バカと冬木市と召喚戦争   作:亜莉守

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第二幕

Bクラスの代表、根本恭子さんがクラスに入ってくるなり、Fクラスに模擬試召戦争の申し込みをしてきた。模擬は珍しいよね。

 

「ふぅん、模擬試験召喚戦争ね」

「普通に試召戦争じゃないの?」

 

悠里さんと姉さんが根本さんに聞いた。根本さんはちょっとだけため息をついてから答える。

 

「まあ色々とね。Fクラスは見事にAクラスを倒したから挑むクラスはないのよ。だったらあたしたちのBクラスなら……って連中が多いの」

「つまりそういった連中への牽制ってことね。模擬なのは双方の遺恨を残さないためかしら」

 

あー、なるほどね。でもBクラスだったら向こうが勝つ可能性も少なからずあるんじゃ。

 

「ええ、これを機にAクラスの設備を……って考えなくは無いけど、負けるのは見えてるから止めておくわ」

「あら、そうなの。残念ね」

 

根本さんと悠里さんが会話してるんだけど、妙にきな臭い。

 

「うわぁ、二人とも悪役染みてる」

「………同意」

 

姉さんと神海さんが言い切った。

 

「何か言ったかしら? 明乃」

「ううん、なんでもないよー。あははは」

 

あー、うわぁ。

 

「姉さん、棒読みすぎっしょ」

「それにしても模擬試験召喚戦争か、俺たちよく知らないんだが」

 

いつの間にか近くに来ていた広夢が聞いてきた。あ、そういえば。

 

「あ、そっか。模擬は今年度は初だからね。ルール知らなくて当然か」

「うん、教えてほしい。知らないまま戦争に突入って言うのは困るし」

 

日向君も会話に加わってきた。この二人はこっちに来て一応まだ一年も経ってないよね。他の学年でも大きな戦争はあまり起こってないし知らないのも当然か。

 

「えっとね。模擬戦争って言うのは……」

 

模擬試験召喚戦争、通称は模擬戦争、もしくは模擬試召戦争。まあ、大体のルールは試召戦争と変わらない。でも一つだけ大きな特徴があって、総合科目、もしくは決められた特定の科目で戦うことになるんだ。教師の拘束時間を減らすためもあるらしいね。

 

「なるほどな。つまり練習試合ってところか」

「うん、点数の消費自体は戦争が終わったら解除されるから平気だよ。その代わり点数補充の期間はない」

 

これも特徴かな。

 

「それだとその直後に挑まれたときに不利じゃない?」

「うん、召喚獣の操作は精神力使うからね。十日間は戦争を挑むのも挑まれるのも禁止だし、免除になるんだ」

 

そうでもしないとやってられないとか苦情が出たとか出ないとか。

 

「ふむ、本番よりは期間が大幅に短いんだな」

「まあ、十日あれば相手に合わせて勉強することも可能だよね」

 

それを言ったら、二人が納得したような顔をした。

 

「あ、なるほど」

「あー、敵情視察ってことか?」

「それもあり、今回みたいに上位クラスが下位クラスへの牽制にも使えるし。他にも思いつくものがあれば、何かできるかもしれないね」

 

僕が思いついたのはこの程度だけどもっと思いつける人が居たら、もっと有効活用するかもしれないね。

 

「本当に何でもありなんだね。本物の戦争に近いかも」

「うん、使えるものは何でも使えってね。ウチの第一次試験召喚戦争がいい例でしょう?」

「確かにな。アレはいろいろと奇想天外だったな」

 

二人が遠い目をしてる。いや、一応あれって非日常の部類だよ?

 

「うん、まさか人間飛び越えるってあんまり……」

「あはは、あれは。姉さんの身体能力が異常だよ」

 

昔っからあんなだったよなぁ。体力勝負で姉さんに勝てたことないし。

 

「それは認めよう。言峰の跳躍力は半端じゃない」

「うん、あれは言峰さんいなかったら無理だったよね」

「でしょ? 使えるものは使えってね。うん、はぁぁぁぁ、どうしよう」

 

今更だけど自分の抱えている問題を思い出してしまってナーバスになる。考えてもいい案が思いつかないんだよなぁ。圧倒的に自分の手が足りない。

 

「どした?」

「なにか困ったことでもあるのか? よければ力になるよ」

 

二人が笑って言ってくれた。………よし

 

「………じゃあ、助けて」

 

前だったら絶対に言わなかったはずだけど、比奈丘さんの言葉を聞いて少しは人を頼ろうって気になった。ただ、それだけなんだけどね。

 

「おう、当然だろ」

「俺にできることがあるなら何でも言ってほしい」

 

二人の顔が頼もしく見えた。それで、一体どうしたんだ? と広夢が聞いてくる。うん、これ結構重大事件かも。

 

「はぁ、停戦したはずの戦争が再発するかもしれないんだよね」

「は?」

「え?」

 

分け分からないって顔してくれてありがとう。僕もこんな説明だけでどうにかなるなんて思ってないから。とりあえず前置きとしてこれは覚えておいてと二人に言って、それから作戦会議の折に二人を連れて教室を静かに抜け出した。

 

                    ☆

 

「はぁー、面倒よね」

 

Bクラスの代表の根本さんが去った後、ぼくらは悠里に呼ばれて仮眠室に来ていた。仮眠室に置かれたテーブルには悠里の作戦ノートがある。一応誰にも聞かれなさそうな仮眠室で作戦会議ってわけ。

 

「あれ、珍しい。悠里からそんな感想が聞けるなんて。こういうのは喜々としてやるじゃないか」

「……意外」

 

いつもならこういうときは楽しそうにするのに、ずっと何か悪いものでも食べたような顔なんて珍しいなぁ。

 

「そりゃ面倒にもなるわよ。相手はBクラス、確かに敵としての不足はないわ。でもね、下手に色々と手を見せるわけにもいかないの」

「あー、他のクラスに手の内を晒すわけにはいかないってこと?」

 

確かに下手に手の内見せてそこを突かれて敗北、なんてことになったらまずいもんね。ぼくがそう言ったら悠里が頷いた。

 

「ええ、だから色々と考えないといけないのよね」

「まあ、悠里が考えた作戦だったら絶対に大丈夫だよ。少なくともぼくはそう信じるよ」

「……私も」

 

悠里がそんなことでめげるわけもないし、こんな逆境程度で負けるなんて思えないし。

 

「そう言ってくれるとありがたいわ。うん、あんたたちの期待に応えないとね」

 

そういって悠里は笑った。やっぱり悠里はそういう顔が一番だよね。個人的にはあのあくどい顔は勘弁してほしいんだよなぁ。





動きだす表と裏、オチはどうなるかは一応決定済みの予定

作中にしては珍しく明久が他人を頼りました。この辺は成長かなとも思いますが、基本のキャラ設定はブレていないはず。
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