡す。

 

「あー、ありがと。泳げないからなかなか海って楽しめなんだよね」

「大丈夫?」

 

ハルが心配そうに聞いた。それに答えるよりも先に花楠がイナリの肩を叩いた。

 

「ん」

 

花楠が己の太ももを示した。するとイナリは躊躇なくそこに頭を乗せる。

 

「ごめん。うわぁ……きもちい」

「ほいほい」

 

水で絞ったらしきタオルを花楠がイナリの額に乗せた。その様子を見ていた三人がこそこそと話し合う。

 

「……これで付き合ってないのか?」

「うん、付き合ってないよ」

「付き合うわけがねーよ」

 

志貴の疑問にハルとシズはばっさりいった。

 

「マジか」

「マジだな」

「本当だよ」

 

                     ☆

 

それからさらにしばらく、物凄い方向にボールが飛んでいくこともあったがそれでも打ち合いが続いている。

 

「おわんねーな」

「だねー」

 

先ほどはパラソルから離れていたさつきが戻ってきて花楠と一緒にぼけーと試合を眺めている。ちなみにさつきはイナリについては全く気にしていない。

 

「なんでまだ打ち合い続けられるんだろう? もう、人間業じゃないよ」

「そうだと思う」

「うん、ボールが目で追えないよ」

 

するとその時、剛速球が飛んできた。

 

「「あ」」

「へ?」

 

さつきに向かって。花楠は慌ててさつきを庇おうとする。

 

「さつき!」

「あたっ」

 

太ももに頭を乗せていたイナリが落ちた。

 

「……」

「カナちゃん?」

 

ボールをどうにかかわした二人だったが、花楠の様子がおかしい。さつきは困惑した声をかける。

 

「……………」

「いたた…………カナ?! ……ちがう、君は誰?」

 

じっとアルクウェイドを見つめる花楠にイナリも驚いたような表情を浮かべた。

 

「……はぁ、我が身体(マスター)が私を呼び起こさないように願っていたのに」

「へ?」

 

イナリが問いただそうとしたその時、二人のかなり後方にめり込んでいたボールが破裂した。

 

「っ」

「貴方は誰ですか? 話によっては………」

 

警戒をする他の面々、特に蒼髪に眼鏡の女性、シエルがそれこそ即殺すといわんばかりの殺気を見せる。それをただ一瞥しただけで花楠はアルクウェイドの傍にやって来た。

 

「久しぶりだな。姫君、今は狂気がないようで何よりだ」

「あら、貴方なの久しぶり~。相変わらずの狂いっぷりね、ってことはその女の子はあのときの小さなマスターさんなのね」

 

アルクウェイドは知り合いらしく、嬉しそうに笑った。花楠? は心底嬉しくなさそうな表情をする。

 

「そういうことだ。だが姫君、マスターに手を出すということはどういうことか分かっているのか?」

「貴方を敵に回す、くらいね」

 

別にリスクはないでしょうとアルクウェイドは笑った。

 

「いや、それ以上だ。あくまでここはお前の本拠地だが、それでも私は全力でお前を倒そう。ついでに言うなら厄介な守り手が憑いたようだからな」

 

花楠?はにやりと笑う、アルクウェイドは彼女の発言をさらりと流した。

 

「ふぅん、まあいっか。つまり私をまた殺すってことかしら?」

「もちろんだ」

 

花楠? はアルクウェイドの目を見つめた。するとアルクウェイドの口元にも笑みが浮かぶ。

 

「………うん、あの赤い剣士を連れたちっぽけなマスターと同じ目をしてる。でも、貴方はどうやって私を殺すのかしら」

「さあ? だが、マスターに手を出すということはそういうことだ。そこにいる娘たちも心得ておくがいい。この不肖『切り裂きジャック』はお前たちを解体することなどたやすいのだからな」

 

いつもの彼女とは違い、赤く黒ずんだ目がバレーボールをしていた面々を見渡した。それだけで他の面々はそこに込められた狂気を読み取り息を呑む。

パラソルの方で見ていた面々も雰囲気の変わりすぎた彼女に驚いていた。

 

「……ジャック、昔はあんなこと言わなかったのに」

 

唯一事情が飲み込めたイナリだけが小さくそう呟いた。

 

「えっと、カナちゃんどうしたのかな?」

「さ、さあ?」

 

さつきがイナリに尋ねたが、誤魔化すだけだった。花楠の頭が大きく舟をこいではっとなって彼女が頭を上げれば、普段どおりの彼女の目に戻っていた。

 

「……あれ? アルクウェイド?」

「ふぅん、貴女も結構大変ね」

 

その様子を見たアルクウェイドが驚いたといわんばかりに目を丸くした。

 

「カナちゃん!」

「あ、さつき。大丈夫? 怪我は?」

 

駆け寄ってきた親友に花楠は普段どおりに笑いかけた。

 

「う、うん。カナちゃんも大丈夫?」

「? 別に怪我なんてしてない」

「そ、それならいいんだ」

 

一体何があったんだ? と花楠は首をかしげるのだった。

 





バレーボールは途中で中断ということになったとさ。

花楠さんの元サーヴァント登場、ジャック・ザ・キラー。fakeの方です。アポクリのロリっ子じゃないんだ。
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