知る人ぞ知る世界的な名探偵L、と言っても日本ハワイ間だが、は1月程前から頻発している犯罪者の心臓発作について人為的なものを感じていた。いくら麻薬中毒など不健康な者が多いからと言って、統計学的に起こりすぎている。
それを起こせる人間がこの世にはいる。特にリクドウ大陸には不思議な術を扱う者が多くいる。彼の母国である大英帝国も、リクドウ大陸の忍びに翻弄され大敗したことから、植民地を次々と失っていき、ヨーロッパの一国家に戻っている。
ふつうに考えれば、リクドウ大陸の人間が怪しい。人為的だと思われる心臓発作が起こるタイミングも、リクドウ大陸の時間で7時から20時の間に集まっている。彼等が起きている間に犯行に及んでいるので、眠っている間は何も起こらない。それが自然だ。
しかしLは日本という島国に犯人がいる可能性を捨てきれなかった。それもリクドウ大陸の出身者が日本で犯行に及んでいるのではなく、純粋に日本人の両親から生まれた日本人が犯行に及んでいる可能性をだ。
ある日、心臓病で死ぬ者があまりにも多いということについて、アメリカが討論番組を放送した。犯罪者とは言え、殺してもいいのかどうか。人為的だったとしたら、犯人はどこの誰か。主にこの2つの内容だった。
アメリカらしく意見は真っ二つに割れ、激しい討論がなされた。
「犯罪者なんだ。殺されても文句は言えない。それに死刑や終身刑が確定しているようなやつが警察の目を抜けて逃げ回っているんだ。必要悪というものがある」
「ありえない! 法律なくしては殺人はただの殺人だ! そうでなければ軍隊は敵国の人間を皆殺しにしてもいいことになる!」
討論の後視聴者による投票があった。55対45で凶悪犯罪者の殺人は不当が上回った。
「暗殺者はあのリクドウ大陸のNINJAだろう」
「そうだな。NINJAにしか無理だ。こんなことは」
「いや、別の海の人間だって不思議な力を持っている。決め付けることはできない」
犯人”キラ”については、概ねリクドウ大陸の忍者を疑っていた。視聴者投票でも88対12で忍者が優勢だった。
しかし、この番組の後に心臓病で死ぬ人間はめっきり減ってしまった。先月は偶然心臓病で死ぬ凶悪犯罪者が多かっただけ、という空気ができあがり、キラの噂は減っていった。
結局、キラの話題はアメリカ人の大好きな都市伝説として片付けられてしまった。
Lも犯人がいるかどうか確信は持てなかった。既存の法律に縛られず、大胆にも凶悪犯罪者を次々と殺す。しかしテレビ放送があると目立たないように行動を控える。それが人間として矛盾しているように思える。犯人の狙いが分からない。
単にテレビで犯行を示唆されるだけで恐れるような小心者だったのか。もしくは愉快犯か。それとも別の理由があって行動を制限されているのか。
ふと、キーボードを叩くLの指が止まった。
『いざ世界の海へ! 未来を担う若人募集!』
日本人が西の海へ行く留学生を募っていた。
リクドウ大陸に支援に行った高校生が某国のスパイを殺し、少女を助けた件は知っている。その高校生が西の海への留学を望んでいたことも。だから寄付が集まったのだろう。しかし少し早急すぎるように思えた。
犯人の狙いが世界から犯罪者を撲滅することだったとしたら? 日ハ間だけで満足できる? いや、無理だろう。犯罪者を殺したところで、この星の全犯罪者の数%に届かないかもしれない。大海賊時代の今、ほとんどの犯罪者は海にいるのだから。
自分の予想が正しければ、キラは外の海に出たがっている。
Lは寄付金のスポンサーを調べた。中川コーポレーションを中心に有名企業がずらり。そして日本政府。もう少し詳しく調べると、計画を主導したのは自動車産業と半導体産業の重鎮だと分かった。
おかしくはない。技術で食っている者達は技術の遅れを嫌がるものだ。
しかしおかしいのは計画実行までの早さ。スポンサーの中間をうまく取り持ち、計画を迅速に進めた人間。……両津勘吉。
両津勘吉。所属、警視庁新葛飾警察署地域課。階級は警視庁巡査長。東京都台東区千束(浅草)で佃煮屋「よろづや」を営む一家の長男に生まれる。35歳。現在は亀有公園前派出所に勤務。同じ所に中川コーポレーションの御曹司中川圭一と両親共に有名な実業家である秋本・カトリーヌ・麗子が勤務。特筆するべきは金に絡んだ不祥事の数々。始末書の数は歴代警察官で断トツの一位。しかし何故か未だ懲戒免職になっていない。
「怪しい。……しかし、彼はあまりにも」
あまりにも悪名を晒し過ぎている。正義の人間と言うには怪しい。
とかく、この留学計画が怪しいことには変わりない。行ってみるか? 私も。西の都に。
--夜神ライト--
行幸だ。村田サトシと言ったか。ちょうど西の都に留学に行くのが夢だったからマスコミを動かす手間が省けた。それに、中川コーポレーションの御曹司中川圭一と、謎の警官両津勘吉。この2人も都合よく動いてくれた。おかげで政治家を殺す手間が省けた。
アメリカテレビでキラが取り上げられた時は肝が冷えた。特に忍者に罪を被せていたのを見た時はね。もし忍者があの番組を見ていて、濡れ衣を晴らすために僕を探し始めたら……。考えただけで恐ろしい。何せ彼等は能力の限界が分からない。推理なしに僕を探し当たられたらどうしようもない。火影ともなれば死者を操るとか、瞬間移動できるとか、水のないところで池を作るとか、記録に残っているようだからね。無茶苦茶だ。
でも、僕は犯罪のない世界を作ると誓ったんだ。この程度で諦めるわけじゃあない。忍者が怖ければ、こちらも忍者を用意する。いや、それ以上の力を用意すればいいんだ。
だけど、計画が決まらない。決められない。方程式が立てられないんだ。知らないことが多すぎて。
もっと知る必要がある。外の世界には何があるのか。どんな人がいて、どんな能力があって、どういう組織を作っているのか。
「まさかこんな流れになるとはね」
僕も行ってみるか。西の都に。グランドラインを通るのはとても危険だが、やってみる価値はある。