一話目の注意書きを必ず読んでからお読みください。
俺は
好きなものは……平穏だな。嫌いなものは……騒がしいこと、にしておく。
種族は、転生者。
………といっても、俺はそんなことどうでもいいと思ってる。
俺には転生前の記憶が一切ない。
ただ漠然と、自分に前世があったという感覚と、一つの情報が頭の中に来ただけだ。
『今いる世界が前世から見たら創作物の世界だ』って情報が……。
たしかに始めは、厨二病とかで自分の頭おかしいんじゃない? と自問自答したこともあったさ。
でも結局は……どうでもよかったんだ。
俺にはこの世界は誰が主人公で、どんな
……そう、生きて現実を味わっている。
だから俺は、ただ普通の日常を―――――送りたかった。
◇ ◇ ◇
「………またか」
朝。布団をめくりあげれば、スヤスヤと寝息をたてている黒髪の少女がいた。
彼女は俺の義妹、虚宮
「はぁ……おら、起きろオーフィス」
「ん……おはよう幸真」
まだ眠いのか、目をクシクシと擦りながらオーフィスは起きる。
「幸真。我、巳姫じゃないの?」
「あ~、悪い。つい昔のこと思い出してな……」
オーフィス改め巳姫は小首を傾げたが、俺が答えると「そっか」と言うとすぐに戻す。
―――クゥ~……。
「……ごはん」
可愛らしい腹の音を立て、こちらへ上目づかいになる巳姫。
だが俺はそんな顔されて動くほど甘くない。
今は朝の六時。時間にしては早いし、朝食は起きたら朝の日課をやった後だ。
「はいはい。でも座禅してからだぞ。着替えて来い」
「……うん」
少し残念そうにしていたが、素直に聞いて俺の部屋から出て行った。
俺も座禅用の服……というかジャージに着替え始める。
それにしても、巳姫と会ってからもう一年経つのか……。
◇ ◇ ◇
巳姫―――オーフィスと出会ったのはちょうど一年ほど前。
俺が前世のことを知って数日した頃だった。
「ゼラクス?」
散歩の休憩がてら公園のベンチにいると彼女は俺の前に現れた。
当時の俺は何なのかも判らず、立ち上がり聞き返す。
「え~っと、君は誰?」
「ゼラクス……」
さっきからそれしか言わない彼女。
見た目が幼いのと同じで、もしかしたら内面も幼いんじゃないかと考えてしまった。
でも次の瞬間
「………やっと会えた」
彼女は俺に近づき、抱きついてきた。
身長の差から、彼女が俺の腰に抱きつく形になったが。
『………懐かしい』
「!?」
彼女のことだけでさえわけがわからず困惑する中、俺の頭に知らない声が聞こえた。
思わず周りを確認するが、抱きついてる彼女意外に人は見当たらない。
『……聞こえたか。主よ』
「なんだよ……これ」
だが確かに聞こえる……というより、頭の中で響くようだ。
そんな俺に構わず、声は喋り続けて自己紹介する。
『……私はゼラクス。
そいつは今抱いてきている少女が口にした名を語ってきた。
◇ ◇ ◇
それから俺は、オーフィスとゼラクスからいろいろ聞いた。
この世には悪魔や天使、妖怪や神話に出てくる存在、他にも精霊やドラゴンなんかは実在して、彼女は『
俺も神器を持っていて、『
ゼラクスとオーフィスが唯一無二の親友であるということ。
一部除いて、どれも「アンタ頭おかしいんじゃない?」の一言で済ませられそうな話だが、疑惑していた俺に異変が起きた。
俺の全身が光だして、気づいたら服装が黒いコートを纏ってシャツやズボンも色が黒くなり、仕舞にはブーツを履いていたりと、かなり変わっていた。
その姿。服こそが神器なのだと二人? に言われた俺は、その時点で手を挙げて降伏の態度を示した。
……その後が本当に大変だった。
ゼラクスと一緒にいたい、とオーフィスは俺のことを離してくれず、家にまでついて来たんだ。両親は犯罪に走ったんじゃないかと心配していたようだが、俺は少し嘘を混ぜながら話していくと、いつの間にか彼女を養子にするとかいいだしたんだ。
ホント、なんでだ?
でも名前の方も少し問題がありそうだから、俺が即席で巳姫と名乗らせてやった。
由来はウロボロス→蛇→巳と、服とかから見た目が姫っぽかったからということでやや適当につけたんだけどな……。
で、今は俺の義妹としてうちに住み込んでいる。
閑話休題。
「………」
「………よし、時間だ」
「……ごはん」
「わかっている」
朝の座禅が終わり、俺たちは立ち上がる。
両親は今年の春から海外出張でいない。家には俺と巳姫の二人だけ。
「洋食、和食、フレーク、どれにする?」
「いつもの」
「了解」
俺はキッチンへ向かう。巳姫のいつものというのは洋食セットのこと。
一応、簡単なものだったら俺も料理は出来る。
メニューはトースト、目玉焼き、ハッシュドポテト、サラダ、市販のヨーグルト。
飲み物は俺がコーヒーで彼女はミルクセーキ。
出来たものを彼女が運んでいき、軽く調理器具を洗った俺も席に着く。
「………」
「巳姫、いただきますは?」
そのまま手をつけようとする彼女を注意する。
「……いただきます」
「よく出来ました」
少しだけ笑顔になって食べ始めた。俺も合掌して食べ始める。
感想は、いつも通りの味付けということ。
俺も巳姫も目玉焼きは塩で食べて、ハッシュドポテトはケチャップを少量つけて。
コーヒーはノーミルクノーシュガーで食べていった。
さて、今日はもしかしたら面倒なことになるかもしれない。
俺は去年の夏から巳姫とゼラクスの二人に頼まれて深夜に悪魔を狩っている。
なんでも、ゼラクスの力をちゃんと発揮できるように実戦経験を積むためなんだと。
平穏を愛する俺としてはそんな物騒なことは御断りしたかったのだが、命を狙われたらどうするだ、とちょっと脅されてしまい、結局自分の命の安全を優先させるためやることになった。
それで昨夜も『はぐれ悪魔』という悪魔の犯罪者みたいなものを狩り、帰宅しようと振り返った俺は出会ってしまった。俺の通う学校と同じ制服を着た五人組と。
……深夜に町はずれまで来たのだから、全員悪魔だとその時考えられた。
幸いフードを深めに被って顔を見えなくしたが、もしかしたら俺のことがバレているかもしれない。
相手の中には親戚が学校の理事長をやっていると噂の先輩が居たのだから。
……はぁ、まあ気付いてないことを祈るか。
そうやって考えているうちに、朝食が全てなくなっていた。どうやら考えているうちに食べ終えてしまったようだ。
「ごちそうさまでした」
「……ごちそうさまでした」
食べ終わった俺に続くよう、巳姫も合唱して食器を片付けた。
たぶんやらずに片付けしようとしたんだろう。でもちゃんとやったから別に怒りはしない。
「さて、今日はどうするんだ?」
「パフェ食べに行く」
「あいよ。俺は今日ちょっと遅くなるかもしれない。一応、夕飯までには帰ってくるつもりだけどな」
「わかった」
予定を確認し合って、俺たちは各々の自室で着替えてくる。
ジャージから制服に袖を通し終わると、バックを背負って玄関に。
巳姫の方も着替え終わってと付いてきた。まぁ、すぐに出かけるわけじゃないんだろうけど……毎朝出かける前のアレをやって欲しいとわかる。
「じゃあいってくる」
俺が頭を撫でると、普段は無表情なくせに気持ち良さそうに目を細める。
なんか猫みたいだな。
「ん、いってらっしゃい」
「いってきます。巳姫」
俺は彼女に手を振って登校した。
さて……平穏な日を送れるよう願っておくか。